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相続は誰に相談する?弁護士・司法書士・税理士の使い分け

相続は誰に相談する?弁護士・司法書士・税理士の使い分け

役所でもらった手続きの一覧に、3か月・4か月・10か月という期限が並んでいます。ところが「誰に相談すればいいのか」は、どの一覧にも書かれていません。

相続の相談先は、困っている中身で変わります。

兄弟の意見が割れているなら弁護士、実家の名義を書き換えるなら司法書士、相続税の申告が要るかどうかなら税理士です。

順番も決まっていて、最初に見るのは相続放棄をするかどうか(自分が相続人だと知った時から3か月)、次が相続税の申告の有無(基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数)になります。

本記事では、期限から逆算した相談の順番・弁護士と司法書士と税理士の担当範囲・相談前に用意する3つの数字・期限を過ぎたときの過料まで解説します。

相続の相談は、期限がいちばん近いものから逆算する

誰に相談するかを決める前に、自分の家がどの期限の中にいるのかを確かめてください。

相続の手続きは、期限のあるものと無いものが入り混じっています。

期限のあるものだけが、遅れると取り返しがつきません。

手続き期限窓口
死亡届死亡を知った日から7日以内市区町村
年金の受給停止厚生年金は10日、国民年金は14日以内年金事務所・市区町村
世帯主変更届14日以内(15歳以上が2人以上残る場合)市区町村
相続放棄・限定承認相続の開始を知った時から3か月以内家庭裁判所
準確定申告知った日の翌日から4か月以内税務署
相続税の申告・納付知った日の翌日から10か月以内税務署
相続登記取得を知った日から3年以内法務局
遺留分侵害額請求相続開始と侵害を知った時から1年相手方・家庭裁判所

借金の有無が分からないなら、3か月の中で動く

相続放棄の期限は、亡くなった日からではなく「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月です(民法915条)。

葬儀と四十九日を済ませてから財産を調べ始めると、残り1か月ほどで判断を迫られます。

財産と借金のどちらが多いか分からないまま3か月が過ぎると、原則として借金も引き継ぐ立場になります。

間に合わないと感じたら、期間内に家庭裁判所へ伸長を申し立てられます。

ここは調べ物の量ではなく期日の管理が要る場面なので、弁護士か司法書士に相談する価値があります。

相続手続きの期限一覧では、過ぎると損をする手続きを期限順に解説しています。

7日と14日の届出は、相談より先に終わらせる

死亡届・年金の受給停止・世帯主変更届は、専門家に頼む話ではなく市区町村と年金事務所の窓口作業です。

ここで迷って時間を使うと、3か月の判断が後ろに寄ります。

健康保険からは葬祭費や埋葬料が支給され、健康保険の埋葬料は一律5万円です。

国民健康保険の葬祭費は市区町村ごとに額が違うので、金額はお住まいの窓口で確認してください。

遺族年金の受給資格も同じ時期に確認する項目で、遺族年金の条件と金額の計算で解説しています。

相続の相談先は4つ|弁護士・司法書士・税理士の担当範囲

「相続に詳しい人」という括りは実務では使えません。同じ相続でも、交渉と登記と税額計算はそれぞれ別の職種の仕事です。

相談先任せられることこういう状況で選ぶ
弁護士相続人同士の交渉・調停・訴訟の代理、遺留分侵害額請求兄弟の意見が割れている、連絡を無視されている
司法書士不動産の相続登記の申請代理、法務局へ出す書類の作成実家や土地の名義が親のまま残っている
税理士相続税の申告、土地や非上場株式の評価遺産が基礎控除を超えそう、特例を使いたい
行政書士争いのない場合の遺産分割協議書などの書類作成、戸籍の収集分け方は決まっていて、書類だけ整えたい

入口はどこでも構わないが、丸投げにはならない

税理士に相続税を頼んだら登記まで済むわけではありません。

事務所によっては司法書士や弁護士と提携していて、窓口ひとつで進むこともあります。

最初の相談で「うちが扱うのはどこまでで、どこから別の専門家に渡すのか」を聞いてください。

そこが曖昧なまま契約すると、途中で二重に費用がかかります。

銀行や信託銀行の相続手続き代行も窓口の取りまとめであって、税額の計算や紛争の代理そのものではありません。実際の申告や登記は提携先の士業が担うため、費用は取りまとめ分が上に乗る形になります。

揉めそうなときに代理で交渉できるのは弁護士だけ

相続人同士の話し合いがこじれた場合、本人の代わりに相手方と交渉したり家庭裁判所の調停を代理できるのは弁護士です。

司法書士や行政書士に書類を作ってもらうことはできても、相手を説得する役目は引き受けられません。

ここを取り違えて書類だけ整えると、署名を集める段階で止まります。

連絡が取れない相続人がいる場合

遺産分割協議は相続人全員の合意が要るので、1人でも欠けると成立しません。

住所が分からない相続人がいるなら、戸籍の附票などをたどる調査から始まります。

相続人の数が多い、あるいは面識のない相続人がいるほど、自力での連絡は難しくなります。

遺言の内容に納得できない場合

遺言で自分の取り分がほとんど無かったとしても、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があります。

請求できる期間は、相続の開始と侵害を知った時から1年、相続開始から10年で時効です(民法1048条)。

1年という区切りは短く、話し合いを重ねているうちに過ぎます。

争う可能性が頭をよぎった時点で弁護士に相談する場面です。

相続税の相談が要るかどうかは、基礎控除で先に判断する

相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です(相続税法15条)。

相続人が3人なら4,800万円で、遺産の合計がこれを下回れば申告そのものが要りません。

2015年より前は5,000万円+1,000万円×人数だったので、当時の記憶で判断すると外れます。

注意したいのは、税額がゼロでも申告が必要になる場合です。

配偶者の税額軽減(法定相続分か1億6,000万円のいずれか多い額まで)と、小規模宅地等の特例(自宅の宅地330平方メートルまで評価額を80%減額)は、どちらも申告して初めて使えます。

特例で0円になるから何もしなくてよい、とはなりません。

判断が難しいのは、遺産の中身が現金だけではないときです。

土地の評価、生命保険金の非課税枠、名義預金の扱いは自分で計算しにくい部分で、合計額が基礎控除に近づくほど専門家の領域になります。

個別の税額判定は税理士の仕事なので、ここでは境目までにとどめます。

制度の全体像は相続税の基礎控除と課税の分かれ目で解説しています。

実家の名義は3年以内|相続登記を任せる相手の選び方

2024年4月1日から、不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務になりました。

正当な理由なく怠ると10万円以下の過料があります。

見落としやすいのは、施行より前に相続した不動産も対象という点です。

祖父の代から名義が変わっていない土地も含まれ、その場合の期限は2027年3月31日です。

登記だけなら自分でも申請できる

遺産分割の内容が決まっていて、相続人が少なく、不動産も1件だけなら、法務局に相談しながら自分で申請する道もあります。

判断の分かれ目は、戸籍を何代さかのぼる必要があるかと、不動産が複数の市区町村にまたがるかどうかです。

手順と必要書類は相続登記の必要書類と申請手順で解説しています。

売るつもりなら、控除の要件を先に確認する

相続した空き家を売る場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。

1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、対象は2027年12月31日までの譲渡です。

相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。

要件を満たすかどうかで手取りが変わるため、売却の段取りを組む前に確認してください。

買い手が見つかりにくい地域なら、空き家バンクの登録条件と使い方で解説している仕組みも選択肢に入ります。

相談の前に机の上へ出す3つの数字と、全員の署名が要る場面

手ぶらで相談に行くと、最初の1時間は状況の聞き取りだけで終わります。先に次の3つを用意してください。

  • 預金の残高証明書(死亡日時点のもの。金融機関で発行)
  • 実家の査定額(不動産会社の査定書。複数社取れば幅が分かります)
  • 固定資産税の年額(毎年届く納税通知書)

この3つは、兄弟の話し合いでも同じように働きます。

実家を売るか残すかで意見が割れるのは、誰も「いくらで売れるのか」「持ち続けると毎年いくらかかるのか」を知らないまま話しているためです。

金額が机の上にあると、感情の話に流れる前に選択肢の比較へ入れます。

戸籍と登記の取り寄せ先は別

相続人を確定させる戸籍謄本は本籍地の市区町村、不動産の登記事項証明書は法務局です。

窓口が違うので、同じ日にまとめて済ませるつもりで動くと二度手間になります。

本籍が転々としている場合は、郵送で取り寄せながら並行して他の手続きを進めるほうが早く終わります。

遺産分割協議書は相続人全員の署名押印で成立する

分け方が決まったら遺産分割協議書にまとめますが、相続人が1人でも欠けていれば効力を持ちません。

金融機関や法務局は、この書類と印鑑証明書で全員の合意を確認します。

書き方や記載漏れの落とし穴は遺産分割協議書の書き方と記載漏れへの注意点で解説しています。

なお、お墓や仏壇、位牌といった祭祀(さいし)財産は相続財産とは別枠で、1人が引き継ぎます(民法897条)。

指定がなければ慣習に従い、それでも決まらないときは家庭裁判所が定めます。

相続放棄をした人がこの役目を引き受けることもできるため、分割協議とは切り離して話し合ってください。

相談料は遺産の額と手続きの本数で変わる

士業の報酬は自由化されているため、一律の相場を示せません。ただ、金額を左右する要素は共通しています。

  • 遺産の総額(税理士報酬や弁護士報酬は総額に連動する形が多い)
  • 相続人の数と、争いがあるかどうか
  • 不動産の数と所在地(遠方の物件が増えるほど手間が増える)
  • 相続税の申告が要るかどうか、特例を使うかどうか

初回相談を無料にしている事務所もありますが、無料の枠で答えられるのは一般的な制度の説明と、どの手続きが必要かの見立てまでです。

財産の評価や交渉方針まで踏み込むと有料の依頼になります。

見積もりを取るときは、着手金と報酬が別なのか、登記費用や戸籍の取り寄せといった実費が含まれるのか、成功報酬の割合はどう決まるのかを書面で確認してください。

口頭の説明だけで進めると、精算のときに認識がずれます。

費用を抑えたいなら、自分でできる範囲を切り分ける手もあります。

戸籍と残高証明を自分で集め、評価や申告だけを頼む形なら作業量が減ります。

逆に、相続人が多く連絡も取りづらい状況で自力の収集にこだわると、期限のほうが先に来ます。

相談を先延ばしにすると、過料と特例の期限で損をする

放置して困るのは、期限が切られたものだけです。

相続登記を怠れば10万円以下の過料の対象になり、2024年4月より前に相続した不動産は2027年3月31日が区切りになります。

配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は申告して初めて使えるので、10か月の申告期限を過ぎれば本来より重い負担になります。

空き家の3,000万円特別控除も、2027年12月31日までの譲渡が対象です。

誰も住まない家をそのままにした場合、固定資産税が自動で6倍になるわけではありません。

倒壊のおそれや衛生上の問題があると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがあると「管理不全空家」に指定され、勧告を受けた段階で住宅用地の特例(6分の1)が外れます。

指定と勧告という段階を踏むので、庭木や雨漏りの手入れを続けているうちは勧告まで進みません。

全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高です(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。

管理を続ける前提で判断するなら、その手間と交通費も費用として数えてください。

親が元気なうちの相続の相談は、口座が凍結される前に決める

ここまでは相続が始まったあとの話ですが、まだ始まっていない段階の相談は、選べる手段がずっと多くなります。

認知症などで判断能力が失われると、本人の口座からの出金や不動産の売却が止まり、施設費用を子が立て替える状態になりかねません。

この段階で使えるのが家族信託で、家族信託の仕組みと備え方で解説しています。

遺言を書く場合は、方式によって死後の手続きが変わります。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所の検認が必要で、封を開けずに持ち込みます。

公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が不要です。

保管制度の申請手数料は1件3,900円です(法務省 遺言書保管所/2026年9月時点)。

財産目録はパソコン作成や通帳のコピーでもよくなりましたが、各ページに署名押印が要り、本文は全文自筆のままです。

法的な効力を持たせない範囲でも、預金や保険の一覧、お墓の連絡先、延命治療の希望を書き残しておくと、相続人の調査時間が丸ごと縮みます。何を書くべきかはエンディングノートの項目と役割で解説しています。

よくある質問

相続の相談は無料でできますか

初回相談を無料にしている事務所はありますが、その枠で聞けるのは制度の説明と必要な手続きの見立てまでです。

財産の評価や交渉方針まで進めば有料の依頼になります。

お住まいの市区町村でも住民向けの法律相談を実施している場合があるので、開催日と予約方法を窓口で確認してください。

弁護士と司法書士のどちらに先に相談すべきですか

分け方について相続人の間で意見が割れているなら弁護士です。

分け方は決まっていて不動産の名義変更だけが残っているなら司法書士になります。

判断に迷うときは、遺産分割協議書に全員の署名をもらえる見通しがあるかどうかで分けてください。

もらえない相手がいるなら、書類より交渉が先です。

相続放棄の3か月に間に合いそうにありません

期間内であれば、家庭裁判所に伸長の申立てができます。

ただし申立ても3か月の中で行う必要があるため、財産調査が終わらないと分かった時点で動いてください。

なお、故人の預金を引き出して使ってしまうと単純承認と扱われ、放棄ができなくなる場合があります。

判断が固まるまで、口座には手を付けないでください。

相続税の申告が必要かどうか、自分で判断できますか

遺産の中身が預金だけで、合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を大きく下回るなら、見当は付けられます。

土地や非上場株式が含まれる場合、評価額が自分の想定と離れることがあります。

合計が基礎控除に近い水準なら、税理士に確認する段階です。

基礎控除の計算では、相続放棄をした人も法定相続人の数に含めます。

相続人の中に連絡が取れない人がいます

遺産分割協議は相続人全員の合意が要るので、その人を除いて進めても効力がありません。

戸籍をたどって所在を調べる作業から始まり、それでも判明しない場合は家庭裁判所の手続きを使うことになります。

弁護士に相談する典型的な場面です。

遺言書が見つかりました。開けてもいいですか

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、封を開けずに家庭裁判所へ持ち込んで検認を受けてください。

勝手に開封すると過料の対象になり、内容をめぐって他の相続人との争いにもなりかねません。

公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が不要です。

遺品整理を先に済ませても問題ありませんか

通帳・キャッシュカード・保険証券・年金手帳・権利証・印鑑登録証・貸金庫の鍵と契約書は、処分すると手続きが止まります。

財産の全体像が固まるまで、書類と印鑑類は残してください。

回収を頼む場合、家庭から出た不用品を運ぶには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可、買い取るには古物商許可が要ります。

「無料回収」を名乗るトラックはこの許可が無いことが多いので、許可番号を確認してから渡してください。

訪問して買い取る契約なら、書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができます。

まとめ

相談先は肩書きで選ぶものではなく、自分の家がどの期限の中にいるかで決まります。

相続人の間で話がまとまらないなら弁護士、実家の名義が親のままなら司法書士、遺産が基礎控除に近いなら税理士という順で当てはめてください。

どこに行くにしても、預金の残高証明と実家の査定額、固定資産税の年額を先に揃えておくと、初回の相談から中身の話に入れます。

期限のうち踏み外すと戻れないのは、相続放棄の3か月と相続税の申告の10か月、それに相続登記の3年です。ぜひ本記事の期限一覧と担当範囲の表を手元に置いて、今日の時点でどの期限まで残っているかを数えてから、最初の予約を入れてください。

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