相続手続きの期限一覧|過ぎると損をする5つの手続き

相続放棄の3か月は、亡くなった日ではなく、自分が相続人だと知った時から数えます(民法915条)。葬儀と四十九日を済ませてから財産を調べ始めると、残りは1か月半ほどになります。
期限が決まっている手続きは、死亡届の7日から相続登記の3年まで段階的に並んでいます。順番を入れ替えられるものと、戸籍がそろわないと一歩も進まないものが混ざっているため、一覧を見ただけでは今日やることが決まりません。
本記事では、7日から3年までの期限の並び・起算日の数え方・戸籍と残高証明の取り寄せ先・過ぎたときに起きることを解説します。
遺産相続の期限は7日から3年まで段階的に区切られる
法律で日数が切られている手続きは、死亡届から相続登記までの間に並んでいます。起算日がそれぞれ違うので、カレンダーに書き込むときは「亡くなった日から何日」で一律に数えないでください。
| 手続き | 期限 | 起算日 | 届け先 |
|---|---|---|---|
| 死亡届 | 7日以内 | 死亡の事実を知った日 | 死亡地・本籍地・届出人の所在地の市区町村 |
| 年金の受給停止 | 厚生年金10日以内/国民年金14日以内 | 死亡日 | 年金事務所または市区町村 |
| 世帯主変更届 | 14日以内 | 死亡日 | 市区町村(15歳以上が2人以上残る場合) |
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 自己のために相続の開始があったことを知った時 | 家庭裁判所 |
| 準確定申告 | 4か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 | 税務署 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 | 税務署 |
| 遺留分侵害額請求 | 1年(相続開始から10年で時効) | 相続の開始と侵害を知った時 | 請求の相手方となる相続人 |
| 相続登記 | 3年以内 | 不動産を取得したことを知った日 | 法務局 |
このうち、期限を過ぎるとお金の面で不利になるのが次の5つです。
- 相続放棄(3か月を過ぎると借金も引き継ぐ)
- 準確定申告(4か月を過ぎると加算税や延滞税の対象になる)
- 相続税の申告(10か月を過ぎると特例を使えないまま課税される)
- 遺留分侵害額請求(1年で請求できなくなる)
- 相続登記(3年を過ぎると10万円以下の過料の対象になる)
日数の短い届出は、役所でまとめて出せる
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村へ出します(戸籍法86条)。
世帯に15歳以上の人が2人以上残る場合は、14日以内の世帯主変更届も同じ窓口で受け付けています。
年金は厚生年金が10日以内、国民年金が14日以内で、届け先は年金事務所または市区町村です。
窓口が重なるため、同じ日にまとめて出しておくと往復の回数が減ります。
3か月・4か月・10か月は、財産が分からないと判断できない
ここから先は、書類を出せば終わる手続きではありません。
相続放棄をするかどうかは、預貯金と借金のどちらが多いかを調べ終えないと決められません。
相続税の申告が要るかどうかも、不動産の評価と預貯金の合計が基礎控除を超えるかで変わります。
つまり、3か月・4か月・10か月の3つは、いずれも「財産の調査が終わっている」ことが前提になっています。
調査の起点は戸籍と残高証明で、ここが遅れると全部が後ろへずれます。
3つの期限の関係は相続手続きの全体像と3か月・4か月・10か月の図解で解説しています。
期限に間に合わせる書類は、本籍地・金融機関・法務局に分かれている
集める書類は多く見えますが、取りに行く先は3か所に分かれます。同時並行で請求すれば、待ち時間が重なりません。
戸籍謄本は本籍地の市区町村、転籍していれば数が増える
相続の手続きでは、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍が連続してそろっていることを求められます。
最後の本籍地で取れるのは、その本籍地にいた期間の分だけです。
結婚や転籍で本籍を移していれば、前の本籍地の除籍謄本や、様式が変わる前の改製原戸籍(かいせいげんこせき)を、それぞれの市区町村へ請求します。
本籍を3回移していれば、請求先も3か所に増えます。
あわせて、相続人全員の現在の戸籍も要ります。
遠方の本籍地は郵送で請求できますが、手数料の払い方や必要書類は市区町村ごとに案内が違うので、窓口のページで確認してください。
往復の日数を見込むと、最初に着手すべきなのがこの戸籍集めになります。
残高証明書は金融機関、基準になるのは死亡日の残高
預貯金は、通帳の記帳額ではなく、死亡日時点の残高証明書で確定させます。
遺産分割の話し合いでも相続税の計算でも、この数字が土台になります。
金融機関に死亡を伝えると、その口座の入出金は止まります。
相続放棄を検討しているなら、口座からお金を動かさないでください。
相続財産を処分すると単純承認したとみなされ、3か月以内であっても放棄できなくなります。
公共料金の引き落とし口座になっている場合は、支払い方法の切り替えを先に済ませておきます。
証券口座がある場合は銀行と手続きが別で、株式・投資信託の相続と証券会社での手続きで解説しています。
不動産は法務局の登記事項証明書と、固定資産税の納税通知書
実家の名義は、法務局で取れる登記事項証明書の甲区(所有権に関する事項)で確認します。
ここに親の名前があれば通常の相続登記ですが、祖父の名前のまま止まっていることもあります。
その場合は祖父の代の相続人まで巻き込むことになり、話し合いの相手が一気に増えます。
手数料と請求方法は法務局の現行の案内で確認してください。
評価額のあたりをつけるには、毎年春に届く固定資産税の納税通知書が使えます。兄弟で話す前に、年額いくら払っている家なのかを共有しておくと、維持費の話が具体的になります。
遺言書は封を開けずに、まず種類を確かめる
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けてから開封します(民法1004条)。
封を切ってしまうと過料の対象になり、内容をめぐって相続人同士の不信も残ります。
一方、公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使って預けられていたものは検認が不要です。
この保管制度は2020年7月10日に始まったもので、預けてあるかどうかは法務局に照会できます。
家庭裁判所・税務署・法務局で、期限の数え方も持ち物も変わる
届け先が変わると、数え方も、誰が行けるかも変わります。窓口はいずれも平日の日中しか開いていないため、仕事を持っている人は郵送やオンラインで済む部分を先に切り分けておくと動きやすくなります。
相続放棄は家庭裁判所へ、3か月で足りなければ伸長を申し立てる
相続放棄と限定承認の申述先は家庭裁判所です。
3か月の起算日は「自己のために相続の開始があったことを知った時」なので、疎遠だった親の死亡を後から知らされた場合は、その知った日から数えます。
財産の調査が終わらないまま期限が近づいたときは、3か月の期間内であれば家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます。
期限が来てから相談するのでは間に合わないため、2か月目に見通しが立たないなら申立ての準備に入ってください。
なお、遺産分割の話し合いで取り分をゼロにすることと、相続放棄は別の手続きです。
協議で何ももらわないと決めても、債権者に対しては法定相続分の債務が残ります。
借金を引き継ぎたくないのであれば、家庭裁判所への申述が要ります。
準確定申告と相続税の申告は税務署、要否は中身で分かれる
準確定申告は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。
故人に事業所得がある場合や、一定の年金収入がある場合に必要になります。
会社勤めで年末調整が済んでいた人のように、そもそも確定申告の対象でなければ出す場面はありません。
相続税の申告と納付は、同じ起算日から10か月以内です。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円になります。
財産の合計がこれ以下なら、申告そのものが要りません。
ここで間違えやすいのが特例の扱いで、配偶者の税額軽減(法定相続分か1億6,000万円のいずれか多い額まで非課税)や、小規模宅地等の特例(自宅の敷地330平方メートルまで評価額を80%減額)を使って税額が0円になる場合は、申告書を出して初めて適用されます。
10か月の期限までに誰が何を取得するかが決まっていないと、申告書が書けません。
基礎控除の考え方は相続税は誰にかかるのかと基礎控除の分かれ目で解説しています。
相続登記は法務局、2027年3月31日という別の期限もある
相続登記は2024年4月1日から義務になりました。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請し、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
見落としやすいのは、施行日より前に相続した不動産も対象になっている点で、その場合の期限は2027年3月31日です。
何十年も名義を変えていない土地があるなら、この日付のほうが先に来ます。
手続きが止まるのは、戸籍集めと兄弟の同意の2か所
期限を過ぎた人が、最初から放置していたとは限りません。途中まで進めて、決まった場所で止まります。
戸籍は、本籍地を移した回数だけ請求先が増える
郵送請求は、送る・届く・確認する・不足を追加請求する、という往復が発生します。
1か所で完結すれば短く済みますが、判明した前の本籍地へさらに請求する形になるため、何か所あるかは最初の1通が届くまで分かりません。
相続放棄を考えているなら、戸籍がそろうのを待たずに家庭裁判所へ相談を入れてください。
兄弟の話し合いは、資料が出そろってから始める
実家を売るか残すかで意見が割れるのは、誰も「いくらで売れるか」を知らないまま話しているからです。
数字がない状態では、住み続けたい側は高く、売りたい側は安く見積もり、金額の話が感情の話に変わります。
話し合いの場に出すのは次の3つです。
- 預貯金の残高証明書
- 不動産会社の査定額(複数社)
- 固定資産税の年額と、空き家のままにした場合の管理費用
相続税の申告が要る規模なら、10か月という締切があること自体が話を前に進める材料になります。期限を伝えたうえで、分け方の案を2つか3つ用意して持ち寄る形にすると、議題が「どうするか」に絞られます。
空き家のまま持ち続けると、税の側の期限にも当たる
実家を空き家にしたまま置いておくと、倒壊のおそれや衛生上の問題がある状態と市区町村が判断した場合に「特定空家」、そうなるおそれがある状態なら「管理不全空家」に指定されます。
勧告を受けた時点で固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が上がります。
放置しただけで自動的に上がるのではなく、指定と勧告の段階を踏む仕組みです。
売却を選ぶ場合は、相続した空き家を売ったときに譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります(租税特別措置法35条3項)。
1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、対象は2027年12月31日までの譲渡です。
相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。
使えるかどうかの判定は要件が細かいので、売却時期を決める前に税務署か税理士へ確認してください。
自分で出せる書類と、税理士・司法書士に渡す境目
全部を専門家に任せると費用がかさみ、全部を自分でやると期限に間に合わなくなります。分け方の目安は、判断が要るかどうかです。
窓口で完結するものは、自分の手で終えられる
死亡届・世帯主変更届・年金の受給停止は、市区町村と年金事務所で完結します。
戸籍の取り寄せも、請求書を書いて郵送するだけの作業です。
相続人が配偶者と子だけで、財産が預貯金と自宅1件という構成なら、相続登記も法務局の手続案内を使って自分で申請できます。
書類の集め方と順番は相続手続きを自分で進めるときの必要書類と順番で解説しています。
金額の判定と、対立の処理は専門家の領域
相続財産が基礎控除を超えそうなとき、特例を使って税額を下げたいときは、税理士に渡す段階です。
不動産の評価や特例の要件判定は、間違えると納めすぎるか、後から修正申告になります。
相続人同士で主張が対立して話し合いにならない場合は弁護士、名義変更する不動産が複数あって権利関係が古い場合は司法書士が窓口になります。
専門家ごとの報酬の考え方は相続手続きの費用と専門家別の報酬相場で解説しています。
相談に行く時期は、期限の1か月前ではなく、財産の全体像が見えた時点です。相続税の申告なら、遅くとも10か月の半分が過ぎるまでに依頼先を決めておくと、資料の追加請求に対応する余裕ができます。
よくある質問
相続放棄の3か月を過ぎてしまったら、もう放棄できませんか
期間内であれば、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます。
過ぎてしまった後に申述が受理されるかどうかは、いつ何を知ったのかという個別の事情で判断が分かれます。
借金の存在を後から知った場合の扱いも含めて、弁護士か司法書士に相談する段階です。
放棄を検討している間は、預金の引き出しや形見分けを含め、相続財産に手をつけないでください。
財産が基礎控除以下なら、税務署へは何も出さなくていいですか
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、相続税の申告は要りません。
ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使った結果として控除以下になる場合は、申告書を出さないと特例が適用されません。
特例を使う前の金額で基礎控除を超えているなら、税額が0円でも10か月以内に申告してください。
遺産分割の話し合いに期限はありますか
話し合いそのものに法律上の期限はありません。
ただし、相続税の申告期限である10か月と、相続登記の3年が実務上の締切として先に来ます。
誰が何を取得するかが決まらないと、申告書も登記申請書も書けません。
まとまらないまま10か月が近づいたときは、税理士に途中経過を伝えて対応を確認してください。
2024年より前に相続した実家も、登記しないといけませんか
対象になります。
相続登記の義務は2024年4月1日に始まりましたが、それ以前に相続した不動産も含まれ、期限は2027年3月31日です。
祖父母の代から名義が変わっていない土地がある場合は、相続人の数が増えているぶん戸籍集めに時間がかかります。
期限の日付から逆算して、戸籍の請求を先に始めてください。
遺言書が出てきたら、その場で開けてもいいですか
封のある自筆証書遺言と秘密証書遺言は、開けずに家庭裁判所へ持ち込んで検認を受けます。
勝手に開封すると過料の対象になります。
公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度に預けられていた遺言書は検認が不要なので、そのまま手続きに使えます。
どの種類か分からないときは、封筒の表書きと公証役場の印の有無を確認してください。
まとめ
遺産相続の期限は、死亡届の7日から相続登記の3年まで並んでいますが、起算日はそれぞれ違います。
とくに相続放棄の3か月は「自分が相続人だと知った時」から数えるため、亡くなった日で計算すると見込みを誤ります。
財産の調査が終わらないと動けない手続きが3つ重なるので、戸籍と残高証明の請求を最初に出してしまうのが現実的な進め方です。
兄弟で意見が割れているなら、感情の話に入る前に残高証明・査定額・固定資産税の年額を机に出してください。
数字がそろえば、10か月という締切が話を前に進める理由になります。
ぜひ本記事の期限一覧表を手元のカレンダーに書き写して、今日から何日目までに何を終えるかを決めてください。


