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相続手続きの費用はいくら?専門家別の報酬相場を比べる

相続手続きの費用はいくら?専門家別の報酬相場を比べる

相続手続きの見積書に並ぶ費目は、市区町村や法務局へ納める実費と、依頼先へ払う報酬の2つに分かれます。「相続手続き一式」とまとめられた見積書では、どちらがいくらなのか分かりません。

実費はどこに頼んでも大きくは変わらず、差が出るのは報酬のほうです。

ただし報酬額は事務所ごとに決められていて、全国の平均を示した公的な統計は確認できませんでした。

比べるときは総額の大小ではなく、相続人が何人でも同額なのか、不動産1件ごとに加算されるのかという数え方を見てください。

本記事では、実費と報酬の分かれ目・見積書で加算されやすい項目・費用を相続人のうち誰が払うのかまで解説します。

相続手続きの費用は実費と専門家報酬に分かれる

手続きを進めると、お金の出口は2種類しかありません。

窓口に払わないと書類が出てこないもの(実費)と、その作業を人に代わってもらうために払うもの(報酬)です。

この2つを分けずに総額だけを見比べると、安いほうを選んだのに手元の出費が増えることがあります。

費目払う先額を決めるもの
戸籍謄本・住民票などの証明書市区町村取り寄せる通数と、何代さかのぼるか
登記事項証明書法務局対象になる不動産の数
登記のときに納める税金(登録免許税)国不動産の評価額をもとにした計算
家庭裁判所への申立て費用家庭裁判所申立ての種類(遺言の検認、相続放棄など)
専門家報酬司法書士・税理士・弁護士など遺産の額と中身、相続人の数、依頼する範囲

実費は依頼先を変えても下がらない

戸籍謄本の手数料や登録免許税は、法令と条例で額が決まっています。

自分で窓口へ行っても、司法書士に頼んでも同じです。

つまり見積書を比べて意味があるのは報酬の行だけで、実費の行が安い事務所というものは存在しません。

逆に、実費が見積書に載っていない場合は「後から別途」になります。

報酬に公的な相場表は無い

報酬額は依頼先が自分で決めていて、全国の平均額を示した公的な統計は確認できませんでした。

そのため「相場より高い」と判断する材料は、他の事務所の見積書しかありません。

同じ範囲・同じ相続人の数・同じ不動産の数で2〜3か所に出してもらうと、はじめて比べられる数字になります。

範囲がずれた見積書を並べても、安いほうが得とは限りません。

どこまでを頼めるかは相続手続き代行はどこに頼む?費用と対応範囲で比べるで解説しています。

相続手続きの費用を動かす4つの変数

見積額の差は、事務所の値付け以上に相続の中身で決まります。依頼する前に、次の4つを自分の家に当てはめて数えておくと、提示された金額の高低を判断できます。

相続人の数と、戸籍をさかのぼる範囲

相続人が誰かを確定させるには、故人の出生から死亡までの戸籍をつなげて集めます。

転籍が多い人ほど請求先の市区町村が増え、取り寄せる通数も増えます。

故人に前の配偶者との間に子がいる場合や、子がおらず兄弟姉妹が相続人になる場合は、たどる戸籍がさらに広がります。

相続人が増えれば、印鑑証明書の収集や連絡の手間も比例して増える計算です。

不動産の数と、どこの法務局の管轄か

相続登記の申請は不動産の所在地を管轄する法務局へ出します。

実家と、離れた土地の畑を持っていれば、申請は2件になります。

報酬を不動産1件ごとに加算する事務所も、1申請あたりで数える事務所もあるため、権利証や固定資産税の納税通知書を見て、筆数を先に数えてください。

相続税の申告が必要かどうか

相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です(相続税法15条/2026年9月時点)。

相続人が3人なら4,800万円で、遺産がこれを超えなければ申告そのものが不要になります。

申告が要るかどうかで税理士報酬の有無が決まるので、費用の総額はここで大きく変わります。

線引きの考え方は相続税は誰にかかる?基礎控除3,600万円が分かれ目になるで解説しています。

期限までに残っている時間

相続放棄と限定承認は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します(民法915条)。

相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。

残り日数が少ないほど並行して作業することになり、書類の取り寄せを郵送でなく代行に回すなど、割高な手段を選ばざるを得なくなります。

期限の数え方は相続手続きの期限一覧|過ぎると損をする5つの手続きで解説しています。

見積書に「別途」と書かれる項目を先に確かめる

追加請求でもめるのは、たいてい最初の見積書に書いていなかった費目です。契約前に、次の3か所を口頭ではなく書面で確認してください。

実費の立て替えと、取得代行の手数料

戸籍を代わりに取り寄せてもらうと、手数料と郵送料の実費に加えて、1通あたりの取得代行料がかかる場合があります。

見積書の「実費別途」がこの代行料を含むのか、窓口手数料だけなのかは、書き方だけでは分かりません。

通数が読めない段階では、上限額か1通あたりの単価を聞いておくと後の請求が読めます。

人数と件数による加算

加算が発生しやすいのは、相続人が一定人数を超えた場合、不動産が複数ある場合、相続人と直接連絡を取ってもらう場合です。

相続税の申告では、土地の数、非上場株式の評価、預金口座の数で加算する例もあります。

基本報酬が安く見えても、加算の単価が高ければ総額は逆転します。

途中で依頼先が変わるとき

遺産の分け方で相続人の意見がまとまらない状態になると、代理して交渉できるのは弁護士だけになります。

司法書士や税理士に登記や申告を頼んでいても、交渉部分は別の依頼になり、報酬の数え方も変わります。

話し合いが平行線になりそうなら、最初の相談の時点でその可能性を伝えておくほうが、途中での組み替えが少なく済みます。

相続手続きの費用は誰が払うのか

費用の負担で行き違いが起きるのは、金額そのものよりも「誰が決めて、誰が払ったか」が共有されていないときです。手続きを引き受けた人が窓口へ通い、実費を財布から出し、あとで清算しようとして話がこじれます。

相続財産から出すか、立て替えて後で清算するか

戸籍の取り寄せや登記の費用は、相続人全員のために使うお金です。

遺産分割の話し合いの中で「これらは遺産から差し引いて残りを分ける」と決めておけば、立て替えた人が損をしません。

ただし故人の口座は死亡が知られた時点で凍結されるため、実際にはいったん誰かが立て替える形になります。

領収書は費目ごとに残し、誰が何に使ったかを一覧にしておいてください。

一方、相続登記の費用は、その不動産を取得する人が負担するのが分かりやすい形です。

相続登記は不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法76条の2)。

2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。

負担を決めないまま放置すると、この期限に間に合わなくなります。

委任する前に見積書を全員へ回す

依頼は1人の名前で行っても、費用は全員に関わります。

契約前に見積書のコピーを相続人へ渡し、依頼する範囲と概算額に異議がないかを確認しておくと、後から「頼んでいない」と言われる余地がなくなります。

お墓や仏壇は相続財産とは別に1人が引き継ぐ扱いで(民法897条)、その維持費は遺産分割の対象外です。

ここを混ぜて話すと、財産の分け方の議論に戻れなくなります。

自分で取れる書類と、任せたほうがいい部分

費用を下げる方法は、実質的に「作業を自分でやる」しかありません。

ただし全部を引き受けると、期限に間に合わないという別の損が出ます。

分け方の目安を持っておいてください。

自分でやっても品質が変わらない作業

次の作業は、時間さえあれば専門知識なしで進められます。

  • 戸籍謄本・住民票・印鑑証明書の請求(郵送でも受け付けています)
  • 固定資産税の納税通知書や権利証をそろえて、不動産の筆数を数えること
  • 金融機関ごとの必要書類の確認と、残高証明書の請求
  • 死亡届や世帯主変更届など、期限の短い届出の提出

死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内、世帯主変更届は世帯に15歳以上の人が2人以上残る場合に14日以内です。

これらは窓口で完結する届出で、外注してもほとんど変わりません。

自分で進める手順は相続手続きは自分でできる?進め方と必要書類を順番に解説で解説しています。

削ると後で費用が増える部分

逆に節約しないほうがいいのは、やり直しが効かない書類です。

遺産分割協議書は相続人の関係と財産の中身で書き方が変わり、ひな型を写すと金融機関や法務局で受け付けられず、全員の押印をもう一度もらい直すことになります。

相続税の申告では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例のように、使えば税額が下がるものの申告が前提になる制度があります。

被相続人が住んでいた宅地は330平方メートルまで評価額を80%減額できますが、適用するには期限内の申告が必要です。

申告そのものを省いて特例を逃すと、報酬を払うより高くつく場合があります。

負担を軽くする公的な給付と控除

相続手続きそのものに補助金はありませんが、支出を戻したり税額を下げたりする制度があります。金額が条例で決まるものは市区町村ごとに違うため、窓口で確認してください。

葬祭費と埋葬料

国民健康保険と後期高齢者医療の加入者が亡くなった場合は葬祭費、健康保険の被保険者が亡くなった場合は埋葬料が支給されます。

健康保険の埋葬料は一律5万円です(健康保険法100条/2026年9月時点)。

国民健康保険の葬祭費は市区町村ごとに額が決められているので、金額はお住まいの市区町村の国民健康保険の窓口で確認してください。

どちらも申請しないと支給されず、請求できる期間にも定めがあります。

実家を売るときに使える控除

相続した空き家を売った場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。

1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。

相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。

全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高で(総務省 住宅・土地統計調査/2023年)、売り先が決まらないまま持ち続ける例が増えています。

売却先の選択肢としては空き家バンクとは?登録の条件と使い方をやさしく解説で登録条件を解説しています。

よくある質問

相続手続きの費用は故人の預金から払えますか

死亡が金融機関に伝わると口座は凍結され、通常の払い出しはできなくなります。

そのため実務では相続人の誰かが立て替え、遺産分割のときに清算する形が多いです。

立て替える人を決めるときは、領収書を残すことと、遺産から差し引くのか各自で負担するのかを先に決めておいてください。

見積もりは何か所から取ればいいですか

公的な相場表が無いため、比較できる材料は他の見積書だけです。

2〜3か所に、相続人の数・不動産の筆数・依頼したい範囲という同じ条件を伝えて出してもらうと、金額の差がどこから来ているか分かります。

範囲が違う見積書を並べても、安いほうが得とは判断できません。

相続人が多いと費用は上がりますか

上がる場合が多いです。

集める戸籍と印鑑証明書の通数が増え、連絡の手間もかかるためで、相続人の人数に応じた加算を設けている事務所もあります。

なお相続税の基礎控除は法定相続人の数が多いほど大きくなるため、税額の面では逆に働きます。

人数が費用と控除の両方に影響することを押さえておいてください。

相続税の申告が要らなければ税理士費用はかかりませんか

遺産が基礎控除以下で、特例を使う必要もないなら申告は不要で、税理士への依頼も要りません。

ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で税額を0円にする場合は、申告そのものが必要です。

基礎控除を少し超えるかどうか微妙な場合は、評価額の判断が入るため税理士に相談する段階になります。

費用を払う余裕がない場合はどうすればいいですか

期限が近い手続きから優先してください。

相続放棄は3か月、相続税の申告は10か月、相続登記は3年という期限があり、過ぎると選択肢が消えるか過料の対象になります。

相続放棄の申述は本人でも家庭裁判所に申し立てられます。

期限内に判断できないときは、その3か月の期間内に家庭裁判所へ伸長を申し立てる道があります。

まとめ

相続手続きの費用は、窓口へ納める実費と依頼先への報酬に分かれ、比べる意味があるのは報酬の行だけです。

その金額は相続人の数・不動産の筆数・相続税の申告が要るかどうか・期限までの残り日数で動きます。

加算の条件と実費の扱いを書面で確認しておけば、提示された額が自分の条件に見合うかを判断できます。

誰が払うかを決めずに1人が立て替え続けると、金額以上に話がこじれます。

依頼する前に見積書を相続人へ回し、遺産から差し引くのかを決めておいてください。

手続きの順番そのものに迷っているなら、相続手続きの全体像|3か月・4か月・10か月の期限を図解で期限から逆算した並べ方を解説しています。

ぜひ本記事の内訳表と4つの変数を手元の見積書と照らして、どの行が自分の条件で増えるのかを確かめてください。

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