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相続手続きは自分でできる?進め方と必要書類を順番に解説

相続手続きは自分でできる?進め方と必要書類を順番に解説

相続手続きで最初に動き出す時計は、死亡届を出した日ではありません。

相続放棄の3か月も、相続税の申告の10か月も、起算点は「自分のために相続の開始があったことを知った時」です。

葬儀と四十九日を済ませてから財産を調べ始めると、3か月のうち半分が過ぎています。

順番どおりに進めれば、多くの工程は自分で終えられます。

止まるのはたいてい、戸籍が1通足りないか、相続人の1人と連絡が取れないか、そのどちらかです。

本記事では、期限から逆算した進め方・戸籍と残高証明の取り寄せ先・窓口で止まる場面・司法書士や税理士に渡す境目を解説します。

相続手続きは死亡届の7日以内に始まり、相続税の申告10か月で一区切り

死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村へ提出します(戸籍法86条)。

実務では葬儀社が代行する場面が多く、ここで止まる人はまずいません。

そのあとに続く手続きは、法律で期限が切られているものと、切られていないものが混ざっています。

先に全体の締切を並べます。

期限手続き持っていく先
7日以内死亡届市区町村
10日以内(厚生年金)/14日以内(国民年金)年金の受給停止年金事務所または市区町村
14日以内世帯主変更届(15歳以上が2人以上残る場合)市区町村
知った時から3か月以内相続放棄・限定承認家庭裁判所
知った日の翌日から4か月以内準確定申告税務署
知った日の翌日から10か月以内相続税の申告・納付税務署
取得を知った日から3年以内相続登記法務局

この表のうち、日付を自分で選べないのが3か月と10か月です。

逆に遺産分割協議そのものには法律上の期限がありません。

ただし相続税がかかる家では、10か月の申告に間に合わせるために協議を先に終える必要が出てきます。

期限の全体像は相続手続きの全体像と3つの期限でも解説しています。

最初に確かめるのは遺言書の有無

遺言書が1通あるかないかで、そのあとの工程がまるごと変わります。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません(民法1004条)。

封がされているものは、開けずにそのまま持ち込みます。

良かれと思って中身を確認してしまうと、相続人の間で「書き換えたのではないか」という疑いが残り、話し合いが進まなくなります。

公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が要りません。

この制度は2020年7月10日に始まり、原本を法務局が保管します。

仏壇や金庫に紙が見当たらなくても、保管制度を使っている可能性は残ります。

預金を動かす前に、放棄するかどうかを考える

相続放棄を検討する余地があるなら、故人の口座から引き出したり、支払いに充てたりしないでください。

相続財産を処分すると単純承認したものとみなされ、あとから放棄できなくなります。

借金の有無がはっきりしないうちは、入出金を止めておきます。

放棄の3か月は、亡くなった日からではなく、自分が相続人だと知った時から数えます。

疎遠な親族の相続で、債権者からの通知で初めて知ったというケースでは、通知が届いた時点が起算日です。

財産の調査が終わらないまま3か月が近づいたときは、期間内に家庭裁判所へ伸長を申し立てられます。

相続手続きの書類は、戸籍・残高証明・登記事項証明書の3タイプ

銀行でも法務局でも税務署でも、聞かれることは同じです。

誰が相続人で、財産がいくらあって、どう分けたのか。

この3点を紙で示すために、書類を集めます。

窓口ごとに求められるものは違いますが、土台になるのは次の書類です。

亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍

相続人を確定するために、生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべてつなげます。

最後の本籍地で除籍謄本を取り、そこに「◯年◯月◯日、△△市から転籍」と書かれていれば、前の本籍地へ請求します。

結婚や法改正のたびに戸籍は作り直されているため、1通では足りません。

古いものは改製原戸籍(かいせいげんこせき)という名前で出てきます。

手数料と発行までの日数は市区町村で違うので、請求先の窓口で確認してください。

郵送で請求する場合は、返信用封筒と定額小為替を同封する自治体が多く、往復で1〜2週間みておくと予定が立てやすくなります。

転籍を何度も繰り返している人だと、5通、6通と重なることも起こり得ます。

相続人全員の戸籍謄本と印鑑登録証明書

相続人側も、現在の戸籍謄本を1通ずつ用意します。

遺産分割協議書に実印を押すため、印鑑登録証明書もあわせて取得します。

印鑑登録をしていない相続人がいる場合は、その人の住民登録がある市区町村で登録から始めることになります。

兄弟が遠方に住んでいると、この段階で数週間かかります。誰が何を取るかを最初に割り振っておくと、同じ書類を2人で取ってしまう無駄が減ります。

預貯金の残高証明書は死亡日時点で出してもらう

通帳の最終残高ではなく、亡くなった日時点の残高を証明する書類を金融機関に発行してもらいます。

相続税の計算にも、遺産分割の話し合いにも、この数字を使います。

定期預金がある場合は、経過利息の計算書も一緒に頼んでおくと二度手間になりません。

どの銀行に口座があるか分からないときは、通帳やキャッシュカード、郵便物、確定申告の控えを手がかりに探します。ネット銀行はカードも通帳も無いことがあるため、メールの受信箱やスマートフォンのアプリも確認対象です。

不動産は登記事項証明書と固定資産評価証明書

実家や土地があるなら、法務局で登記事項証明書を取り、名義が誰になっているかを甲区(所有権に関する事項)で確かめます。

ここが親ではなく祖父のままだった場合、祖父の相続からやり直すことになり、相続人の数が一気に増えます。

固定資産評価証明書は、登記の登録免許税や相続税評価額の計算に使う書類で、不動産がある市区町村の窓口で取得します。

名寄帳(なよせちょう)を一緒に請求すると、その市区町村内にある物件の取りこぼしを防げます。

窓口は市区町村・年金事務所・法務局・金融機関に分かれる

集めた書類の持ち込み先は1か所ではありません。

しかも、行ける人と行ける時間が窓口ごとに違います。

ここを把握しないまま有給を取ると、1日で回るつもりが2日、3日と伸びます。

市区町村の窓口は、原則として平日の日中だけです。

年金の受給停止は年金事務所または市区町村で、厚生年金が10日以内、国民年金が14日以内と期限が別々に決まっています。

日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は届出そのものが省略される場合があるので、事前に年金事務所へ電話で確認してください。

金融機関は、相続人全員の署名と実印を求めるのが一般的です。

所定の用紙は各行で様式が違い、郵送でやり取りできる銀行もあれば、代表相続人の来店を求める銀行もあります。

法務局への相続登記は、窓口だけでなく郵送やオンラインでも申請できます。

遠方の実家を相続した場合でも、現地まで行かずに済むことがあります。

法律の期限と、実務で動くべき時期は別

3か月・4か月・10か月は法律の締切です。

実際に手を動かす時期は、そこから逆算して決めます。

戸籍集めに1か月、財産の洗い出しに1か月かかると見込むなら、遺産分割協議を始められるのは2か月目からになります。

放棄を考えるなら、この2か月のうちに借金の有無を調べ終える計算です。

相続税がかかりそうな場合はもっと手前で動きます。

配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も、適用するには申告が必要で、申告には誰が何を取得したかが決まっていなければなりません。

10か月の直前に協議がまとまっても、税理士が計算する時間が残りません。

目安として、8か月を協議の締切に置くと納付までの段取りが組めます。

どの手続きがいつまでかは過ぎると損をする相続手続きの期限で一覧にしています。

期限のない手続きにも、放置の代償があります。

相続登記は2024年4月1日から義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければ、正当な理由なく怠った場合に10万円以下の過料の対象になります。

施行前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。

相続手続きが止まるのは、戸籍の欠落と遺産分割協議の2か所

止まる場所はだいたい決まっています。順調に進んでいたのに急に足踏みになるとしたら、次のどれかに当たっているはずです。

戸籍が1通足りないだけで、銀行も法務局も受け付けない

相続人が確定していない状態では、どの窓口も手続きを進められません。

つながりが切れる原因として多いのは、転籍を何度も繰り返しているケースと、古い戸籍が旧字体の手書きで判読しにくいケースです。

読めないときは、請求先の市区町村の戸籍担当に「この記載の次はどこへ請求すればよいか」と尋ねると、たどり方を教えてもらえます。

面識のない相続人が出てくることもあります。

前の配偶者との間に子がいた、認知した子がいた、という事実が戸籍から判明する場合です。

その人を外して作った遺産分割協議書は無効なので、連絡先を調べて話し合いに加わってもらうところからやり直します。

連絡の取れない相続人がいると、協議が成立しない

遺産分割協議は相続人全員の合意で成立します。

1人でも欠けると、銀行の払い戻しも不動産の名義変更も進みません。

連絡先が分からない相続人がいる場合は、戸籍の附票で住所をたどるのが入口です。

行方が分からないまま何年も経っているなら、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。

認知症などで判断能力が低下している相続人がいるときも、成年後見人を立てないと協議ができません。

いずれも家庭裁判所を通す手続きで、数か月単位の時間がかかります。

捨ててしまうと手続きが止まるもの

実家の片づけを先に進めてしまい、必要な紙を処分してしまう例があります。次のものは、見つけた時点でまとめて1か所に保管してください。

  • 通帳・キャッシュカード
  • 保険証券・年金手帳
  • 不動産の権利証と登記識別情報
  • 遺言書
  • 印鑑と印鑑登録証
  • 貸金庫の鍵と契約書
  • 有価証券・借用書

片づけを業者に頼むなら、家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が、買い取るには都道府県公安委員会の古物商許可が要ります。

産業廃棄物の許可だけでは家庭ごみを運べません。

「無料回収」を名乗って回ってくるトラックは、この許可を持たないことが多いという点は頭に入れておいてください。

司法書士・税理士・弁護士に渡す境目は、不動産と申告と対立の有無

戸籍集めも銀行の手続きも、時間さえかければ自分でできます。

全部を丸ごと外注する必要はありません。

判断が分かれるのは次の3つの場面です。

不動産の名義変更でつまずいたら司法書士

相続人が数人で、対象が実家1件だけなら、法務局の相談窓口を使いながら自分で登記申請している人もいます。

一方で、名義が祖父のままだった、共有持分が細かく分かれている、遠方に複数の土地がある、といった事情が重なると、必要な戸籍も申請書の書き方も複雑になります。

そこまで来たら司法書士に渡したほうが、過料の対象になる3年の期限を踏み外さずに済みます。

基礎控除を超えそうなら税理士

相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。

相続人が3人なら4,800万円になります。

これを下回れば申告そのものが不要ですが、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額をゼロにする場合は申告が要ります。

自宅の土地の評価額しだいで結論が変わるので、不動産を含めて基礎控除に近い規模なら、早い段階で税理士に見てもらう場面です。

基礎控除の考え方は相続税は誰にかかるのかの判定で解説しています。

相続人どうしで主張が食い違っているなら弁護士

「実家に住み続けたい」「売って分けたい」で意見が割れたまま、当事者だけで話し合いを重ねても着地しないことがあります。

代理人を立てる段階か、その前に資料を揃えて話し合い直すかは、対立の深さで変わります。

少なくとも、査定額・預金の残高証明・固定資産税の年額の3点を机の上に出さないうちは、金額の話が感情の話にすり替わります。

誰にいくら払うのかは専門家別の報酬相場で、窓口ごと丸ごと任せる選択肢は相続手続き代行の対応範囲で解説しています。

よくある質問

相続手続きは全部自分でできますか

戸籍の収集、金融機関の解約、年金や保険の届出は、相続人の数が少なく対立もなければ自分で進められます。

判断が難しくなるのは、相続税の申告が必要な場合と、相続人の間で主張が食い違っている場合です。

不動産の登記は自分で申請する人もいますが、名義が古い世代のままのときは司法書士に相談する段階になります。

戸籍はどこまでさかのぼって集めますか

亡くなった人の出生から死亡までが途切れないところまでです。

最後の本籍地で除籍謄本を取り、記載されている前の本籍地へ順に請求していきます。

子がいないケースでは親や兄弟姉妹まで相続人が広がるため、集める範囲がさらに増えます。

手数料や郵送請求の方法は市区町村で違うので、窓口で確認してください。

相続放棄の3か月に間に合いそうにありません

財産や借金の調査が終わらないときは、3か月の期間内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます。

期限が過ぎてからでは受け付けられないため、間に合わないと分かった時点で動いてください。

なお3か月は亡くなった日ではなく、自分が相続人だと知った時から数えます。

相続税がかからなければ、何もしなくていいですか

申告は不要でも、名義変更は残ります。

相続登記は取得を知った日から3年以内が期限で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。

預貯金や株式の名義も、放置すれば次の世代でさらに相続人が増え、必要な戸籍と同意が膨らみます。

故人の口座から葬儀費用を引き出しても大丈夫ですか

相続財産を処分したとみなされると、相続放棄ができなくなります。

借金の有無がはっきりしないうちは、口座を動かさずに置いてください。

どうしても支払いに充てる必要がある場合は、引き出す前に司法書士や弁護士に事情を伝えて確認する場面です。

まとめ

相続手続きは、期限のある順に並べ替えると迷いが減ります。7日の死亡届から始まり、3か月の相続放棄、4か月の準確定申告、10か月の相続税申告、3年の相続登記という骨格で、そのうち3か月と10か月だけは起算日が「知った時」である点が要注意です。

実際に足を止めるのは、制度の難しさよりも戸籍の欠落と相続人の不在です。

書類を集める役割を最初に割り振り、不動産と税額という2つの分かれ目だけ専門家に渡せば、残りは自分の手で終えられます。

ぜひ本記事の期限表と書類一覧を手元に置いて、今週取り寄せる1通目の戸籍から始めてください。

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