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相続手続きの全体像|3か月・4か月・10か月の期限を図解

相続手続きの全体像|3か月・4か月・10か月の期限を図解

役所と銀行を回っていると、窓口ごとに違う期限を言われます。

相続の手続きで法律が切っている大きな期限は、相続放棄の3か月、準確定申告の4か月、相続税の申告と納付の10か月、それに相続登記の3年です。

このうち3か月と10か月を過ぎると、選べる手段そのものが消えます。

しかも起算日は亡くなった日ではなく、相続の開始を知った日です。

四十九日と納骨で1か月半ほど過ぎるため、財産の調査に使える時間は残りから数えることになります。

本記事では、亡くなった直後の届出・3か月と10か月の数え方・相続人と財産の確定・専門家に渡す境目を解説します。

相続の手続きは3か月・4か月・10か月から逆算して並べる

本記事で触れる制度の内容は2026年9月時点のものです。

期限の考え方は、まず全部を一覧にして、どれが自分に関係するかを消していく作業から始まります。

下の表のうち、死亡届から世帯主変更届までは全員に関係します。

準確定申告は故人に事業所得や一定の年金収入があった場合だけ、相続登記は不動産がある場合だけです。

手続き期限数え始める日
死亡届7日以内死亡の事実を知った日
年金の受給停止厚生年金10日以内/国民年金14日以内死亡日
世帯主変更届14日以内死亡日
相続放棄・限定承認3か月以内自己のために相続の開始があったことを知った時
準確定申告4か月以内相続の開始を知った日の翌日
相続税の申告・納付10か月以内相続の開始を知った日の翌日
相続登記3年以内不動産を取得したことを知った日
遺留分侵害額請求1年(相続開始から10年で時効)相続の開始と侵害を知った時

期限の長さではなく、準備にかかる日数で順番が決まる

3か月と10か月を並べると、放棄の判断が先に来ます。

ところが、放棄すべきかどうかは借金を含めた財産の全体が分からないと決められません。

財産の全体を知るには、まず相続人を戸籍で確定し、各銀行に残高証明を出してもらい、不動産の名義を法務局で確かめる作業が要ります。

ここに1か月以上かかるのが普通です。

そのため、実際の動きはこうなります。

最初の2週間で役所の届出を片づけ、次の1か月で相続人と財産を洗い出し、その結果を見て3か月の放棄を判断します。

放棄しないと決まってから、遺産分割の話し合いと10か月の申告準備に移ります。

各手続きの期限をもう少し細かく確認したい場合は、相続手続きの期限一覧で解説しています。

亡くなった直後の7日・10日・14日で終わる届出

死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出します(戸籍法86条)。

出す先は死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村で、実務では葬儀社が代行することもあります。

火葬と埋葬は、死亡の時から24時間を経過した後でなければできません(墓地、埋葬等に関する法律3条)。

年金は、放置すると受け取りすぎた分の返還が発生します。

厚生年金は死亡から10日以内、国民年金は14日以内に、年金事務所または市区町村へ届け出てください。

世帯に15歳以上の人が2人以上残る場合は、14日以内に世帯主変更届も要ります(住民基本台帳法25条)。

健康保険証と介護保険証の返却も同じ窓口で済むことが多いため、1回で回れるようまとめて持っていくと往復が減ります。

葬祭費・埋葬料は申請しないと支給されない

故人が国民健康保険または後期高齢者医療に加入していた場合は葬祭費、健康保険の被保険者だった場合は埋葬料が支給されます。

健康保険の埋葬料は一律5万円です(健康保険法100条)。

国民健康保険の葬祭費は市区町村の条例で額が決まるため、金額はお住まいの市区町村の窓口で確認してください。

どちらも自動では振り込まれず、申請が要ります。

相続放棄の3か月は「亡くなった日」から数えない

相続放棄と限定承認の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です(民法915条)。

亡くなった日ではありません。

疎遠だった親族の相続人になったことを後から通知で知った場合、その通知を受けた時が起算日になります。

ここで混ざりやすいのが、家庭裁判所への申述と、話し合いで取り分をゼロにすることの違いです。

放棄は家庭裁判所に申し立てて認められる手続きで、これによってプラスの財産も借金も引き継がなくなります。

遺産分割協議で「自分は何も受け取らない」と決めただけでは、債権者に対する返済義務は残ります。

借金を引き継がないための方法は放棄か限定承認だけです。

詳しい要件は相続放棄の条件と3か月の期限で解説しています。

3か月で決められないときは期間の伸長を申し立てる

財産の調査が終わらないまま3か月が近づいた場合は、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます。期限を過ぎてからでは申し立てられないため、間に合わないと分かった時点で動くことになります。

放棄を検討している間、相続財産を使うと単純承認したものとみなされて放棄できなくなります。

故人の口座からの引き落としや入出金は止めておきます。

なお、放棄しても墓・仏壇・位牌といった祭祀(さいし)財産を引き継ぐことはできます(民法897条)。

祭祀財産は相続財産とは別枠の扱いです。

相続税の基礎控除を計算するときの法定相続人の数にも、放棄した人は含めます(相続税法15条2項)。

準確定申告の4か月と、相続税の申告10か月で使う数字

準確定申告は、故人の1月1日から死亡日までの所得を相続人が申告する手続きで、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です(所得税法124条・125条)。

全員に必要なわけではなく、故人に事業所得があった場合や、一定の年金収入があった場合に出てきます。

医療費が多かった年は還付になることもあります。

相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条)。

判断の起点になるのは基礎控除で、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します(相続税法15条)。

相続人が3人なら4,800万円です。

2015年1月1日より前は5,000万円+1,000万円×人数だったため、古い本や古い記事の数字と食い違います。

基礎控除以下なら申告は不要、特例で0円にするなら申告が必要

財産の総額が基礎控除を下回れば、申告そのものが要りません。

一方で、次の2つの特例は申告が適用の条件になっています。

使って税額が0円になる場合も、10か月以内に申告書を出すことになります。

  • 配偶者の税額軽減|配偶者が取得した遺産のうち、法定相続分か1億6,000万円のいずれか多い額までは相続税がかかりません(相続税法19条の2)
  • 小規模宅地等の特例|被相続人が住んでいた宅地は330平方メートルまで評価額を80%減額できます(租税特別措置法69条の4)。同居していなかった親族が使う場合は「家なき子」の要件があります

実家が財産の大半というケースでは、この特例を使えるかどうかで結論がひっくり返ります。

自分の家が申告の要る側なのかを先に切り分けたい場合は、相続税がかかる人の条件と基礎控除で解説しています。

個別の税額判定は税理士に相談する段階です。

相続登記の3年は、2024年4月より前の相続にも及ぶ

不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の2、2024年4月1日施行)。

正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。

この義務は施行日以降の相続だけの話ではありません。

2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。

祖父の代から名義が変わっていない土地も含まれます。

名義が誰になっているかは、法務局で登記事項証明書を取り、甲区(所有権に関する事項)を見れば分かります。祖父の名義のままなら、祖父の相続人全員の関係を戸籍でたどる作業が先に来るため、必要な戸籍の通数も日数も増えます。

固定資産税が上がるのは、指定と勧告を経たあと

全国の空き家は約900万戸で、空き家率は13.8%と過去最高になりました(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。

放置した家について、固定資産税が自動的に6倍になるわけではありません。

倒壊のおそれや衛生上有害な状態にあると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがある状態だと「管理不全空家」に指定され、勧告を受けた段階で住宅用地の特例(6分の1)が外れます(空家等対策の推進に関する特別措置法、2023年12月改正施行)。

売る方向で考える場合は、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除があります(租税特別措置法35条3項)。

1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、対象は2027年12月31日までの譲渡です。

相続人が3人以上のときは、2024年1月1日以降の譲渡で1人あたり2,000万円に下がります。

売るか貸すかを含めて選択肢を広げたい場合は、空き家バンクの登録条件と使い方で解説しています。

相続人の確定と財産目録づくりが、すべての手続きの土台になる

銀行の解約も不動産の登記も遺産分割協議も、相続人が誰かが確定していないと進みません。

配偶者は常に相続人で、第1順位は子、子がいなければ第2順位の直系尊属、それもいなければ第3順位の兄弟姉妹という順です(民法887条〜890条)。

前の配偶者との子や認知した子がいる可能性があるため、思い込みではなく戸籍で確かめる必要があります。

集める先は書類ごとに違います。窓口を間違えると往復が増えるだけなので、最初に振り分けておくと動きが速くなります。

確かめたいこと取り寄せる書類窓口
相続人は誰か故人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本本籍地の市区町村
不動産の名義と地番登記事項証明書、固定資産税の納税通知書法務局/市区町村
預金の額残高証明書(死亡日時点)各金融機関
借金の有無信用情報の開示、借用書、督促状信用情報機関/自宅の書類

家の片づけを始める前に探しておくもの

遺品整理を先に進めてしまうと、手続きに必要な書類ごと処分してしまうことがあります。次のものは、捨てる前に探して1か所にまとめてください。

  • 通帳・キャッシュカード
  • 保険証券
  • 年金手帳
  • 不動産の権利証・登記識別情報
  • 遺言書
  • 印鑑と印鑑登録証
  • 貸金庫の鍵と契約書
  • 有価証券・借用書

どの順番で何を集めるか、書類の具体的な取り寄せ方は相続手続きの進め方と必要書類で解説しています。

遺言書の有無で、遺産分割協議が要るかどうかが変わる

遺言書があれば、原則としてその内容に従って財産が分けられます。

無ければ相続人全員での遺産分割協議になり、協議書には全員の署名と実印が必要です。

1人でも欠けると銀行も法務局も受け付けません。

まず遺言書があるかどうかを確かめるところから始まります。

見つかった遺言書は、種類によって扱いが分かれます。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所の検認が要るため、封を開けずに持ち込んでください(民法1004条)。

公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が不要です。

すべての遺言書が開封禁止というわけではありません。

生前に備えるなら保管制度と財産目録の緩和を使う

自筆証書遺言書保管制度は2020年7月10日に始まった仕組みで、法務局が原本を保管し、検認が不要になります。

保管申請の手数料は1件3,900円です(法務省 遺言書保管所/2026年9月時点)。

あわせて2019年1月13日から、自筆証書遺言に添付する財産目録はパソコン作成や通帳のコピーでよくなりました(民法968条2項)。

各ページに署名押印が要る点と、本文は全文自筆のままという点は変わっていません。

なお、遺言の内容が一部の相続人に極端に偏っている場合、最低限の取り分を金銭で請求する遺留分侵害額請求ができます。

期限は相続の開始と侵害を知った時から1年、相続開始から10年で時効です(民法1048条)。

10か月の申告期限とは別に動く時計になります。

兄弟で話がこじれる前に、机の上へ出す3つの数字

実家をどうするかで意見が割れるのは、相続人の誰も「いくらで売れるのか」「持ち続けるといくらかかるのか」を知らないまま話しているからです。

数字が無い状態では、住み続けたい側は高く、売りたい側は安く見積もります。

金額の話が感情の話に置き換わるのはそこからです。

話し合いの前に用意するのは次の3つです。

  • 不動産会社の査定額(できれば2社以上)
  • 固定資産税と都市計画税の年額(納税通知書に載っています)
  • 預金の残高証明書と、負債の額

この3つが揃うと、「売って分ける」「1人が住んで代償金を払う」「共有のまま持つ」のどれを選んでも手取りがいくらになるか、その場で比べられます。

売却代金を分ける方法を換価分割、1人が現物を取って他の相続人に金銭を渡す方法を代償分割といい、共有名義のまま残す形はいちばん手間が少なく見えますが、次の相続で相続人がさらに増えます。

共有者が増えるほど、売るときに全員の同意が要るため動かせなくなります。

遺産分割協議そのものに法律上の期限はありません。

ただし、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は申告が適用の条件になっているため、10か月の申告期限が実質的な区切りになります。

分割が決まらない状態での扱いは個別事情によって変わるので、税理士に確認してください。

自分でできる相続手続きと、専門家に渡す境目

全部を外注する必要はありません。

役所の届出と、戸籍や登記事項証明書の取り寄せは、平日に窓口へ行ければ自分で済みます。

金融機関の解約も、相続人が少なく遺言書があるケースなら書類を揃えて持ち込むだけです。

手間はかかりますが、難しい判断は入りません。

逆に、次のような場面は専門家の領域になります。

場面渡す相手
不動産の名義変更、数次相続で相続人が多い司法書士
基礎控除を超えそう、特例の適用を判断したい税理士
相続人の間で話がまとまらない、連絡が取れない相続人がいる弁護士
借金の額が分からず放棄か限定承認かを選べない弁護士・司法書士

費用は依頼する範囲と財産の額で変わります。

同じ「相続手続き一式」でも、戸籍の取り寄せだけを頼むのか、協議書の作成と登記まで含めるのかで金額が動きます。

専門家ごとの報酬の考え方は相続手続きの費用と専門家別の報酬相場で、窓口をまとめて任せる形の比較は相続手続き代行の費用と対応範囲で解説しています。

見積もりを取るときは、実費(戸籍や登記の手数料)が別建てか含みかを確認しておくと、後から金額が変わりにくくなります。

よくある質問

相続の手続きは何から始めればいいですか

死亡届と年金の受給停止、世帯主変更届といった期限の短い届出を先に片づけます。

その後に相続人を戸籍で確定し、預金と不動産、借金を洗い出します。

放棄を判断するにも相続税の見通しを立てるにも、財産の全体像が先に必要になるためです。

相続放棄の3か月に間に合わないときはどうなりますか

3か月の期間内であれば、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます。

期限を過ぎてからでは申し立てられません。

財産の調査が終わらないと分かった時点で、家庭裁判所に確認してください。

相続税がかからなければ、何もしなくていいのでしょうか

財産の総額が基礎控除以下なら相続税の申告は不要です。

ただし相続登記の義務は税額とは無関係で、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請することになっています。

銀行口座の解約や名義変更も、申告の有無とは別に必要です。

相続人の1人が話し合いに応じないときはどうなりますか

遺産分割協議は相続人全員の合意が要るため、1人でも欠けると協議書が成立しません。

話し合いで折り合わない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停という手続きがあります。

連絡が取れない相続人がいるケースも含め、弁護士に相談する段階です。

実家の名義が祖父のままでした。どうすればいいですか

祖父の相続が済んでいない状態なので、祖父の相続人全員をたどってから、順に名義を移していく形になります。

世代をまたぐと相続人の数が増え、必要な戸籍も増えます。

2024年4月1日より前に相続した不動産の登記期限は2027年3月31日なので、早めに司法書士へ相談してください。

遺品整理はいつ始めればいいですか

通帳・保険証券・権利証・遺言書といった手続きに要る書類を回収してからです。

家財を処分する業者を選ぶときは、一般廃棄物収集運搬業の許可(市区町村)と、買い取りを伴うなら古物商許可(都道府県公安委員会)の有無を確認してください。

産業廃棄物の許可だけでは家庭から出た不用品を運べません。

準確定申告は誰でも必要なのですか

全員に必要な手続きではありません。

故人に事業所得があった場合や、一定の年金収入があった場合に出てきます。

期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内で、相続税の申告より先に来ます。

該当するかどうか分からないときは、故人の前年の確定申告書を探すと判断の材料になります。

まとめ

相続の手続きは、3か月の相続放棄を先に判断し、次に4か月の準確定申告が必要かを確かめ、10か月の申告期限に向けて遺産分割を進める流れになります。

どの期限も亡くなった日ではなく、相続の開始を知った日から数えます。

そして放棄の判断にも申告の判断にも、相続人の確定と財産の洗い出しが先に要ります。

実家の話で兄弟の意見が割れたときは、査定額と固定資産税の年額、預金の残高という数字を先に机へ出してください。ぜひ本記事の期限一覧の表と、専門家に渡す場面の表を手元に置いて、今日からどの順番で動くかを決めてみてください。

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