SHARE:

相続手続き代行はどこに頼む?費用と対応範囲で比べる

相続手続き代行はどこに頼む?費用と対応範囲で比べる

銀行の窓口では「遺産整理業務」の案内を渡され、法務局では司法書士、税務署では税理士を紹介されます。相続の手続きは窓口ごとに担当が分かれていて、最初から最後まで一か所で引き受けられる相手は限られます。

しかも相続放棄は自分が相続人だと知った時から3か月、相続税の申告と納付は相続の開始を知った日の翌日から10か月で期限が来ます。依頼先を探しているあいだも、この時計は止まりません。

本記事では、依頼先ごとに引き受けられる範囲・代行費用が何で決まるか・契約前に確かめる書面を解説します。

相続手続きの代行先が決まらないのは、窓口と資格で担当が分かれているからです

「相続手続き 代行 おすすめ」で調べても答えが1つに絞れないのは、読者の調べ方が悪いからではありません。相続の手続きは十数種類あり、提出先も、引き受けられる資格も、それぞれ違います。

手続きごとに提出先と期限が別々に決まっている

死亡届は市区町村、年金の受給停止は年金事務所、預金の解約は金融機関ごと、不動産の名義は法務局、相続税は税務署です。

同じ「相続の手続き」という言葉でくくられていても、実際には別の役所に別の書類を出す作業が並んでいます。

窓口が分かれているぶん、まとめて任せられる相手を探すと、その相手はどこかを外部に投げることになります。

引き受けられる仕事が資格で区切られている

不動産の登記申請を代理できるのは司法書士(と弁護士)です。

相続税の申告書を作成するのは税理士、他の相続人との交渉や家庭裁判所での調停を代理できるのは弁護士だけです。

行政書士は遺産分割協議書などの書類作成を扱いますが、登記申請と税務申告、それに代理交渉はできません。

資格を持たない代行会社が法律事務に踏み込めば、非弁行為として法律に触れます。

「全部お任せください」という説明を聞いたときは、どこを自社で行い、どこを別の士業に回すのかを聞いてください。

「遺産整理」「相続手続き代行」という呼び名から中身は分からない

サービス名は法律で決まっていません。

信託銀行が「遺産整理業務」と呼ぶものと、司法書士事務所の「相続手続きパック」と、士業でない会社の「相続手続き代行」は、名前が似ていても引き受ける範囲がまったく違います。

比べるときに見るのは名称ではなく、契約書に並んだ業務の一覧です。

期限から逆算すると、相続手続きの代行を頼む順番が決まります

依頼先を選ぶ前に、自分の残り時間を確かめてください。相続の期限で怖いのは、過ぎたら取り返せないものが混じっている点です。

手続き期限起算日と窓口
死亡届7日以内死亡の事実を知った日から/死亡地・本籍地・届出人の所在地の市区町村
年金の受給停止厚生年金は10日、国民年金は14日以内死亡から/年金事務所または市区町村
世帯主変更届14日以内死亡から(15歳以上が2人以上残る場合)/市区町村
相続放棄・限定承認3か月以内自分のために相続の開始があったことを知った時から/家庭裁判所
準確定申告4か月以内相続の開始を知った日の翌日から/税務署
相続税の申告・納付10か月以内相続の開始を知った日の翌日から/税務署
相続登記3年以内不動産を取得したことを知った日から/法務局
遺留分侵害額請求1年相続の開始と侵害を知った時から(相続開始から10年で時効)

借金の有無が分からないなら、3か月の判断が最優先

相続放棄の3か月は、亡くなった日からではなく「自分が相続人だと知った時」から数えます。

葬儀と四十九日を済ませてから調べ始めると、判断に使える時間は1か月半ほどです。

借入や保証の有無が調べきれないときは、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます。

この局面で必要なのは手続きの代行ではなく、放棄と限定承認のどちらを選ぶかという判断の相談です。

相続税がかかりそうなら、10か月の前半で税理士に会う

相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です(相続税法15条)。

相続人が3人なら4,800万円で、これを超えなければ申告そのものが要りません。

注意したいのは、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で税額が0円になる場合は、申告しないと適用を受けられないという点です。

財産の評価に時間がかかる不動産や非上場株式があるなら、10か月の後半に駆け込むと選択肢が減ります。

誰にかかるのかの線引きは相続税の基礎控除で解説しています。

相続登記は3年、2024年3月までの相続にも期限がある

2024年4月1日から、不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務になりました。

正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。

それ以前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。

「親の代からずっと名義を変えていない土地がある」なら、ここが自分の宿題になります。

もめているか・不動産があるか・相続税がかかるかで依頼先が変わります

依頼先は好みで選ぶものではなく、自分の状況で決まります。

次の表で、どの列に当てはまるかを確かめてください。

複数に当てはまるなら、上の行が優先です。

自分の状況先に相談する相手その相手でなければならない理由
連絡の取れない相続人がいる、取り分で意見が割れている弁護士他の相続人との交渉や調停を代理できるのは弁護士だけです
借金や保証の有無が分からず、放棄を検討している弁護士・司法書士3か月以内の申述と、伸長の申立てが必要になります
実家や農地など不動産がある司法書士登記申請の代理と、3年の義務への対応を任せられます
財産の合計が基礎控除を超えそう税理士申告書の作成と特例の適用判断は税理士の仕事です
争いはなく、書類作成と役所回りを減らしたい行政書士・司法書士戸籍の収集や協議書の作成を引き受けてもらえます
金融機関の口座数が多く、平日に動く時間がない信託銀行・銀行の遺産整理業務全体の取りまとめが中心で、登記と申告は提携士業へ回ります

兄弟と話がついていないうちは、代行会社に頼んでも進みません

誰が何を取るかが決まらないと、預金の解約も不動産の名義変更も動きません。

遺産分割協議書に相続人全員の署名と押印が要るためです。

この段階で書類作成の代行を頼んでも、判が揃うまで書類は止まったままになります。

兄弟に切り出す前に机の上へ出すのは、預金の残高証明と、実家の査定額、それに固定資産税の年額です。

金額を先に共有しないと、住み続けたい側と売りたい側で前提の数字が違ったまま話が進みます。

自分で回せるかどうかの分かれ目は、相続人の数と口座の数

相続人が配偶者と子だけで、財産が預金と自宅、金融機関が1〜2行なら、平日に動ける人であれば自力で終えられる範囲です。

逆に、兄弟姉妹が相続人になるケースや、代襲相続で相続人が枝分かれしているケースでは、取り寄せる戸籍が一気に増えます。

どこから外注するか迷うなら、専門家ごとの見極め方を相続に強い専門家の選び方で解説しています。

相続手続き代行の対応範囲を、司法書士・税理士・弁護士・銀行で比べる

同じ「代行」でも、引き受けられる中心の仕事と、法律上できないことが決まっています。ここを知らずに1社だけ回ると、後から別の窓口を探し直すことになります。

依頼先中心になる仕事引き受けられないこと
司法書士相続登記、戸籍の収集、遺産分割協議書の作成、家庭裁判所への書類作成相続税の申告書の作成、相続人同士の交渉の代理
税理士相続税の申告、準確定申告、財産評価登記申請、交渉の代理
弁護士相続人間の交渉、遺産分割調停、遺留分侵害額請求相続税の申告書の作成は税理士の領域として分担するのが一般的です
行政書士遺産分割協議書などの書類作成、戸籍の収集、自動車の名義変更登記申請、税務申告、交渉の代理
信託銀行・銀行の遺産整理業務財産目録の作成、金融資産の名義変更、全体の進行管理登記と申告は提携する司法書士・税理士へ再委託されます
士業でない代行会社戸籍などの取り寄せ代行、書類の記入補助、役所への同行法律事務全般(違法な業務範囲に踏み込む例があります)

ワンストップをうたう事務所は、内部に誰がいるかで中身が変わる

司法書士法人と税理士法人が同じ看板を掲げているグループなら、登記と申告を一つの窓口で完結できます。

一方、事務所内に税理士がいない場合は、申告だけ外部に回り、その報酬は別に発生します。

「うちで全部できます」という説明を受けたら、登記の申請人は誰か、申告書に署名するのはどの税理士かを聞いてください。

答えられない相手に全体を預けると、途中で分解します。

もめた瞬間に、弁護士以外は手が止まります

依頼した時点では話がまとまっていても、協議の途中で1人が署名を拒めば、そこから先は交渉になります。

司法書士や税理士は、相続人の一方に付いて他方と交渉することができません。

全員から同じ内容の委任を受けて中立に手続きを進める立場だからです。

この構造上、対立が表に出た段階で依頼先を替える必要が出てきます。

相続手続き代行の費用は、財産の件数と再委託の有無で変わります

報酬の総額を一律で示せる手続きではありません。同じ「代行一式」でも、次の要素が違えば見積書の数字は動きます。

  • 金融機関と口座の数(1行ごとに解約手続きが発生します)
  • 不動産の個数と所在する法務局の管轄
  • 相続人の人数と、取り寄せる戸籍の量(兄弟姉妹相続や代襲相続は増えます)
  • 遺産分割協議書の作成を含むか、清書だけか
  • 登記と相続税申告を再委託するか、内部で行うか
  • 登録免許税や証明書の発行手数料といった実費を含むか

見積書で最初に見るのは、遺産総額に対する割合か、件数の積み上げか

報酬の決め方には、遺産総額の何パーセントとする形と、手続き1件ごとに単価を積む形があります。

前者は財産が大きいほど負担が重くなり、後者は口座や不動産の数が多いほど膨らみます。

預金が中心で口座が2つなら積み上げ型のほうが安く収まりやすく、逆に細かい手続きが十数件並ぶなら割合型が読みやすくなります。

どちらの方式かを確かめないまま2社の総額だけを比べても、範囲が違うので比較になりません。

追加料金が出る条件を、契約前に文字で確認する

後から増えやすいのは、相続人が新たに判明した場合の戸籍追加、相続人の一部が遠方で郵送のやり取りが増えた場合、不動産の未登記部分が出てきた場合です。

「基本料金に含む範囲」と「別途見積りになる事由」が書き分けられている見積書なら、少なくとも増える理由が事前に分かります。

税理士報酬の目安と見極め方は相続税に強い税理士の選び方で解説しています。

口コミと無料相談だけで選ぶと外しやすい|契約前に確かめる6項目

よく勧められるのに、この分野では判断材料になりにくい選び方があります。

  • 口コミの点数で決める(相続は一人が一度しか経験しないため、他社と比べた評価がほとんどありません)
  • 「相続専門」の表示を基準にする(この表示に資格要件はありません)
  • 無料相談を1件だけ受けて即決する(自分の案件のどこが難所なのかが分からないまま契約になります)
  • 一括見積りで最安を選ぶ(対応範囲と再委託の扱いが違えば、金額は比べられません)
  • 親族の紹介だけで決める(不動産があるか、相続税がかかるかで必要な資格が変わります)

代わりに見るのは、資格と書面です。契約前に次の6つを確認してください。

確認すること確かめ方
受任者の資格と登録の有無司法書士会・税理士会・弁護士会の会員名簿で氏名と事務所を照合します
対応範囲の一覧委任契約書に業務名が列挙されているかを見ます
報酬の算定方法割合か件数積み上げかと、追加が出る事由を書面で確認します
実費の扱い登録免許税や証明書の手数料が報酬に含まれるかを聞きます
再委託先とその報酬登記と申告を誰が行い、費用が別かどうかを確認します
途中で解約したときの精算着手金の返還と、出来高の計算方法を確認します

家財の処分を同じ業者に頼むなら、許可の種類を分けて見る

相続手続きと実家の片づけをまとめて請け負う会社もあります。

家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要り、買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可が必要です。

産業廃棄物の許可では家庭ごみを運べません。

「無料回収」を名乗るトラックはこの許可を持たない例が多く、遺品整理士の資格があっても廃棄物を運べるわけではありません。

訪問して買い取る契約なら、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は物品の引き渡しを拒めます。

捨てる前に手元に残す書類がある

片づけを急ぐと、手続きに必要な紙が先に消えます。

通帳とキャッシュカード、保険証券、年金手帳、不動産の権利証と登記識別情報、遺言書、印鑑と印鑑登録証、貸金庫の鍵と契約書、有価証券、借用書は、処分すると相続の手続きが止まります。

業者に作業を任せる前に、この種類の書類を探して別の箱に移してください。

何がどこにあるかを親の生前に書き残す方法はエンディングノートとはで解説しています。

よくある質問

相続手続きの代行を頼むと、自分でやるより早く終わりますか

役所や金融機関の処理期間そのものは短くなりません。

短縮できるのは、必要書類を調べる時間と、窓口へ出向く回数です。

相続人が多くて戸籍を何通も追う案件や、金融機関が複数にわたる案件では差が出ます。

逆に、相続人が2人で口座が1つなら、自分で回しても大きな遅れは出にくいでしょう。

行政書士に相続手続きの代行を頼んでも問題ありませんか

争いがなく、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成を任せたいだけなら選択肢になります。

ただし不動産の登記申請と相続税の申告は扱えず、相続人同士の交渉を代理することもできません。

実家がある、または基礎控除を超えそうなケースでは、司法書士や税理士との分担がどうなるかを先に確認してください。

銀行の遺産整理業務に頼めば、相続の手続きは全部終わりますか

財産目録の作成と金融資産の名義変更、全体の進行管理までは引き受けてもらえます。

登記と相続税の申告は提携する司法書士や税理士へ回るのが一般的で、その報酬が銀行の手数料に含まれるかは契約内容で変わります。

見積りの段階で、再委託の範囲と費用の内訳を聞いてください。

相続人のうち1人だけで代行を依頼できますか

戸籍の取り寄せや財産の調査は1人からでも依頼できます。

ただし遺産分割協議書には相続人全員の署名と押印が要り、預金の解約や不動産の名義変更もそこから先へ進みません。

全員の委任を前提にする事務所もあるため、他の相続人と連絡が取れていない段階なら、その事情を最初に伝えてください。

相続放棄の3か月に間に合いそうにないときはどうしますか

期間内であれば、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。

財産や負債の調査が終わらないという理由で申し立てるものなので、期限が過ぎてからでは使えません。

なお、故人の預金を引き出して使うと、相続を承認したと扱われて放棄ができなくなる可能性があります。

判断が済むまでは口座に手を付けないでください。

遺言書が出てきました。開けてから代行を頼んでもいいですか

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、封を開けずに家庭裁判所へ持ち込んで検認を受けます。

公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が不要です。

どの種類か分からないうちは開封せず、家庭裁判所への申立てを扱う弁護士か司法書士に相談してください。

まとめ

相続手続きの代行に「万人向けのおすすめ」はありません。

もめているなら弁護士、不動産があるなら司法書士、基礎控除を超えそうなら税理士と、自分の状況で相手が決まる仕組みだからです。

相続放棄は知った時から3か月、相続税の申告は10か月、相続登記は取得を知った日から3年という期限があり、依頼先を探している時間もこの中に含まれます。

費用を比べるときは総額ではなく、報酬の算定方式と再委託の扱い、それに実費が含まれるかを見てください。ぜひ本記事の対応範囲の比較表と契約前に確かめる6項目を手元に置いて、いま相談すべき相手を1つに絞ってください。

あなたへのおすすめ