相続に強い専門家の選び方|依頼前に確かめたい5つの視点

「相続に強い税理士ランキング」で上位に出てくるページを開いても、そこに載っているのは広告費を払った事務所の一覧です。
ランキングの順位を決めた基準は、たいてい書かれていません。
それでも検索してしまうのは、親が亡くなったあとの数週間で、役所と銀行を回りながら「誰に頼めばいいのか」を判断する材料がないからです。
相続税の申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内、相続放棄は自分が相続人だと知った時から3か月以内で、迷っている間に期限だけが進みます。
本記事では、税理士と弁護士と司法書士の担当が分かれる理由・依頼前に確かめる5つの視点・法テラスの資力基準・見積もりで実費と報酬を分ける読み方を解説します。
相続の専門家がランキングで比べられない理由
相続の依頼先を順位で並べられないのは、そもそも扱う仕事が資格ごとに分かれているからです。
同じ「相続に強い」という看板でも、税理士が引き受けられるのは相続税の申告と評価、司法書士は不動産の名義書き換え、弁護士は相続人どうしの主張が対立したときの交渉と調停です。
読者の状況が「兄弟と揉めそう」なら、税理士のランキングを何位まで見ても答えは出ません。
あなたの状況で担当が変わる
自分がどの窓口に行くべきかは、次の3点で切り分けられます。
- 遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えそうか
- 実家などの不動産が親の名義のまま残っているか
- 相続人の間で、分け方について反対している人がいるか
1つ目に当てはまれば税理士、2つ目だけなら司法書士、3つ目があれば弁護士が主担当になります。
相続人が3人なら基礎控除は4,800万円で、これを下回れば相続税の申告そのものが不要です。
ただし小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って税額をゼロにする場合は、申告しないと適用されません。
ここは自己判断で「うちは不要」と決めず、実家の評価が絡むなら一度は税理士に見てもらう段階です。
資格ごとの担当は弁護士・司法書士・税理士の使い分けで解説しています。
「相続に強い」の中身は件数と体制で見る
ランキングの順位が使えないぶん、事務所を比べる軸は自分で持つ必要があります。
相続税の申告は、所得税や法人税の申告とは評価の考え方が違い、扱った件数がそのまま経験値になります。
事務所のサイトに年間の相続税申告件数が書かれているか、書面添付制度(税理士が申告内容の根拠を書面で添える制度)を使っているか、税務調査に立ち会うかまでを確認してください。
答えられない事務所を除外していくだけで、候補は現実的な数まで絞れます。
相続の専門家に依頼する前に確かめたい5つの視点
面談の場で聞くことを決めておくと、話が世間話で終わりません。確かめる順番は次の通りです。
| 視点 | 確かめること | 答えが曖昧なら |
|---|---|---|
| 担当範囲 | 相続税の申告・不動産の登記・相続人との交渉のうち、どこまで引き受けるか | 残りを誰に頼むか、紹介先があるか聞く |
| 期限の見立て | 10か月の申告期限に対して、いつまでに何の資料を渡せばいいか | 逆算の日程を出せない事務所は避ける |
| 費用の構造 | 実費と報酬の内訳、加算される条件(土地の数・相続人の人数・書面添付) | 総額だけの提示は追加請求の余地が残る |
| 担当者 | 面談した人が最後まで担当するか、実務は別の担当者か | 担当者の氏名と連絡方法を書面で確認する |
| 利益相反 | 相続人のうち誰の依頼を受けるか(弁護士は複数の相続人から同時に受任できない場面がある) | 兄弟と共同で頼む前に確認する |
とくに費用は、実費と報酬を分けて聞いてください。
実費は登録免許税、収入印紙、戸籍謄本や登記事項証明書の取得費といった、誰が頼んでも同じようにかかるお金です。
報酬は依頼先が決める金額なので、相場を検索しても自分の見積もりにはなりません。
見積書を2〜3件取り寄せて、内訳の項目名を横に並べるのが実務的な比べ方です。
着手金と報酬金の考え方は相続を弁護士に頼む費用で解説しています。
面談前に自分の側で用意する3点
手ぶらで相談に行くと、その日は状況のヒアリングだけで終わります。用意するのは次の3点です。
- 被相続人の預金の残高証明(死亡日時点のもの)
- 実家の登記事項証明書(法務局で取得。名義は甲区で確認できます)
- 固定資産税の課税明細書(毎年春に届くもの)
この3点があれば、遺産の概算と基礎控除の比較がその場でできます。
相続人が何人になるかも先に数えておいてください。
配偶者は常に相続人で、第1順位は子、子がいなければ直系尊属、それもいなければ兄弟姉妹です。
兄弟と揉めそうなときに机の上へ出すもの
相続人の意見が割れる場面の多くは、感情が原因ではなく、誰も金額を知らないまま話し始めたことが原因です。
実家に住み続けたい側は評価を低く見積もり、売って分けたい側は高く見積もります。
そのうえで「お前は親の面倒を見ていない」といった話に移ると、もう金額の議論には戻れません。
数字を先に出すと論点が減る
話し合いの前に、査定額・固定資産税の年額・空き家のままにした場合の管理費用を一枚の紙にまとめてください。
査定は不動産会社2〜3社から取ると幅が見えます。
この3つが揃うと、「住み続ける人が他の相続人にいくら払うのか」という一点に議論が収束します。
感情の話が消えるわけではありませんが、争う対象が数字になれば第三者を入れて調整できます。
それでも決まらないときの分け方
不動産を共有名義にする合意は、いちばん先延ばしになりやすい結論です。
共有のままにすると、売るときに共有者全員の同意が必要になり、次の相続で持分がさらに細分化します。
売って現金で分ける換価分割か、1人が取得して他の相続人に代償金を払う代償分割のどちらかを検討してください。
どの形が自分の家に合うかは相続人の資力で変わるため、弁護士か税理士に見積もりを含めて相談する段階です。
相続登記は3年で義務になっている
話し合いが長引いても、登記の期限は待ってくれません。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
分割協議がまとまらない場合は、相続人申告登記という仕組みで一旦の対応ができるので、司法書士に相談してください。
相続の相談で費用を抑えるなら法テラスを先に確認する
弁護士に頼みたいが費用が不安という場合、法テラスの無料法律相談が使えるかを確かめる価値があります。
利用の条件は、収入と資産が資力基準以下であること、勝訴の見込みがないとはいえないこと、民事法律扶助の趣旨に適することの3つです。
同一の問題について3回まで、1回30分の相談を無料で受けられます。
2026年9月時点で法テラスが公表している資力基準は次の通りです。
| 家族の人数 | 一級地(東京都特別区・大阪市など) | その他の地域 | 資産 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 月収200,200円以下 | 月収182,000円以下 | 180万円以下 |
| 2人 | 月収276,100円以下 | 月収251,000円以下 | 250万円以下 |
| 3人 | 月収299,200円以下 | 月収272,000円以下 | 270万円以下 |
| 4人 | 月収328,900円以下 | 月収299,000円以下 | 300万円以下 |
5人以上は、一級地で1人あたり33,000円、その他の地域で30,000円を加算します。
家賃や住宅ローン、医療費、教育費の負担がある場合は、基準を超えていても利用できることがあります。
数字を見て諦める前に、法テラスに事情を伝えて確認してください。
基準を満たす場合は、弁護士や司法書士の費用を法テラスが立て替え、原則として月々分割で返していく制度(代理援助・書類作成援助)も使えます。
ただし相続税の申告は税理士の仕事で、この制度の対象にはなりません。
税額の計算が必要なら、税理士の見積もりは別に取ってください。
効きにくい探し方と、依頼後に困る型
「相続に強い税理士ランキング」の1位に問い合わせる進め方が空振りになるのは、順位の根拠が公開されていないからです。同じ理由で、次のような探し方も判断材料になりません。
- 口コミの星の数だけで比べる(相続の依頼は一生に数回で、母数が少なく偏ります)
- 「相続専門」の表示だけを信じる(専門を名乗ることに資格上の制限はありません)
- 親の代からの付き合いだけで決める(法人税や所得税が中心の事務所は、相続税の申告件数が少ない場合があります)
先延ばしにすると選択肢が減る
依頼先を決めきれずに数か月が過ぎると、間に合わなくなる手続きが出てきます。
相続放棄・限定承認は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、起算日は亡くなった日ではありません。
間に合わないと分かった時点なら、期間内に家庭裁判所へ伸長を申し立てられます。
故人に事業所得などがあった場合の準確定申告は4か月、相続税の申告と納付は10か月です。
期限を過ぎたあとで慌てて依頼すると、受けてもらえる事務所が限られ、資料の取り寄せも間に合いません。依頼後に後悔する型は相続を専門家に頼んで失敗する例で解説しています。
相続税がかかるかどうかを先に見当をつける
税理士に頼むかどうかの判断は、基礎控除との比較から入るのが早いです。
相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円が分かれ目になります。
ここを大きく下回るなら、必要なのは登記と預金の解約で、司法書士と銀行の窓口で足ります。
判定の考え方は相続税は誰にかかるかで解説しています。
よくある質問
相続に強い税理士ランキングは信用できますか
順位を決めた基準が明記されているかを見てください。
広告費や掲載料で並び順が変わる形式もあり、その場合は自分の状況との相性を示すものではありません。
年間の相続税申告件数、書面添付制度を使っているか、税務調査への立ち会い方針といった項目を、自分で複数の事務所に同じ質問として投げるほうが比べやすくなります。
税理士と弁護士のどちらに先に相談すればいいですか
相続人の間で分け方に反対している人がいるなら弁護士、全員が合意していて相続税の申告が必要そうなら税理士が先です。
両方に当てはまる場合、まず弁護士に相談して分割の方向が固まってから税理士に渡すと、申告の作業が一度で済みます。
判断に迷う段階では、自治体や弁護士会の無料相談で状況を整理してもらうのも一つの入口です。
費用の見積もりは何件取ればいいですか
2〜3件が現実的です。
同じ資料を渡して見積書をもらい、実費と報酬の内訳、加算される条件を項目ごとに並べて比べてください。
総額だけを提示され、内訳の説明を断られる場合は、後から加算される余地が残ります。
兄弟と共同で1人の専門家に頼めますか
相続人全員の意見が一致していれば、税理士や司法書士に共同で依頼できる場面があります。
ただし対立が生じたあとは、弁護士が相続人の双方から受任できないことがあります。
誰の依頼を受けるのかを最初に確認してください。
相続放棄の3か月に間に合いそうにない場合はどうしますか
期間内であれば、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。
借金の有無が調べきれない、相続人の連絡先が分からないといった事情がある場合は、放棄の判断を保留する手段になります。
なお故人の預金を引き出して使うと、放棄が認められなくなる場合があるため、判断が済むまで手をつけないでください。
まとめ
相続の依頼先は順位で選ぶものではなく、自分の状況がどの資格の担当かで決まります。
遺産が基礎控除を超えそうなら税理士、実家の名義が親のままなら司法書士、相続人の主張が対立しているなら弁護士です。
面談の前に残高証明と登記事項証明書、固定資産税の課税明細書を揃えておけば、初回の30分で概算まで進みます。
費用が心配なら、法テラスの資力基準に当てはまるかを先に確認してください。
ぜひ本記事の5つの視点と資力基準の表を参考に、今週のうちに面談の予約を1件入れてみてください。


