遺族年金は誰がもらえる?条件と金額の計算をやさしく解説

年金事務所の窓口で最初に確認されるのは、亡くなった人が会社員だったか、自営業だったかです。遺族年金という1本の制度があるわけではなく、国民年金から出る遺族基礎年金と、厚生年金から出る遺族厚生年金の2つに分かれていて、どちらが出るかで受け取れる人も金額も変わります。
遺族基礎年金は子のある配偶者か子に限られ、年額847,300円に子の加算が付きます(日本年金機構/令和8年4月分・2026年9月時点)。
子が独立していれば、この年金は出ません。
一方で夫が会社員だったなら、子がいなくても遺族厚生年金が残る場合があります。
本記事では、遺族年金を受け取れる人の条件・847,300円と報酬比例4分の3の計算・請求より先に切られる10日と14日の届出を解説します。
遺族年金は2階建て、どちらが出るかは亡くなった人の加入先で決まる
遺族年金を受け取れるかどうかを最初に分けるのは、亡くなった人が現役時代にどの年金制度に入っていたかです。
日本の公的年金は、全員が入る国民年金と、会社員・公務員が上乗せで入る厚生年金の2階建てになっています。
遺族に出る年金もこの2階建てをそのまま引き継いでいて、国民年金からは遺族基礎年金が、厚生年金からは遺族厚生年金が支給されます。
同じ「夫が亡くなった妻」でも、受け取れる金額が10倍近く違うことがあるのは、この2階部分の有無によるものです。
まずは故人の年金手帳や、毎年届いていたねんきん定期便を探してください。
厚生年金の加入記録があるかどうかで、これから先の話がまるごと変わります。
自営業・フリーランスだった場合
国民年金にしか加入していなかった人が亡くなったとき、遺族に出るのは遺族基礎年金だけです。
受け取れるのは子のある配偶者か子に限られるため、子がすでに高校を卒業している家庭では、遺族年金が1円も出ないという結果になります。
厳しい話ですが、ここを早めに知っておくほうが、生活の立て直しを考える時間を確保できます。
会社員・公務員だった場合
厚生年金に加入していた人が亡くなった場合、遺族厚生年金が対象になります。
厚生年金の加入者は同時に国民年金の被保険者でもあるため、子のある配偶者であれば遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給される形になります。
子がいない配偶者には遺族基礎年金が出ませんが、遺族厚生年金は残ります。
在職中の死亡か、退職して何年も経ってからの死亡かでも扱いが変わるため、加入記録は年金事務所で照会してください。
遺族基礎年金を受け取れるのは「子のある配偶者」と「子」だけ
遺族基礎年金の対象は、子のある配偶者、または子です。
ここでいう「子」は、家族の感覚で言う子どもとは範囲が違います。
18歳になった年度の3月31日を過ぎると、制度の上では子として数えられなくなります。
障害等級1級または2級に該当する場合は20歳未満まで延びます(日本年金機構/令和8年4月分・2026年9月時点)。
| 状況 | 遺族基礎年金 |
|---|---|
| 配偶者と、高校生の子がいる | 配偶者が受け取る(子の加算あり) |
| 配偶者と、大学生の子がいる | 対象外(18歳年度末を過ぎているため) |
| 配偶者だけで子がいない | 対象外 |
| 配偶者が先に亡くなり、子だけが残った | 子が受け取る |
「子のある配偶者」の配偶者に性別の区別はなく、妻が亡くなって子を育てる夫も対象になります。
18歳年度末という区切りは、高校卒業のタイミングに合わせたものです。
子が3月に高校を卒業する年は、その年度の3月分までで遺族基礎年金が終わることになるため、翌年度の家計を先に組み直しておくと慌てずに済みます。
子がいなくても出る遺族厚生年金には、受け取る人の順位がある
遺族厚生年金は、子がいない配偶者にも支給されます。
ただし、遺族なら誰でも受け取れるわけではありません。
受給できる遺族には順位が定められていて、上の順位の人がいる間は、下の順位の人に権利は回りません。
| 順位 | 受け取れる遺族 |
|---|---|
| 1 | 子のある配偶者 |
| 2 | 子 |
| 3 | 子のない配偶者 |
| 4 | 父母 |
| 5 | 孫 |
| 6 | 祖父母 |
この順位は、親が亡くなったときに子である自分が受け取れるのか、という疑問にも答えています。
配偶者が健在であれば、順位1または3で配偶者が受給者になり、成人した子に権利は回りません。
両親のうち後に亡くなったほうの手続きで、子である自分が遺族厚生年金を受け取れるかというと、18歳年度末を過ぎていれば対象外です。
順位4の父母以下は、高齢の親が子を亡くしたときなどに関わってきます。夫が受け取る場合や父母が受け取る場合は、年齢の条件が別に定められているため、該当しそうなときは年金事務所で自分の順位と条件を確認してください。
遺族年金の金額は、定額部分と報酬比例部分で計算の仕方が違う
金額の計算は、遺族基礎年金と遺族厚生年金でまったく別の考え方になっています。遺族基礎年金は誰でも同じ定額に子の人数分を足す方式で、遺族厚生年金は亡くなった人の給料と加入期間から計算する方式です。
遺族基礎年金は847,300円に子の加算を足す
| 項目 | 年額 |
|---|---|
| 子のある配偶者の基本額 | 847,300円(昭和31年4月1日以前生まれは844,900円) |
| 子の加算(1人目・2人目) | 各243,800円 |
| 子の加算(3人目以降) | 各81,300円 |
出典は日本年金機構の令和8年4月分からの額です(2026年9月時点)。
子が2人いる配偶者なら、847,300円に243,800円を2人分足して1,334,900円が年額になります。
月あたりにすると約11万円です。
子が1人ずつ18歳年度末を迎えるたびに加算が外れ、末子が18歳年度末を過ぎた時点で遺族基礎年金そのものが終わります。
遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3
遺族厚生年金の年額は、亡くなった人が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
現役時代の給料が高く、加入期間が長いほど多くなります。
逆に言えば、同じ会社員の夫でも、勤続年数によって金額はまったく違ってきます。
若くして亡くなった場合に極端に低くならないよう、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)に満たないときは、300月加入していたものとみなして計算する扱いがあります。
30代で亡くなった人の遺族が、実際の加入期間だけで計算されて数万円になってしまうことを防ぐ仕組みです。
自分の場合いくらになるかの見当をつけたいなら、妻・子ども別の受給額の早見表で解説しています。
保険料の納付要件を満たしていないと、遺族年金は支給されない
対象者の条件を満たしていても、亡くなった人の保険料の納め方によっては支給されません。
原則は、国民年金の加入期間のうち3分の2以上について保険料を納めているか、免除を受けていることです。
未納が3分の1を超えていると、この原則では受給できません。
ただし特例があります。
死亡日が令和18年3月末日までで、亡くなった人が65歳未満であれば、死亡月の前々月までの直近1年間に未納がなければ要件を満たします(日本年金機構/2026年9月時点)。
過去に未納の時期があっても、直近1年がきちんと納まっていれば救われる形です。
ここで気をつけたいのが、免除と未納の違いです。
所得が少ない時期に申請して承認を受けた免除期間は、納付済期間と同じように納付要件の計算に入ります。
一方、申請をしないまま払わなかった期間は未納として扱われます。
学生時代や失業中の記録がどちらになっているかは、年金事務所で納付記録を照会すれば分かります。
請求の窓口でいきなり判定されるのを待つより、先に記録を取り寄せておくほうが落ち着いて臨めます。
遺族年金の請求より先に、10日と14日で切られる届出がある
遺族年金の請求書を出す前に、期限が短い届出がいくつも並んでいます。
亡くなった人が年金を受け取っていた場合、その年金を止める手続きは死亡から10日または14日で区切られています。
止めないまま振り込まれ続けると、あとからまとめて返すことになります。
| 手続き | 期限 | 窓口 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 死亡の事実を知った日から7日以内 | 死亡地・本籍地・届出人の所在地いずれかの市区町村 |
| 厚生年金の受給停止 | 死亡から10日以内 | 年金事務所 |
| 国民年金の受給停止 | 死亡から14日以内 | 年金事務所または市区町村 |
| 世帯主変更届 | 死亡から14日以内 | 市区町村(15歳以上が2人以上残る場合) |
遺族年金の請求そのものには、この表のような日単位の期限はありません。
ただし請求には戸籍謄本や住民票、亡くなった人と請求する人の関係が分かる書類が必要で、集めるのに時間がかかります。
役所を回るついでに、必要な通数をまとめて取っておくと二度手間になりません。
遺族年金の請求に必要な書類と年金事務所での流れで解説しています。
国民健康保険や後期高齢者医療の加入者が亡くなったときは葬祭費が、健康保険の被保険者が亡くなったときは埋葬料が支給されます。健康保険の埋葬料は一律5万円で、国民健康保険の葬祭費は市区町村の条例で額が決まっているため、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
妻の年齢と子の年齢で、遺族年金は増えたり終わったりする
受け取り始めた金額がそのまま続くとは限りません。
子の成長と本人の年齢で、加算が付いたり外れたりします。
遺族基礎年金は末子が18歳年度末を過ぎた時点で終わるため、そこが最初の段差になります。
40歳から65歳までの中高齢寡婦加算
夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で子のいない妻などには、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が上乗せされます。
年額635,500円で、40歳から65歳になるまで加算されます(日本年金機構/2026年9月時点)。
子がいて遺族基礎年金を受け取っていた妻の場合、末子が18歳年度末を迎えて遺族基礎年金が終わったあと、この加算に切り替わる形になります。
子のない30歳未満の妻は5年で終わる
夫が亡くなったときに30歳未満で子がいない妻の場合、遺族厚生年金を受け取れるのは5年間だけです。若い世代には就労による再建を想定した制度設計になっているためで、生涯にわたって支給されるわけではありません。
このほか、再婚したときや子が一定の年齢に達したときにも受給権の扱いが変わります。
いつまで受け取れるのかを先に把握しておくと、途中で家計が変わるタイミングに備えられます。
遺族年金の受給が終わる条件と再婚したときの扱いで解説しています。
年金額が少なく、前年の所得が低い世帯には別の給付の仕組みもあります。
年金生活者支援給付金を遺族年金と一緒に受け取る条件で解説しています。
相続放棄は3か月、相続税は10か月、登記は3年で期限が切られる
遺族年金の請求で年金事務所に通っている同じ時期に、相続の期限も動いています。年金の手続きが一段落してから相続に取りかかろうとすると、いちばん短い3か月を踏み越えてしまいます。
| 手続き | 期限 | 起算日 |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 自己のために相続の開始があったことを知った時 |
| 準確定申告 | 4か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続登記 | 3年以内 | 不動産を取得したことを知った日 |
相続放棄の起算日は亡くなった日ではなく、自分が相続人だと知った時です。
借金の有無がはっきりせず3か月では判断できないときは、期間内に家庭裁判所へ伸長を申し立てられます。
注意したいのは、相続財産を使ってしまうと単純承認したものとみなされて放棄できなくなる点です。
放棄を検討する段階では、亡くなった人名義の口座の入出金は止めておきます。
相続税は、遺産の総額が基礎控除以下なら申告そのものが不要です。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円になります。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額を0円にする場合は、申告が必要です。
基礎控除で相続税がかかるかどうかの分かれ目で解説しています。
相続登記は2024年4月1日から義務になりました。
正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象で、施行日より前に相続した不動産も含まれます。
その場合の期限は2027年3月31日です。
名義変更を進めるには、誰が何を引き継ぐかを相続人の間で決めておく必要があります。
遺産分割協議書がいるケースといらないケースで解説しています。
よくある質問
子どもがいない場合でも遺族年金は受け取れますか
亡くなった人が厚生年金に加入していたなら、遺族厚生年金の対象になります。
受給の順位では、子のない配偶者は3番目です。
一方、遺族基礎年金は子のある配偶者か子に限られるため、子がいない場合は支給されません。
自営業だった夫が亡くなり、子どもは独立しています。遺族年金は出ますか
国民年金にしか加入していなかった場合、遺族に出るのは遺族基礎年金だけです。
子が18歳になった年度の3月31日を過ぎていれば対象外となり、遺族年金は支給されません。
ただし、過去に会社員として働いていた期間があれば遺族厚生年金の対象になる可能性があるため、年金事務所で加入記録を照会してください。
子が18歳になると遺族基礎年金はその月で止まりますか
誕生月ではなく、18歳になった年度の3月31日までが対象です。
障害等級1級または2級に該当する子の場合は20歳未満まで続きます。
子が複数いる家庭では、上の子から順に加算が外れ、末子が18歳年度末を過ぎた時点で遺族基礎年金そのものが終わります。
厚生年金の加入期間が短くても遺族厚生年金は出ますか
被保険者期間が300月(25年)に満たないときは、300月加入していたものとみなして計算されます。
20代や30代で亡くなった場合でも、実際の加入月数だけで計算されて極端に低くなることはありません。
金額そのものは報酬比例部分の4分の3で、現役時代の給料の水準によって変わります。
夫が遺族年金を受け取ることはできますか
遺族基礎年金は「子のある配偶者」が対象で、性別の区別はありません。
妻を亡くして子を育てる夫も受け取れます。
遺族厚生年金については、夫が受給する場合の年齢の条件が別に定められているため、年金事務所で自分が該当するかを確認してください。
自分の老齢年金と遺族年金は両方受け取れますか
自分が受け取る年金の種類と年齢によって、支給される組み合わせが調整されます。
どの受け取り方がいくらになるかは、自分の加入記録と亡くなった人の記録の両方を使って計算するものなので、年金事務所で試算を依頼してください。
ねんきん定期便と年金手帳を持参すると、その場で話が早く進みます。
保険料に未納の時期がありました。遺族年金は諦めるしかありませんか
納付要件は、加入期間の3分の2以上を納付または免除で埋めているかで判定します。
この原則を満たさない場合でも、死亡日が令和18年3月末日までで亡くなった人が65歳未満なら、死亡月の前々月までの直近1年間に未納がなければ要件を満たします。
申請して承認された免除期間は未納とは扱われないため、まずは納付記録を取り寄せて確認してください。
まとめ
遺族年金を受け取れるかどうかは、亡くなった人が厚生年金に入っていたか、そして18歳年度末までの子がいるかという2点でほぼ決まります。
自営業で子が独立している家庭では支給されないことがあり、逆に会社員だった夫を亡くした子のない妻には、遺族厚生年金と40歳からの中高齢寡婦加算が残ります。
金額は遺族基礎年金が847,300円+子の加算、遺族厚生年金が報酬比例部分の4分の3です。
請求の準備と並行して、年金の受給停止が10日または14日、相続放棄が3か月、相続税の申告が10か月という期限が走っています。ぜひ本記事の受給者の順位表と期限の一覧を手元に置いて、自分がどの欄に当てはまるかを確かめたうえで、年金事務所へ持っていく書類の準備を始めてください。


