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車の名義変更をしないとどうなる?相続の手続きを解説

車の名義変更をしないとどうなる?相続の手続きを解説

車検証の所有者欄が、亡くなった親の名前のままになっています。

この状態のままでは、売ることも廃車にすることも、買い替えの下取りに出すこともできません。

名義変更(移転登録)は、相続人の誰がその車を引き継ぐかを決めないと申請できないためです。

しかも、車を勝手に売ったり使い続けたりすると、相続放棄ができなくなる場合があります。

放棄の申述は自分が相続人だと知った時から3か月以内で、起算日は亡くなった日ではありません(民法915条)。

本記事では、名義変更をしないまま置いたときに起きること・普通車と軽自動車で違う窓口と書類・相続放棄や相続税の期限との順番を解説します。

車の名義変更をしないと、売ることも廃車にすることもできません

車の売却も廃車も、所有者本人が申請する手続きです。

その所有者が亡くなっている以上、車検証の名義が故人のままでは申請そのものが受け付けられません。

ディーラーの下取りも中古車買取店への売却も同じで、査定額が出たあとに「名義変更ができていない」と止まる形になります。

一時的に車を使わなくするための一時抹消登録も、解体して登録を消す永久抹消登録も、手続きの前に相続人への名義変更が要ります。

乗ること自体は物理的にできてしまうので、手続きを後回しにしても困らないように見えます。

困り始めるのは、売ろうとしたとき、保険を見直そうとしたとき、そして自動車税の納税通知書が故人の名前で届いたときです。

どれも数か月から1年ほど遅れてやってきます。

車検証の所有者欄が信販会社になっていることがあります

まず確認するのは、車検証の「所有者」と「使用者」の欄です。

ローンやクレジットで購入した車は、返済が終わるまで所有者欄が信販会社やディーラーの名義になっていることがあります(所有権留保といいます)。

この場合、車そのものは故人の財産として扱われる一方で、名義変更の前に残債を清算して所有権解除の手続きを踏む必要があります。

手順は信販会社ごとに違うので、車検証に記載された会社へ問い合わせて、必要書類を確認してください。

残債が残っているなら、その借入金も相続の対象です。

車の価値より残債のほうが大きいこともあります。

ここは財産と債務を並べて見る話になるため、名義変更を急ぐ前に全体像を押さえたほうが手戻りがありません。

相続の場面で車は遺産|乗り続けると放棄できなくなることがあります

車は預貯金や不動産と同じ相続財産で、相続人全員の共有になります。一部の相続人が日常的に使っていたとしても、それだけでその人のものになるわけではありません。

気をつけたいのは相続放棄との関係です。

相続財産を処分したり、財産的な価値のあるものを自分のものとして使ったりすると、相続を承認したものとみなされ、放棄ができなくなる場合があります。

故人の車を売って代金を受け取る、廃車にしてリサイクル料金の還付を受ける、自分名義に変更して乗り続けるといった行為は、いずれもここに触れる可能性があります。

借金の有無がまだ分からない段階では、車に手を付けないでおいてください。

放棄を申し出る期限は、自分が相続人だと知った時から3か月です。

故人の借入や保証債務の調査が終わらないなら、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます。

放棄にかかる費用と自分で申述する手順は相続放棄の費用と自分で手続きする方法で解説しています。

車の名義変更の前に、誰が引き継ぐかを相続人全員で決めます

名義変更の申請書に書く新しい所有者は、遺産分割で車を取得すると決まった人です。

決め方は話し合い(遺産分割協議)で、相続人全員の合意が要ります。

1人でも欠けた協議書は無効になるため、先に相続人が誰なのかを戸籍で確定させます。

故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を本籍地の市区町村から取り寄せると、認知した子や前婚の子の有無まで確認できます。

普通車は、価額が低い車に簡易な様式が用意されています

普通車でも、査定した価額が一定額以下であれば、相続人全員の実印をそろえずに、車を取得する相続人1人の署名で申請できる様式が用意されています。

基準となる価額、添付する査定書類の形式は運輸支局の案内で確認してください。

古い車を1台だけ引き継ぐ場合は、この方法のほうが印鑑証明書を集める手間が省けます。

軽自動車は遺産分割協議書を求められないのが一般的です

軽自動車は普通車の移転登録と制度が別で、軽自動車検査協会への自動車検査証記入申請という扱いになります。

相続を理由とする場合でも、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書までは求められないのが通常の運用です。

ただし必要書類は協会の事務所で案内が出ているので、出向く前に確認しておくと二度手間になりません。

手続きが簡単だからといって、誰が引き継ぐかを家族で決めないまま1人で進めると、あとで揉めるもとになります。

普通車は運輸支局、軽自動車は軽自動車検査協会で名義変更します

窓口は車種で分かれます。

普通車(登録自動車)は、新しい所有者の使用の本拠地を管轄する運輸支局または自動車検査登録事務所です。

軽自動車は軽自動車検査協会の事務所・支所になります。

どちらも平日の受付時間が限られていて、昼の休止時間がある窓口もあります。

仕事を1日空けられるかどうかが、自分でやるか代行に出すかの分かれ目になります。

ナンバーの管轄が変わる場合は、車そのものを窓口へ持ち込んで、後ろのナンバープレートに封印を受け直します。

遠方で持ち込めないときは、出張封印に対応する行政書士へ依頼する方法があります。

保管場所が変わるなら、先に警察署で車庫証明を取る必要があり、こちらは申請から交付まで数日かかります。

窓口が3か所に分かれる形になるので、順番を組んでから動いてください。

車の名義変更に要る書類は、戸籍・印鑑証明・車検証から集めます

普通車を相続で名義変更するときの主な書類は次のとおりです。取り寄せ先が役所・警察署・窓口に分かれるので、まとめて請求できるものから手を付けます。

書類どこで手に入れるか補足
自動車検査証(車検証)車内や故人の保管場所原本が要ります。所有者欄を先に確認します
故人の出生から death までの戸籍謄本本籍地の市区町村相続人を確定するために連続した分が要ります
相続人全員の戸籍謄本各自の本籍地の市区町村生存と続柄の確認に使います
遺産分割協議書相続人が作成全員の実印を押します
相続人全員の印鑑証明書住所地の市区町村発行後の有効期間に制限があります
新しい所有者の車庫証明保管場所を管轄する警察署保管場所が変わる場合に要ります
申請書・手数料納付書・自動車税の申告書運輸支局の窓口当日その場で記入します
委任状本人が作成代理人に申請してもらう場合

戸籍謄本は銀行の解約や不動産の登記でも同じものを求められます。

法務局で法定相続情報一覧図の写しを取っておくと、戸籍の束を持ち回らずに済み、複数の窓口で並行して使えます。

表の1行目に書いたとおり、出発点は車検証です。

所有者が故人ではなく信販会社だった場合、集める書類の中身が変わります。

軽自動車は、この表のうち遺産分割協議書と印鑑証明書を省略できる運用が一般的です。窓口ごとの具体的な様式と記入例は相続した車の名義変更に必要な書類と運輸支局での流れで解説しています。

車の名義変更の費用は、どこまで自分でやるかで変わります

費用の総額は車の値段ではなく、手続きの範囲で決まります。増減する要素は次のものです。

  • 移転登録の申請手数料(窓口で印紙を購入します)
  • 車庫証明の申請と交付にかかる証紙代(保管場所が変わる場合)
  • ナンバープレートの交付手数料(管轄が変わる場合や希望番号を選ぶ場合)
  • 戸籍謄本・印鑑証明書の発行手数料(相続人の人数だけ増えます)
  • 行政書士やディーラーに代行を頼むときの報酬
  • 車を窓口へ持ち込めないときの出張封印の費用

自分で平日に窓口へ行けるなら、かかるのは窓口の手数料と書類の発行手数料だけです。

相続人が多く、全国に散らばっていると、印鑑証明書の取得と郵送のやり取りだけで日数と実費が積み上がります。

代行を頼む場合は、車庫証明まで含むのか、出張封印が別料金なのかを見積書で分けて確認してください。

もうひとつ、相続税の側から見た車の扱いがあります。

車も相続財産なので、申告が要るかどうかを判定するときの財産に含めます。

基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円です(相続税法15条・2026年9月時点)。

合計がこれを超えないなら申告そのものが不要になります。

判定のしかたは相続税は誰にかかるのか|基礎控除が分かれ目になる仕組みで解説しています。

車の名義変更に登記のような3年の義務はなくても、順番は決まっています

不動産の相続登記は2024年4月1日から義務になり、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。

車にはこの3年ルールがありません。

ただし、道路運送車両法は所有者に変更があったときは15日以内に移転登録を申請すると定めています(同法13条)。

相続の場合は分割協議に時間がかかるため、現実には協議がまとまり次第という進み方になりますが、放置してよい手続きではないという位置づけです。

期限が法律で切られているのは、車そのものよりも周辺の手続きです。順番に並べると次のようになります。

順番やること期限
1車検証で所有者と使用者を確認する早いほどよい
2財産と借金を洗い出し、放棄するかを決める相続人だと知った時から3か月
3故人に事業所得などがあれば準確定申告をする知った日の翌日から4か月
4誰が車を引き継ぐか協議し、名義変更する協議がまとまり次第
5相続税の申告と納付をする知った日の翌日から10か月

車の名義変更を4番に置いているのは、2番の判断が終わる前に動くと放棄の道が閉じるためです。

逆に、借金がないと分かっていて相続人も少ないなら、2番と4番を同時に進めても構いません。

相続税の申告が必要な家庭では、10か月の期限までに財産の分け方を確定させる必要があるので、車だけを後回しにすると全体が止まります。

車の名義変更を先延ばしにすると、税金と次の相続で行き詰まります

自動車税の納税通知書は故人宛に届き続けます

自動車税種別割は、毎年4月1日時点の所有者に課税されます。

名義が故人のままなら、通知書は故人の住所へ故人の名前で届きます。

相続人が納税義務を引き継ぐため、支払わないまま置くと延滞金がつき、滞納が続けば車を差し押さえられることもあります。

実家を空き家にしていて郵便物を確認していない場合、通知が届いていることにも気づけません。

相続人が増えると、そろえる印鑑証明書の枚数も増えます

名義変更をしないうちに相続人の1人が亡くなると、その人の相続人も協議に加わります(数次相続といいます)。

兄弟3人で済んだはずの話に、甥や姪、その配偶者が加わる形です。

全員から実印と印鑑証明書をもらう難易度は一段上がり、面識のない親族に連絡を取るところから始まります。

時間の経過で有利になることはひとつもありません。

保険と車検が切れたまま乗ると、責任の所在があいまいになります

任意保険は契約者や記名被保険者を変更しないと、事故のときに支払いを巡って争いになる場合があります。

等級を家族へ引き継げるかどうかは保険会社の規定で決まるので、車を使う人が決まった時点で保険会社へ連絡してください。

車検証の所有者が亡くなった人のままの車で事故を起こせば、車を管理していた相続人が責任を問われる場面も出てきます。

乗らないのであれば、名義変更のうえで一時抹消登録をしておくと、課税も保険も止められます。

親が元気なうちにできる、車まわりの準備

ここまでは亡くなったあとの手続きですが、先に手を打てることもあります。

車検証の所有者が誰なのか、ローンが残っているのか、任意保険はどこの会社かという情報は、本人しか知らないまま残されがちです。

保管場所と鍵の所在も含めて書き留めておくと、相続人が探す時間がまるごと減ります。

書いておく項目の立て方はエンディングノートに書くべき項目と役割で解説しています。

もうひとつ、判断能力が落ちてからでは車を売れなくなる点があります。

売買契約は本人の意思で行うものなので、認知症が進んで意思確認ができなくなると、家族が代わりに売ることはできません。

後見の制度を使うことになり、費用と時間がかかります。

あらかじめ備える方法は任意後見制度の費用と報酬の目安で解説しています。

運転をやめる時期が見えているなら、元気なうちに売却まで済ませてしまうのがいちばん手間の少ない選択です。

よくある質問

名義変更をしないまま車に乗り続けても大丈夫ですか

運転そのものが禁止されるわけではありませんが、相続放棄を考えている段階では避けてください。

財産を自分のものとして使ったとみなされ、放棄ができなくなる場合があります。

放棄を考えていない場合でも、保険の名義と自動車税の通知先が故人のままになるため、早めに手続きを済ませたほうが結果的に楽です。

車の名義変更は自分でできますか

書類がそろっていれば、相続人本人が運輸支局や軽自動車検査協会の窓口で申請できます。

難しいのは手続きそのものより、相続人全員の印鑑証明書を集めることと、平日に窓口へ行く時間を作ることです。

相続人が遠方に散らばっている、車を持ち込めない、平日に休めないという事情があるなら、行政書士やディーラーへの代行依頼を検討してください。

相続人が遠方にいる場合はどう進めますか

遺産分割協議書を郵送で回して、それぞれ実印を押してもらい、印鑑証明書を同封して返送してもらう方法が一般的です。書き損じがあると全員に回し直すことになるため、最初に文面を全員へ共有して内容を確認してから押印に入ると、往復の回数を減らせます。

ローンが残っている車はどうなりますか

車検証の所有者が信販会社になっている場合、残債を清算して所有権解除を受けてからでないと相続人への名義変更ができません。

残っているローンは債務として相続の対象になります。

車の価値と残債のどちらが大きいかを確認したうえで、車を引き継ぐかどうかを判断してください。

廃車にする場合も名義変更は必要ですか

解体して登録を消す永久抹消登録も、所有者が申請する手続きです。

故人名義のままでは申請できないため、いったん相続人へ名義を移してから抹消するのが基本の流れになります。

窓口によっては相続を証する書類を添えて一度に処理できる場合があるので、必要書類を先に問い合わせてください。

相続放棄をした人も協議書に押印しますか

家庭裁判所で放棄が受理されると、その人は初めから相続人ではなかった扱いになるので、遺産分割協議に加わりません。

協議書に署名押印を求める必要もありません。

ただし、なぜその人が参加していないのかを示すために、相続放棄申述受理通知書の写しを求められることがあります。

名義変更が遅れると相続税の申告に影響しますか

相続税の課税対象になるかどうかは、名義ではなく亡くなった時点の財産で判定します。

名義変更が済んでいなくても、車は財産として申告に含めます。

申告と納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。

まとめ

車の名義変更は、誰が引き継ぐかが決まってからでないと申請できません。

そして、その判断より前に来るのが相続放棄をするかどうかで、こちらは自分が相続人だと知った時から3か月という期限があります。

車に手を付けると放棄の道が閉じることがあるので、財産と借金の全体像がつかめるまでは、売却も廃車も止めておいてください。

放置しても不動産のような過料はありませんが、自動車税の通知は故人宛に届き続け、相続人が増えるほど印鑑証明書を集める手間が増えていきます。

まずは車検証を開いて、所有者欄が故人なのか信販会社なのかを確かめるところからです。

ぜひ本記事の書類一覧と手続きの順番を参考に、相続放棄の3か月と相続税の10か月から逆算して、車の名義変更を進めてください。

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