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相続放棄の費用はいくら?自分でやれば数千円で済む理由

相続放棄の費用はいくら?自分でやれば数千円で済む理由

相続放棄の申述にかかる裁判所の費用は、相続人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手だけです(裁判所「相続の放棄の申述」/2026年9月時点)。

数万円から十万円台という金額をネットで見て身構えていた人は、その差の正体を知っておいたほうがいい場面です。

差額のほとんどは、司法書士や弁護士に手続きを代わってもらう報酬と、戸籍謄本を何通取り寄せるかで決まります。

しかも申述には、自分が相続人だと知ったときから3か月という期限がついています。

本記事では、印紙800円と切手だけで済む条件・戸籍集めで金額が膨らむ場面・専門家に渡したほうがいい状況・費用を誰が負担するかまで解説します。

相続放棄の費用の内訳は、印紙800円と戸籍の取得費に分かれる

費用を考えるときは、家庭裁判所に納める分と、書類をそろえるために自分で払う分を分けて見ます。

裁判所に納めるのは、申述する相続人1人につき収入印紙800円と、連絡用の郵便切手です。

切手の額と組み合わせは申述先の家庭裁判所ごとに違うので、申述する裁判所に確認してください(裁判所「相続の放棄の申述」/2026年9月時点)。

残りは戸籍関係の書類代です。

市区町村の窓口で払う手数料で、必要な通数は誰が申述するかによって変わります。

ここが2通で終わる人と、10通を超える人に分かれるところです。

費目払う先金額
申述の収入印紙家庭裁判所相続人1人につき800円
連絡用の郵便切手家庭裁判所裁判所ごとに異なるため要確認
戸籍謄本・住民票除票など市区町村通数によって変わる
司法書士・弁護士の報酬依頼先公的な相場の統計はない

表の4行目だけは金額を書けません。

士業の報酬は自由に決められるもので、公的に集計された相場がないためです。

見積もりを比べるときは、着手金と成功報酬の分け方、戸籍の取り寄せ代行が含まれるか、複数人まとめて依頼したときの人数あたりの単価を書面で確認してください。

逆に言えば、この行を自分で引き受ければ費用は表の上3行で止まります。

放棄そのものの仕組みや、借金を引き継がなくなる範囲は相続放棄とは?借金を引き継がない条件と3か月の期限で解説しています。

相続放棄の費用を膨らませるのは、戸籍を何通たどるかという1点

印紙代は誰でも800円です。金額が動くのは戸籍の側で、申述人が被相続人とどういう関係かによって、集める範囲がまったく違います。

配偶者と子は、必要な戸籍が少ない

共通して要るのは、被相続人の住民票除票または戸籍附票と、申述人の戸籍謄本です。

配偶者が申述するなら、これに被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本が加わります。

子が申述する場合も同じで、死亡の記載がある戸籍謄本までで足ります(裁判所「相続の放棄の申述」)。

取り寄せ先が本籍地の市区町村1か所で済むことも多く、費用は通数分の手数料だけになります。

親や兄弟姉妹になると、出生からの戸籍をすべてたどる

被相続人の親(直系尊属)や兄弟姉妹が申述する場合は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要です。

さらに、死亡した子がいればその子の戸籍謄本、兄弟姉妹の申述なら直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本も加わります。

代襲して相続人になった人は、被代襲者の死亡の記載がある戸籍謄本も要ります。

出生からすべてというのは、転籍や婚姻、法改正による改製をまたぐたびに別の戸籍が生まれるという意味です。

生涯に何度も引っ越して本籍を移していれば、その数だけ違う市区町村へ請求します。

1通ずつ郵送で取り寄せれば、返送用の封筒と定額小為替の手数料も通数分かかります。

子が放棄した結果として親や兄弟姉妹に順番が回ってきたときは、この作業量が費用の大半を占めます。

申述する人数が増えれば、印紙もその人数分

印紙800円は「1件につき」ではなく「申述する相続人1人につき」です。

子が3人そろって放棄するなら2,400円になります。

一方で戸籍の一部は共通して使えるものがあるため、ばらばらに動くより同じ時期にまとめたほうが取り寄せの手間は減ります。

誰がいつ申述するかで次の順位の相続人が変わるので、進め方は相続放棄の手続きはどう進める?申述の流れと必要書類で解説しています。

見積もりから抜けやすい費用と、節約すると後悔する部分

実費の総額を読み違えるのは、たいてい戸籍以外のところです。

申述先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所なので、自分の住まいから遠ければ郵送か出張になります。

郵送で出す場合は、往復の郵便代と、裁判所から届く照会書に返送する分の費用がかかります。

照会書は申述の内容を確認するために送られてくる書面で、これに答えて返送するまで手続きは終わりません。

見落とされやすいのは、次の費目です。

  • 定額小為替の発行手数料(戸籍を郵送請求するときに1枚ごとにかかる)
  • 申述先の家庭裁判所へ出す郵便代と、照会書の返送代
  • 被相続人の財産や借金を調べるための費用(信用情報機関への開示請求、登記事項証明書の取得など)
  • 相続人が複数いる場合の、人数分の印紙代

一方で、削らないほうがいい部分もあります。

ひとつは調査です。

放棄は一度受理されると、原則として撤回できません。

あとから価値のある不動産や預金が見つかっても戻せないため、プラスの財産とマイナスの債務を突き合わせる作業は、費用をかけてでも先に済ませる価値があります。

登記事項証明書は法務局で取得でき、名義が親のままかどうかは甲区(所有権に関する事項)で確認します。

手数料は改定されることがあるので、請求する前に法務局の現行料金を見てください。

もうひとつ削れないのが、期限までに間に合わせるための費用です。

3か月の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」で、亡くなった日ではありません。

戸籍の取り寄せが間に合わないときは、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます。

遠方の戸籍を急いで集めるための速達代や、伸長の申立てにかかる費用を惜しんで期限を越えると、放棄そのものができなくなります。

期限の数え方と伸長の手順は相続放棄の期限は3か月|過ぎそうなときの期間伸長の申立てで解説しています。

費用より先に注意したいのが、相続財産を使ってしまうことです。

被相続人の預金を引き出して葬儀費用や公共料金に充てると、単純承認したものとみなされて放棄ができなくなる場合があります。

口座の入出金は止めておきます。

放棄にかかった実費を故人の預金から払うのも、同じ危険があります。

自分の財布から出してください。

相続放棄の費用は申述した本人が払い、控除の対象にもならない

放棄の費用は、申述する人がそれぞれ自分で負担します。

放棄すると初めから相続人でなかったことになるため、遺産から立て替えるという考え方ができません。

兄弟3人が全員放棄するなら、印紙は各自800円ずつです。

戸籍の取り寄せは共通する書類が多いので、実務上は誰か1人がまとめて集め、費用を後で割ることになります。

ここで揉めるのは、集めた1人だけが交通費と郵便代を負担する形になりやすいためです。

取り寄せを始める前に、かかった実費は頭割りにするという話を電話でも口頭でもしておくと、後から数千円で角が立つことを避けられます。

放棄することを親戚にどう伝えるかは相続放棄を親戚に伝える手紙の文例|角が立たない書き方で解説しています。

税金の控除や助成はない

相続放棄の費用について、自治体の助成金や税額控除の制度はありません。

相続税の計算にも影響しません。

基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算しますが、この人数には相続放棄をした人も含めます(相続税法15条2項)。

誰かが放棄したことで残った相続人の控除額が減ることはない、という意味です。

相続税がかかる境目については相続税は誰にかかる?基礎控除3,600万円が分かれ目になるで解説しています。

司法書士・弁護士に渡す境目

自分で申述するか依頼するかは、費用の大小ではなく、次のどれかに当たるかで判断できます。

  • 戸籍をたどる範囲が広く、期限内に集め終わる見通しが立たない
  • 債権者から督促を受けており、対応の窓口を任せたい
  • 放棄すべきかどうかの判断自体が、財産と債務の内容から決められない
  • すでに3か月を過ぎており、それでも申述したい事情がある

書類を集めて書式どおりに記入するだけなら、裁判所のウェブサイトに申述書の書式と記載例が公開されています。判断そのものに迷う段階なら、そこは弁護士に相談する場面です。

よくある質問

相続放棄は本当に800円でできますか

家庭裁判所に納める印紙代は、申述する相続人1人につき800円です。

これに連絡用の郵便切手と、戸籍謄本などの取得手数料が加わります。

切手の額は申述先の家庭裁判所ごとに違うので、事前に確認してください。

自分で書類を集めて申述する限り、専門家への報酬は発生しません。

相続放棄の費用を故人の預金から払ってもいいですか

やめてください。

被相続人の預金を引き出して使うと、相続財産を処分したものとみなされ、単純承認と判断されて放棄ができなくなる場合があります。

申述前は口座の入出金を止め、実費は自分の資金から払います。

兄弟全員で放棄すると費用は何倍になりますか

印紙代は申述する人数分なので、3人なら2,400円です。

戸籍は共通して使えるものがあるため、単純に3倍になるわけではありません。

誰か1人がまとめて取り寄せ、実費を後で分けるほうが総額は下がります。

相続放棄をすると、お墓や仏壇も引き継げなくなりますか

墓や仏壇、位牌といった祭祀(さいし)財産は相続財産とは別の扱いで、1人が引き継ぎます。

相続放棄をした人でも祭祀を引き継ぐ役目に就けます(民法897条)。

放棄したから墓を管理できないということにはなりません。

3か月を過ぎてしまった場合、費用は変わりますか

裁判所に納める印紙は同じ800円です。

ただし期限を過ぎた申述は、なぜ知るのが遅れたのかを説明する資料が必要になり、受理されるかどうかも申述の内容によります。

この段階は弁護士に相談する場面で、その報酬が加わります。

期限内であれば、間に合わないと分かった時点で伸長の申立てをするほうが費用も手間も少なくなります。

まとめ

相続放棄の費用が数千円で収まるか十万円台になるかを分けるのは、士業に代行を頼むかどうかと、戸籍を何通たどるかの2点です。

配偶者や子の申述なら書類は少なく、印紙800円と切手、戸籍数通の手数料で終わります。

親や兄弟姉妹の申述で、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて集める立場になったときに、金額と手間がまとまって増えます。

費用を抑えるために削ってはいけないのが、財産と債務を突き合わせる調査と、期限に間に合わせるための実費です。

3か月は自分が相続人だと知った時から数え、間に合わなければ期間内に伸長を申し立てられます。

ぜひ本記事の費用内訳の表と、申述人ごとに必要な戸籍の範囲を照らし合わせて、自分で進めるか依頼するかを決めてください。

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