相続時精算課税の手続き費用|税理士に頼む場合の相場

税理士事務所の料金ページに「贈与税申告 ◯万円〜」と書かれていても、相続時精算課税の選択届出書がその金額に含まれるのかまでは書かれていません。総額を動かすのは、贈与する財産に土地や建物が入るかどうかと、申告を何年分お願いすることになるかの2点です。
この制度を選ぶと、贈与した財産は将来の相続税の計算に持ち戻されます。
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です(相続税法27条)。
届出のときに払う報酬だけを比べても、相続が起きたときにもう一度費用がかかる構造は見えません。
本記事では、税理士報酬と実費の分かれ方・費用を動かす財産の中身・見積書で抜けやすい登記費用と書類の取り寄せを解説します。
相続時精算課税の手続き費用は、税理士報酬と実費の2階建て
税理士報酬について、公表された相場調査は2026年9月時点で確認できていません。
事務所ごとに料金の立て方が違い、同じ「贈与税申告」という名前でも中身が揃っていないためです。
金額の比較に入る前に、何にいくら払う構造なのかを分けておくと、見積書の読み方が変わります。
出ていくお金は、税理士に払う報酬と、官公署に払う実費に分かれます。さらに不動産を動かすなら、登記の費用がもう一段乗ります。
| 費目 | 支払先 | 金額を左右するもの |
|---|---|---|
| 贈与税の申告書と選択届出書の作成 | 税理士 | 贈与財産の種類、贈与者と受贈者の人数 |
| 不動産の評価 | 税理士 | 土地の筆数、形状、貸している土地かどうか |
| 戸籍謄本・住民票などの取り寄せ | 市区町村(代行なら税理士にも) | 通数、本籍地が遠方かどうか |
| 登記事項証明書・固定資産評価証明書 | 法務局・市区町村 | 不動産の個数、請求方法 |
| 名義変更の登記 | 法務局(登録免許税)・司法書士 | 不動産の評価額、司法書士に頼むかどうか |
税理士に払う分は「届出書1枚」の料金ではない
相続時精算課税を使うには、贈与税の申告書と一緒に選択届出書を出します。
書類の枚数だけを見ると軽い手続きに見えますが、税理士の作業量の大半は書類作成ではなく、贈与する財産をいくらと評価するかの部分に集まります。
現金を渡すだけなら金額が最初から確定しているのに対し、土地は評価の方法によって数字が動くためです。
見積もりの差が出るのもここです。
制度そのものの仕組みは相続時精算課税の基本的な考え方で解説しています。届出書に添える書類と提出先は相続時精算課税の届出に必要な書類で解説しています。
実費は自分で動けば減らせる
戸籍謄本や住民票、登記事項証明書は、本人が窓口やオンラインで請求できます。
税理士に代行してもらうと手数料が上乗せされる事務所もあるため、見積書に「実費」とだけ書かれていたら、取り寄せ代行が含まれるのかを確認してください。
親の本籍地が遠方で、しかも転籍を繰り返している場合は、郵送でのやり取りに日数がかかります。
期限が迫っているなら、代行を頼んだほうが結果として安く済む場面もあります。
税理士費用を動かすのは、贈与する財産の中身と申告が続く年数
同じ制度を使う手続きでも、依頼料が数倍変わることがあります。作業量を決める変数は主に3つです。
- 贈与する財産が現金だけか、不動産や自社株を含むか
- 土地が何筆あり、評価が難しい形状かどうか
- 贈与者と受贈者の組み合わせが何通りあるか
現金だけの贈与と、土地を含む贈与では作業がまるで違う
現金の贈与なら、金額はそのまま申告書に書けます。
土地はそうはいきません。
路線価をもとに計算しますが、間口が狭い土地、奥行きが極端に長い土地、道路に接していない部分がある土地では補正の判断が入ります。
他人に貸している土地や、アパートが建っている土地は、さらに評価の区分が分かれます。
現地や公図を見ないと決められない要素が増えるほど、報酬は上がります。
自社株を贈与する場合は、会社の決算書をもとに株価を算定する作業が別に発生します。事業承継が絡む依頼は、贈与税の申告とは別の料金体系になっている事務所が多く、見積もりの取り方も変わります。
選んだ年だけで終わる手続きではない
相続時精算課税は、一度選ぶとその贈与者からの贈与について暦年課税に戻せません。
その親からの贈与は、以後もこの制度の枠組みで扱われます。
翌年以降も贈与を続ける予定があるなら、申告を何年分お願いすることになるのかを最初に数えておいてください。
1回あたりの報酬が安くても、5年、10年と続けば総額は変わります。
戻せない点そのものの注意は相続時精算課税を選ぶ前に確認したい点で解説しています。
もう一つの継続コストが、相続が起きたときの申告です。
この制度で贈与した財産は相続税の計算に持ち戻されるため、相続税の申告が必要になったとき、税理士は過去の贈与分まで含めて計算します。
贈与のときの報酬と、相続のときの報酬は別に発生する、という前提で総額を見てください。
相続時精算課税の見積もりで抜けやすいのは、登記費用と書類の取り寄せ
見積書の金額が最終の支払額と食い違う原因は、たいてい税理士の報酬ではなく、その外側にある費目です。とくに不動産を贈与するときは、贈与税の申告と不動産の名義変更がまったく別の手続きになります。
名義変更の登記は税理士の仕事に入っていない
贈与で不動産を移したら、法務局で所有権移転の登記をします。
ここで登録免許税がかかり、手続きを司法書士に頼めばその報酬も別に発生します。
税理士事務所が提携先を紹介してくれることはありますが、見積書の金額に含まれているとは限りません。
「この金額で名義の書き換えまで終わりますか」と一言で確認できます。
あわせて、不動産取得税の扱いも聞いておいてください。
贈与による取得は、相続による取得と課税の扱いが異なります。
実家そのものを動かす費用の全体像は実家じまいにかかる費用の内訳で解説しています。
期限に遅れると、費用ではなく制度そのものを失う
選択届出書には提出期限があり、この期限を過ぎると、その年の贈与についてこの制度を使えなくなります。
急ぎの依頼になると特急料金を設定している事務所もあり、報酬が上振れします。
期限そのものと、遅れた場合の扱いは選択届出書の提出期限で解説しています。
削ると後で高くつくのは、贈与の記録を残す部分
費用を抑えたい気持ちが向かいやすいのが、贈与契約書の作成や書類の保管です。
ところが相続時精算課税は、何十年か先の相続のときに過去の贈与を合算する制度です。
そのときに残っていなければならないのは、贈与契約書、贈与税の申告書の控え、選択届出書の控えの3点です。
控えが見つからないと、相続税の申告で贈与額を証明できず、税理士が過去の申告内容を調べ直す作業が発生します。
最初に数千円から数万円を惜しんだ結果、相続のときに調査の手間が積み上がる形になります。
土地を贈与するときに、もう一つ確認しておく論点があります。
小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた宅地を相続で取得した場合に330平方メートルまで評価額を80%減額できる制度です(租税特別措置法69条の4)。
生前に贈与で動かした宅地がこの特例との関係でどう扱われるかは、個別の事情で判断が分かれる部分になります。
自宅の土地を贈与するかどうかを決める前に、税理士に相談する段階だと考えてください。
贈与を受けた子が払うのが基本|相続時精算課税の費用を兄弟にどう説明するか
贈与税の申告と選択届出書の提出は、財産を受け取った側の手続きです。
そのため税理士報酬も、贈与を受けた子が払う形が基本になります。
ただし実務では、親が「手続きの費用も出す」と言って親の口座から支払う例もあります。
どちらが払うかで税務上の扱いに影響が出るかどうかは、金額や状況によって判断が分かれるため、依頼の段階で税理士に伝えておいてください。
兄弟に伏せたまま進めると、相続のときに必ず表に出る
この制度で贈与した財産は、相続税の計算のときに相続財産に足し戻されます。
相続税の申告書には過去の贈与が載るため、遺産分割の話し合いをしている段階で、一人だけが生前に多額の贈与を受けていたことが分かります。
順番として、話が進んでから発覚するのがいちばん揉めます。
説明のときに口頭で「もらった」「もらっていない」をやり取りしても平行線になります。机の上に出すのは書類です。
- 贈与契約書と、贈与税の申告書の控え
- 贈与した不動産の固定資産税の年額と、直近の査定額
- 親に残る財産の一覧(預金の残高、不動産、保険)
相続税がそもそもかかる規模なのかは、基礎控除で決まります。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円です(相続税法15条)。
ここを超えなければ申告そのものが不要になります。
自分の家がどちら側かは相続税がかかるかどうかの分かれ目で解説しています。
税理士報酬を払ってでも届出をする価値があるかは、税額との比較で決まります。贈与税シミュレーターで暦年課税のときの金額を出せます。
無料で使える窓口と、有料に切り替える境目
贈与税の申告について、補助金や助成金の制度は確認できていません。
費用を抑える手段として現実的なのは、無料の相談窓口を使い分けることです。
税務署では申告書の書き方について相談を受け付けており、制度の一般的な説明や書類の様式についてはここで足ります。
有料の依頼に切り替える境目は、財産の評価が必要になるかどうかです。
現金だけを贈与し、金額もはっきりしているなら、自分で申告書を作って提出する人もいます。
土地や自社株が入る、贈与者が複数いる、将来の相続税まで見通したいという段階になったら、そこからは税理士の仕事です。
生前の準備にどこまでお金をかけるかという全体の考え方は終活サービスに払う費用の見方で解説しています。
よくある質問
相続時精算課税の届出だけを税理士に頼めますか
選択届出書は贈与税の申告書と一緒に提出するものなので、届出書だけを切り出して依頼する形は一般的ではありません。
事務所によっては「贈与税申告一式」の中に届出書の作成が含まれ、別料金にはならない扱いもあります。
見積もりを取るときは、届出書が料金に含まれるかを確認してください。
自分で申告書を作れば費用はかかりませんか
本人が自分の申告書を作って提出することは認められています。
かかるのは戸籍謄本や登記事項証明書などの実費だけです。
ただし土地の評価が必要な場合、評価額の誤りは後から修正申告や加算税につながります。
財産が現金だけかどうかが、自分でやるかどうかの判断材料になります。
不動産を贈与すると、税理士費用のほかに何がかかりますか
法務局での所有権移転登記にかかる登録免許税と、司法書士に頼む場合はその報酬が加わります。
さらに不動産取得税の対象になるかどうかも確認が必要です。
税理士の見積書にはこれらが含まれていないことがあるため、名義変更まで込みの総額を聞いてください。
見積もりを取るとき、何を伝えれば正確な金額が出ますか
伝える内容は次のとおりです。
- 贈与する財産の種類と、土地なら所在地と筆数
- 贈与者と受贈者が誰で、何人いるか
- 今後も毎年贈与を続ける予定があるか
- 名義変更の登記まで頼みたいか
この4点が揃っていない状態で出てくる金額は、あとから増える前提の概算になります。
親が亡くなったあとに、贈与を受けていたことに気づいたらどうなりますか
相続時精算課税で贈与された財産は相続税の計算に持ち戻されるため、相続税の申告のときに申告書へ反映させます。
申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月です。
あわせて、親名義のまま残っている不動産があれば、取得を知った日から3年以内に相続登記をする義務があります。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
相続人が見つからないなど手続きが進まない事情がある場合の流れは相続財産清算人の選任手続きで解説しています。
まとめ
相続時精算課税の手続き費用は、届出書を作る手間の値段ではありません。
贈与する財産に土地や自社株が含まれるか、申告が何年続くか、名義変更の登記まで頼むかで動きます。
税理士報酬と官公署の実費、それに登記関係の費用を分けて見積書を読めば、他の事務所と比べられる形になります。
そして、この制度は贈与のときに費用が終わりません。
相続が起きたときにもう一度、過去の贈与を含めた計算が必要になります。
贈与契約書と申告書の控えを残しておくことが、そのときの費用を抑える手段になります。
ぜひ本記事の費目の表と、見積もりを取るときに伝える4点を手元に置いて、税理士事務所への問い合わせを進めてください。


