実家じまいの費用はいくら?片付けから売却までの内訳

草刈りのために年に数回帰るだけの家でも、固定資産税と火災保険料は毎年出ていきます。全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高です(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。
実家じまいの費用は、家財を外に出す費用と、建物を壊す費用、それに名義を動かして売るための実費の3か所から出ていきます。総額の目安を見ても自分の家に当てはめられないのは、同じ広さでも物量と搬出経路で見積額が大きく動くためです。
本記事では、家財処分費と解体費の内訳・見積額が倍近く動く条件・追加請求になりやすい費目・兄弟で費用を分けるときの決め方を解説します。
実家じまいの費用は、家財の処分・建物の解体・名義変更の実費に分かれる
検索して出てくる「実家じまいの総額」は、築年数も家財の量もばらばらな家をならした数字です。
自分の家がその平均より高くつくのか安く済むのかは、内訳に割ってからでないと分かりません。
支払いが発生する場所は、次の表のように整理できます。
金額そのものは業者と地域で開きが出るため、ここでは「何によって動くか」を並べます。
| 費目 | 発生する場面 | 金額を動かすもの |
|---|---|---|
| 家財の処分・遺品整理 | 売却や解体の前 | 物量、間取り、搬出経路、作業人数、買取が付くか |
| 清掃・残置物の撤去 | そのまま売る場合 | 汚れの程度、畳や壁紙の傷み |
| 建物の解体 | 更地で売る場合 | 構造、延床面積、重機が入れるか、道路の幅 |
| 庭木・塀・物置・浄化槽の撤去 | 解体と同時 | 数量と、処分先までの距離 |
| 仏壇・お墓の整理 | 家財を出す前 | 引き取り先、遺骨を移すかどうか |
| 相続登記 | 売る前に必ず | 登録免許税(固定資産税評価額をもとに計算)、司法書士に頼むか |
| 戸籍・住民票などの取得 | 登記と売却の準備 | 出生までさかのぼる戸籍を、いくつの市区町村から取り寄せるか |
| 測量・境界の確定 | 境界標が見つからないとき | 隣地の数、道路との境界を役所と確認する必要があるか |
| 仲介手数料・譲渡所得税 | 売却後 | 売却価格、取得費、控除が使えるか |
| 固定資産税・火災保険・光熱費・草刈り | 手放すまで毎年 | 評価額、通う回数、管理を人に頼むか |
このうち、家財の処分費は自分で減らせる部分が最も大きい費目です。間取り別の目安と、量が増えたときの上がり方は遺品整理の費用相場で解説しています。
見落とされやすいのは表のいちばん下、毎年出ていく維持費のほうです。
売るか貸すか残すかを決めかねている間も、固定資産税と火災保険、それに通うための交通費は止まりません。
1年分をいったん合計してみると、判断を1年延ばしたときのコストが具体的な数字になります。
急いで売る必要はありませんが、その数字を知らないまま数年が過ぎると、後から「片付けの費用より維持費のほうが多かった」ということが起こります。
実家じまいの費用が同じ広さでも倍近く違うのは、物量と搬出経路が原因
業者に電話をすると「見てみないと分かりません」と言われます。
現地を見ないと出せないのは、値段を渋っているからではなく、作業時間を決める条件が家ごとに違うためです。
何を見られているのかが分かれば、自分の家の見積がどちら側に振れるかは予想できます。
物量は「築年数」ではなく収納の数で見る
同じ4LDKでも、押し入れが空の家と、納屋と蔵と物置が満杯の家では作業量がまるで違います。
業者が数えているのは部屋数ではなく、開けて中身を出す必要がある場所の数です。
押し入れ、天袋、階段下、床下収納、仏間の地袋、屋根裏、それに屋外の物置まで含めて数えてください。
布団と衣類は体積のわりに軽いので処分費は伸びにくく、逆に本・食器・タンス・家電はトラックの台数を押し上げます。
自分で減らせば安くなるのは事実です。
ただし、可燃ごみの袋で出せる量には自治体の収集ルールがあり、粗大ごみは予約から収集までに日数がかかります。
遠方から通っているなら、何回帰れるかで自力処分できる量の上限が決まります。
トラックが横付けできるかどうかで人件費が変わる
玄関前に2トン車が着けられる家と、道が細くて手前に停めて台車で運ぶ家では、同じ物量でも投入する人数と時間が変わります。
旧市街地や坂の途中に建つ家は、この一点で見積が上がります。
2階から下ろす家具の量、階段の幅と踊り場の広さも同じ理由で影響します。
建物の解体でも、同じ条件が効きます。
重機が入れない敷地は手壊しの割合が増え、がれきを小分けに運び出す手間が加わります。
前面道路の幅と、隣家との隙間がどれだけあるかを、写真に撮って見積依頼に添えておくと、現地調査の前後で金額が大きくぶれにくくなります。
建物の構造と、残置物を入れたまま壊すかどうか
解体費は木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の順に上がります。
延床面積が同じでも、壊した後に出る廃材の重さと処分方法が違うためです。
さらに、家財を残したまま解体を頼むと、本来は家庭の不用品として処分できたものが解体廃材と混ざり、分別費を上乗せされることがあります。
先に家財を出してから解体するほうが、合計額は抑えやすくなります。
時期の影響もあります。
年度末や年末は引っ越しと重なって業者の予定が埋まりやすく、希望日を動かせない依頼は割高になりがちです。
逆に、いつでもよいと伝えられるなら、日程調整を業者に任せることで調整の余地が生まれます。
見積書から抜けやすい費目と、削ると後で高くつく費目
「一式」とだけ書かれた見積書は、現場で品目が増えたときに追加請求の根拠になります。総額の安さより、内訳が品目ごとに分かれているかどうかを先に見てください。
見積に含まれていないことが多いもの
最初の見積に入っておらず、作業当日や解体中に出てくる費目には共通の顔ぶれがあります。
- エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機のリサイクル料金と収集運搬料
- 消火器、タイヤ、塗料、農薬、ピアノ、金庫、仏壇といった処理に手間がかかるもの
- 庭木の伐採と抜根、ブロック塀、カーポート、物置、犬小屋の撤去
- 浄化槽の撤去と埋め戻し、井戸の処理、敷地内の残土処分
- 解体後の建物滅失登記と、水道メーターの撤去や仮設の手配
- 予定より物量が多かった場合のトラック追加分
建物を壊すと登記簿上の建物は残ったままになるため、滅失登記をしないと土地の売却手続きが止まります。解体業者の見積に含まれているのか、自分で法務局へ出すのか、司法書士や土地家屋調査士に頼むのかを、契約前に確認してください。
削ると、あとで取り返しがつかない費目
安くする方法を探すときに、手を付けてはいけない部分があります。
まず、家の中を一度も確認せずに丸ごと処分を頼むことです。
捨ててしまうと相続の手続きが止まる書類が、実家には残っています。
- 通帳とキャッシュカード、貸金庫の鍵と契約書
- 保険証券、有価証券、借用書
- 不動産の権利証と登記識別情報
- 遺言書、印鑑と印鑑登録証、年金手帳
遺言書が出てきた場合、自筆証書遺言と秘密証書遺言は封を開けずに家庭裁判所へ持ち込んで検認を受けます。
公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が要りません。
借用書が出てきたときは、相続放棄の判断に関わります。
放棄は自分が相続人だと知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、この期間内に財産と借金の全体像をつかめないなら、期間の伸長を申し立てる方法があります。
もうひとつ削ってはいけないのが、業者の許可の確認です。
家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が、買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可が要ります。
産業廃棄物の許可だけでは家庭ごみを運べません。
「無料回収」を掲げて回るトラックはこの許可を持っていないことがあり、渡したものが不法投棄されれば、出した側に問い合わせが来ることもあります。
遺品整理士は民間資格で、持っていても廃棄物を運ぶ資格にはなりません。
許可番号を名乗れるかどうかを、資格とは別に確かめてください。
その場で買い取ると言われたときは、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は品物の引き渡しを拒めます(特定商取引法58条の14・58条の15)。急かされて持ち帰られると取り戻すのが難しくなるため、迷ったら渡さずに日を置くという選択肢があります。
境界の確定も、省くと売却の段階で止まる費目です。境界標が見当たらない、隣家の塀がどちら側の敷地に建っているか分からないという状態のまま売り出すと、買主側から測量を求められて結局あとから費用が発生します。
実家じまいの費用を誰が出すかと、税の特例で戻る分
片付けが進まない理由が費用の総額ではなく、誰が出すかを決められないところにある家は多くあります。ここは感情の問題に見えて、実際には手続きの順番で解ける部分が残っています。
立て替えた費用をどう精算するか
実家が親名義のままなら、相続人全員が関係者です。
売るには相続登記を済ませて名義を相続人に移す必要があり、共有のまま売却するなら共有者全員の同意が要ります。
持分だけを動かす方法も含めた考え方は共有名義の不動産の扱いで解説しています。
実務でもめやすいのは、近くに住む1人が片付け費用と交通費を立て替え、売却代金は法定相続分で分けるという形です。
立て替え分を売却代金から先に精算するのか、各自が都度負担するのかを、作業を始める前に決めて書面に残してください。
遺産分割協議書の書き方は相続関係によって変わるので、文面は司法書士や税理士に確認する部分です。
領収書と交通費の記録は、日付と金額が分かる形で残しておきます。
仏壇と位牌、お墓は相続財産とは別扱いで、祭祀(さいし)財産として1人が引き継ぎます(民法897条)。
指定がなければ慣習により、それでも決まらないときは家庭裁判所が定めます。
この引き継ぎ役は相続放棄をした人でもなれるため、「財産は放棄したから仏壇も関係ない」とはなりません。
遺骨を別の場所へ移すなら、現在の墓地がある市区町村が発行する改葬許可証が要ります。
申請には受け入れ先の受入証明書が必要なので、移す先が決まらないと手続きが始まりません。
売った年に使える控除には期限がある
以下の制度は2026年9月時点の内容です。
相続した空き家を売ったときは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(租税特別措置法35条3項)。
1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、対象は2027年12月31日までの譲渡です。
相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。
建物を解体して売るか、耐震改修して売るかで扱いが変わるため、壊す前に税務署か税理士へ確認する順番になります。
相続税のほうは、基礎控除が3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
相続人が3人なら4,800万円までは申告そのものが不要になります。
親が住んでいた宅地は330平方メートルまで評価額を80%減らせる小規模宅地等の特例がありますが、同居していない親族が使うには「家なき子」と呼ばれる要件を満たす必要があり、適用するには申告が要ります。
相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。
登記のほうにも期限があります。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日になります。
登録免許税と司法書士報酬の考え方は相続登記の費用の内訳で解説しています。
補助金は自治体ごとに内容も期限も違う
解体費や片付け費の一部を助成する制度を設けている市区町村があります。
ただし、対象になる建物の条件、申請の受付期間、予算の上限は自治体ごとに違い、着工後の申請は認められないことがほとんどです。
見積を取った段階で、家がある市区町村の空き家担当窓口へ先に問い合わせてください。
どういう種類の支援があるかの全体像は実家じまいに使える補助金で解説しています。
反対に、放置した場合の負担も条件で決まります。
倒壊のおそれや衛生上の問題があると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがあると「管理不全空家」に指定され、勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れます。
放置しただけで自動的に税額が上がるわけではなく、指定と勧告の段階を踏んだうえでの話です。
年に数回でも草を刈り、郵便物を止め、雨漏りを直している家がいきなり勧告を受けることはありません。
よくある質問
実家じまいの総額は、だいたいいくらと考えておけばいいですか
全国一律の相場として示せる公的な統計はありません。
目安を知りたいときは、家財の処分、建物の解体、登記と売却の実費という3つに分けて、それぞれ2社以上から見積を取るのが確実です。
1社だけだと高いのか安いのか判断できず、3つをまとめて「一式」で出す見積は比較に使えません。
家財の処分と解体は、同じ業者にまとめたほうが安くなりますか
まとめると窓口はひとつで済みますが、安くなるとは限りません。
解体業者が家財処分を下請けに出す場合、その分の手数料が乗ります。
逆に、家財を残したまま解体すると分別費が上乗せされることがあります。
両方の見積を、分けた場合とまとめた場合の2通りで出してもらって比べてください。
更地にしてから売るのと、古家付きのまま売るのはどちらが得ですか
建物を壊すと解体費が先に出ていき、翌年の固定資産税では住宅用地特例が外れます。
一方で、古家付きのままだと買主が解体費を見込んで価格を下げてくることがあります。
相続した空き家の3,000万円特別控除は、解体して土地として売る場合と建物を残す場合で要件が変わるため、壊す前に不動産会社と税務署の両方へ確認する順序になります。
遠方に住んでいます。通えないと費用はどれくらい増えますか
増えるのは、自分で減らせたはずの家財の処分費と、立ち会いのための交通費です。
作業の立ち会いは、初回の見積時と、貴重品の確認時、引き渡し時の3回に絞ると回数を減らせます。
業者によっては作業の様子を写真や動画で共有する対応があるので、契約前に確認してください。
何をどの順番で進めるかは実家じまいの手順で解説しています。
仏壇やお墓の整理も、実家じまいの費用に含めて考えるべきですか
家の中から仏壇を出す以上、行き先を決めないと片付けが止まります。
遺骨を移すなら改葬許可証が必要で、受け入れ先が決まってからでないと申請できません。
移し先の費用は、樹木葬が平均71.7万円、納骨堂が81.5万円、一般墓が152.0万円です(鎌倉新書 第17回お墓の消費者全国実態調査/2026年1月時点)。
永代供養と書かれていても永久ではなく、多くの施設では三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)されます。
個別安置の年数と、合祀後は取り出せなくなることを契約前に確認してください。
空き家のままにしておくと、固定資産税は6倍になりますか
自動的に上がることはありません。
市区町村が特定空家または管理不全空家に指定し、勧告を出して初めて住宅用地特例が外れます。
ただし、その手前でも固定資産税と火災保険料、草刈りや管理の委託費は毎年かかり続けます。
まとめ
実家じまいの費用は総額で語られがちですが、支払いの中身は家財の処分と建物の解体、名義変更と売却の実費、それに手放すまで毎年出ていく維持費に分かれます。
金額を動かしているのは築年数ではなく、収納の数とトラックが着けられるかどうか、そして重機が入る敷地かどうかです。
見積を比べるときは総額ではなく、リサイクル料金や庭木、滅失登記といった品目が最初から入っているかを見てください。
費用を抑える余地は家財の処分費にありますが、書類を探さずに丸ごと処分することと、許可を確認せずに引き渡すことだけは削れません。相続登記は取得を知った日から3年以内、2024年4月より前の相続は2027年3月31日が期限で、相続した空き家の3,000万円特別控除は2027年12月31日までの譲渡が対象です。
ぜひ本記事の費目一覧と「見積に含まれていないことが多いもの」のリストを手元に置いて、今ある見積書に抜けがないかを確かめてください。


