空き家の活用方法6つ|使わない実家を動かす順番を解説

空き家の活用は、登記簿の甲区に載っている所有者の名前から決まります。
名義が親のままなら、売ることも貸すこともできません。
相続で取得した不動産は取得を知った日から3年以内の登記が義務で、2024年4月1日より前に相続したものは2027年3月31日が期限です。
全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高になりました(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。それでも実家が動かないのは、値段ではなく、仏壇と兄弟の同意と家財の行き先が決まらないためです。
本記事では、空き家の活用方法6つの違い・名義の確かめ方と集める書類・2027年12月31日で期限を迎える相続空き家の3,000万円特別控除まで解説します。
空き家の活用方法6つ|売る・貸す・使う・譲るで手間が変わる
使わない実家に対して取れる道は、大きく6つに分かれます。
売る形が2つ、人に使ってもらう形が3つ、手放す形が1つです。
どれが良いかは立地と建物の状態で変わりますが、その前に「先に何を用意しないと動けないか」が方法ごとに違います。
| 活用方法 | 向いている条件 | 動く前に要るもの |
|---|---|---|
| 中古住宅として売る | 雨漏りや傾きがなく、そのまま住める状態にある | 名義の整理と、家財の撤去 |
| 解体して土地として売る | 建物の傷みが大きく、買い手が土地を探している地域にある | 解体費の見積もりと、更地にした後の固定資産税の確認 |
| 住宅として貸す | 最低限の修繕で人が住め、借り手の見込みがある | 修繕費の見積もりと、管理を誰がするかの取り決め |
| 自分や親族が使う | 帰省の拠点にする、子が移り住む予定がある | 名義を使う人1人にまとめること |
| 空き家バンクに登録する | 一般の市場に出しても反応が薄い地域にある | 自治体ごとの登録条件の確認 |
| 無償で譲る | 隣地の所有者や親族に引き取る意思がある | 相手との合意と、登記費用をどちらが持つかの決定 |
6つを見比べると、最初の1歩は全部同じです。
名義が親のままなら売買契約も賃貸借契約も結べませんし、家財が残ったままでは査定も内見もできません。
選択肢を絞り込む作業より、共通の前提を片づけるほうが先に来ます。
動かす順番は次のようになります。
- 登記事項証明書と戸籍で、名義と相続人を確定する(自分ひとりで動けます)
- 固定資産税の年額と、複数の不動産会社の査定額を並べる
- 仏壇と家財の行き先を決める(ここから兄弟の同意が要ります)
- 6つの中から選び、不動産会社か自治体の窓口へ持ち込む
上から3つは、どの方法を選んでも無駄になりません。
売るか貸すかで迷っている段階でも、名義と数字を先に揃えておけば、決めた日にそのまま動けます。
売る・貸す・譲るの向き不向きは空き家を売る・貸す・譲るの選び方で解説しています。
地域の相場では買い手がつかないと言われた家については、空き家バンクの登録条件と使い方で解説しています。
空き家を動かす最初の一手は、登記簿の甲区を見ること
登記事項証明書を取ると、甲区に所有権に関する事項が並びます。
ここに載っている名前の人しか、その不動産を売ったり貸したりできません。
名義が亡くなった親のままなら、活用の話はその時点で止まります。
相続人の誰かが草を刈り、固定資産税を払っていても、それで名義が移ることはありません。
相続登記は取得を知った日から3年、過去の相続は2027年3月31日まで
2024年4月1日から、相続で不動産を取得した人には、取得を知った日から3年以内に登記を申請する義務があります。
正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
この義務は施行日より前に相続した不動産にも及び、その場合の期限は2027年3月31日と決まっています。
実家が空き家になって数年が過ぎている人ほど、残り時間は短くなっています。
登記を入れると、その不動産を自分の判断で動かせるようになります。義務だから仕方なくやる手続きではなく、売却も賃貸も譲渡も、ここを通らないと先がありません。
相続人が複数なら、活用方法を選ぶのも全員
遺言が無ければ、誰が実家を取得するかは相続人全員の話し合いで決めます。
遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印が要るため、1人でも連絡が取れなければ手続きは進みません。
相続人が誰かは、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をつないで確定させます。
前妻との間に子がいた、認知した子がいたという事実は、戸籍を取り寄せて初めて分かることもあります。
建物の傷みが激しく、負債のほうが大きいと分かった場合は相続放棄という選択もあります。
放棄は自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する手続きで、起算日は亡くなった日ではありません。
間に合わないときは、期間内に家庭裁判所へ伸長を申し立てられます。
遺産分割で取り分をゼロにしただけでは債務は残りますから、両者を同じものとして扱わないでください。
相続税の申告と納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、これを超えなければ申告そのものが不要になります。
自分の家が申告の対象かどうかは相続税の基礎控除と対象になる人で解説しています。
集める書類と、取り寄せ先の窓口
名義と数字を確かめる書類は4種類です。
取り寄せ先がそれぞれ違い、郵送でできるものと平日の窓口に行くものが混ざります。
遠方に住んでいるなら、まとめて請求の段取りを組んでおくと帰省の回数が減ります。
登記事項証明書は法務局
登記事項証明書は所有者本人でなくても取得できます。
窓口のほか、オンラインで請求して郵送で受け取る方法もあり、手数料は請求方法によって違います。
改定されることがあるため、現行の額は法務局の案内で確認してください。
見る場所は2か所です。
甲区で所有者が誰になっているかを確かめ、乙区で抵当権が残っていないかを見ます。
住宅ローンを完済していても抹消の登記をしていなければ記録は残ったままで、売却の前に抹消の手続きが必要になります。
なお、登記は住所ではなく地番で管理されています。
請求のときは、固定資産税の課税明細書に載っている地番と家屋番号を控えていってください。
戸籍謄本と除籍謄本は本籍地の市区町村
相続人を確定するには、亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍が要ります。
現在の戸籍だけでは足りず、除籍謄本や改製原戸籍謄本を順にさかのぼります。
転籍をしていれば、その回数だけ請求先の市区町村が増えます。
本籍地が遠い場合は郵送でも請求できますが、定額小為替と返信用封筒を用意するぶん日数がかかります。届くまでの期間は市区町村によって違うので、急ぐなら事前に電話で確認してください。
固定資産税の課税明細書は市区町村の税務課
毎年春に届く納税通知書に同封されている書類で、土地と建物それぞれの評価額、地番、家屋番号が載っています。
手元に無ければ市区町村の税務課で確認できます。
売るか貸すかを決める前に、この年額を把握しておいてください。
空き家のまま持ち続けた場合に毎年出ていく金額が、判断の土台になります。
建築時期が分かる書類
相続した空き家を売るときに使える3,000万円の特別控除は、1981年5月31日以前に建築された家屋であることが要件の一つです。
新築年月日は登記事項証明書の表題部で確認でき、建築確認済証や検査済証が残っていれば併せて探しておきます。
要件はほかにもあり、使えるかどうかの判断は税務署か税理士に渡す領域です。
空き家の売却は2027年12月31日が一区切り|期限の並べ方
活用の判断に関わる期限は複数あり、起算日がそれぞれ違います。カレンダーに落とすときは、亡くなった日ではなく「知った日」を基準にするものがあることに注意してください。
| 手続き・制度 | 期限 | 起算日・区切り |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 3か月 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から |
| 準確定申告 | 4か月 | 相続の開始を知った日の翌日から |
| 相続税の申告・納付 | 10か月 | 相続の開始を知った日の翌日から |
| 相続登記 | 3年 | 不動産を取得したことを知った日から(2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日まで) |
| 相続空き家の3,000万円特別控除 | 2027年12月31日まで | その日までに譲渡したものが対象 |
売却を考えているなら、いちばん外側にある期限が3,000万円特別控除です。
相続した空き家を売ったときの譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度で、1981年5月31日以前の建築であることなどの要件を満たす必要があります。
相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。
買い手を探して契約し、引き渡すまでには時間がかかりますから、期限の年に動き出すのでは間に合わないこともあります。
相続税の申告が必要な家では、小規模宅地等の特例も検討の対象になります。
被相続人が住んでいた宅地は330平方メートルまで評価額を80%減額できますが、同居していない親族が使うには要件があり、特例を使って税額が0円になる場合でも申告は必要です。
売却の時期と特例の適用は絡み合うので、10か月の期限が来る前に税理士へ相談する段階に入ります。
もう一つ、待っているあいだに負担が増える方向の話もあります。
倒壊のおそれや衛生上の問題があると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがある状態だと「管理不全空家」に指定されます。
指定を受けて勧告に至ると、固定資産税の住宅用地特例が外れます。
放置しただけで自動的に税額が上がるわけではなく、指定と勧告の段階を踏むという建て付けです。
上がる条件と時期は空き家の固定資産税が上がる条件で解説しています。
空き家が動かない原因は、値段ではなく仏壇と兄弟と家財
名義も数字も揃ったのに手が止まる場面には、共通する3つの詰まりどころがあります。どれも不動産の話ではありません。
仏壇と位牌は、相続財産とは別に1人が引き継ぐ
墓・仏壇・位牌といった祭祀(さいし)財産は、預金や不動産と同じ枠では分けません。
指定が無ければ慣習に従い、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
この役目を引き受けた人が、実家を片づけた後の仏壇の置き場所も背負うことになります。
相続放棄をした人でも祭祀を引き継ぐことはできるので、財産の話と切り離して決めてかまいません。
家を売ると決めても、仏壇の行き先が決まらなければ引き渡しの日は来ません。誰の家に移すのか、寺に相談して閉眼の供養をするのか、この一点だけ先に兄弟で話しておくと後の工程が詰まらずに済みます。
家財を先に捨てると、相続の手続きが止まる
売却や賃貸の前には家財の撤去が要りますが、業者に一括で任せる前に探しておくものがあります。
- 通帳とキャッシュカード
- 保険証券
- 年金手帳
- 不動産の権利証と登記識別情報
- 遺言書
- 印鑑と印鑑登録証
- 貸金庫の鍵と契約書
- 有価証券と借用書
これらを処分してしまうと、相続の手続きそのものが止まります。
遺言書が出てきた場合、自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所の検認が要るため、封を開けずに持ち込んでください。
公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が不要です。
業者に頼むときは、許可の種類を確認します。
家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が、買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可が要ります。
産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。
「無料回収」を名乗って回ってくるトラックはこの許可が無いことが多く、渡した後で高額を請求されたり、不法投棄の責任を問われたりする形につながります。
業者が自宅を訪問して買い取る「訪問購入」なら、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は物品の引き渡しを拒めます。
片づけの進め方は遺品整理を始める順番で解説しています。
兄弟の同意は、数字を机に出してから求める
売りたい側と残したい側で話がまとまらないのは、誰も金額を知らないまま話しているからです。
不動産会社の査定額は会社ごとに開きが出るため、1社だけの数字では判断材料になりません。
複数社から取ったうえで、固定資産税の年額と、草刈りや通水にかかっている費用を並べてください。
感情の話に見えていたものが、持ち続ける費用と売った場合の手取りの比較に変わります。
自分でできる範囲と、専門家に渡す範囲
全部を業者に丸投げすると費用がふくらみますし、全部を自分でやろうとすると平日の窓口に何度も通うことになります。分かれ目は「判断が要るか」ではなく「代理でしかできないか」です。
| 作業 | 自分でできること | 渡す相手 |
|---|---|---|
| 名義の確認 | 登記事項証明書の請求と甲区・乙区の確認 | — |
| 相続人の確定 | 戸籍の取り寄せ(郵送可) | 数が多い・代襲相続がある場合は司法書士 |
| 相続登記 | 単純な相続なら自分で申請も可能 | 相続人が多い、数次相続がある場合は司法書士 |
| 相続税の申告 | 基礎控除を超えるかの概算 | 申告と特例の適用は税理士 |
| 兄弟間の話し合い | 査定額と費用の資料づくり | 協議がまとまらない場合は弁護士 |
| 家財の撤去 | 貴重品と書類の抜き出し、仕分け | 運搬と処分は許可のある業者 |
| 売却・賃貸 | 複数社への査定依頼 | 媒介契約を結ぶ不動産会社 |
遺品整理業者を選ぶときは、遺品整理士という民間資格の有無だけで判断しないでください。
一般社団法人遺品整理士認定協会の資格であって国家資格ではなく、これがあるから廃棄物を運べるわけではありません。
見るべきは許可の番号と、費目ごとの内訳が書かれた見積書です。
解体を選んだ場合の費用は、建物の構造と延床面積、そして重機が入れる道幅があるかで変わります。
前面道路が狭くて手壊しになる現場では、同じ広さでも作業量が増えます。
構造別の目安は空き家の取り壊し費用で解説しています。
解体や改修に使える補助金は自治体ごとに条件も受付期間も違うため、着工前にお住まいの市区町村と、物件がある市区町村の両方の窓口で確認してください。
工事を始めてからでは申請できない制度もあります。
よくある質問
空き家を放置すると固定資産税は自動で6倍になりますか
自動では上がりません。
市区町村が「特定空家」または「管理不全空家」に指定し、勧告を受けた段階で住宅用地特例が外れる仕組みです。
逆に言えば、草刈りや通水などの管理を続けていれば、すぐに指定へ進む話ではありません。
指定の基準は市区町村が判断するため、心配なら物件のある市区町村の担当課に現状を伝えて相談してください。
兄弟の1人が売却に反対しています。先に進められますか
遺産分割が終わっていなければ、相続人の1人の判断で売ることはできません。
遺産分割協議書には全員の署名と実印が要ります。
まず反対の理由を、金額の話なのか仏壇や思い出の話なのかに分けてください。
金額の話なら複数社の査定額と固定資産税の年額を出すことで議論の土台が揃います。
どうしてもまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や弁護士への相談という道に移ります。
空き家バンクに登録すれば買い手は見つかりますか
登録は買い手を保証するものではなく、自治体が情報を掲載する仕組みです。
登録できる物件の条件も、成約までの支援の内容も自治体ごとに違います。
一般の不動産市場と併用できるかどうかも運用によって変わるため、登録の前に物件がある市区町村の担当窓口で確認してください。
遠方に住んでいます。何度も現地へ帰る必要がありますか
登記事項証明書はオンラインで請求して郵送で受け取れますし、戸籍も本籍地の市区町村へ郵送で請求できます。
相続登記の申請は司法書士に委任できます。
現地へ行く必要があるのは、家財の仕分けと、不動産会社に建物の中を見せる場面です。
仕分けの日程を先に決めて、その前後に窓口の用事をまとめると帰省の回数を抑えられます。
建物を解体してから売るべきですか
解体すると住宅が建っていない土地になるため、固定資産税の扱いが変わります。
売れるまでの期間が長引くと、その間の負担が増えます。
相続した空き家の3,000万円特別控除にも要件があり、解体の有無が影響する場合があります。
取り壊しの前に、市区町村の税務課で税額の変化を確認し、控除を使う予定があるなら税務署か税理士に相談してください。
まとめ
空き家の活用で最初に動かせるのは、人の同意が要らない部分です。
登記事項証明書で名義を確かめ、戸籍で相続人を確定し、課税明細書で年額を押さえるところまでは、今日ひとりで始められます。
売るか貸すかを決めるのはその後で間に合います。
一方で、仏壇の行き先と兄弟の同意は時間のかかる工程です。
相続登記は取得を知った日から3年、2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日まで、相続空き家の3,000万円特別控除は2027年12月31日までの譲渡が対象という区切りがあります。
急いで結論を出す必要はありませんが、期限のある手続きから逆算して動く日を決めておいてください。
ぜひ本記事の活用方法6つの表と期限の一覧を参考に、まずは法務局で登記事項証明書を取るところから始めてください。


