不動産一括査定のデメリット|営業電話を避ける使い方と注意点

不動産一括査定を申し込んだ翌日から、知らない番号の着信が続きます。
一度の入力で複数の会社に情報が渡る仕組みなので、依頼した社数ぶんだけ連絡が来ます。
これは不具合ではなく、そういう作りです。
ただ、実家が空き家になって1年前後という人にとって、より重い負担は電話の本数ではありません。
会社ごとに査定額が開いたときに、どの数字を兄弟に見せればいいのか分からなくなることです。
全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高になりました(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。
本記事では、電話が増える理由・査定額が開く理由・名義が親のままのときに査定より先に済ませることを解説します。
不動産一括査定のデメリットは、電話の本数と査定額の開きに出る
一括査定で不満が出る場面は、だいたい申し込み直後の数日間に集まっています。
原因は一つではありません。
連絡の量、査定額の性質、候補に入らない会社という3つが重なって、「頼んだのに前に進まない」という感覚になります。
一度の入力で、依頼した社数ぶんの連絡が来る
一括査定は、入力した物件情報と連絡先を複数の不動産会社へ同時に渡す仕組みです。
受け取った各社は、それぞれ独立した会社として営業活動をします。
1社が代表して連絡してくれるわけではありません。
同時に依頼できる社数はサービスによって違い、上限まで送ると、その社数分の電話とメールが並行して届きます。
空き家の場合はここに事情が重なります。
現地に人が住んでいないため、会社側は室内を見る段取りを早く決めたがり、連絡が前のめりになりやすいのです。
査定額は各社の見立てで、売れる値段の約束ではない
査定額は、周辺の成約事例と、立地・築年・面積・接道の状況から各社が算出した見込みの価格です。
その金額で買い取る約束でも、その金額で売れる保証でもありません。
同じ家でも、直近で近所を売った実績がある会社と、その地域の事例を持たない会社では根拠が変わります。
買い取りを前提にする会社なら、自社で転売する分を織り込むため、仲介の想定額とは考え方そのものが違ってきます。
査定額に開きが出る理由は空き家買取業者はどう選ぶ?査定額に差が出る理由で解説しています。
一括査定に載っていない会社は、最初から候補に入らない
参加しているのは、そのサービスと提携している会社だけです。
地元で長く営業している小さな会社や、農地・再建築が難しい土地といった条件の物件を扱う会社は、提携していなければ一覧に出てきません。
実家が郊外や地方にある場合、この抜けが大きくなります。
数社から数字が集まっただけで「これが相場だ」と思い込むと、判断材料が偏ったままになってしまいます。
査定を申し込む前に、登記簿の甲区で名義を確かめる
査定額が出ても話が動かない家には、共通の理由があります。
売る権限を持っている人が確定していないのです。
ここを確かめずに査定へ進むと、集めた数字が使えないまま古くなります。
名義が親のままなら、相続登記が先に来る
登記事項証明書は法務局の窓口かオンラインで取得できます(手数料は法務局の現行料金を確認してください)。
所有者が誰かを見るのは甲区、つまり所有権に関する事項の欄です。
ここが亡くなった親の名前のままなら、相続登記が済んでいません。
2024年4月1日から相続登記は義務になり、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法76条の2)。
それより前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
査定を頼むこと自体は名義が親のままでもできますが、売買契約の当事者になれるのは登記名義人ですから、売却の直前には必ず通る道になります。
仏壇と家財は、査定額の前提にはならない
家財が残っていても、仏壇がそのままでも、査定は受けられます。
訪問査定でも「片づいていないと見られない」わけではありません。
一方で、仏壇や位牌をどうするかは売却とは別の枠組みで決まります。
墓・仏壇・位牌といった祭祀(さいし)財産は相続財産とは別に1人が引き継ぐと民法897条で定められていて、指定がなければ慣習、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
売却の話し合いと同時に持ち出すと論点が混ざるので、分けて進めたほうが早いでしょう。
自分がいまどの段階にいるかは、次の表で切り分けられます。
| いまの状況 | 今日できること | 人の同意が要ること |
|---|---|---|
| 名義が親のまま | 登記事項証明書を取り、甲区を確認する | 相続人全員での遺産分割の合意(登記に必要) |
| 相続人が複数で、売る意思が揃っていない | 訪問なしの机上査定で数字だけ集める | 売却するかどうかの合意 |
| 売る・貸す・残すを決めていない | 固定資産税の年額と管理費用を書き出す | なし(自分で比較できる) |
| 家財と仏壇が残っている | 通帳や権利証など捨てられない書類を先に探す | 祭祀を引き継ぐ人を決めること |
売却だけが選択肢ではありません。
貸す、譲る、空き家バンクに登録するという道と比べたい段階なら、空き家をどうする?売る・貸す・譲るの選び方で判断材料を解説しています。
一括査定は売却を前提とした仕組みなので、比較が終わっていない段階で申し込むと、売る方向の情報ばかりが集まることになります。
営業電話を避ける不動産一括査定の使い方
電話を止める方法はありません。
減らす方法はあります。
申し込む前の設定と、最初の1本の応答で、その後の本数はかなり変わります。
社数を絞り、連絡手段を書き添える
同時依頼の上限まで送る必要はありません。
3社前後にしておけば、比較はできて連絡は追える範囲に収まります。
多くのサービスには要望や備考を書く欄があり、そこに「連絡はメールでお願いします」「日中は電話に出られません」と書けます。
書いても電話が来る会社はありますが、書いてある内容を無視する会社かどうかが最初の1本で分かるという意味では、これも判断材料になります。
訪問を前提にしない机上査定を選べるサービスなら、そちらから始めてください。
室内を見ないぶん精度は落ちますが、兄弟に見せる数字の幅を知るには足ります。
最初の1本で聞くのは、成約事例と担当者の担当エリア
出た電話でこちらから聞くことを決めておくと、話が営業トークで終わりません。
聞くのは、その査定額の根拠にした近隣の成約事例がいつ・どのくらいの規模のものか、そして担当者がその地域を何年扱っているかです。
答えが具体的に返ってくる会社は、査定書の中身も具体的です。
逆に「まずは一度お伺いして」で押し切ろうとする会社は、この段階では保留にしてかまいません。
断るときは1社ずつ、期限を切って伝える
着信を放置すると、会社側は「つながらないだけ」と判断して間隔を詰めてかけ直します。
効くのは、依頼しないと決めた会社に「今回は他社に依頼するので、今後の連絡は不要です」と一度だけはっきり伝えることです。
メールでも同じ効果があります。
まだ決められない場合は「兄弟と話がつくまで動けないので、こちらから連絡します」と期限の見通しを渡してください。
連絡先を消してほしい場合は、サービス側ではなく情報を受け取った各社へ削除を依頼する形になります。
査定額に拘束力はなく、法律で決まっているのは仲介手数料の上限
査定を受けても、その会社に売却を任せる義務は生じません。
査定額に法的な拘束力もありません。
売却を任せる段階で結ぶ仲介の契約は、任せ方によって他社に頼めるかどうかや報告の頻度が変わりますから、契約書に書かれた期間と解約の条件を、署名する前に読んでください。
口頭の説明だけで進めないことが自分を守ります。
仲介手数料は上限が決まっている
売買価格が400万円を超える場合、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限は「価格の3%+6万円+消費税」です。
上限なので、これより低い設定もあります。
査定額が高い会社は手数料も高くなるという関係になりますが、査定額が高いこと自体は成約価格の裏づけになりません。
高い査定額を提示されたときに確かめるのは、その金額で売れなかった場合に価格をいつ・どう見直すのかという話です。
相続した実家の税率は、親の所有期間から数える
売却益にかかる税率は、所有期間で二段階に分かれます。
相続した家は原則として被相続人が取得した日から所有期間を数えるので、相続してすぐ売っても高い税率にはなりません。
ここは誤解が多いところです。
| 区分 | 判定 | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年超 | 所得税15%+住民税5%=20% |
| 短期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年以下 | 所得税30%+住民税9%=39% |
いずれも別途、復興特別所得税が基準所得税額の2.1%かかります(国税庁 タックスアンサー No.3208・No.3211/2026年9月時点)。判定は売った日ではなく譲渡した年の1月1日時点であること、そして相続や贈与で取得したものは前の所有者の取得日を引き継ぐことを押さえておいてください。
3,000万円特別控除は2027年12月31日までの譲渡が対象
相続した空き家を売ったときは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(租税特別措置法35条3項)。
1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、対象となるのは2027年12月31日までの譲渡です。
相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。
適用できるかどうかは家屋の状態や譲渡の形で変わるため、要件の判定は税理士の領域です。
相続税そのものの考え方は相続税は誰にかかる?基礎控除3,600万円が分かれ目になるで解説しています。
先に全部片づける・1社だけに聞くは、決断を先に延ばすだけ
よく勧められるのに、実際には話が進まない対処があります。悪手というより、順番が逆なのです。
- 家財を全部片づけてから査定を頼む…片づけには数か月から1年かかり、費用も先に出ます。査定は物が残った状態でも受けられるので、数字を知るのを後回しにする理由になりません
- 1社だけに聞いて安心する…根拠にする成約事例が会社ごとに違うため、1社の数字では高いのか安いのか分かりません
- 口コミの点数だけで会社を選ぶ…点数は担当者ごとの当たり外れを平均してしまいます。見るのは査定書に成約事例が載っているかどうかです
- 「いくらで売れるらしい」と兄弟に口頭で伝える…伝聞の数字は疑われます。査定書のコピーをそのまま出したほうが話が早く済みます
- 着信を放置する…つながらないと判断されて、かけ直す間隔が短くなります
片づけを先にしたくなる気持ちには理由があります。
人に見せられる状態にしてからでないと恥ずかしいという感覚は、実家の当番になった人がほぼ全員通るものです。
ただ、不動産会社は物が残った家を日常的に見ていますし、家財の処分費用は売却の条件交渉に含められる場合もあります。
費用の全体像は実家じまいの費用はいくら?片付けから売却までの内訳で解説しています。
片づけを外注するなら、業者の見分け方は口コミではなく許可で判断してください。
家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要り、買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可が要ります。
産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。
「無料回収」を名乗るトラックはこの許可がないことが多く、渡した先で不法投棄されれば依頼した側にも話が及びます。
遺品整理士は民間資格で、これがあれば廃棄物を運べるわけではありません。
何から手をつけるかは遺品整理とは?何から始めるかを順番どおりに解説で解説しています。
名義は司法書士、控除の要件は税理士に渡す
自分でできる範囲と、渡したほうが早い範囲は、状態で切り分けられます。全部を丸ごと外注すると費用が膨らみ、逆に全部を自分で抱えると期限に間に合いません。
登記事項証明書を取る、固定資産税の納税通知書を探す、査定を申し込む、この3つは自分でできます。
相続人が誰かを確定させる戸籍の収集も、本籍地の市区町村へ請求すれば自分で進められます。
ここから先は、次の状態になったら専門家の段階です。
- 相続人の一人と連絡が取れない、または相続人が多くて戸籍がたどれない…司法書士
- 相続登記の期限が近い、遺産分割の内容を書面にする…司法書士
- 3,000万円特別控除や小規模宅地等の特例が使えるかを判定したい…税理士
- 兄弟が話し合いの席に着かない、売却に一人だけ反対している…弁護士
- 売るか貸すかで迷っていて、地域の需要を知りたい…市区町村の空き家相談窓口
期限のある手続きも合わせて確認してください。
相続放棄と限定承認は自分が相続人だと知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
相続税の申告と納付は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内、相続登記は取得を知った日から3年以内です。
査定を先に取る意味は、この期限の中で「売る」を選べるかどうかを判断できるようになるところにあります。
よくある質問
不動産一括査定を申し込むと、必ず売らないといけませんか
売る義務は生じません。
査定は各社の見込み価格を出す作業で、売買契約でも仲介の契約でもありません。
売却を任せる段階で別に契約を結ぶ形になるので、査定だけ受けて何もしないという使い方もできます。
ただし各社は営業として連絡してきますから、依頼しないと決めた会社には、その旨を一度伝えてください。
電話番号を書かずに申し込めますか
多くのサービスで電話番号は必須項目になっています。
避けたい場合は、要望欄に連絡手段をメールに限定してほしいと書き添える、同時依頼を3社前後に絞る、訪問なしの机上査定から始めるといった方法で本数を抑えることになります。
番号を伏せて依頼する仕組みを用意しているサービスもありますが、条件はサービスごとに違うので申し込み画面で確認してください。
査定額がいちばん高い会社に頼めばよいのでしょうか
高い査定額は、その値段で売れる約束ではありません。
見るのは金額そのものよりも、根拠にした近隣の成約事例が査定書に書かれているか、そしてその価格で売れなかったときにいつ見直すのかという説明があるかどうかです。
数字だけを比べると、売り出してから何度も値下げする流れになりかねません。
名義が親のままでも査定してもらえますか
査定を受けることはできます。
ただし売買契約の当事者になれるのは登記名義人ですから、売却まで進めるには相続登記が必要です。
2024年4月1日から相続登記は義務化され、取得を知った日から3年以内という期限があります。
それ以前に相続した不動産は2027年3月31日が期限になりますので、査定と並行して登記の準備を進めてください。
兄弟の同意がないうちに査定を頼んでも大丈夫でしょうか
査定を取ること自体は、共有者の同意がなくてもできます。
むしろ、金額を知らないまま話し合うと、住み続けたい側は高く、売りたい側は安く見積もって、金額の話が感情の話にすり替わります。
訪問を伴わない机上査定で数字の幅を先に押さえ、査定書をそのまま兄弟に見せる形にすると、伝聞にならずに済みます。
相続した実家をすぐ売ると、税金が高くなりませんか
相続した不動産は、原則として親が取得した日から所有期間を数えます。
親が長く住んでいた家なら、相続の直後に売っても長期譲渡所得として扱われ、所得税15%と住民税5%の合計20%(別途、復興特別所得税が基準所得税額の2.1%)が基準になります(国税庁 タックスアンサー No.3208/2026年9月時点)。
判定は譲渡した年の1月1日時点で行うため、売った日から5年を数えるのではありません。
まとめ
一括査定で困るのは、サービスの善し悪しではなく、連絡が社数分来るという仕組みと、査定額が会社ごとに開くという性質から来ています。社数を3社前後に絞って連絡手段を書き添え、依頼しない会社にははっきり断りを伝えれば、電話の負担はかなり下がります。
そして、実家が決められないままになっている理由は査定額ではありません。
登記簿の甲区に載っている名義、兄弟の同意、仏壇の引き受け先という、それぞれ別の窓口で片づく問題が絡まっているだけです。
査定は、そのうち今日一人で動かせる部分にあたります。
ぜひ本記事の切り分け表と期限の一覧を参考に、名義の確認から手をつけてください。


