実家を売ったときの税金はいくら?譲渡所得の計算方法

実家を売ったときの税率は、20%か39%かの二択です。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば所得税15%と住民税5%で合計20%、5年以下なら所得税30%と住民税9%で合計39%になります(国税庁タックスアンサーNo.3208・No.3211/2026年9月時点)。
ただし、この税率がかかるのは売却代金そのものではありません。
売った金額から取得費と譲渡費用を引いて、残った譲渡所得だけが課税の対象です。
引き算の結果がマイナスなら税金は出ません。
相続した実家は親が買った日から所有期間を数えるため、相続した翌月に売っても39%にはなりません。
本記事では、譲渡所得の計算式・長期と短期の分かれ目・見積もりから抜けやすい費用・相続空き家の3,000万円特別控除まで解説します。
実家を売ったときの税金は、譲渡所得が出たときだけかかる
売却代金が口座に入ると、その何割かを税務署に持っていかれるように見えます。
実際に課税されるのは、買ったときより高く売れて利益が出た部分だけです。
本記事の税率と特別控除は、国税庁のタックスアンサーおよび租税特別措置法にもとづく2026年9月時点の内容です。
課税されるのは、引き算で残った利益だけ
譲渡所得は、売った金額から次の2つを引いて計算します。
- 取得費(買ったときの代金、購入時の仲介手数料や登記費用など)
- 譲渡費用(売るためにかかった仲介手数料、印紙代、解体費、測量費など)
式にすると、譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除=課税譲渡所得です。
ここで残った金額に税率をかけます。
親が数十年前に建てた家で、いま売れる値段が当時の取得費と譲渡費用の合計を下回るなら、譲渡所得は出ません。
その場合は税率が20%だろうと39%だろうと、かける元がないので税額もゼロです。
長期20%・短期39%の税率表
| 区分 | 所有期間(売った年の1月1日時点) | 所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 20% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 39% |
これに加えて、復興特別所得税が基準所得税額の2.1%かかります(令和19年分まで)。
短期の実効税率は約39.63%です。
長期と短期でおよそ2倍の差がつくため、所有期間の判定は税額を左右するいちばん大きな要素になります。
税金がゼロでも申告が要る場面がある
譲渡所得がマイナスなら、原則として確定申告は必要ありません。
一方で、特別控除を使って税額をゼロにする場合は、申告して初めて控除が適用されます。
控除の枠内に収まったから何もしなくてよい、と考えると特例そのものが使えなくなります。
申告が要るかどうかの切り分けは不動産を売ったら確定申告は必要かの判断で解説しています。
売却した時の税額を左右するのは、所有期間と取得費の2つ
売値は不動産会社との相談で決まりますが、税額のほうは売値より過去の事実で決まります。
いつ取得したのかと、いくらで取得したのか。
この2つの資料が手元にあるかどうかで、同じ金額で売っても手取りが変わります。
所有期間は「売った年の1月1日」で数える
5年の判定は、引き渡した日から逆算するのではありません。
売った年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで見ます。
たとえば2021年6月に取得した物件を2026年7月に売ると、実際の保有年数は5年1か月ですが、2026年1月1日時点では4年7か月なので短期扱いです。
年をまたいで引き渡すかどうかで税率が倍近く動く場面があります。
相続した実家は、親の所有期間をそのまま引き継ぐ
相続や贈与で取得した不動産は、原則として被相続人や贈与者が取得した日から所有期間を数えます。
親が40年前に建てた家を相続し、その年のうちに売ったとしても、短期の39%にはなりません。
相続してから慌てて「5年待ってから売る」といった判断をする必要もありません。
売る時期を決める材料は税率ではなく、家の傷み方と買い手が動く時期のほうです。
相続から引き渡しまでの段取りは実家を相続してから引き渡しまでの流れで解説しています。
取得費の資料が無いと、税額は跳ね上がる
取得費が分からないと、引ける金額が小さくなり、その分だけ譲渡所得が膨らみます。
まず探すのは、購入時の売買契約書と領収書です。
見つからないときは、住宅ローンを組んだ金融機関の契約書類、購入時のパンフレットや当時の仲介会社の記録もあたります。
なお、取得費は買った値段そのままではありません。
建物部分は経過年数に応じて価値が減った分を差し引いて計算するため、土地と建物では扱いが違います。
取得費が不明なときの計算方法は判断が分かれる論点で、税務署の事前相談で確認できます。
相続税の申告を税理士に頼んでいるなら、その資料一式を渡して相談するのが早いでしょう。
手取りの計算で抜けやすい費用と、削ると損をする費用
売却価格から税金を引けば手元に残る金額が出る、とはなりません。税金より先に出ていくお金があり、そこを見落とすと入金額を見てから足りないことに気づきます。
譲渡費用に入るものと、入らないもの
売るために直接かかった費用は譲渡費用として差し引けます。
不動産会社への仲介手数料、売買契約書に貼る印紙代、売るために建物を取り壊した解体費、境界を確定するための測量費などです。
一方、所有していた間の修繕費や固定資産税、引っ越し代のような維持や生活のための支出は原則として含まれません。
個別の費目が入るかどうかは、税務署か税理士に確認してください。
仲介手数料には法律で上限があり、売買価格400万円超の場合は価格の3%+6万円+消費税です。上限なので、これより低い設定の会社もあります。
見積もりから落ちやすいのは、家財の処分と測量
実家の売却で予定外に出ていくのは、たいてい次の費用です。
- 家財の運び出しと処分(仏壇や大型家具、屋外の物置を含む)
- 境界が確定していない土地の測量と、隣地立会いの調整
- 解体して更地で売る場合の取り壊し費用
- 譲渡所得が加わることによる翌年の住民税や国民健康保険料への影響
家財が残ったままでは内覧もできません。
量と階数、搬出経路で金額が変わるため、複数社に現地を見てもらって内訳を比べます。
無許可の「無料回収」に渡すと不法投棄の責任を問われることがあるので、一般廃棄物収集運搬業の許可を確認してください。
進め方は遺品整理を何から始めるかの順番で解説しています。
削ると後で困るのは、境界確定と査定の比較
費用を抑えたくなる気持ちが向かいやすいのは測量ですが、境界が未確定のままだと買い手が住宅ローンの審査で止まったり、引き渡し後に隣地とのもめごとを引き継いだりします。取得費の資料探しも同じで、数日かけて契約書を見つければ、そのまま課税対象額が下がります。
もう一点、査定を1社だけで決めないことです。
査定額は立地・築年・接道・面積・近隣の成約事例から算出されるため、会社によって開きが出ます。
ただし一括査定に申し込むと連絡が集中します。
使い方の注意は不動産一括査定のデメリットと営業電話の避け方で解説しています。
解体して更地にするかどうかは、税金だけで決められません。
建物が建っている土地に適用される住宅用地の特例が外れるため、取り壊した翌年度の固定資産税は上がります。
金額の目安は市区町村の資産税担当の窓口で確認できます。
売却代金を兄弟で分けたときの税金と、相続空き家の3,000万円特別控除
実家の売却でつまずきやすいのは、税率の計算より「誰が申告して、誰が払うのか」です。代金を分けたあとに納税の話が出てくると、分けた金額の公平さが崩れます。
持分に応じて、相続人がそれぞれ申告する
共有で相続した実家を売って代金を分ける場合、1人が代表して申告するのではありません。
持分に応じて各相続人が自分の譲渡所得を計算し、それぞれ確定申告と納税をします。
手続きの窓口を1人が引き受けても、税金の負担は各自に残ります。
売却しやすくするために代表者1人の名義に寄せる方法もありますが、分け方の書き方によって税務上の扱いが変わることがあります。遺産分割協議書の文言は、署名する前に税理士に確認してください。
1981年5月31日以前に建った家なら、3,000万円の控除を検討する
相続した空き家を売ったときは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(租税特別措置法35条3項)。
1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。
相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。
要件は細かく、家屋の状態や売却までの使い方によって適用の可否が変わります。
金額が大きい特例なので、売り出す前の段階で税務署か税理士に要件を確認しておくと、売り方そのものを要件に合わせられます。
期限のある特例でもあります。
買い手が見つかってから引き渡しまでの期間を含めた実家が売れるまでの期間の目安を踏まえて逆算してください。
売る前に、名義を親から相続人へ移す
登記名義が親のままでは売買契約を結べません。
相続登記は2024年4月1日から義務になり、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象です。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
売らずに残す道を探す場合でも、名義の整理は先に済ませておくと選択肢が広がります。
全国の空き家は約900万戸、空き家率13.8%で過去最高を更新しました(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。
買い手がつきにくい地域では、空き家バンクの登録条件と使い方で解説している自治体の仕組みも選択肢に入ります。
空き家の解体や改修への補助は市区町村ごとに内容も期限も違うため、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
よくある質問
実家が安くしか売れず赤字になった場合も税金はかかりますか
譲渡価額から取得費と譲渡費用を引いてマイナスになれば、譲渡所得は発生せず課税もされません。
ただし取得費を証明する資料が無いと、計算上は利益が出ている扱いになることがあります。
赤字だと思っていても、契約書が見つからない場合は税務署に相談してから判断してください。
相続してすぐ売ると、短期譲渡所得の39%になりますか
なりません。
相続で取得した不動産は、原則として被相続人が取得した日から所有期間を数えます。
親が5年を超えて所有していた家であれば、相続した年に売っても長期譲渡所得の20%で計算します。
親がいくらで買ったのか、どこを調べれば分かりますか
まず購入時の売買契約書と領収書を探します。
無い場合は、住宅ローンの契約書類、購入時に受け取ったパンフレット、通帳の振込記録なども手がかりになります。
仏壇の引き出しや押し入れの奥に権利証と一緒に保管されていることがあるので、家財を処分する前に書類だけは先に確保してください。
3,000万円の特別控除は兄弟それぞれが使えますか
要件を満たせば、相続して売った人ごとに適用を検討できます。
ただし相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたりの上限が2,000万円に下がります。
適用には確定申告が必要で、申告しなければ控除は受けられません。
相続税を払ったうえに、売却でも税金を取られるのですか
相続税は財産を受け取ったことに、譲渡所得税は売って利益が出たことに対してかかる別の税金です。
なお相続税には基礎控除があり、3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えなければ申告そのものが不要です。
申告と納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内になります。
まとめ
実家の売却でかかる税金は、売値ではなく譲渡所得に対するものです。
所有期間が5年を超えていれば20%、5年以下なら39%という二段の税率になりますが、相続した実家は親の所有期間を引き継ぐため、多くの場合は長期の20%で計算します。
税額を小さくする現実的な手段は、取得費の資料を探すことと、要件に合えば相続空き家の3,000万円特別控除を使うことの2つです。
やることが多く見えても、今日できるのは書類探しと登記の確認までです。
査定も分割の話も相手がいて初めて進みます。
ぜひ本記事の税率表と譲渡所得の計算式を手元に置いて、まずは購入時の契約書があるかどうかから確かめてください。


