SHARE:

空き家の取り壊し費用はいくら?構造別の目安と抑え方

空き家の取り壊し費用はいくら?構造別の目安と抑え方

解体業者に電話をすると、最初に聞かれるのは建物の構造と延べ床面積、それに前面道路の幅です。この3つで見積書の骨組みが決まるためです。

取り壊し費用の全国平均を示した公的な統計は、2026年9月時点で確認できません。

ただ、見積書に並ぶ費目と、その額を動かす条件は決まっています。

全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高です(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。

業者の提示額をそのまま受け取るのではなく、どの費目がなぜこの額なのかを聞ける状態にしておきたいところです。

本記事では、見積書の費目ごとの決まり方・木造と鉄骨で金額が変わる理由・残置物や地中埋設物による追加請求・相続登記が済んでいないときの契約者・売却時の3,000万円特別控除まで解説します。

空き家の取り壊し費用は何で決まるのか|見積書は8つの費目に分かれる

総額だけを見ても、高いか安いかは判断できません。

取り壊しの工事は次の8つの費目に分かれていて、それぞれ別の条件で動きます。

自分の家がどの費目で膨らむのかが分かれば、見積書の読み方が変わります。

費目金額を動かすもの
仮設工事(足場・養生シート)建物の高さ、隣家との距離、道路への面し方
建物本体の解体構造(木造・鉄骨・鉄筋コンクリート)と延べ床面積
基礎・土間コンクリートの撤去基礎の厚みと深さ、地下室や地下タンクの有無
付帯物の撤去ブロック塀や門扉、カーポート、物置、庭木、浄化槽の数と量
残置物(家財)の処分室内に残っている量と、分別がどこまで済んでいるか
廃材の運搬と処分種類ごとの量、処分場までの距離、分別の程度
重機の回送と使用重機が敷地に入れるか、手作業になる範囲の割合
届出・整地・近隣対策道路使用の手配、整地の仕上げ、近隣への配慮の手間

「解体工事一式」と書かれた見積書は他社と比べられない

1枚に「解体工事一式」とだけ書かれた見積書は、他社と並べても比較になりません。

片方が残置物の処分を含み、もう片方が含んでいなければ、安いほうが工事の途中で追いついてくるだけです。

最初の依頼のときに、上の8つの費目に分けて書いてほしいと伝えてください。

断られる業者なら、その時点で候補から外して構いません。

総額を動かすのは解体作業そのものより廃棄物の処分費

建物を壊す作業は、慣れた業者なら日数の見当がつきます。

読みにくいのは、そこから出る廃材の量と種類です。

廃材は種類ごとに処分の単価が違い、分別せずに混ぜると混合廃棄物として高い側の単価がかかります。

室内に家財が残っていれば、その分の処分費も上に乗ります。

逆に言えば、事前に自分で減らせるのはこの部分です。壁や基礎の量は変えられませんが、家財の量は動かせます。

木造・鉄骨・鉄筋コンクリートで取り壊し費用が変わる理由

同じ延べ床面積でも、構造が違えば工事の中身がまるごと変わります。

木造は重機で壊しやすく、木材と瓦を分けながら進められます。

鉄骨造は柱と梁を切断する手間がかかる一方、鉄はスクラップとして引き取られるため、その分が見積もりに反映される場合があります。

鉄筋コンクリート造は破砕に時間がかかり、コンクリートガラの重量が大きいので運搬の回数が増えます。

やっかいなのは混じっている家です。

木造の母屋に鉄骨のガレージや後年の増築部分がくっついていると、そこだけ別の工法になります。

現地調査に立ち会って、増築の履歴を業者に伝えてください。

構造と床面積は課税明細書と登記事項証明書で確かめる

構造をうろ覚えのまま問い合わせても、返ってくる金額は概算にしかなりません。

毎年届く固定資産税の課税明細書には家屋の欄があり、登記事項証明書の表題部にも構造と床面積が載っています。

登記事項証明書は法務局で取得できます。

名義の確認もあとで必要になるので、取り壊しを考え始めた時点で1通取っておくと二度手間になりません。

延べ床面積は坪単価のかけ算の土台になる

解体業者の多くは、構造ごとの坪単価に延べ床面積をかけ、そこへ付帯工事と処分費を足す形で見積もります。

自分の家の坪数を把握していれば、提示された総額のうちどこまでが本体でどこからが付帯なのかを聞き分けられます。

構造別の坪単価の目安は空き家の解体費用は坪いくらで解説しています。

見積書で抜けやすい費目|残置物・地中埋設物・石綿

追加請求が起きるのは、たいてい現地調査では見えなかったものが出てきたときです。あらかじめ確認しておけば、そのまま値引き交渉の材料にもなります。

室内の家財は解体費に含まれていないことがある

タンスや布団、食器、農機具が残ったままの家では、この処分費が数十パーセント単位で総額を動かします。

見積書に残置物処分の行があるか、無ければ「家財は施主が出す前提か」を必ず聞いてください。

自分で出すほうが安く済みますが、量が多くて手が回らないなら、解体とは別に整理を頼む判断もあります。

どこから手をつけるかは遺品整理は何から始めるかで解説しています。

ここで気をつけたいのは、家財を「無料で回収します」と回ってくるトラックに渡さないことです。

家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要り、買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可が要ります。

産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。

無料をうたう業者はこの許可を持っていないことが多く、あとで高額な運搬費を請求されたり、荷物が不法に捨てられたりする可能性があります。

許可の番号を出せるかどうかで判断してください。

地中埋設物と石綿は、出た場合の精算方法を契約前に決める

掘り始めてから、古い建物の基礎や井戸、浄化槽、瓦の埋め戻しが出てくることがあります。

現地調査では分からないため、多くの見積書は「出た場合は別途」と書いてあります。

それ自体は誠実な書き方ですが、そのまま契約すると金額の歯止めがありません。

単価と数量の数え方、写真での報告方法、追加が発生したときの承諾の手順を、契約前に書面で決めてください。

1980年代までに建てられた家では、屋根材や外壁材、配管の断熱材に石綿(アスベスト)を含む建材が使われていることがあります。

含まれていれば調査と特別な作業が必要になり、工期も費用も変わります。

調査や届出の要否は建物と時期によって扱いが違うので、解体業者と市区町村の担当窓口の両方に確認してください。

ライフラインの停止と近隣対策も見積書に載る

電気・ガス・水道・電話線の停止と、敷地内の引き込み管の撤去は施主側の段取りになる部分があります。

水道は工事中に使うため、いつ止めるかで手順が変わります。

隣家との距離が近ければ、重機を使えず手作業になる範囲が増え、養生も厚くなります。

次の条件に当てはまる家は、追加が出やすいと考えて余裕を見てください。

  • 前面道路が狭く、重機やダンプが敷地まで入れない
  • 隣家との距離が1メートル前後しかない
  • 建て替えや増築を繰り返している
  • 庭に大きな樹木や庭石、池、灯籠が残っている
  • 敷地の一部が私道や他人名義の土地に接している

空き家の取り壊し費用は誰が払うのか|契約者は名義から決まる

費用の話より先に詰まるのが、誰の名義で契約するかです。

登記名義が亡くなった親のままなら、まず相続の手続きが必要になります。

不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記は義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の2、2024年4月1日施行)。

2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。

名義が誰になっているかは、登記事項証明書の甲区で確認できます。

兄弟の共有名義になっている場合は、1人の判断で解体を進められません。

持分をどう扱うかも含めて話が必要になるため、共有のままにしておく不便さは先に共有しておいたほうがいいでしょう。

持分だけを動かす方法は共有名義の不動産の扱い方で解説しています。

立て替えるなら、精算の約束を書面に残す

実際には、当番になった1人が先に払い、売却代金から精算する形が多くなります。

口約束のままだと、売れるまでの期間が長引いたときに揉めます。

誰がいくら立て替え、売却代金からどの順で戻すのかを遺産分割協議の内容に含め、領収書と振込記録を残してください。

仏壇や墓といった祭祀(さいし)財産は相続財産とは別に1人が引き継ぐ扱いで、家の解体費の負担とは切り離して考えます。

相続の期限と解体の時期はずらして考える

相続放棄をするなら、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。

相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。

基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、これ以下なら申告そのものが不要になります。

判定の考え方は相続税は誰にかかるかで解説しています。

解体は急いでも数か月かかる仕事です。

申告期限との前後関係は、税理士に相談する段階で確認してください。

見積もりを安くする手順と、削ると後で高くつく費目

値引きを頼む前に、比べられる状態を作るほうが先です。

同じ費目の並びで3社に出し、現地調査には立ち会ってください。

増築の履歴、庭石の位置、家財の量を自分の口から伝えられれば、追加の余地が小さい見積書が返ってきます。

工期に余裕を持たせることも交渉材料になります。

「この2週間のうちに」と条件を切ると、業者は割高な段取りを組みます。

3か月ほどの幅を渡せるなら、その旨を伝えてください。

家財は解体前に自分で減らす

市区町村の粗大ごみ収集は、業者に処分を頼むより費用を抑えられます。

値のつくものは買い取りに回す選択もありますが、業者が自宅を訪問して買い取る「訪問購入」は、契約書面を受け取った日から8日間クーリング・オフができ、その間は物品の引き渡しを拒めます。

その場で持ち帰らせず、書面を確認してから渡してください。

片づけの前に探しておくものもあります。

通帳やキャッシュカード、保険証券、不動産の権利証、遺言書、印鑑登録証は、捨ててしまうと相続の手続きが止まります。

家財を出す作業は、この確認とセットで進めるのが安全です。

削ると後で高くつく費目

安さだけで選ぶと、あとから戻ってくる費目があります。

分別と処分の適正化は、廃棄物がどこへ運ばれたかの記録につながる部分で、ここを削る業者は選ばないほうがいいでしょう。

処分先の名称と許可を見積もりの段階で確認してください。

近隣への養生も同じです。

粉じんや飛散で隣家とこじれると、工事が止まって工期が延び、その後の売却にも響きます。

地中埋設物の事前確認、整地の仕上げの取り決めも、省くと売買契約の直前に問題として出てきます。

空き家の取り壊し費用を軽くする制度|補助・3,000万円特別控除・固定資産税

解体そのものに使える補助は、市区町村ごとに制度の有無も名称も条件も違います。

老朽化の程度や建築年、申請の時期に要件がついていることがあり、契約や着工のあとでは対象外になる場合もあります。

まず住んでいる自治体ではなく、空き家がある市区町村の担当窓口へ、契約前に問い合わせてください。

全国共通の制度として案内できるものはありません。

相続した空き家を売るなら3,000万円特別控除の要件を先に見る

相続した空き家を売ったときは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。

1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。

相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります(租税特別措置法35条3項/2026年9月時点)。

譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を引き、そこから特別控除を差し引いて計算します。

解体して更地で売るか建物付きで売るかによって要件の当てはまり方が変わるため、順番を決める前に税務署か税理士へ確認してください。

個別の適用可否は、建物の状態と使われ方で判断が分かれます。

壊さないまま置くと固定資産税の扱いが変わることがある

放置していれば自動で税額が上がるわけではありません。

倒壊のおそれや衛生上有害な状態にあると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがあると「管理不全空家」に指定され、勧告を受けた段階で固定資産税の住宅用地特例が外れます。

指定と勧告という段階を踏む仕組みです。

上がる条件と時期は空き家の固定資産税が6倍になる条件で解説しています。

一方、建物を壊せばその土地は住宅用地ではなくなります。

翌年度からの扱いは市区町村の窓口で確認してください。

壊すか、そのまま売るか貸すかで迷っているなら、選択肢ごとの向き不向きを空き家を売る・貸す・譲るの選び方で解説しています。

よくある質問

取り壊しの見積もりは何社から取ればいいですか

3社が目安です。

それも、8つの費目に分けた同じ形式で出してもらうことが前提になります。

1社だけだと基準が持てず、5社を超えると比較そのものに時間を取られます。

現地調査に立ち会える日を決めて、同じ週にまとめて来てもらうと条件がそろいます。

家財を残したまま解体を頼めますか

引き受ける業者はありますが、その分の処分費が見積書に乗ります。

含まれているのか別途なのかを、契約前に書面で確かめてください。

自分で出せる量なら市区町村の粗大ごみ収集のほうが安く済みます。

通帳や権利証、遺言書が家の中に残っていないかを確認してから作業を始めてください。

更地にしてから売るのと、建物付きで売るのはどちらがいいですか

買い手がどちらを求めるかで変わ

あなたへのおすすめ