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共有名義の不動産はどうする?持分だけ売る方法も解説

共有名義の不動産はどうする?持分だけ売る方法も解説

実家の登記事項証明書を取り寄せると、甲区(所有権に関する事項)の欄に兄弟3人の名前と「持分3分の1」という表記が並んでいることがあります。

この状態で家と土地そのものを売るには、共有者全員の署名と実印、そして印鑑証明書がそろわなければ契約が成立しません。

ところが自分の持分(もちぶん)だけであれば、他の共有者に断らずに売れます。

相続登記は2024年4月1日から義務になり、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の2)。

名義を放っておくほど共有者は増え、話し合いの相手も遠くなります。

本記事では、全員で売るときにそろえるもの・持分だけを売る相手先・話し合いが止まったときの共有物分割請求まで解説します。

共有名義の不動産は、全部を売るか持分だけを売るかで段取りが分かれる

共有名義の不動産で取れる道は、大きく2つに分かれます。

土地と建物をまるごと売って代金を分けるか、自分の持分だけを切り離して売るかです。

この2つは必要な同意も、手に入る金額も、家族との関係への影響もまるで違います。

全部を売るなら共有者全員の実印がそろわないと契約できない

不動産そのものを買主に引き渡す行為は、共有物の処分にあたります。

民法251条により、共有者全員の同意がなければできません。

持分が100分の1しかない共有者が1人でも反対すれば、残り全員が賛成していても売買は成立しないという仕組みです。

売買契約書には共有者全員が売主として署名押印し、決済の場では全員分の印鑑証明書と本人確認書類が要ります。

遠方に住んでいる共有者がいるなら、委任状を使って1人に手続きを任せる方法もありますが、委任する側の実印と印鑑証明書は結局必要です。

手間はかかるものの、価格の面では全部売却が有利です。

買主から見れば通常の一戸建てや土地であり、住宅ローンも使えます。

売却価格から諸費用を引いた残りを、持分の割合どおりに分けることになります。

持分だけなら自分1人の判断で売れる

一方、自分の持分は自分の財産です。

他の共有者の同意を取らずに売ったり、贈与したり、担保に入れたりできます。

話し合いに疲れて「自分の分だけ現金にして降りたい」と考える人がこの道を選びます。

ただし持分を買った人は、その不動産を自由に使えるわけではありません。

住むにも貸すにも他の共有者との調整が要るため、一般の買主はまず手を出しません。

買い手は共有持分を専門に扱う買取業者などに限られ、価格は不動産全体の評価額に持分割合を掛けた金額を大きく下回るのが通常です。

誰と売買するかで結果が変わるので、まずは他の共有者が連絡の取れる相手かどうかを確かめてください。

全員と話ができる状態なら、全部売却のほうが手取りは多くなります。

買主となる不動産会社の選び方は不動産会社の選び方で解説しています。

共有名義かどうかは登記事項証明書の甲区に書いてある

話を始める前に、いまの名義がどうなっているかを紙で確認します。

使うのは法務局で取れる登記事項証明書です。

オンラインでも窓口でも請求でき、手数料は請求方法によって変わるため、法務局の現行料金を確認してください。

誰でも取れる書類なので、相続人であることを証明する必要はありません。

見るのは甲区です。

所有者が1人だけ記載されていれば単独名義、複数の名前と「持分2分の1」のような割合が並んでいれば共有名義になります。

乙区に抵当権が残っていれば、売却時に抹消手続きが要ります。

ややこしいのは、甲区に亡くなった親の名前しか無いケースです。

登記簿の上では単独名義に見えますが、相続が起きた時点で不動産は相続人全員のものになっています。

遺産分割が終わるまでの、この宙に浮いた共有状態を遺産共有と呼び分けます。

遺産共有は遺産分割協議や家庭裁判所の調停で解消するもので、後述する共有物分割請求とは手続きの入口が違います。

一方、遺産分割で「兄弟3人が3分の1ずつ取得する」と決めて登記まで済ませた状態は、通常の共有です。

同じ「共有名義」という言葉でも、分割前と分割後では使う制度が変わります。

自分がどちらの段階にいるかは、甲区に亡くなった人の名前が残っているかどうかで判別できます。

相続登記そのものの手順は不動産の名義変更を自分でやる手順で解説しています。

売却と解体は全員の同意、修繕は1人でできる

共有の不動産で何かをしようとするとき、必要な同意の数は行為の重さで3段階に分かれます。ここを知らないまま「兄に反対されたから何もできない」と止まってしまう人がいますが、1人でできることも、過半数でできることもあります。

行為必要な同意具体例
保存行為共有者が単独でできる雨漏りの修繕、草刈り、不法占有者への明渡し請求、法定相続分での相続登記
管理行為持分価格の過半数建物を3年以内の期間で貸す、賃貸借の解除、リフォーム
変更・処分共有者全員売却、建物の解体、長期の賃貸借、抵当権の設定

注意したいのは「過半数」の数え方です。

人数ではなく持分の価格で判定します。

3人で分け合っていても、1人が2分の1を持っていれば、その人と誰か1人が賛成すれば管理行為は決められます。

空き家の解体は全員の同意が要る側です。

建物を取り壊せば固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がるため、反対する共有者が出やすい場面でもあります。

解体してから売るか、建物を残したまま売るかは費用と税負担の両方で変わるので、先に金額を把握しておくと話が早く進みます。

木造と鉄骨の目安は空き家の解体費用で解説しています。

共有持分を買う相手は、他の共有者・第三者・買取業者の3タイプ

持分だけを売ると決めた場合、買い手になり得るのは3タイプです。どれを選ぶかで手取りも、その後の親族関係も変わります。

他の共有者に買い取ってもらう

いちばん現実的な相手は、いま一緒に名義を持っている兄弟です。

買う側は持分を集めて単独名義に近づけられ、売る側は第三者に売るより高い金額を期待できます。

実家に住み続けたい兄弟がいるなら、この形が落としどころになります。

ネックは資金です。

相手に現金がなければ話は進みません。

共有持分だけを担保に住宅ローンを組むのは難しく、金融機関の判断も分かれます。

買い取る側が全体の名義をまとめる前提でローンを申し込めるかどうか、早い段階で銀行に相談してもらってください。

価格は不動産全体の評価額に持分割合を掛けた額をたたき台にしますが、親族間の売買は税務上の評価とずれると贈与とみなされる場合があります。

金額を決める前に税理士に相談する段階です。

第三者に直接売る

一般の個人や不動産会社に持分だけを売ることも、法律上はできます。

ただし買った人は自由に使えず、他の共有者と交渉しなければなりません。

住宅ローンも通りにくいため、実際に買い手が見つかることはまれです。

仲介を依頼しても、扱わないと断る不動産会社もあります。

共有持分の買取業者に売る

共有持分を専門に買い取る業者も存在します。

他の共有者の同意なしに現金化でき、期間も短く済みます。

その代わり価格は大きく下がり、業者は買った後で残った共有者に持分の買い取りを持ちかけたり、共有物分割請求を起こしたりします。

売った本人は現金を手にして抜けられますが、実家に住んでいる兄弟のところへ見知らぬ会社から連絡が入ることになります。

関係が壊れる代償を承知のうえで選ぶ手段です。

持分が第三者に渡った後で起きる典型的なもめ方は共有名義の不動産で起きるトラブルで解説しています。

共有名義の不動産を売ると、確定申告は共有者それぞれが行う

全員の同意がそろって売却できたとしても、税金の手続きは1本にまとまりません。

売買契約書は1通ですが、譲渡所得は共有者ごとに計算し、各自が自分の分を確定申告します。

代表者がまとめて申告することはできません。

計算の流れはどの共有者も同じです。

売却価格から、取得費(買ったときの金額から建物の減価償却分を引いたもの)と、仲介手数料などの譲渡費用を引きます。

これらの金額も持分割合で按分(あんぶん)します。

親が建てた家で当時の契約書が見つからない場合、取得費が分からず概算取得費として売却価格の5%で計算することになり、税負担が重くなります。

売る前に権利証や当時の売買契約書を探しておいてください。

相続した空き家を売るときは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(租税特別措置法35条3項)。

1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。

相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。

要件が細かく、耐震改修か取り壊しが条件になる点も含めて、適用できるかどうかは個別の判断になります。

申告は売った翌年の2月16日から3月15日までの期間に行います。

共有者のうち1人だけが特例の要件を満たすこともあり、全員が同じ税額になるとは限りません。

持分ごとの記入方法は共有名義の不動産を売ったときの確定申告で解説しています。

相続登記の期限は3年、固定資産税の通知は代表者1人に届く

名義が親のままの実家を抱えている人にとって、いま動いている期限は相続登記です。

2024年4月1日から義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければ、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。

2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。

「昔のことだから関係ない」とはなりません。

遺産分割の話がまとまらない場合でも、法定相続分どおりの相続登記なら共有者の1人が単独で申請できます。

ただし、これをやると登記上は全員の共有名義になり、その後に遺産分割で1人の名義にするには改めて登記が要ります。

誰かが自分の持分を勝手に売る余地も生まれます。

順序としては、遺産分割の協議を先に進めるのが無難です。

もう一つ、共有名義で揉めやすいのが固定資産税の扱いです。

共有者は全員が連帯して納める義務を負いますが、納税通知書は代表者1人のところに届きます。

市区町村は共有者全員に別々の納付書を送りません。

結果として、代表者だけが毎年の税金を立て替え、他の共有者は請求しないと払わないという状態が続きます。

誰がいくら負担しているかを記録しておかないと、売却代金を分けるときに精算でもめます。

空き家のまま置いておくと、税金は上がる方向へ動きます。

市区町村が特定空家または管理不全空家に指定し、勧告を受けると、住宅用地の特例(課税標準6分の1)が外れます。

放置しただけで自動的に税額が跳ね上がるわけではなく、指定と勧告という段階を踏みます。

どの段階で何が起きるかは空き家の固定資産税が6倍になる条件で解説しています。

話し合いが止まったときの共有物分割請求と、3つの分け方

共有者はいつでも共有物の分割を請求できます(民法256条)。

「売りたくない」と言い張る共有者がいても、共有関係そのものを終わらせる道は法律で用意されています。

まず当事者どうしの協議、まとまらなければ裁判所の手続きへ進みます。

裁判所が示す分け方は3つです。

土地を物理的に分ける現物分割、1人が取得して他の共有者に代金を払う賠償分割、競売にかけて代金を分ける換価分割になります。

建物のある土地は物理的に切り分けられないため、実務では賠償分割か競売のどちらかになる場面が多くなります。

競売では市場価格より安い金額で落札される傾向があり、全員の手取りが減ります。

裁判まで行くと時間も弁護士費用もかかるため、その前に折り合いをつけたほうが取り分は増えます。

なお、遺産分割が済んでいない遺産共有の段階では、まず家庭裁判所の遺産分割調停が入口になります。地方裁判所の共有物分割訴訟とは手続きが別なので、自分の状況がどちらかを確かめてから弁護士に相談してください。

共有者の中に行方の分からない人がいる場合も、手が無いわけではありません。

所在が分からない共有者の持分を、裁判所の決定を得て他の共有者が取得したり、第三者へ譲渡したりできる手続きが民法に設けられています。

必要な調査の程度や、裁判所に納める金銭の額は事案によって変わるため、管轄の地方裁判所か弁護士に確認してください。

共有名義を放置すると、次の相続で共有者が倍になる

共有名義でいちばん重いのは、時間が経つほど話し合いの相手が増えることです。

兄弟3人の共有名義のまま1人が亡くなれば、その持分はその人の配偶者と子どもへ移ります。

共有者が2人から4人に増え、しかも顔を合わせたことのない甥や姪と実印をそろえる作業になってしまいます。

世代がもう一つ進めば、相続人は十数人に膨らむこともあります。

共有者が高齢になったときの問題もあります。

認知症などで判断能力が失われると、本人の意思確認ができず売買契約を結べません。

成年後見人を立てれば手続きは進められますが、家庭裁判所への申立てが要り、後見人は本人の財産を守る立場なので、市場価格を下回る売却には応じません。

話をまとめるなら、全員が元気なうちのほうがはるかに早く済みます。

全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高になりました(総務省・住宅土地統計調査/2023年時点)。

買い手が付きにくい地域では、売却と並行して自治体の空き家バンクに登録する方法もあります。

仕組みと登録条件は空き家バンクとはで解説しています。

そして、名義の話と同時に進めておきたいのが家財です。

売買契約を結んでも、室内に家具や仏壇が残っていれば引き渡せません。

共有者の誰かが片づける前提で話が進み、当番になった人だけに負担が寄りがちです。

量が多い家ほど時間がかかるので、名義の話し合いと並行して遺品整理の進め方で解説している手順から手をつけてください。

よくある質問

共有者の1人が反対したら、実家は絶対に売れないのですか

不動産そのものを丸ごと売ることはできません。

ただし、自分の持分だけを売る、反対している共有者に自分の持分を買い取ってもらう、共有物分割請求で共有関係を終わらせるという3つの道は残っています。

いずれも価格や時間の面で不利になるため、まずは反対の理由を聞いてください。

仏壇の行き先や、住み続けたい事情が本当の理由であることもあります。

自分の持分を売るとき、他の共有者に知らせる義務はありますか

法律上の通知義務はありません。

連絡せずに売却しても契約は有効に成立します。

ただし登記が変われば他の共有者にも分かりますし、買主から連絡が入ります。

関係を保ちたいなら、先に他の共有者へ買い取りの意思を確認するほうが後の摩擦は小さくなります。

共有名義の実家に兄弟の1人が住んでいます。出て行ってもらえますか

住んでいる人も共有者であれば、持分に基づいて使用する権利があります。

他の共有者が当然に明渡しを求められるわけではありません。

持分割合に応じた賃料相当額の支払いを求められる場合はありますが、当事者間の事情によって判断が分かれます。

金銭の請求まで検討するなら弁護士に相談する段階です。

相続登記をしないまま実家を売ることはできますか

できません。

買主へ所有権移転登記をする前提として、亡くなった人から相続人への登記が済んでいる必要があります。

売却を決めたなら、遺産分割協議書と戸籍一式をそろえて相続登記を先に終わらせてください。

戸籍の収集に時間がかかるため、売買の話と並行して進めるのが現実的です。

いらない持分を放棄することはできますか

共有持分は放棄でき、放棄された持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。

ただし登記を変えるには他の共有者との共同申請が必要で、相手が協力しなければ登記は動きません。

受け取った側に贈与を受けたものとして課税される場合もあります。

税負担の有無は状況によって変わるため、税理士に確認してください。

共有名義のまま賃貸に出すことはできますか

建物を3年以内の期間で貸すような管理行為であれば、持分価格の過半数の同意で決められます。

全員の同意までは不要です。

ただし賃料の分け方や修繕費の負担を先に書面で決めておかないと、後から精算でもめます。

長期の賃貸借や大規模な改築は全員の同意が要ります。

相続放棄をすれば、共有名義の実家から手を引けますか

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する手続きです(民法915条)。

起算日は亡くなった日ではありません。

放棄すれば最初から相続人でなかった扱いになり、不動産も預金も借金も引き継ぎません。

一方、すでに相続して登記まで済ませた持分を後から放棄することはできず、その場合は持分の放棄や売却で対応することになります。

まとめ

共有名義の不動産で最初に決まるのは、全員で売るのか、自分の持分だけを手放すのかという分岐です。

全部を売れば価格は高く保てますが、共有者全員の実印がそろわなければ契約に進めません。

持分だけなら1人で売れる代わりに、金額は下がり、残る共有者のところへ第三者が入ってきます。

いま手元で今日できるのは、登記事項証明書を取って甲区の名義を確かめることです。

人の同意が要る話は、それを見てから始めても遅くありません。

相続登記の期限は取得を知った日から3年、2024年4月1日より前の相続分は2027年3月31日までです。

放っておけば共有者は次の相続で増え、認知症で意思確認ができなくなる人も出てきます。

ぜひ本記事の同意区分の表と持分を売る3つの相手先を参考に、自分がいま誰の合意を取りに行く場面なのかを見きわめてください。

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