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共有名義の不動産で起きるトラブル|売れなくなる前に対策

共有名義の不動産で起きるトラブル|売れなくなる前に対策

実家の名義が親のままで相続人が3人いるなら、売買契約書には3人全員の署名と実印が要ります。

1人が「まだ決めたくない」と言えば、その時点で話は止まります。

値段を下げても動きません。

全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高です(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。

しかも2024年4月から相続登記は義務になり、名義を置いたままにできる期間にも期限が付きました。

共有名義の不動産で起きる売却トラブルは、放っておくほど関係者が増えて解きにくくなります。

本記事では、売却が止まる原因の切り分け・兄弟に切り出す前に用意する書類・持分だけを売ったときに起きること・相続登記の期限と過料を解説します。

共有名義の不動産が売れないのは、値段ではなく同意の集め方でつまずくから

不動産を丸ごと売る行為は、共有者全員の同意がないとできません。

持分の多い少ないは関係なく、10分の1しか持っていない人が反対しても契約は成立しません。

ここが単独名義との決定的な違いで、「買い手が見つからない」のではなく「売る資格が揃わない」状態で止まっています。

ただ、止まり方は同じでも原因は違います。自分がどれに当てはまるかで、次に取る一手が変わります。

名義が親のままで、そもそも共有者が確定していない

登記簿の所有者欄が亡くなった親の名前のままなら、法律上は相続人全員の共有になっています。

誰が相続人かは、親の出生から死亡までの戸籍をすべてつなげて初めて確定します。

前の結婚で生まれた子や認知した子がいれば、その人も相続人です。

この段階では、反対されているのではなく、話し合う相手がまだ確定していません。

共有者は決まっているが、1人が売却に反対している

相続登記が済んで兄弟の共有になっている場合、話は感情の問題に移ります。

反対の理由は「金額が安い」ではないことがほとんどで、仏壇をどうするのか、盆に帰る場所が無くなること、親の介護を担った負担が売却代金に反映されないことなどが背景にあります。

金額の交渉を続けても、反対の理由が金額でない以上は進みません。

共有者の居所や連絡先が分からない

親の代、祖父母の代から名義を動かしていない土地では、共有者が10人を超えることもあります。

従兄弟や、会ったことのない相続人が含まれていれば、まず住所を調べるところから始まります。

行方が分からない共有者がいるケースは、自力での連絡が難しく、裁判所を使う手続きが前提になるため、早い段階で弁護士に相談する段階です。

持分の割合や、そもそも共有とはどういう状態なのかから確かめたいなら、共有名義の不動産の基本と持分だけを売る方法で解説しています。

兄弟に切り出す前に、登記事項証明書と査定額を手元に置く

共有名義の話し合いが感情の押し付け合いになるのは、誰も数字を持たずに口頭で始めるからです。

相手の同意を待たずに自分ひとりで用意できるものが3つあります。

ここまでは今日から動かせます。

登記事項証明書で、名義と持分の割合を確かめる

法務局で誰でも取れる書類です。

所有権に関する事項(甲区)を見れば、名義が親のままなのか、すでに兄弟の共有になっているのか、持分が何分の何ずつなのかが分かります。

乙区に抵当権が残っていれば、完済していても抹消の登記をしないと売却の手続きが進みません。

記憶や親の説明ではなく、この紙で確認してください。

名義を兄弟の共有から1人へまとめる場合の申請手順は、不動産の名義変更を自分でやる手順で解説しています。

査定は複数社で取り、幅のまま持っていく

査定額は不動産会社によって開きが出ます。

得意なエリアも、買い手の抱え方も違うためです。

1社だけの数字を持っていくと「その会社が安く買い叩こうとしている」と疑われ、話がそこで止まります。

複数社の数字を並べ、いちばん高い額といちばん低い額の幅のまま出したほうが、話し合いの材料になります。

査定は無料で、依頼した時点で売る義務は生じません。

持ち続けた場合の年間費用を1枚にする

売るか残すかの判断は、売った金額だけでは決まりません。持ち続けたときに毎年いくら出ていくかを並べて、初めて比較になります。

  • 固定資産税・都市計画税の年額(納税通知書に記載があります)
  • 火災保険料(空き家は住宅用の契約を継続できない場合があります)
  • 電気・水道の基本料金
  • 草刈りや剪定を業者に頼んだときの1回あたりの費用と、年間の回数
  • 自分が通うための交通費と、かかっている日数

この1枚があると、「なんとなく残しておこう」という話が「年間いくら払い続けるか」の話に変わります。費用の負担を兄弟でどう割るかについては、実家じまいの費用は誰が払うかで解説しています。

共有名義の売却トラブルは、相手ごとに出す資料を変える

同じ内容を話しても、相手が変われば持っていくものが変わります。兄弟に登記簿を突きつけても動きませんし、業者に家族の事情を説明しても値段は変わりません。

兄弟に持っていくのは、期限と年間費用

兄弟が渋っている理由は、たいてい「売りたくない」ではなく「今は考えたくない」です。

そこに必要なのは説得ではなく、いつまでに何を決める必要があるかという期限です。

相続登記の義務、翌年以降も続く固定資産税、空き家のまま傷んでいく建物の状態を、資料の形で置きます。

仏壇や位牌の行き先は売却と別の話なので、切り離して先に決めておくと議論が混ざりません。

墓や仏壇を引き継ぐ人(祭祀承継といいます)は、相続の取り分とは別に決める扱いになっています。

遠い共有者には、手紙と返信用の封筒を出す

従兄弟や親の再婚相手など、日ごろ行き来のない共有者に電話でいきなり売却の話をすると、身構えられて終わります。

物件の所在、自分との関係、持分の割合、売却を検討している理由を書いた手紙を送り、返信用の封筒を同封するほうが返事が返ってきます。

遺産分割協議書への押印をいきなり求めず、まず意向だけを聞く段階を挟んでください。

不動産会社と回収業者は、資格と書面で見分ける

不動産会社を選ぶときは、宅地建物取引業の免許番号と、査定額の根拠となった成約事例を書面で出せるかを見ます。「今なら高く売れます」と急がせる会社より、共有者が何人いて誰が反対しているかを聞き取ったうえで手順を示す会社のほうが、共有の案件では最後まで進みます。

家財が残っている場合、処分を頼む業者は別の資格で見ます。

家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が、買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可が要ります。

産業廃棄物の許可だけでは家庭ごみを運べません。

「無料回収」を名乗るトラックはこの許可が無いことが多く、不法投棄された場合に依頼した側が問われることもあります。

遺品整理士は民間の資格で、これがあれば廃棄物を運べるわけではないので、許可の有無とは分けて見てください。

共有名義でも持分だけなら1人で売れる。ただし買い手は限られます

不動産全体の売却には全員の同意が要りますが、自分の持分を売ることは1人でできます。

他の共有者の同意も、事前の通知も法律上は要りません。

ここは共有名義で行き詰まったときの逃げ道として知っておく価値があります。

ただし、持分だけを買う一般の個人はまずいません。

買った人はその家に住めず、売るにも他の共有者と交渉するしかないためです。

実際の買い手は持分の買い取りを専門にする業者で、価格は持分割合どおりの金額を大きく下回ります。

そして買った業者は、他の共有者に対して買い取りや分割を求めてきます。

自分は現金を得られても、残った兄弟との関係は壊れます。

持分の売却は、関係を切ってでも手を引くと決めた場合の選択です。

持分を売ったときの譲渡所得の申告方法は、共有名義の不動産を売ったときの確定申告で解説しています。

話がつかないときは、共有物分割請求という手続きがあります

共有者は、いつでも共有状態の解消を求められます。

話し合いでまとまらなければ裁判所に共有物分割請求を起こすことになり、判断は現物を分ける、1人が取得して他の人に金銭を払う、競売にかけて代金を分ける、といった形に分かれます。

競売になれば市場価格より安くなるのが通常です。

時間も費用もかかるため、最後の手段として位置づけられています。

個別の案件でどの結論になるかは事情によって変わるので、弁護士に相談する段階です。

相続登記は2024年4月から義務になりました

不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法76条の2)。

2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。

「売り先が決まってから名義を動かせばいい」と考えていると、決まらないまま期限が来ます。

売却の時期にも期限が絡みます。

相続した空き家を売ったときの譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度は、1981年5月31日以前に建てられた家屋であることなどの要件があり、対象は2027年12月31日までの譲渡です。

相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります(租税特別措置法35条3項)。

自分たちが要件を満たすかどうかの判定は、税理士か税務署の事前相談で確認してください。

効きにくい対処と、専門家に渡す境目

共有名義の話し合いでよく取られるのに、実際には進まない方法があります。

メッセージアプリだけで同意を取りに行く

文字のやり取りは、金額のような数字を伝えるには向いていますが、「売りたくない」という感情の理由を聞き出すには向きません。

既読のまま返事が来ない状態が続き、催促するほど相手が黙ります。

電話か、可能なら1回だけでも同じ場所に集まって、反対の理由そのものを聞く場を作ったほうが早く動きます。

「とりあえず貸す」で先送りする

賃貸に出せば当面の収入にはなりますが、共有名義は解消されません。

賃貸に出す行為も共有者の過半数の同意が要るうえ、家賃の配分、修繕費の負担、入居者とのやり取りを誰が引き受けるかを決める必要があり、決めごとが増えます。

誰も管理を引き受けないまま貸し出すと、次は修繕費でもめます。

売らずに残すと決めた場合の活用先としては、自治体の空き家バンクの登録条件と使い方で解説しているような枠組みもありますが、登録にも共有者の同意が要る点は同じです。

専門家に渡す境目

どの状態になったら誰に渡すかは、条件で切り分けられます。

今の状態渡す先
相続人が誰か分からない/登記が親の名義のまま司法書士(戸籍の収集と相続登記)
共有者と連絡が取れない、話し合いが決裂した弁護士(交渉と共有物分割請求)
売った場合の税金や特例の適用を知りたい税理士、または税務署の事前相談
建物の解体費用や空き家の指定について知りたい市区町村の空き家相談窓口

戸籍を集めて相続関係を図にするところまでは自分でもできます。

ただ、相続人が5人を超える場合や、他県に住む共有者がいる場合は、郵送のやり取りだけで数か月かかります。

相続税の申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月なので、申告が必要な規模なら早い段階で専門家に渡してください。

各地の弁護士会や司法書士会、市区町村が無料相談の枠を設けていることもあります。

よくある質問

共有者の1人が反対したら、実家は売れないのですか

不動産を丸ごと売ることはできません。

売買契約には共有者全員の署名と実印、印鑑証明書が必要です。

ただし自分の持分だけなら単独で売れますし、話し合いがつかない場合に共有物分割請求という手続きもあります。

どちらも代償が大きいため、まず反対の理由を確かめる段階です。

共有名義の固定資産税は誰が払うのですか

共有者は固定資産税を連帯して納める扱いで、納税通知書は共有者の代表者1人に届きます。

市区町村から見れば代表者に全額を請求できるため、他の共有者が払わなければ代表者が立て替えることになります。

誰がいくら負担するかは共有者の間で決める話で、持分の割合どおりに分ける例が多いものの、書面にしておかないと後で回収できなくなります。

持分を売ったことは、他の共有者に知られますか

売る前に通知する義務はありませんが、登記が移るため、登記事項証明書を取れば誰でも分かります。買い取った業者から他の共有者へ連絡が行くのが通常なので、実際には伏せたままにはなりません。

空き家のまま放置すると、固定資産税は6倍になりますか

放置しただけで自動的に上がるわけではありません。

倒壊のおそれや衛生上有害な状態にあると市区町村が判断すれば「特定空家」に、そうなるおそれがあれば「管理不全空家」に指定され、勧告を受けた段階で住宅用地の特例が外れます(空家等対策の推進に関する特別措置法)。

指定と勧告という段階を踏むため、草刈りや通気など最低限の管理を続けているうちは対象になりにくいです。

相続登記をしないまま3年が過ぎたらどうなりますか

正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料の対象になります。

相続人の間で分け方がまとまらない場合は、自分が相続人であることを申し出る手続きを取れば義務を果たしたものとして扱われます。

この申し出は登記そのものではないため、分け方が決まった後に改めて相続登記が必要です。

まとめ

共有名義の不動産が売れないのは、買い手がいないからではなく、売る資格を持つ人が揃っていないからです。

名義が親のままなら相続人の確定が先で、兄弟の共有になっているなら反対の理由を聞くところからになります。

どちらの場合も、登記事項証明書と複数社の査定額、持ち続けた場合の年間費用という3つは、相手の同意を待たずに自分ひとりで用意できます。

相続登記の義務には2027年3月31日という期限があり、相続した空き家の3,000万円特別控除も2027年12月31日までの譲渡が対象です。

どちらも待っていて有利になる話ではありません。

ぜひ本記事の3つのタイプ分けと、専門家に渡す境目の表を参考に、今日のうちに登記事項証明書を取り寄せるところから始めてください。

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