不動産会社の選び方|実家の売却で失敗しない見極め方

「不動産売却 ランキング」で上位に並ぶのは、全国の取扱件数や売上高の順位です。
実家のある町で、築45年の木造を買う人を連れてこられるかどうかは、その順位とは別に決まります。
査定額は立地・築年・接道の状況・面積と、近くでいくらの成約があったかから逆算するため、同じ家でも会社によって開きが出ます。
全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高です(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。
売れないから残っている家ばかりではなく、名義や兄弟の同意で止まっている家も混ざっています。
本記事では、査定を頼む前に揃える登記事項証明書と納税通知書、兄弟と不動産会社への切り出し方、所有期間で倍違う譲渡所得税と相続空き家の3,000万円特別控除まで解説します。
不動産売却のランキングでは、実家を任せる会社は決まりません
会社の規模と、あなたの実家が売れるかどうかは、直接つながっていません。
大手が強いのは都市部の駅近マンションのように取引数が多い物件で、郊外の戸建てや農地付きの家では、その地域だけで営業してきた地場の会社のほうが買い手の心当たりを持っていることがあります。
順位表から選ぶより先に、自分の実家がどの詰まり方をしているのかを見たほうが早いです。
売れないのではなく、決められない状態が多い
年に数回、草を刈りに帰っている家を売り出せていない理由は、たいてい価格ではありません。
名義が親のままで手続きが止まっているか、兄弟の一人が「まだ早い」と言っているか、仏壇と家財が家の中に残っているかのどれかです。
この3つは性質がまったく違います。
名義は自分一人で動かせる部分があり、兄弟の同意は相手の時間が要り、家財は日程と費用の問題です。
自分の実家がどのタイプか切り分ける
| 今の状態 | 詰まっている場所 | 今日から動かせるか |
|---|---|---|
| 登記の名義が親のまま | 相続登記が終わっていない | 戸籍と登記事項証明書の取り寄せは一人で始められます |
| 相続人の間で売却の合意がない | 遺産分割協議 | 相手の同意が要るため、資料を揃えて話し合いの席を作る段階です |
| 仏壇・位牌・家財が残っている | 祭祀(さいし)財産の引き継ぎと家財の処分 | 引き取り先と業者の見積もりを取れば進みます |
| 建物が傷んで近所から苦情が出ている | 管理不全の状態 | 草刈りと通水を委託しつつ、売却の判断を急ぐ場面です |
名義が親のままの家は、そのままでは売買契約を結べません。
相続登記は2024年4月1日から義務になり、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象です。
2024年3月以前に相続した家も対象で、その場合の期限は2027年3月31日と決まっています。
自分で申請する場合の書類と流れは不動産の名義変更を自分でやる手順で解説しています。
査定を頼む前に、登記事項証明書と納税通知書を手元に集める
不動産会社に電話をかける前に揃えておくものがあります。ここが空のまま査定を頼むと、会社側も条件を推定で埋めるしかなく、出てきた金額を兄弟に見せても「その数字は何を根拠にしているのか」で止まります。
法務局と市区町村で取れる書類
登記事項証明書は法務局で取得します。
見るのは甲区(所有権に関する事項)で、ここに親の名前が残っていれば相続登記が終わっていません。
乙区に抵当権の記載が残っていることもあります。
完済済みでも抹消していなければ登記は残るため、売却前に抹消の手続きが要ります。
固定資産税の納税通知書は、毎年春に市区町村から届きます。
年額と評価額の両方が分かるので、「持ち続けた場合に毎年いくら出ていくか」を兄弟に示す資料になります。
手元にない場合は、市区町村の資産税課で評価証明書を取れます。
家の中で先に探すもの
家財を処分する前に探しておきたいものがあります。捨ててしまうと相続の手続きが止まります。
- 通帳・キャッシュカード・有価証券
- 不動産の権利証と登記識別情報
- 遺言書(封がしてあれば開けない)
- 保険証券・年金手帳・借用書
- 実家を買ったときの売買契約書と領収書
最後の売買契約書は、売却後の税金を左右します。
譲渡所得は売った金額から取得費と譲渡費用を引いて計算するため、親がいくらで買ったかが分かる書類があるかどうかで課税される金額が変わります。
取得費が分からないときの扱いは判断が分かれる論点なので、税務署の事前相談か税理士で確認してください。
家の中の片づけを何から始めるかは遺品整理とは?何から始めるかで解説しています。
自筆で書かれた遺言書と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認を受ける前に封を開けてはいけません。
公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が不要です。
どちらなのかを確かめてから扱ってください。
兄弟には査定書、不動産会社には媒介契約書を出す
相手が変われば、持っていくものも変わります。同じ「売りたい」という話でも、兄弟に必要なのは数字で、不動産会社に必要なのは書面です。
兄弟に出すのは、査定額と維持費の両方
売却に反対する側は、たいてい金額の話をしていません。
「親が建てた家を勝手に」という感情と、「自分は何も知らされていない」という手続きへの不満が混ざります。
そこへ査定額だけを持っていくと、話が金額の交渉にすり替わります。
査定額と一緒に、固定資産税の年額、草刈りや通水の委託費、火災保険料を並べて、持ち続けた場合の年間コストを見せてください。
判断材料が同じになって初めて、売る売らないの話ができます。
査定は複数社から取るのが前提です。
立地と築年が同じでも、その会社が近くで扱った成約事例が違えば金額は変わります。
ただし、査定額は売れる価格の約束ではありません。
高い数字を出した会社が、その価格で売り切れるとは限らない点は、兄弟にも先に伝えておいたほうが後で揉めません。
親族から口が出たときの線引き
叔父や叔母から「あの家を売るのか」と言われることがあります。
売却を決める権利があるのは相続人だけで、その他の親族に同意権はありません。
ただし、権利の話を持ち出して押し切ると、法事や墓の管理でしこりが残ります。
決定の権限は相続人にあることを前提にしたうえで、決まった後で報告するのではなく、決める前に一言入れておく順序のほうが摩擦が少なくなります。
仏壇と位牌は、相続財産とは別に1人が引き継ぐ
墓・仏壇・位牌などの祭祀財産は、預金や不動産のように分けるものではなく、1人が引き継ぎます(民法897条)。
遺言などの指定がなければ慣習によることになり、それでも決まらない場合は家庭裁判所が定めます。
家を売る前に、誰が仏壇を引き取るかを決めておかないと、引き渡し直前に行き先のない仏壇が残ります。
相続放棄をした人でも祭祀承継者にはなれるため、放棄と仏壇の引き継ぎは別に考えてください。
不動産会社には、契約の種類と手数料を書面で確認する
媒介契約には一般・専任・専属専任の3タイプがあり、複数の会社に同時に頼めるかどうかと、業務の報告や指定流通機構への登録の扱いが変わります。
どのタイプで契約するのかを口頭で済ませず、契約書の文面で確認してください。
担当者を見るときは、査定額の高さより、その金額の根拠として近隣の成約事例を具体的に出せるかどうかを見ます。
売り出しから引き渡しまでにどれくらいかかるかは実家の売却期間はどのくらいかで解説しています。
不動産売却の税金は所有期間で倍違い、仲介手数料には上限があります
売却で手元に残る金額は、売値から仲介手数料と税金を引いた後の数字です。この2つは事前に計算できます。
相続した実家は、親の所有期間を引き継ぐ
譲渡所得の税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで分かれます。売った日から数えるのではありません。
| 区分 | 所有期間(譲渡した年の1月1日時点) | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
いずれも別に復興特別所得税が基準所得税額の2.1%かかります(国税庁 タックスアンサー No.3208・No.3211/2026年9月時点)。短期の実効税率は約39.63%です。
ここで誤解が起きやすいのは、相続した家の所有期間の数え方です。
相続や贈与で取得した不動産は、原則として亡くなった人が取得した日から数えます。
親が40年住んだ家を相続して翌年に売っても、短期の高い税率にはなりません。
「相続してすぐ売ると税金が高い」という理解で売却を先送りしているなら、その前提は当てはまりません。
相続空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売ったとき、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります(租税特別措置法35条3項)。
1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。
相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。
要件はほかにもあり、相続してから売るまでの間の使い方や、建物の状態が関わります。
自分の実家が該当するかどうかは物件ごとの判断になるため、売り出す前の段階で税務署か税理士に確認してください。
売った翌年の申告で必要になる書類は不動産を売ったら確定申告は必要かで解説しています。
仲介手数料の上限は法律で決まっている
仲介手数料は、売買価格が400万円を超える場合、価格の3%+6万円+消費税が上限です。
これは上限であって定価ではなく、下回る金額で契約することもあります。
見積もりの段階で、手数料以外に広告費や測量費を請求する話が出たら、何にいくらかかるのかを書面で出してもらってください。
口頭で「別途かかることもあります」と言われた項目は、後から金額が膨らみやすい部分です。
解体してから売る判断と、専門家に渡す境目
よく勧められるけれど、そのままやると損をしたり、話が進まなかったりする対処があります。
先に更地にする、口コミだけで会社を選ぶ
「古い家は壊してから売るほうが早い」という助言を受けることがあります。
ただ、建物を取り壊すと、その土地は住宅用地ではなくなるため、翌年からの固定資産税の扱いが変わります。
相続空き家の3,000万円特別控除にも建物に関する要件があります。
解体費を自己負担したうえで税金の条件も悪くなる、という順番になりかねないため、壊す前に控除の要件と税額への影響を確認してください。
会社選びを口コミの点数だけで決めるのも進みません。
見るべきなのは、免許番号が掲示されているか、査定額の根拠として近隣の成約事例を示せるか、媒介契約の種類と手数料を書面で説明するかです。
家財の処分を同時に頼む場合は、その業者が市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているかを確認してください。
買い取りを伴うなら古物商許可が要ります。
産業廃棄物の許可だけでは家庭から出た荷物を運べません。
「無料回収」を名乗るトラックは、この許可がないことが多いです。
自宅を訪問して品物を買い取る「訪問購入」は、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は物品の引き渡しを拒めます。その場で押し切られそうになったら、引き渡しを断って構いません。
専門家に渡す条件
- 登記の名義が親や祖父母のままで、相続人の人数がはっきりしない場合は司法書士に渡します
- 3,000万円特別控除や取得費の扱いで課税額が変わりそうな場合は税理士に渡します
- 兄弟と直接話せない状態になっている場合は弁護士に渡します
- 費用をかける前に整理したい場合は、市区町村や法テラスの無料相談枠を使えます
期限のあるものだけは先に確認してください。
相続放棄と限定承認は、自分が相続人だと知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。
売却の話がまとまらないまま期限だけが過ぎると、選べる手が減ります。
相続から引き渡しまでの全体の流れは実家はいつ売る?相続してから引き渡しまでの流れで解説しています。
よくある質問
不動産売却のランキング上位の会社に頼めば高く売れますか
順位が示しているのは全国の取扱件数や売上高で、実家のある地域でその会社が強いかどうかは別です。
郊外の戸建てでは、その地域だけで営業してきた会社のほうが買い手の心当たりを持っていることもあります。
会社の規模より、近隣の成約事例を具体的に出せるかどうかで判断してください。
査定額がいちばん高い会社を選べばいいですか
査定額は売れる価格の約束ではありません。
媒介契約を取るために高めの金額を出し、売り出し後に値下げを提案されることもあります。
金額の高さではなく、その根拠として近隣でいくらの成約があったかを示せるかを見てください。
名義が親のままでも売れますか
そのままでは売買契約を結べません。
先に相続登記を済ませる必要があります。
相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象です。
2024年3月以前に相続した不動産も対象で、期限は2027年3月31日です。
仏壇と家財が残ったままでも査定を頼めますか
頼めます。
査定で見るのは立地・築年・面積・接道の状況などで、家財があること自体で金額が決まるわけではありません。
ただし引き渡しまでには家の中を空ける必要があるため、仏壇を誰が引き継ぐかと、家財の処分にいくらかかるかは早い段階で見積もっておいてください。
兄弟が売却に反対しています。どう進めればいいですか
反対の理由が金額なのか、手続きから外されたことへの不満なのかで対応が変わります。
複数社の査定額と、持ち続けた場合の固定資産税や管理費を並べて、同じ資料を見ながら話す場を作ってください。
それでも話が進まない場合は、遺産分割調停という手続きがあります。
空き家のまま置いておくと固定資産税は6倍になりますか
放置すれば自動的に上がるわけではありません。
市区町村が「特定空家」または「管理不全空家」に指定し、勧告を受けた段階で、住宅用地の特例が外れます。
指定と勧告という段階を踏むため、草刈りや通水などの管理を続けている間に突然6倍になることはありません。
まとめ
実家の売却が止まっているとき、詰まっているのは価格ではなく、名義・兄弟の同意・仏壇と家財のどれかです。
名義の確認と書類の取り寄せは今日から一人で始められ、兄弟との話し合いは資料が揃ってからのほうが早く進みます。
会社選びは全国の順位ではなく、近隣の成約事例を出せるかと、契約の種類と手数料を書面で説明するかで見てください。
相続した家は親の所有期間を引き継ぐため、売り急がなくても短期の高い税率にはなりません。
ただし相続登記の3年と相続税の10か月という期限は動きません。
ぜひ本記事の切り分け表と、査定前に揃える書類のリストを手元に置いて、まずは登記事項証明書の甲区を確認するところから始めてください。


