空き家3,000万円控除の必要書類|申請手順と提出先を解説

空き家3,000万円控除の必要書類でいちばんつまずくのは、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書(ひそうぞくにんきょじゅうようかおくとうかくにんしょ)」です。
自分で用意できる書類ではなく、売った後でなければ申請できません。
発行まで日数もかかります。
対象になるのは1981年5月31日以前に建てられた家屋で、譲渡の期限は2027年12月31日までです。
相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では控除額が1人あたり2,000万円に下がります(租税特別措置法35条3項/2026年9月時点)。
書類の枚数より、この人数と建築年のほうが結果を左右します。
本記事では、被相続人居住用家屋等確認書の申請先と添える書類・法務局と手元でそろえる書類・確定申告の提出先と期限を解説します。
空き家3,000万円控除の手続きは、要件確認・売却・確定申告の3段階で進む
この控除は、売った年の翌年に確定申告をして初めて適用されます。
申告しなければ控除はありません。
書類集めも申告に合わせて動くので、全体の日程はおおよそ次のようになります。
| 段階 | やること | 主な窓口 |
|---|---|---|
| 1. 要件の確認 | 建築年月日と名義を確かめる。相続人が何人で売るかを決める | 法務局 |
| 2. 売却 | 耐震改修をして売るか、取り壊して土地として売るかを決める。売買契約と引き渡し | 不動産会社 |
| 3. 確認書の申請 | 被相続人居住用家屋等確認書を申請する | 家屋があった市区町村 |
| 4. 確定申告 | 譲渡所得の内訳書に確認書などを添えて提出する | 住所地の税務署 |
順番を入れ替えられない部分が1つあります。
3の確認書は、売却の事実を示す書類を添えて申請する仕組みなので、売る前には出せません。
売却から申告までの間に、この申請をはさむ前提で日程を組んでください。
登記事項証明書で建築年月日と名義を先に見る
最初に確かめるのは、家屋が1981年5月31日以前の建築かどうかです。
法務局で登記事項証明書を取ると、表題部に建築年月日が記載されています。
ここが基準日より後なら、書類をそろえても対象になりません。
同じ書面の甲区(所有権に関する事項)では、名義が誰のままかが分かります。
親の名義のままでは売買契約を結べないため、先に相続登記が必要です。
相続登記は不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法76条の2)。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
手続きの中身は相続登記の必要書類と法務局での申請手順で解説しています。
建築年と名義の2点が確認できたら、次は誰が何人で売るかです。
相続人が3人以上で共有のまま売ると、1人あたりの控除額は2,000万円になります。
1人に集約してから売るかどうかは、遺産分割の内容そのものに関わるので、分割協議の段階で決めておく話になります。
空き家3,000万円控除の必要書類|市区町村で取る確認書が申請の山場
被相続人居住用家屋等確認書は、家屋があった場所の市区町村が発行します。
税務署ではありません。
この1枚を確定申告に添えることで、「亡くなった人が1人で住んでいた家で、相続後は使われていなかった」という事実を市区町村が確認した形になります。
確認書の申請先と、申請に添える書類
申請先は、売った家屋が所在していた市区町村の空き家対策の担当課です。
自分が住んでいる市区町村ではありません。
申請書の様式は市区町村のサイトで公開されていることが多く、添える書類としては次のようなものを求められます。
- 売買契約書の写しなど、売却したことが分かる書類
- 電気・ガス・水道の使用中止が分かる書類など、相続してから誰も住んでいなかったことを示すもの
- 家屋の状況が分かる写真
- 被相続人の除票(住民票の除票)など、亡くなるまでそこに住んでいたことを示す書類
求められる組み合わせは市区町村ごとに案内が異なります。
申請書を取り寄せる段階で、必要な添付書類の一覧を担当課に確認してください。
取り壊して土地だけを売った場合は、家屋の取り壊し後に撮った更地の写真や、閉鎖事項証明書(取り壊した建物の登記が閉じられたことを示す証明書)を求められることもあります。
発行までの日数を逆算する
確認書は申請したその場で出るものではなく、書類の確認を経て後日交付されます。
所要日数は市区町村で違うため、窓口で「申請から交付までどのくらいか」を先に聞いておいてください。
確定申告の受付が始まってから動くと、交付を待つ間に期限が近づきます。
電気・水道の使用中止が分かる書類は、契約を解約した時点の通知や、電力会社・水道局に発行を依頼するものです。
解約から時間がたっていると、手元に残っていないことがあります。
書類を探して見つからなければ、発行を依頼するところから始めるので、ここでも日数を見ておく必要があります。
法務局と手元でそろえる書類は、売り方によって変わる
確定申告に添えるもう一組の書類は、自分で集めます。どれも確認書ほど時間はかかりませんが、売り方によって要るものが変わります。
登記事項証明書
家屋と土地の登記事項証明書は法務局で取ります。
窓口のほか、オンラインで請求して郵送で受け取る方法もあります。
建築年月日の確認で一度取っていても、申告用には売却後の内容が必要になる場合があるので、税務署の案内に沿って用意してください。
家屋を取り壊して売ったときは、建物の登記を閉じた記録である閉鎖事項証明書がこれに代わります。
売買契約書の写し
売買契約書は、譲渡の対価がいくらだったかを示す書類です。
この控除には譲渡対価の上限が定められているため、契約書の金額がそのまま適用の可否に関わります。
上限を含む適用条件は空き家の3,000万円特別控除が使える条件の一覧で解説しています。
耐震基準適合証明書、または取り壊しを示す書類
対象が旧耐震の家屋である以上、そのまま売って終わりにはなりません。
耐震基準に適合させて売るなら耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写しを、取り壊して土地として売るなら取り壊しの事実が分かる書類を添えます。
どちらの形で売るかによって添付書類が入れ替わるので、売却の方針を決める段階で税務署に確認しておいてください。
譲渡所得の内訳書
確定申告書に付ける計算明細です。
取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を出し、そこから控除額を引く計算をこの用紙で行います。
親が買ったときの売買契約書が見つからず取得費が分からない場合の扱いは判断が分かれる論点なので、税務署の事前相談で確認できます。
提出先は住所地の税務署、期限は売った翌年の確定申告期間
提出先は、家屋があった場所ではなく、申告する本人の住所地を管轄する税務署です。
相続人が離れて暮らしている場合、兄弟それぞれが自分の住所地の税務署に出すことになります。
共有で売ったなら、共有者は各自で申告してください。
1人がまとめて申告することはできません。
期限は、譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までの確定申告期間です。
売買契約を結んだ日ではなく、原則として引き渡した日がいつの年に入るかで申告の年が決まります。
年末に引き渡すか年明けにするかで申告の年がずれるため、契約の時点で引き渡し日を意識しておくと日程を組みやすくなります。
e-Taxでも申告できます。
確認書などの添付書類は、イメージデータで送信する方法と、別途郵送する方法があります。
どちらになるかは書類の種類で扱いが違うため、送信前に国税庁の案内を確認してください。
譲渡そのものの期限は2027年12月31日
この控除が使えるのは、2027年12月31日までに譲渡したものに限られます(租税特別措置法35条3項/2026年9月時点)。
さらに、相続してからいつまでに売るかという別の期限もあります。
売却を先送りにすると、書類がそろっていても対象から外れることになるため、適用期限のほうから逆算して動くことになります。
期限の数え方は空き家特例の適用期限と3年以内ルールで解説しています。
空き家3,000万円控除で止まるのは、確認書の要件と相続人の人数
書類の不備で止まるより、要件そのものに引っかかって止まるほうが多い制度です。止まりやすい箇所を先に見ておきます。
相続してから貸した、または誰かが住んだ
相続してから売るまでの間に、その家を人に貸したり、相続人が住んだり、事業に使ったりすると対象から外れます。
「空いているのはもったいないから」と一時的に貸した結果、控除が使えなくなる形です。
電気・水道の使用中止が分かる書類を求められるのは、この点を確認するためでもあります。
売ると決めているなら、途中で使わないという判断が要ります。
親が1人で住んでいたかどうか
亡くなる直前に、その家に親以外の人が同居していた場合の扱いは要件で細かく定められています。
老人ホームに入居していた期間がある場合も、別に条件が置かれています。
家族の住み方は家ごとに違うので、ここは自己申告で判断せず、確認書の申請時に市区町村へ、控除の可否は税務署へ確認してください。
家財を残したまま引き渡した
仏壇や家具を置いたまま売ると、取り壊しや引き渡しの日程が動き、譲渡の年がずれることがあります。
家財の処分は業者の予約待ちが発生するので、売却の日程と並行して進めることになります。
家財の片づけの進め方は遺品整理を何から始めるかの順番で解説しています。
処分を急いで通帳や権利証まで捨ててしまうと、相続の手続き自体が止まります。
相続人の人数を数え違える
相続人が3人以上で共有のまま売った場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたりの控除額が2,000万円になります。
3,000万円が人数分あるわけでも、全体で3,000万円というわけでもありません。
誰の名義で売るかを決める前に、この点を兄弟で共有しておいてください。
分割の決め方で後悔しやすい箇所は実家じまいでやってはいけないことで解説しています。
自分で申告するか、税理士に頼むか
書類を集めるところまでは、相続人本人でもできます。
市区町村への確認書の申請も、法務局での登記事項証明書の取得も、窓口で様式をもらって記入する作業です。
平日に動ける時間が取れるなら、外注しなくても進みます。
一方、譲渡所得の計算は別の作業です。
取得費が分からない、相続税を払っていて取得費加算の特例と比べたい、他の特例と併用できるかを判断したいといった場面では、計算の前提から検討が要ります。
この判断は税理士の仕事で、記事や窓口の一般案内では答えが出ません。
費用の目安は事務所や譲渡の内容で変わるため、複数の事務所に見積もりを取って比べることになります。
頼むとしても、確認書の申請と書類集めは自分でやって、申告書の作成だけを依頼する形にできます。
全部を渡す前に、どこまで自分で進められるかを切り分けてください。
売却の全体像は実家じまいの手順で解説しています。
よくある質問
被相続人居住用家屋等確認書はどこに申請しますか
売った家屋が所在していた市区町村です。
自分が住んでいる市区町村でも、税務署でもありません。
担当する課の名称は市区町村によって違うので、代表電話で「空き家の3,000万円控除の確認書」と伝えると案内されます。
確認書は売る前に申請できますか
できません。
売買契約書の写しなど、売却したことが分かる書類を添えて申請する仕組みだからです。
引き渡しを終えてから申請し、交付を待って確定申告に添えるという順番になります。
名義が親のままでも売れますか
売れません。
売買契約の前に相続登記を済ませる必要があります。
相続登記は不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、2024年4月1日より前に相続した不動産は2027年3月31日が期限です。
兄弟3人の共有で売ると控除額はどうなりますか
2024年1月1日以降の譲渡では、相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除額は2,000万円になります(租税特別措置法35条3項/2026年9月時点)。共有者はそれぞれが自分の住所地の税務署に申告します。
確定申告をしなければ控除は受けられませんか
受けられません。
この控除は申告して初めて適用されるもので、譲渡所得の内訳書と確認書などを添えて提出する必要があります。
控除を使った結果として税額が0円になる場合でも、申告そのものは要ります。
まとめ
この控除で日程を左右するのは、被相続人居住用家屋等確認書です。
売った後でなければ申請できず、交付にも日数がかかるため、引き渡しから確定申告までの間にこの申請をはさむ前提で組んでください。
建築年月日と名義は、売却の方針を決める前に登記事項証明書で確かめておくと手戻りがありません。
控除額は相続人の人数で変わり、譲渡の期限も2027年12月31日と決まっています。
書類をそろえる前に、誰が何人で売るかという分割の話が先に来ます。
ぜひ本記事の4段階の流れと必要書類の一覧を参考に、確認書の担当課への問い合わせから始めてください。


