相続登記は自分でできる?必要書類と法務局での申請手順

相続登記でまず取り寄せるのは、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍です。
本籍地を転々としていると、市区町村を何か所も渡り歩くことになり、郵送請求だけで1か月近くかかることがあります。
登記そのものは法務局の窓口かオンラインで完結しますが、書類が1枚でも欠けると受け付けてもらえません。
2024年4月1日からは申請が義務になり、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。
本記事では、集める書類と取り寄せ先、法務局への申請の進め方、登録免許税0.4%の計算、自分でやるか司法書士に頼むかの分かれ目を解説します。
相続登記の全体は5ステップ、起点は戸籍集め
相続登記は、名義を変える1回の申請で終わる手続きに見えて、実際には前段の準備が作業量の大半を占めます。流れは以下の通りです。
| ステップ | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を集め、相続人を確定する | 2週間〜1か月半 |
| 2 | 登記事項証明書と固定資産評価証明書で、対象の不動産と評価額を確かめる | 数日 |
| 3 | 遺産分割協議で誰の名義にするかを決め、協議書に全員が署名押印する | 家族の事情による |
| 4 | 登記申請書を作り、登録免許税を計算する | 1〜3日 |
| 5 | 法務局へ申請し、完了後に登記識別情報通知を受け取る | 1〜2週間 |
戸籍から始める理由
順番を入れ替えられない工程が、1番目の戸籍集めです。
法務局は、亡くなった人の相続人が誰と誰なのかを戸籍だけで判断します。
遺産分割協議書に相続人全員の署名があっても、戸籍でその「全員」が証明できなければ登記は通りません。
前の結婚で生まれた子や、認知した子がいた場合、家族が把握していないまま協議を進めてしまうと、協議そのものをやり直すことになります。
そのため、誰が何を相続するかの話し合いより先に戸籍を取り寄せます。集め終わって相続人が確定してから協議に入れば、後から人が増えて振り出しに戻る事態を避けられます。
遺言書があるかどうかで書類が変わる
遺言書が見つかった場合、遺産分割協議書は不要になり、代わりに遺言書そのものを添付します。
ただし自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けてからでないと登記に使えません。
封を開けずに家庭裁判所へ持ち込んでください。
公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使って預けられていたものは検認が不要で、そのまま添付できます。
相続登記の必要書類と、どこの窓口で取れるか
必要書類は、遺産分割協議で名義人を決める場合を前提に説明します。取り寄せ先がそれぞれ違うので、並行して動かないと時間だけが過ぎます。
亡くなった人の戸籍(出生から死亡まで連続したもの)
本籍地の市区町村で取ります。
死亡の記載がある最後の戸籍から、結婚や転籍でさかのぼりながら、出生の記載があるものまでつなげます。
途中で戸籍が改製されていれば改製原戸籍、その本籍から全員が抜けていれば除籍謄本になり、名称が変わります。
窓口で「相続手続きに使うので、出生から死亡まで全部ください」と伝えれば、その役所にある分はまとめて出してもらえます。
本籍地が遠方なら郵送請求です。
申請書、本人確認書類のコピー、定額小為替、返信用封筒を同封します。
往復で2週間近くかかることもあるため、複数の市区町村にまたがるとひと月を超えます。
なお2024年3月から戸籍の広域交付が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍謄本を請求できるようになりました。
ただし請求できるのは本人・配偶者・直系の親族に限られ、コンピュータ化されていない古い戸籍は対象外です。
使えるかどうかは窓口で確認してください。
相続人全員の戸籍謄本と、名義人になる人の住民票
相続人が今も生きていて相続の権利を持っていることを示すため、全員分の戸籍謄本(現在のもの)が要ります。
各自の本籍地の市区町村で取得します。
兄弟が遠方に住んでいる場合は、それぞれに取ってもらうほうが早いです。
あわせて、不動産の名義人になる相続人の住民票を用意します。登記簿に住所を記録するための書類なので、名義人にならない相続人の分は不要です。
亡くなった人の住民票の除票
登記簿に載っている所有者と、亡くなった人が同一人物であることを住所でつなぐ書類です。
最後の住所地の市区町村で取ります。
登記簿の住所が古いままで、除票の住所とつながらないときは、その間の住所の移り変わりが分かる戸籍の附票を追加で取り寄せます。
登記事項証明書と固定資産評価証明書
登記事項証明書は法務局で取得します。
手数料はオンライン請求で郵送480円、窓口交付480円、窓口請求600円です(法務局 登記手数料/2026年9月時点。
改定されることがあるため申請前に現行料金を確認してください)。
名義が親のままかどうかは甲区(所有権に関する事項)を見れば分かります。
祖父の代から名義が動いていないケースもあり、その場合は世代をさかのぼった相続登記が必要になります。
固定資産評価証明書は、不動産がある市区町村の資産税課で取ります。
東京23区は都税事務所です。
登録免許税の計算の基礎になる固定資産税評価額が記載されており、これが無いと税額を出せません。
毎年春に届く固定資産税の納税通知書で代用できる法務局もありますが、扱いは管轄によって違います。
遺産分割協議書と印鑑証明書
誰がどの不動産を取得するかを書き、相続人全員が署名して実印を押します。
あわせて全員分の印鑑証明書を添付します。
印鑑証明書は住所地の市区町村で取得し、マイナンバーカードがあればコンビニでも出せます。
登記申請に使う印鑑証明書には有効期限の定めがありませんが、金融機関の手続きでは3か月以内を求められることが多いので、同時に進めるなら時期をそろえてください。
協議書の書き方は遺産分割協議書の書き方で解説しています。
法務局への申請は窓口・郵送・オンラインの3つ、期限は3年
申請先は、どこの法務局でもよいわけではありません。
不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に出します。
自宅の近くの法務局ではなく、実家がある地域の管轄です。
管轄は法務局のウェブサイトで調べられます。
複数の市区町村に不動産が散らばっていると、管轄ごとに別々の申請になります。
誰が、どうやって出せるか
申請できるのは、その不動産を取得する相続人本人です。
相続人の一人が全員分をまとめて申請することもできます。
第三者に代わって出してもらう場合、報酬をもらって代理できるのは司法書士と弁護士だけです。
親族が無償で使いに出るのであれば、委任状を持たせれば書類の提出自体はできます。
提出方法は、窓口へ持参するか、書留郵便で送るか、オンラインで申請するかのいずれかです。
法務局は平日の日中しか開いていないため、仕事の都合がつかないなら郵送が現実的です。
ただし郵送では、その場で職員に不備を指摘してもらえません。
初めて自分で作った申請書なら、事前に法務局の登記相談を予約して、書類一式を見てもらってから出すと差し戻しを減らせます。
登録免許税は評価額の0.4%
相続による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額の1,000分の4(0.4%)です(国税庁 タックスアンサー No.7191/2026年9月時点)。売買や贈与の2%と比べて低い税率で、相続には期限付きの軽減措置がありません。
ここでいう「不動産の価額」は、市町村の固定資産課税台帳に登録された価格、つまり固定資産税評価額です。
売買価格や不動産会社の査定額ではありません。
固定資産税評価額1,000万円の土地なら、1,000万円×0.4%で登録免許税は4万円になります。
計算するときは、評価額の1,000円未満を切り捨ててから税率を掛け、出た税額の100円未満を切り捨てます。
土地と建物が両方あるなら、合計した評価額で計算します。
納付は収入印紙を申請書に貼る方法が一般的です。
この登録免許税は誰に頼んでも同じ額の実費です。
司法書士に依頼する場合、これとは別に報酬がかかります。
内訳の分け方は相続登記の費用と登録免許税の計算で解説しています。
期限は取得を知った日から3年
2024年4月1日から、相続登記は義務になりました。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由なく怠ったものとして10万円以下の過料の対象になります。
起算日は亡くなった日ではなく、自分がその不動産を取得したと知った日です。
遺産分割で取得が決まった場合は、協議が成立した日から3年と考えます。
見落としやすいのが、2024年4月1日より前に相続した不動産も対象になる点です。
祖父母の代から名義が変わっていない土地があるなら、その期限は2027年3月31日です。
期限の数え方は相続登記の期限は3年で解説しています。
遺産分割がまとまらず3年に間に合わないときは、相続人申告登記という制度があります。
自分が相続人であることを法務局に申し出るだけで、義務を果たしたものとして扱われる仕組みです。
名義が変わるわけではないので、売却や担保設定はできません。
話し合いが長引きそうなら、まずこれで過料を避けておく選択があります。
相続登記が止まるのは、戸籍の欠落と名義人の住所不一致
自分で申請した人がつまずくのは、たいてい次の場面です。
戸籍がつながらない
出生まで遡ったつもりでも、途中の1通が抜けていることがあります。
戸籍には前の戸籍から移ってきた記載(従前戸籍)が書かれているので、そこを追って次を請求します。
古い戸籍は手書きの毛筆体で、読み取れないことも多いです。
役所の窓口で「この戸籍の一つ前はどこですか」と聞けば、職員が読んで教えてくれます。
法務局の登記相談でも、つながっているかどうかは見てもらえます。
登記簿の住所と除票の住所が合わない
親が引っ越しをしていて、登記簿の住所が昔のままというケースです。
登記簿上の所有者と亡くなった人が同一人物だと示せないため、そのままでは受け付けられません。
戸籍の附票を取れば住所の移り変わりが記録されているので、それでつなぎます。
ただし附票の保存期間は住民票の除票と同じく5年から現在は150年に延びたものの、制度改正前に廃棄されている場合があります。
取得できなかったときの代替手段は法務局によって扱いが違うので、管轄に相談してください。
相続人の一人が協議に応じない
遺産分割協議は全員の合意が要るため、一人でも印鑑を押さなければ成立しません。
この場合、法定相続分どおりに全員の共有名義で登記することはできます。
ただし共有にすると、後で売るときに全員の同意が必要になり、次の代でさらに相続人が増えます。
共有を避けたいなら、家庭裁判所の遺産分割調停へ進む段階です。
相続人の中に認知症の人がいる
判断能力が失われていると、遺産分割協議書に有効な署名押印ができません。
家庭裁判所に成年後見人を選任してもらってから協議に入ることになり、選任だけで数か月かかります。
親がまだ元気なうちに備える方法は家族信託の仕組みで解説しています。
自分でやるか司法書士に頼むかは、金額の差を見てから決められます。相続登記の費用計算で両方の目安が並びます。
相続登記を自分でやるか、司法書士に頼むかの分かれ目
判断材料になるのは、戸籍の量と不動産の複雑さです。
亡くなった人が生涯を通じて本籍を動かしておらず、相続人が配偶者と子だけで全員が協力的、不動産も自宅の土地建物だけという条件なら、自分で申請する余地は十分にあります。
法務局の登記相談を2、3回使えば、書類の作り方はその場で教えてもらえます。
かかるのは登録免許税と証明書の取得実費、それに平日に動く時間です。
一方、次のような条件が重なると、専門家に渡したほうが結果的に早く済みます。
- 亡くなった人が転籍を繰り返していて、戸籍が5通以上になりそうな場合
- 祖父母の代から名義が動いておらず、相続が二重三重になっている場合
- 不動産が複数の市区町村にあり、法務局の管轄をまたぐ場合
- 相続人の中に、連絡が取れない人や海外に住んでいる人がいる場合
- 私道の持分や、農地・山林が含まれている場合
司法書士の報酬は依頼先ごとに決まるもので、一律の相場として示せる公的な数字はありません。
複数の事務所に見積もりを取り、どこまでを任せるかで金額が変わることを確認してください。
戸籍集めだけ自分でやり、申請書の作成と提出を依頼するという分け方もできます。
全部を丸投げする前に、自分でできる部分を切り分けて相談すると費用を抑えられます。
なお、相続税の申告が必要かどうかは別の話です。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、これを超えるなら申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。
判定の考え方は相続税の基礎控除で解説しています。
登記だけ済ませて申告を忘れる例があるので、不動産を含めた財産の総額は早い段階で押さえておいてください。
よくある質問
相続登記に期限が過ぎてしまった場合、すぐに過料が来ますか
3年を過ぎたからといって、自動的に通知が届くわけではありません。
法務局が義務違反を把握した場合、まず催告がなされ、それでも申請しないときに過料の手続きへ進む運用とされています。
相続人の間で協議がまとまらないなど、正当な理由があると認められれば過料の対象外になります。
過ぎていることに気づいたら、相続人申告登記も含めて管轄の法務局に相談してください。
戸籍を集めるのに費用はどのくらいかかりますか
手数料は書類の種類ごとに決まっており、戸籍謄本と除籍謄本、改製原戸籍で金額が違います。
市区町村によって取り扱いも異なるため、請求先の役所で確認してください。
郵送請求の場合は、これに定額小為替の発行手数料と往復の郵便代が加わります。
兄弟で法定相続分どおりの共有名義にしておくのは問題ありませんか
登記としては有効に成立します。
ただし共有不動産は、売却も大規模な修繕も共有者全員の同意が要ります。
誰かが亡くなればその持分がさらに分割され、次の代では相続人が枝分かれして連絡すら難しくなります。
空き家として持ち続ける予定なら、誰が管理して固定資産税を払うのかまで決めたうえで判断してください。
登記が終わったあと、権利証は発行されますか
現在は紙の権利証ではなく、登記識別情報通知という書類が交付されます。
12桁の符号が目隠しシールの下に記載されており、次にその不動産を売ったり担保に入れたりするときに使います。
再発行はされないので、開封せずに保管してください。
相続した家をすぐ売るつもりでも、相続登記は必要ですか
必要です。
亡くなった人の名義のままでは売却できないため、いったん相続人名義に変えてから買主へ移転登記します。
売却して利益が出れば譲渡所得の申告も関わってきます。
要否の判断は不動産を売ったときの確定申告で解説しています。
まとめ
相続登記で時間がかかるのは申請そのものではなく、出生から死亡までの戸籍を集めて相続人を確定させるところです。
ここが終われば、あとは固定資産評価証明書で評価額を確認し、0.4%を掛けて登録免許税を出し、管轄の法務局へ出すだけの作業になります。
戸籍が少なく不動産も自宅だけなら、登記相談を使って自分で進められます。
2024年4月1日より前に相続した不動産の期限は2027年3月31日です。
名義が祖父母の代から動いていない土地に心当たりがあるなら、まず登記事項証明書の甲区で今の名義を確かめてください。
ぜひ本記事の必要書類とその取り寄せ先の一覧を手元に置いて、どこから先が自分で動ける範囲なのかを見極めながら進めてください。


