SHARE:

遺品整理とは?何から始めるかを順番どおりにやさしく解説

遺品整理とは?何から始めるかを順番どおりにやさしく解説

遺品整理で最初にやるのは、物を捨てることではなく、通帳と保険証券と不動産の権利証を探し出すことです。家財と一緒に袋へ入れてしまうと、口座の解約も名義変更も止まります。

しかも時間の制約があります。

相続放棄は自分が相続人だと知った時から3か月、相続税の申告と納付は相続の開始を知った日の翌日から10か月です。

賃貸の部屋なら、それより先に解約期限が来ます。

本記事では、捨てる前に探す書類・費用が量と階数で変わる理由・業者の許可の確かめ方を解説します。

遺品整理は捨てる作業ではなく、通帳と権利証を探す作業から始まる

押し入れの段ボールもタンスの引き出しも、中身を見ないまま袋に詰めれば半日で片づきます。

ところがその袋に通帳や証券が混ざっていると、相続の手続きは先へ進みません。

銀行の口座を解約するにも、生命保険の請求をするにも、どこに何があったかを示す紙が要ります。

処分すると手続きが止まる10点

片づけの前に、家の中から先に抜き出しておくものは次の通りです。

  • 預金通帳とキャッシュカード
  • 生命保険・損害保険の証券
  • 年金手帳、年金証書
  • 不動産の権利証、登記識別情報通知
  • 遺言書、またはそれらしい封筒
  • 実印と印鑑登録証
  • 貸金庫の鍵と契約書
  • 株式や投資信託の取引報告書
  • 借用書、キャッシングの明細
  • クレジットカードと公共料金の請求書

最後の2つを軽く見ないでください。

借金の有無が分からないまま3か月が過ぎると、相続放棄という選択肢そのものが消えます。

請求書の束は、どの会社と契約が続いているかを示す手がかりにもなります。

遺言書らしき封筒は開けない

封をした状態の遺言書が出てきたら、その場で開けてはいけません。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所の検認(けんにん)が要り、封を切らずに持ち込みます。

公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が不要ですが、それ以外は封のまま保管してください。

書類を探しながら片づけを同時に進めるのは、遠方から通っている場合ほど難しくなります。

初日は探す作業だけに充てて、処分は次の訪問からにする進め方もあります。

書類の探し方と当日の段取りは遺品整理を自分でやる手順で解説しています。

遺品整理・生前整理・特殊清掃は、頼む相手も費用の出方も違う

業者のサイトではこれらの言葉が並んで載っていますが、作業の中身は別物です。混ざったまま見積もりを取ると、要らない作業まで入った金額が出てきます。

言葉いつ・誰がやるか作業の中心
遺品整理亡くなった後に遺族が財産と書類の仕分け、家財の搬出と処分
生前整理本人が元気なうちに本人と家族で残す物の選別、財産目録づくり
特殊清掃発見が遅れた場合など消臭・消毒・汚損部分の原状回復
ゴミ屋敷の片付け亡くなる前でも後でも大量の廃棄物の搬出と分別

特殊清掃が要る状態では、先に清掃を終えないと家財の搬出に入れません。

費用の桁も遺品整理とは変わります。

どういう場合に必要になるかは特殊清掃とは?依頼が必要になるケースで解説しています。

物の量が床上まで達しているなら、遺品整理の見積もりではなく片付けの見積もりに近づきます。

トラックの台数と人数で金額が決まるという意味では同じですが、分別の手間が加わるぶん単価が上がります。

間取りごとの考え方はゴミ屋敷の片付け費用で解説しています。

四十九日を待つ決まりはない。動く順番は手続きの期限で決まる

遺品整理を始める時期について、法律の定めはありません。

四十九日の法要に親族が集まるので、そのタイミングに合わせる家庭が多いというだけです。

ただし、それより前に切られている期限がいくつもあります。

手続き期限起算日
死亡届7日以内死亡の事実を知った日
年金の受給停止厚生年金10日以内/国民年金14日以内死亡日
世帯主変更届14日以内死亡日
相続放棄・限定承認3か月以内自分が相続人だと知った時
準確定申告4か月以内相続の開始を知った日の翌日
相続税の申告・納付10か月以内相続の開始を知った日の翌日
相続登記3年以内不動産を取得したことを知った日

この中で片づけに直結するのが3か月の相続放棄です。

借金があるかどうかは、家に残った請求書や借用書を見ないと分かりません。

四十九日を待ってから探し始めると、判断材料がそろうころには残り1か月半になります。

形見を持ち帰る前に確かめること

相続財産を処分したり使ったりすると、相続を承認したものとみなされて放棄ができなくなることがあります。

時計や貴金属を形見として持ち帰る行為も、価値によってはここに触れます。

借金の有無がはっきりしないうちは、写真を撮って現状のまま置いておき、持ち出しは判断がついてからにしてください。

賃貸住宅の場合は、期限が家賃で動きます。

解約日までに部屋を空けられなければ、翌月分の家賃と共益費が発生します。

いつ動き始めるかの考え方は遺品整理はいつから始める?四十九日前でも問題ない理由で解説しています。

遺品整理の費用は、量と階数と処分方法の3つで動く

同じ間取りでも見積額が倍近く変わります。部屋の広さより、次の要素のほうが金額を左右します。

変わる要素費用への影響
物の量(押し入れと物置の詰まり具合)トラックの台数と作業人数が増える
階数とエレベーターの有無階段搬出は人手と時間が増える
前面道路の幅と駐車場所トラックを横付けできないと手運びの分が加算される
処分の出し方自治体の粗大ごみで自分が出した分だけ業者の処分費が減る
買取できる物の有無古物商許可のある業者なら作業費と相殺されることがある
消臭・害虫駆除の要否遺品整理とは別料金になる
仏壇・人形の供養お焚き上げの費用が別枠で乗る

費用を下げたいなら、手をつけやすいのは4行目です。

冷蔵庫やテレビなど家電リサイクル法の対象品を除けば、多くの家財は自治体の粗大ごみとして出せます。

申込みから収集日まで日数がかかるので、部屋に入った初日に申し込んでおくと、業者に頼む量をそのぶん減らせます。

手順は粗大ごみの出し方で解説しています。

逆に、遠方から何度も通うと交通費と宿泊費が積み上がります。

片道の交通費と自分の休暇を足して、業者に一括で頼んだ場合と比べてください。

間取り別の目安は遺品整理の費用相場で解説しています。

家財を動かす前に、誰の同意が必要かを確かめる

家の中の物は、原則として相続財産です。

相続人が複数いれば、遺産分割が済むまでは全員の共有になります。

当番になった1人が良かれと思って処分した結果、あとから「あの指輪はどこへ行った」という話になるのは、この共有状態を飛ばしたときです。

相続人が複数いる場合

作業に入る前に、他の相続人へ日程と処分の方針を伝えておきます。

立ち会えない人がいるなら、部屋ごとの写真と、貴重品らしき物を並べた写真を送っておくと、後から説明する材料になります。

価値がありそうな物は処分せず、まとめて保管する扱いにしてください。

仏壇・位牌・お墓は相続財産とは別枠

仏壇や位牌、墓地は祭祀(さいし)財産という別の枠で、相続人全員で分けるものではありません。

1人が引き継ぎます。

指定がなければ慣習によって決まり、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。

相続放棄をした人でも、この役目を引き受けることはできます。

賃貸なら、貸主や管理会社への連絡も先に必要です。

退去日、鍵の返却、原状回復の範囲を確認しないまま搬出を進めると、費用の負担先で揉めます。

連帯保証人が親族になっている契約も多いので、誰が窓口になるかを決めておいてください。

遺品整理を自分でやるか、業者に頼むかの分かれ目

全部を自分でやるか、全部を任せるかの二択ではありません。書類と貴重品の捜索だけ自分でやり、家財の搬出を業者に回す組み合わせが現実的な場面が多くあります。

自分で進めやすい条件

実家まで日帰りで通えて、解約期限まで1か月以上あり、大型家具が数点というぐらいなら、自治体の粗大ごみと軽トラックのレンタルで足ります。

手間はかかっても、何がどこにあったかを自分の目で確かめられます。

書類の抜けが怖い人ほど、この方法が向いています。

業者に任せたほうが早い条件

遠方に住んでいて往復に1日かかる、退去日まで2週間を切っている、2階以上でエレベーターがない、といった条件が重なると、自力では終わりません。

タンスやベッドは1人で階段を下ろせません。

腰や膝に不安がある場合も、無理をせず搬出だけ人手を入れてください。

併用するなら、順番を決めておきます。

先に自分で全部屋を回って書類と貴重品を抜き、残った家財を業者に見せて見積もりを取ります。

この順番だと「これは残してください」という指示が明確になり、勝手に処分されるトラブルも減ります。

遺品整理業者に免許はない。確かめるのは2つの許可

遺品整理業という業種に、国の免許や登録制度はありません。

誰でも名乗れます。

そのため会社名や広告の文言ではなく、次の2つの許可で見分けます。

  • 一般廃棄物収集運搬業の許可(市区町村が出す)…家庭から出た不用品を運んで処分するために必要
  • 古物商許可(都道府県公安委員会が出す)…遺品を買い取るために必要

間違えやすいのが産業廃棄物収集運搬業の許可です。

これは事業活動で出た廃棄物のための許可で、家庭ごみは運べません。

許可証の写真をサイトに載せている業者もありますが、番号を控えて自治体の許可業者一覧と照らせば確認できます。

「遺品整理士」は民間資格です

一般社団法人遺品整理士認定協会が認定している民間資格で、国家資格ではありません。

持っているから廃棄物を運べるわけでもありません。

仕分けの知識や心構えを学んだ証明にはなりますが、許可の有無とは別の話として見てください。

「無料回収」と書いたトラックに渡さない

街を回っている無料回収のトラックは、一般廃棄物収集運搬業の許可を持たないことがあります。

渡した家財が山林や空き地に捨てられれば、排出した側が問われる場面もあります。

積み込んだ後で「これは有料品だった」と料金を請求される例も、国民生活センターに寄せられています。

見分け方と質問の仕方は遺品整理業者はどう選ぶ?許可の有無で見極める方法で解説しています。

相談の中身は、追加請求・キャンセル料・無断処分の3つに集まる

国民生活センターは、遺品整理サービスに関する相談件数を公表しています(2018年7月19日公表)。

年度相談件数
2013年度73件
2014年度109件
2015年度90件
2016年度114件
2017年度105件

年に100件前後という数字だけを見ると小さく感じますが、同センターが挙げている相談の中身は深刻です。作業中に予定外の料金を請求されて最終的に見積金額の2倍になった、解約を申し出たら高額なキャンセル料を求められた、処分しないよう頼んだ物を勝手に処分された、という3つの型が示されています。

契約前に書面で確かめる4点

同センターが呼びかけている確認事項は次の通りです。

  • 複数の業者から見積もりを取って比べる
  • 作業内容と費用を書面で出してもらう
  • 料金だけでなくキャンセル料の条件も事前に聞く
  • 残す遺品と処分する遺品を、依頼する前に自分で分けておく

口頭で総額だけを伝えてくる業者には、費目の内訳を紙で求めてください。トラック代・人件費・処分費・階段作業の加算が分かれていれば、後から「予定外の物が出た」と言われたときに、どの費目がいくら増えるのかを確かめられます。

買い取りには8日間のクーリング・オフがあります

業者が自宅を訪問して遺品を買い取る取引は、特定商取引法の訪問購入にあたります。

契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は物品の引き渡しを拒めます。

渡してしまうと取り戻すのが難しくなるので、その場で価格に納得できなければ引き渡しを保留してください。

片づけを止めると、家賃と固定資産税と過料が積み上がる

遺品整理そのものに罰則はありませんが、放置した結果として費用が増える経路がいくつもあります。

賃貸なら分かりやすく、退去が遅れた月数だけ家賃と共益費がかかります。

持ち家の場合は固定資産税が毎年かかり続け、庭木や外壁が傷んでくると近隣からの苦情につながります。

市区町村が「管理不全空家」または「特定空家」と判断して勧告を出すと、住宅用地の特例が外れて税額が上がります。

放置すれば自動的に上がるのではなく、指定と勧告という段階を踏んだうえでの話です。

相続登記の期限は3年、旧い相続にも適用されます

2024年4月1日から、不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務になりました。

正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。

2024年3月31日以前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。

名義が親のままかどうかは、法務局で取れる登記事項証明書の甲区(所有権に関する事項)で確認できます。

売却を考えるなら控除の期限も見る

相続した空き家を売ったときに譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。

1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。

相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。

適用できるかどうかは物件の条件で変わるので、売却を視野に入れた段階で税理士に相談してください。

売るか貸すかを決めきれない家なら、自治体が運営する仕組みに登録する道もあります。

登録できる条件は空き家バンクとは?登録の条件と使い方で解説しています。

よくある質問

遺品整理は四十九日の前に始めてもいいですか

法律上の決まりはないので、いつ始めても構いません。

賃貸の解約期限が先に来る場合や、相続放棄を検討していて借金の有無を確かめたい場合は、四十九日を待たずに書類の捜索だけでも進めておくほうが期限に間に合います。

他の相続人がいるなら、日程と方針だけは先に共有しておいてください。

形見として時計を持ち帰ったら、相続放棄はできなくなりますか

相続財産を処分したり使ったりすると、相続を承認したものとみなされて放棄ができなくなることがあります。

その物の価値によって判断が分かれる論点なので、借金の有無がはっきりしないうちは持ち出さないでください。

すでに持ち帰ってしまった場合や、3か月以内に判断がつきそうにない場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる方法があります。

申立ては3か月の期間内に行う必要があります。

遺品整理の費用は誰が払うのですか

誰が負担するかは相続人の話し合いで決まります。

遺産から支払うのか、立て替えた人があとで精算するのかを、作業を始める前に決めておいてください。

領収書と写真を残しておけば、精算のときに説明できます。

仏壇や遺影はどう処分すればよいですか

宗派や寺院との関係によって扱いが変わります。

菩提寺があるなら、まず寺へ相談してください。

付き合いのある寺がない場合は、お焚き上げに対応している業者もあります。

遺品整理の作業費とは別料金になることが多いので、見積もりの段階で費目を分けて出してもらってください。

遺品整理士の資格を持つ業者なら任せて大丈夫ですか

遺品整理士は民間の認定資格で、廃棄物を運搬・処分する資格ではありません。

家庭から出た不用品を運ぶには一般廃棄物収集運搬業の許可が、買い取るには古物商許可が要ります。

資格の有無とは別に、この2つを確認してください。

遠方に住んでいて立ち会えません。全部任せても平気ですか

立ち会えない場合ほど、書類と貴重品の捜索は自分の手で済ませておいてください。

それが難しいなら、貴重品が出てきたときの連絡方法と保管方法を契約書に書いてもらいます。

作業前後の写真を撮って送ってもらう取り決めも、後から状況を確認する材料になります。

処分しないよう頼んだ物を捨てられてしまいました

契約書や指示書に残す物を書いていれば、その内容をもとに業者と交渉できます。

話がつかない場合は、消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談してください。

会社名・許可番号・担当者名・見積書は、作業前に控えておくと相談のときに使えます。

まとめ

遺品整理で先に手をつけるのは処分ではなく捜索です。

通帳・保険証券・権利証・遺言書・貸金庫の鍵を抜き出すまでは、袋詰めを始めないでください。

借金の有無が分かってはじめて、3か月以内に相続放棄をするかどうかを判断できます。

業者に頼むかどうかは、遠方かどうかと期限までの日数で決まります。

頼むと決めたら、見るのは会社の雰囲気ではなく一般廃棄物収集運搬業の許可と古物商許可の2つです。

ぜひ本記事の期限表と、契約前に書面で確かめる4点を手元に置いて、最初の1日を書類の捜索に充ててください。

あなたへのおすすめ