遺品整理業者はどう選ぶ?許可の有無で見極める方法

見積書に「遺品整理一式」とだけ書かれていて、金額の内訳が1行も入っていないことがあります。国民生活センターには、作業当日に予定外の料金を請求されて最終的に見積額の2倍になったという相談が寄せられ、2017年度の相談件数は105件でした(国民生活センター/2018年7月公表時点)。
遺品整理業そのものに免許はありません。
見分ける手がかりになるのは、廃棄物を運ぶ許可と買い取る許可、それに書面の書き方です。
ここを電話口の総額だけで決めると、当日その場での交渉になります。
本記事では、トラブルの3タイプ・業者を呼ぶ前に抜いておく書類・一般廃棄物収集運搬業と古物商許可の確かめ方を解説します。
遺品整理業者とのトラブルは追加料金・キャンセル料・勝手な処分の3タイプ
国民生活センターが公表している相談件数は以下の通りです。2018年7月時点の資料で、これより新しい件数は確認できていません。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2013年度 | 73件 |
| 2014年度 | 109件 |
| 2015年度 | 90件 |
| 2016年度 | 114件 |
| 2017年度 | 105件 |
同じ資料で挙げられている相談の中身は3タイプに分かれます。どのタイプに当たるかで、今から打てる手が変わってきます。
作業当日に請求額が増える
電話やメールで総額だけを伝えられ、当日になって「予定外の物が出た」と言われ、請求額が上がる形です。
原因を業者の姿勢だけに求めると対策を間違えます。
訪問見積もりをせずに間取りだけで金額を出した見積書には、押し入れの奥や天井裏、庭の物置に入っている物の量が計算されていないためです。
費用は物の量と階数、それに搬出経路の幅で決まります。
玄関先を見ただけで出た金額は、当日に動く前提のものだと考えてください。
間取り別の目安は遺品整理の費用相場で解説しています。
解約を申し出てからキャンセル料が出てくる
契約したあとに親族から待ってほしいと言われたり、自分で片付ける方針に変わったりして解約を伝えると、高額なキャンセル料を請求される例が公表されています。
この型は、契約前にキャンセル料の条件を確かめていないと起きます。
着手の何日前までなら無料か、作業員の手配後はどうなるのか、その2点を契約書か見積書に書いてもらえば、後から金額だけを言われる状態は避けられます。
残すよう頼んだ物が処分されている
写真、手紙、仏壇まわりの物のように、金額では取り戻せないものが対象になります。
作業が始まると現場は分別の速度で動くため、営業担当に口頭で伝えた「これは残して」が作業員まで届かないことがあります。
残す物は先に別の部屋へ移すか、段ボールにまとめて養生テープで印を付け、その状態を写真に撮っておきます。
遠方から通っていて立ち会えない日があるなら、写真は作業前に撮っておくほうが後の話し合いに使えます。
業者を呼ぶ前に、通帳と権利証を抜いておく
遺品整理で取り返しがつかなくなるのは、料金よりも書類です。
捨ててしまうと相続の手続きが止まり、期限のあるものは間に合わなくなります。
見積もりを頼む前に、次のものだけは家の中から回収しておいてください。
- 通帳とキャッシュカード
- 保険証券
- 年金手帳
- 不動産の権利証、登記識別情報の通知書
- 遺言書
- 印鑑と印鑑登録証
- 貸金庫の鍵と契約書
- 有価証券、借用書
これらを探す手順と、金融機関や法務局での使い方は遺品整理を自分でやる手順で解説しています。
期限のほうも先に見てください。四十九日と納骨で2〜3か月が過ぎるため、気持ちの整理を待っているうちに残り期間が短くなります。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 自分が相続人だと知った時から3か月(民法915条) |
| 相続税の申告・納付 | 相続の開始を知った日の翌日から10か月(相続税法27条) |
| 相続登記 | 不動産を取得したと知った日から3年。2024年4月1日より前に相続した不動産は2027年3月31日まで |
遺言書は封を開けずに家庭裁判所へ持ち込む
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認(けんにん)を受けます。
封をしたまま持ち込む書類なので、見つけても開けないでください。
公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が不要です。
全部をひとくくりに「開けてはいけない」と覚えるより、封筒に公証役場や法務局の表示があるかどうかを先に見るほうが早く判断できます。
借金の有無が分からないうちは、価値のある家財を売らない
相続財産を処分すると、単純承認したものとみなされて相続放棄ができなくなります。
故人に事業の借入や保証があったかどうかが分からない段階で、業者に買い取りまで任せるのは順番が逆になります。
まずは郵便物と通帳の引き落とし履歴で債務を確認し、放棄を検討するなら家財の売却と処分を止めておきます。
3か月に間に合わないときは、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます。
遺品整理業者の見極めは一般廃棄物収集運搬業の許可と古物商許可
遺品整理という業種に免許制度はありません。
そのため「遺品整理専門」という看板だけでは、何ができる会社なのか分かりません。
見るのは、その会社が実際にやる作業に対応した許可を持っているかどうかです。
家庭から出た物を運んで処分するには市区町村の許可
家庭から出る不用品は一般廃棄物にあたるので、運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要ります(廃棄物処理法7条)。
産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。
ここは名称が似ているため、許可証の写しを見せてもらうときに種類まで確認してください。
自社で許可を持たず、許可業者へ委託する形で営業している会社もあります。
その場合は、どの工程を誰が担当するのかを見積書に書いてもらいます。
家庭から出た物を無償で引き取ると称する業者にも同じ許可が必要です。
買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可
家電や骨董品を買い取って処分費と相殺する提案を受けたら、古物商許可の番号を聞いてください(古物営業法3条)。
許可番号は公安委員会が発行する12桁の番号で、通常は名刺やウェブサイトに記載されています。
買い取りと処分は別の許可なので、片方しか持っていない会社は、もう片方を外部に回しているか、やってはいけないことをやっているかのどちらかになります。
遺品整理士は民間資格で、廃棄物を運ぶ資格ではない
遺品整理士は一般社団法人遺品整理士認定協会の民間資格です。
国家資格ではなく、これを持っていても廃棄物を運べるようにはなりません。
研修を受けた担当者がいるという情報としては意味がありますが、許可の代わりにはならないので、別の項目として見てください。
見積書は費目ごとに、追加料金の条件まで書いてもらう
国民生活センターが挙げている確認事項は、複数社から見積もりを取ること、作業内容と費用を書面で明確にしてもらうこと、料金とキャンセル料と作業内容を事前に確認すること、残す遺品と処分する遺品を先に分けておくことです。
書面で見るときは、人数と作業日数、車両の台数、処分費、階段作業や駐車位置による加算、買い取り額の扱いが費目として並んでいるかを確かめます。
「一式」でまとまった見積書は、当日に何が増えても説明が成り立ってしまいます。
なお、室内に体液や害虫の被害が及んでいる場合は通常の遺品整理と別の作業になります。
その費用の目安は特殊清掃の費用相場で解説しています。
業者が自宅を訪問して物品を買い取る契約は「訪問購入」にあたり、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は物品の引き渡しを拒めます(特定商取引法58条の14・58条の15)。
作業の請負部分がこれに含まれるかは契約の内容で変わるため、自己判断で線引きはできません。
買い取りの明細は、その場で現金を受け取る前に書面でもらってください。
遺品整理業者には見積書、兄弟には写真と残額を出す
同じ話を同じ資料で持っていっても通りません。相手によって決める権限が違うためです。
業者には、残す物を先に分けた状態を見せる
訪問見積もりの日までに、残す物を1か所へ集めておきます。
作業範囲がはっきりすれば、見積額の根拠が量と経路の話になり、値引き交渉ではなく内訳の確認ができます。
当日の担当者名と、言われた金額、口頭で約束された条件は日付とともにメモに残してください。
兄弟には、処分前の写真と貴重品の残額を出す
後から揉めるのは、金額ではなく「勝手に捨てた」と言われる部分です。
部屋ごとの写真、通帳の残高、買い取りになった物の明細を先に共有しておけば、話は分配の相談になります。
当番になった人が全部を決めてから報告する形にすると、決めた内容そのものが争点になります。
何から手をつけるかの順番は遺品整理とは何から始めるかで解説しています。
賃貸なら、管理会社に解約日と残置物の扱いを先に確認する
賃貸の解約期限があると、片付けの締め切りは相続の期限より先に来ます。
退去日と、鍵の返却までに室内を空にする条件、エアコンや照明のような残置物を置いていってよいかを管理会社に確認してください。
作業日を押さえる前にここが決まらないと、業者の日程を組み直すことになります。
寺院には、仏壇・位牌・遺影の扱いを分けて相談する
仏壇や位牌は、家財とは別の扱いになります。
墓・仏壇・位牌などの祭祀(さいし)財産は相続財産とは別に1人が引き継ぐもので、指定が無ければ慣習、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます(民法897条)。
相続放棄をした人でも引き継げます。
処分する場合の供養を菩提寺に頼めるか、業者の提携先に依頼するかで費用のかかり方が変わるので、家財の見積もりとは別の相談にしてください。
遺影や人形も同じ扱いで相談できます。
口コミ集めだけでは止まらない|消費生活センターと弁護士に渡す境目
やっても進まない対処を先に挙げます。
星の数とレビューの文面は、その会社が許可を持っているかどうかを教えてくれません。
「地域最安」「即日対応」といった表示も、当日の追加料金の条件とは関係のない情報です。
相見積もりも、訪問見積もりでなければ比べる対象が揃いません。
電話口の総額を3社から集めても、安い順に並ぶだけで内訳の比較にはならないためです。
費用を抑えるために全部を自分でやる方針も、期限がある人には難しくなります。
家具や家電を自治体の粗大ごみで出す場合、申込みから収集日まで日数がかかり、指定場所まで自分で運び出す作業が残ります。
出せる範囲と申込みの流れは粗大ごみの出し方で解説しています。
量の多い家財は業者に任せ、書類と思い出の物は自分で仕分けるという分け方が現実的です。
作業後に気づいたときに残しておく記録
請求額が見積書と違ったり、残すよう頼んだ物が無くなっていたりしたら、支払う前に記録を揃えます。
必要になるのは見積書、契約書、請求書、作業前後の写真、担当者とのやり取りの履歴です。
会社名と住所、許可番号を控えておけば、連絡が取れなくなった場合にも相談先へ持ち込めます。
その場で全額を現金で払うと、後から争う材料が領収書だけになります。
消費生活センターと弁護士のどちらへ渡すか
契約や請求の内容に納得できない段階なら、居住地の消費生活センター(消費者ホットライン188)が入口になります。
契約書面の読み方や、クーリング・オフが使える契約かどうかの相談ができます。
支払いを済ませたうえで返金を求める、あるいは処分された物の損害を請求するという話になれば、交渉と請求の代理は弁護士の仕事です。
相続財産の分け方や名義変更まで話が広がっているなら、司法書士と税理士の担当範囲も出てきます。
自分の側で用意するものは同じで、書面と写真と時系列のメモを揃えた状態で持ち込むほど、相談の1回目で話が進みます。
よくある質問
遺品整理業者の許可はどこで確認できますか
一般廃棄物収集運搬業の許可は市区町村が出すもので、多くの自治体が許可業者の一覧を公表しています。
会社から許可証の写しをもらい、事業所のある自治体の一覧と照らし合わせてください。
古物商許可は都道府県公安委員会の番号なので、名刺やウェブサイトの記載と、契約書の記載が一致しているかを見ます。
産業廃棄物の許可番号だけを提示された場合は、家庭から出た物を運ぶ許可ではありません。
見積もりは何社から取ればいいですか
国民生活センターは、複数社から見積もりを取り、作業内容と費用を明確に書面で出してもらうよう挙げています。
社数よりも、訪問見積もりであることと、費目ごとの内訳が書かれていることのほうが比較に使えます。
押し入れや物置の中身まで見てもらったうえで、追加料金が発生する条件を書面に入れてもらってください。
遺品整理士の資格を持っていれば廃棄物も運べますか
運べません。
遺品整理士は一般社団法人遺品整理士認定協会の民間資格で、廃棄物処理法の許可とは別のものです。
資格の有無は、担当者が研修を受けているかどうかを示す情報として見て、運搬と処分の可否は許可のほうで確かめます。
「無料で回収します」と言われましたが頼んでもいいですか
家庭から出た物を運んで処分するには、無償であっても一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
許可を持たない業者に渡した物が不適切に処分された場合、依頼した側も対応を求められることがあります。
まず許可の種類と番号を聞いて、答えられない相手には渡さないでください。
買い取りをうたう場合は古物商許可の番号もあわせて確認します。
四十九日より前に遺品整理を始めても問題ありませんか
法律上の決まりはありません。
賃貸の解約期限や、相続放棄の3か月という期限がある場合は、四十九日を待つと日数が足りなくなります。
書類の回収だけを先に済ませ、家財の処分は親族の予定が合う日にするという分け方もできます。
時期の決め方は遺品整理はいつから始めるかで解説しています。
まとめ
遺品整理業者を選ぶときに見るのは、一般廃棄物収集運搬業の許可と古物商許可、それに費目ごとの内訳とキャンセル料の条件が書かれた見積書です。
口コミや「専門」の表示では、その会社が何をできるのかは分かりません。
そして料金より先に守るべきものは、通帳・権利証・遺言書といった書類のほうで、処分してしまうと相続放棄の3か月や相続税の10か月に間に合わなくなります。
ぜひ本記事の「捨てる前に探すもののリスト」と許可の確認手順を使って、見積もりを頼む前に残す物と書類を先に抜き出してください。


