遺品整理のトラブル例|業者との揉め事を防ぐ確認事項

見積書に「一式」とだけ書かれた金額が出てきたら、その場で契約しないでください。
国民生活センターには、作業中に予定外の料金を請求され、最終的に見積金額の2倍になったという相談が寄せられています(2018年7月19日公表)。
遺品整理の相談件数は2017年度で105件です。
金額が膨らむのは、量と階数と分別の手間が現地で初めて確定するからです。
そして契約前にもう一つ済ませておくことがあります。
通帳や権利証を業者に運ばせてしまうと、相続の手続きそのものが止まります。
本記事では、遺品整理トラブルが起きる3つのタイプ・捨てる前に探す書類・見積書で確認する費目・一般廃棄物収集運搬業の許可の見分け方を解説します。
遺品整理トラブルは料金・処分・解約の3タイプに分かれる
国民生活センターが公表しているトラブルの型は、大きく3つです。自分が今どこで詰まっているかを先に決めると、次に用意するものが変わります。
| タイプ | 起きていること | 原因になりやすい点 |
|---|---|---|
| 料金 | 作業時に予定外の料金を請求され、見積金額の2倍になった | 見積書に費目の内訳が無い/追加料金の条件を決めていない |
| 処分 | 処分しないよう頼んだ物を勝手に処分された | 残す物と処分する物を事前に分けていない/口頭で伝えただけ |
| 解約 | 解約を申し出たら高額なキャンセル料を請求された | キャンセル料の条件が書面に無い |
料金が膨らむのは量と階数と分別が現地で決まるから
遺品整理の費用は、運び出す物の量、家財を下ろす階数とエレベーターの有無、それに分別にかかる人手で決まります。
電話やメールだけの概算は、この3つのどれも確定していない状態で出た数字です。
そのため現地で量が想定を超えると、その差が追加分として乗ります。
ここで問題になるのは、増えた理由を後から検証できない見積書のほうです。
「一式」や「室内作業費」としか書かれていなければ、何がいくら増えたのか読者の側で確かめられません。
間取り別の目安は遺品整理の費用相場で解説しています。
勝手に処分されたと感じるのは、線引きが口約束だったから
業者は「残してほしい物」を家族と同じ目では見られません。
アルバムや手紙は、依頼者にとっては残す物で、作業員にとっては段ボール一箱の紙です。
悪意がなくても取り違えます。
国民生活センターも、残す遺品と処分する遺品を先に分けておくよう促しています。
解約の申し出でこじれるのは、キャンセル料の条件を決めていないから
相見積もりを取る前に1社を仮押さえしてしまい、断る段階で費用を請求される形です。
着手前なのか、車両を手配した後なのか、当日の朝なのかで扱いは変わります。
契約書にこの段階分けが書かれていないと、請求の根拠を確かめようがありません。
業者を呼ぶ前に、通帳と権利証を探しておく
相見積もりより先にやることがあります。
処分すると相続の手続きが止まる物を、家の中から抜き出しておいてください。
次のものは、業者の作業対象から外して自分で保管します。
- 通帳・キャッシュカード
- 保険証券
- 年金手帳
- 不動産の権利証と登記識別情報
- 遺言書
- 印鑑と印鑑登録証
- 貸金庫の鍵と契約書
- 有価証券・借用書
遺言書が出てきたら、封を開けないでください。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所の検認が必要で、封のまま持ち込みます。
公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が要りません。
借用書を探す理由は、相続放棄の判断に直結するからです。
相続放棄と限定承認の期限は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月です。
亡くなった日が起算日ではありません。
負債の有無が分からないうちは、遺品を売却したり形見分けをしたりする前に、この期限を確認してください。
見積書に書かれているか確かめる5つの費目
国民生活センターは、複数社から見積もりを取り、作業内容と費用を書面で出してもらうよう促しています。書面が出たら、次の点が読める形になっているかを見ます。
- 作業人数と作業日数
- トラックの台数と積載量
- 廃棄物の処分費(重量または立方メートル単位の単価)
- 階段での搬出や養生など、追加料金が発生する条件とその金額
- キャンセル料の発生時期と金額
買取を伴う場合は、買取額を作業費から差し引く計算も書面に残してもらいます。
口頭で「買取で相殺します」と言われたまま進むと、最終の請求額を検算できません。
自分で手を動かせる範囲は遺品整理を自分でやる手順で解説しています。
遺品整理の許可は2種類、遺品整理士は資格ではなく目安
遺品整理業そのものに免許はありません。見るのは会社の看板ではなく、次の2つの許可です。
| やること | 必要な許可 | 出すところ |
|---|---|---|
| 家庭から出た不用品を運んで処分する | 一般廃棄物収集運搬業の許可 | 市区町村 |
| 遺品を買い取る | 古物商許可 | 都道府県公安委員会 |
産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。
ここは混同されやすい点です。
許可番号を聞いて、実家のある市区町村の窓口で照会できます。
「無料回収」を名乗って回ってくるトラックは、一般廃棄物収集運搬業の許可が無いことが多い形態です。
渡した後に不法投棄されれば、排出した側の責任を問われる可能性が残ります。
無料で持っていく代わりに積み込んでから料金を請求する例もあります。
遺品整理士は一般社団法人遺品整理士認定協会の民間資格です。
国家資格ではなく、これがあれば廃棄物を運べるわけでもありません。
許可の有無とは別枠で見てください。
訪問買取なら8日間のクーリング・オフが使える
業者が自宅を訪問して遺品を買い取る「訪問購入」は、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフできます。
この期間中は物品の引き渡しを拒めます。
その場で貴金属や骨董を持っていかれそうになったときは、引き渡しを断ったうえで書面を受け取ってください。
兄弟に出すのは写真と残額、業者に出すのは書面
相手が変わると、持っていく材料も変わります。同じ「話し合い」に見えても、必要なのは感情の説明ではなく紙です。
兄弟・親族が相手のとき
遠方の兄弟が「勝手に捨てた」と言い出す場面は、作業前後の状態を共有していないと起きます。
作業前に部屋ごとの写真を撮り、処分候補と保管候補をリストにして送っておいてください。
買取額が出た場合は、金額と内訳をそのまま回します。
遺品整理の費用を誰が負担するかは、遺産分割の話と切り離せません。立て替えたなら領収書を保管し、分割協議の場で精算する形にします。
仏壇・遺影・人形は家財と分けて扱う
仏壇や位牌は祭祀(さいし)財産で、預金や不動産のような相続財産とは別に1人が引き継ぎます。
指定が無ければ慣習で決まり、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
相続放棄をした人でも祭祀承継者になれます。
この役目を引き受けた人が仏壇とお墓を持つので、業者に「仏壇は処分」と指示する前に、誰が引き継ぐかを確かめてください。
菩提寺がある場合は、閉眼供養(へいがんくよう)を頼めるかを先に相談します。
遺影や人形をどう扱うかも寺院によって答えが違うので、業者の供養サービスに任せるかどうかはそのうえで決めます。
業者が相手のとき
言った言わないを避ける方法は一つだけです。
追加料金の条件と、残す物のリストを書面に入れてもらい、双方が持ちます。
作業当日は立ち会って、搬出前に「これは残す」と指さしで確認する時間を取ってください。
遠方で立ち会えないなら、その旨を伝えて作業写真の送付を条件に入れます。
賃貸の解約期限があるときの遺品整理の進め方
四十九日や賃貸の明け渡し日が迫っているなら、気持ちの整理を待つ余裕はありません。この場合は順序を変えます。
先に部屋から出すのは、書類と写真と貴重品だけです。
残りは判断を保留して、段ボールに詰めたまま自分の家かトランクルームへ移します。
現地で「残すか捨てるか」を1点ずつ決めようとすると作業が止まり、業者の作業時間が延びて費用も増えます。
判断を後ろに回すこと自体は、期限がある人にとって現実的な選択です。
大型家具は自治体の粗大ごみに出すほうが安く済みますが、収集日が指定されるため期限に間に合うかを先に確認してください。
申込みから収集までの流れは粗大ごみの出し方で解説しています。
物の量が多くて手がつかない状態なら、ゴミ屋敷を片付ける方法で扱っている進め方が近いです。
着手時期そのものを迷っている場合は、遺品整理はいつから始めるかで解説しています。
口コミ確認では防げない。消費生活センターに渡す境目
よく勧められるものの、単独では効きにくい対処があります。
一つは口コミの確認です。
料金トラブルは現地の量と分別の手間で発生するため、他人の家での評価は自分の家の金額を保証しません。
もう一つは電話での概算確認です。
現地を見ていない数字なので、そのまま契約の根拠にはなりません。
それから「安いところに頼む」という判断も、内訳の無い安値は追加請求の余地を残したままなので、総額が下がるとは限りません。
作業が始まってから請求が膨らんだ場合は、その場で全額を払う前に内訳の明細を求めてください。
事前の見積書と請求書を突き合わせて、どの費目が増えたかを書面で確認します。
訪問購入なら、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフの対象です。
相談先を切り替える条件
| 状態 | 渡す先 |
|---|---|
| 請求額に納得できない/解約を断られた | 消費生活センター(消費者ホットライン188) |
| 許可の有無を確かめたい | 実家のある市区町村の廃棄物担当窓口 |
| 兄弟間で遺産分割がまとまらない | 弁護士。家庭裁判所の調停も選べます |
| 実家の名義が親のままで売却や登記が必要 | 司法書士 |
| 相続税の申告が必要かどうか判断できない | 税理士 |
相続登記は、不動産を取得したことを知った日から3年以内が期限です。
正当な理由なく怠ると10万円以下の過料があります。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
遺品整理と同時に実家の扱いを決める段階なら、司法書士に渡す時期をここから逆算してください。
よくある質問
遺品整理の見積もりは何社から取ればいいですか
国民生活センターは複数社から見積もりを取るよう促しています。
社数の指定はありませんが、比べるのは総額ではなく費目です。
作業人数・トラックの台数・処分費の単価・追加料金の条件が同じ形で書かれているかを並べて見てください。
作業中に追加料金を請求されたら払わないといけませんか
事前の見積書にその費目と発生条件が書かれているかで扱いが変わります。
書かれていないなら、内訳の明細を書面で求めてください。
その場で即決せず、事前の見積書と突き合わせます。
納得できない場合は消費生活センターに相談できます。
遺品整理士の資格がある業者なら安心ですか
遺品整理士は一般社団法人遺品整理士認定協会の民間資格で、国家資格ではありません。
この資格があっても廃棄物を運べる根拠にはなりません。
家庭から出た不用品を運んで処分するなら一般廃棄物収集運搬業の許可、買い取るなら古物商許可を別に確認してください。
四十九日より前に遺品整理を始めても問題ありませんか
法律上の制約はありません。
賃貸の明け渡し日や相続放棄の3か月という期限があるなら、先に書類と貴重品だけを回収して、残りの判断を後ろに回す進め方があります。
遺品を売却したり形見分けをしたりすると相続を承認したとみなされる可能性があるため、負債の有無が分からないうちは処分を止めておいてください。
無料回収のトラックに家具を渡しても大丈夫ですか
一般廃棄物収集運搬業の許可が無いことが多い形態です。
積み込んだ後に料金を請求される例や、不法投棄される例があります。
許可番号を聞いて市区町村の窓口で照会できない相手には渡さないでください。
仏壇は業者に処分してもらえますか
引き受ける業者もありますが、仏壇や位牌は祭祀財産で、誰が引き継ぐかが決まっていないと後から揉めます。菩提寺があるなら閉眼供養を頼めるかを先に相談し、そのうえで処分を依頼するか判断してください。
まとめ
遺品整理のトラブルは、料金・処分・解約の3つに集約されます。
いずれも、契約前に書面で決めていないことが後から金額と感情に振り替わる形です。
見積書に作業人数・トラックの台数・処分費の単価・追加料金の条件・キャンセル料の時期が書かれているかを見て、書かれていなければその場で契約しないでください。
そして業者を呼ぶ前に、通帳と保険証券、権利証、遺言書、貸金庫の鍵を家から抜き出しておきます。
これらを処分してしまうと、相続の手続きが止まります。
相続放棄の3か月、相続登記の3年という期限は、遺品整理の進み方とは関係なく進みます。
ぜひ本記事の「捨てる前に探すもののリスト」と「見積書で確認する5つの費目」を手元に置いて、1社目の訪問見積もりに臨んでください。


