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不動産の名義変更を自分でやる手順|法務局での申請の流れ

不動産の名義変更を自分でやる手順|法務局での申請の流れ

相続した不動産の名義変更(相続登記)で最初に決まるのは、書類ではなく「誰の名義にするか」です。取得する人が決まっていない段階では、戸籍を何通そろえても申請の形になりません。

期限は、不動産を取得したことを知った日から3年です。

2024年4月1日から義務になり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(かりょう)があります。

施行より前に相続した分も対象で、期限は2027年3月31日です。

実費の中心になる登録免許税は、相続なら固定資産税評価額の0.4%です(国税庁タックスアンサーNo.7191/2026年9月時点)。

本記事では、申請までの5ステップ・戸籍と評価証明書の取り寄せ先・登録免許税の計算・自分で進めると止まりやすい箇所を解説します。

相続した不動産の名義変更は5ステップ|起点は「誰の名義にするか」の決定

申請書に書き込むのは、亡くなった人の情報と、その不動産を取得する相続人の名前です。自分で進める場合、実際に動く順番は次のようになります。

工程やること窓口
遺言書の確認あるかどうかを確かめ、自筆証書なら家庭裁判所の検認を受ける家庭裁判所・法務局(遺言書保管所)・公証役場
相続人の確定亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をそろえる本籍地の市区町村
取得する人を決める遺言に指定がなければ遺産分割協議書を作り、相続人全員が実印を押す相続人の話し合い
書類と評価額を集める登記事項証明書・固定資産評価証明書・住民票・印鑑証明書を用意する法務局・市区町村
申請書を出す登録免許税を計算して納め、申請書と添付書類を提出する不動産の所在地を管轄する法務局

遺言書の確認と戸籍集めは同時に進められます。

ただし3番目で名義人が決まらないと、住所を証明する書類も登録免許税の計算もできません。

話し合いが長引きそうなら、書類を集めるより先に「誰が取得するか」を家族の議題に載せたほうが早く終わります。

取得者が決まっていれば、残りは窓口を回る作業だけです。

遺言書があるかどうかで、協議書が要るかどうかが変わる

遺言書で不動産の取得者が指定されていれば、遺産分割協議書は要りません。

逆に、遺言を探さないまま協議書を作り、あとから遺言が出てくると、取得者の決め方をやり直す場面が出てきます。

自宅の引き出しだけでなく、法務局の遺言書保管所と公証役場も確認先になります。

検認(けんにん)が要るかどうかは、遺言の種類で分かれます。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所の検認を受けてからでないと手続きに使えず、封を開けずに持ち込みます(民法1004条)。

公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が不要です。

保管制度は2020年7月10日に始まった仕組みで、保管申請の手数料は1件3,900円でした(法務省/2026年9月時点)。

必要書類は戸籍・住民票・評価証明書|取り寄せ先は市区町村と法務局に分かれる

集める書類は、亡くなった人に関するもの、相続人に関するもの、不動産に関するものの3つに分かれます。窓口も市区町村と法務局に分かれるため、まとめて1か所で済むと思って出かけると二度手間になります。

亡くなった人の戸籍は出生から死亡までさかのぼる

相続人が誰かを法務局に示すため、亡くなった人の戸籍は死亡時のものだけでは足りません。

婚姻や転籍で戸籍が移っていれば、その前の本籍地までさかのぼって除籍謄本や改製原戸籍(かいせいげんこせき)を取ります。

本籍地が遠方なら郵送で請求できますが、往復の日数と手数料の納め方は市区町村ごとに違うので、請求前に確認してください。

もう一つ必要になるのが、登記簿に記録された所有者と亡くなった人が同じ人だと示す書類です。

住民票の除票や戸籍の附票(ふひょう)で住所のつながりを示します。

引っ越しを何度もしている場合、ここで取り寄せ先が増えます。

相続人の戸籍謄本と、取得する人の住民票

相続人側は、全員が現在も生存していることを示す戸籍謄本と、その不動産を取得する人の住民票をそろえます。

遺産分割協議書を使う場合は、相続人全員の印鑑証明書も添えます。

実印を押す人と印鑑証明書の名義がずれていると、その場で止まります。

登記事項証明書と固定資産評価証明書は窓口が別

登記事項証明書は法務局で取ります。

所有権に関する事項が載っている甲区を見れば、名義が親のままか、祖父の代から動いていないかが分かります。

申請書に書く所在・地番・地目・地積、建物の家屋番号や床面積も、この証明書の記載をそのまま写します。

普段使っている住居表示の住所と地番は別の番号なので、郵便物の宛名から書き写すと合いません。

手数料は改定されることがあるため、請求前に法務局の現行料金を確認してください。

固定資産評価証明書は市区町村の資産税担当で取ります。

登録免許税の課税標準になる「不動産の価額」は、市町村の固定資産課税台帳に登録された価格だからです(国税庁タックスアンサーNo.7191/2026年9月時点)。

不動産会社の査定額や売買予定額ではありません。

どの年度の証明書が必要かは提出先の法務局で確認できます。

遺産分割協議書は不動産の書き方で差し戻される

協議書に書く不動産の表示は、登記事項証明書の記載と一致させます。

土地なら所在と地番、地目、地積まで、建物なら家屋番号と構造、床面積まで書きます。

「実家の土地建物」という書き方では、どの不動産を誰が取得したのか特定できません。

相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添えるところまでが1セットです。

法務局での名義変更の申請は窓口・郵送・オンラインの3タイプ|出す時期は3年の期限から逆算する

管轄は不動産の所在地|相続人の住所地ではない

申請先は、その不動産の所在地を管轄する法務局です。

相続人が住んでいる街の法務局ではないので、実家が遠方なら郵送での申請も選択肢になります。

土地と建物が別の管轄にまたがっている場合は、管轄ごとに申請することになります。

申請人になるのは、その不動産を取得した相続人です。

相続人全員が窓口へ出向く必要はありません。

仕事の都合で平日に動けないなら、家族に委任状を渡して代理で出してもらう方法もあります。

オンライン申請の仕組みもありますが、電子証明書の準備が別に必要になるため、初めてなら窓口か郵送のほうが手数は少なくて済みます。

登録免許税は固定資産税評価額の0.4%で計算する

所有権の移転登記にかかる登録免許税の税率は、原因によって次のように変わります。

登記の原因税率軽減措置
相続不動産の価額の1,000分の4(0.4%)なし
売買1,000分の20(2%)令和11年3月31日までは1,000分の15(1.5%)
贈与1,000分の20(2%)なし
交換1,000分の20(2%)なし

出典は国税庁タックスアンサーNo.7191(2026年9月時点)です。

計算は、評価額の1,000円未満を切り捨ててから税率をかけ、出た税額の100円未満を切り捨てます。

評価額1,000万円の土地なら、1,000万円×0.4%=4万円です。

土地と建物の両方を移すなら、それぞれの評価額を合わせた額で計算します。

共有持分だけを相続したときは、持分に応じた価額が課税標準になります。

納め方は法務局で確認してください。

申請の時期は3年の期限と、相続税・売却の予定で決まる

法律で切られている期限は、不動産を取得したことを知った日から3年です。

2024年4月1日の施行より前に相続した不動産も対象で、その場合は2027年3月31日が期限になります。

義務化の数え方と過料の扱いは名義変更の期限と3年ルールで解説しています。

実務で先に来るのは相続税の期限です。

申告と納付は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内で、誰が何を取得するかが決まらないと申告額も固まりません。

基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、これを超えるなら相続税の申告期限と加算税の内容が関係してきます。

遺産分割の話し合いを10か月に合わせて動かせば、登記はその後の作業として自然に収まります。

実家を売る予定があるなら、名義変更は売却の前提になります。

買主へ所有権を移せるのは登記簿上の所有者だからです。

売る前提での段取りは相続した実家を売るまでの流れで解説しています。

自分で進める名義変更が止まるのは、戸籍の取り寄せと不動産の表記

書類の種類が分かっていても、手が止まる場所はだいたい決まっています。ひとつは戸籍の収集、もうひとつは申請書と協議書の記載です。

名義が祖父のままなら、相続人の数が一気に増える

登記事項証明書の甲区を見て、名義が親ではなく祖父のままだったという場合、親の相続と祖父の相続の2回分を片づけることになります。

相続人は親の兄弟やその子どもまで広がり、集める戸籍も、実印を押してもらう人数も増えます。

連絡先を知らない親族が含まれるなら、自分だけで進める範囲を超えます。

名義を動かさないまま放置すると、次の世代でさらに相続人が増えます。放置で起きることは名義変更を放置したときのリスクで解説しています。

協議書と申請書の不備は、平日の窓口対応でやり直しになる

不動産の表示が登記事項証明書と食い違っている、押印と印鑑証明書の名義がずれている、戸籍が1通足りない——こうした不備があると法務局から連絡が入り、直すまで登記は完了しません。

窓口で対応するなら平日の日中に再度出向くことになります。

完了予定日と、完了後に交付される書類の受け取り方は、申請したときに確認しておいてください。

手続きの前段で失われやすいものもあります。

通帳や保険証券、不動産の権利証、遺言書、印鑑登録証は、遺品整理で処分すると相続の手続きが止まります。

家財を業者に出す前に、これらを抜き出してひとまとめにしておきます。

相続放棄を検討している人がいる場合はもっと手前で注意が要ります。

相続財産を使うと単純承認したとみなされ、放棄ができなくなるからです。

放棄の期限は、自分が相続人だと知った時から3か月です。

申請の前に用意する金額は、相続登記の費用計算で登録免許税と書類の実費に分けて出せます。

司法書士に渡す境目は、相続人の数と不動産の件数|登録免許税は自分でやっても同じ

費用の話をするときは、実費と報酬を分けて考えます。

登録免許税は0.4%の税率で決まる実費なので、自分で申請しても司法書士に頼んでも金額は変わりません。

変わるのは報酬の部分だけで、こちらは依頼先ごとに決まるため、見積もりを取って比べる話になります。

内訳の見方は名義変更の費用と登録免許税の内訳で解説しています。

自分で進めやすいのは、次のような条件がそろっている場合です。

  • 相続人が配偶者と子どもだけで、全員と連絡が取れている
  • 遺言があるか、遺産分割の話し合いが終わっている
  • 対象の不動産が1〜2件で、管轄の法務局が1か所に収まる
  • 平日の日中に窓口へ行ける日を作れる

反対に、数次相続で相続人が10人近くになる、不動産が複数の市町村に散っている、相続人の中に海外在住者や連絡の取れない人がいる、といった場合は手数が跳ね上がります。連絡が取れない相続人がいるケースは家庭裁判所の手続きが絡むため、司法書士や弁護士に相談する段階です。

税金の判断も線を引いておきます。

被相続人が住んでいた宅地は330平方メートルまで評価額を80%減額できる小規模宅地等の特例がありますが、適用には申告が必要で、同居していない親族が使うには別の要件もあります。

自分の家がどう扱われるかの判定は税理士の仕事です。

登記の申請は自分で出し、相続税の判断だけを外に出す、という分け方もできます。

よくある質問

名義変更の申請に、相続人全員が法務局へ行く必要はありますか

ありません。

申請人になるのは、その不動産を取得した相続人です。

遺産分割協議書に全員の実印と印鑑証明書がそろっていれば、窓口へ行くのは1人で足ります。

代理で出してもらう場合は委任状を添えます。

相続の登録免許税は、売買より安いのですか

税率は相続が0.4%、売買と贈与が2%です。

売買には令和11年3月31日までの軽減措置があり、その期間は1.5%になります(国税庁タックスアンサーNo.7191/2026年9月時点)。

同じ不動産でも、登記の原因によって実費が変わります。

固定資産税の納税通知書に書かれた金額で登録免許税を計算できますか

課税標準は、市町村の固定資産課税台帳に登録された価格です。

納税通知書の評価額と一致する場合もありますが、法務局が固定資産評価証明書の添付を求めることがあります。

どの書類でよいかは管轄の法務局で確認してください。

相続登記をしないまま3年を過ぎるとどうなりますか

正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法76条の2)。

2024年4月1日より前に相続した不動産は2027年3月31日が期限です。

遺産分割が終わっていない場合の扱いは個別の事情で変わるため、管轄の法務局で相談できます。

名義変更をしないまま実家を売ることはできますか

できません。

買主に所有権を移す登記ができるのは登記簿上の所有者なので、売買の前に相続登記を済ませておく必要があります。

相続した空き家を売る場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例もあります。

1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。

相続人が3人以上のときは、2024年1月1日以降の譲渡で1人あたり2,000万円に下がります。

まとめ

自分で名義変更を進めるとき、作業量を左右するのは書類の種類ではなく、取得者が決まっているかと、名義がどこまでさかのぼるかの2点です。取得者が決まっていれば、あとは本籍地の市区町村で戸籍、法務局で登記事項証明書、市区町村で評価証明書を集め、0.4%で計算した登録免許税を納めて申請するところまで一本道になります。

期限は取得を知った日から3年、2024年3月以前の相続分は2027年3月31日です。

相続税の申告が10か月であることを考えると、遺産分割の話し合いのほうが先に来ます。

ぜひ本記事の5ステップの表と書類の取り寄せ先を手元に置いて、まず登記事項証明書の甲区で名義を確かめてください。

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