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相続を専門家に頼んで失敗する例|依頼前に防ぐ確認事項

相続を専門家に頼んで失敗する例|依頼前に防ぐ確認事項

依頼から1か月たっても、相手方への連絡が始まらないことがあります。

着手が止まる理由は、弁護士の側だけにあるわけではありません。

依頼した時点で「何を争点にするのか」と「いつまでに終わらせるのか」が共有されていないと、代理人は動き出せないのです。

弁護士が代理できるのは、他の相続人との交渉・遺産分割調停・訴訟です。

全員が分け方に合意しているなら、残る仕事は登記と申告になり、担当は司法書士と税理士に変わります。

一方で期限は待ってくれません。

相続放棄は自分が相続人だと知った時から3か月、相続税の申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月、遺留分侵害額請求は侵害を知った時から1年です。

本記事では、依頼先と争点がずれる型・相談前に机へ出す4点・法テラスの資力基準・弁護士に渡す判断ラインを解説します。

相続を弁護士に頼んで失敗するのは、争点・期限・費用のどれかがずれたとき

「頼んだのに進まない」「思っていた額と違った」という後悔は、能力の当たり外れよりも、依頼の入口でずれた3か所に原因があります。

争点がずれれば士業の種類が合いません。

期限を伝えていなければ、手続きの順番が組めません。

費用の枠組みを口頭で決めれば、精算の段階で話が合わなくなります。

争点が決まらないまま依頼先を選ぶ

相続の手続きは、ひとまとまりの仕事ではありません。

相手と話をつける部分、登記する部分、税額を計算する部分に分かれていて、それぞれ扱える人が違います。

相続人全員が分け方に合意しているなら、弁護士に代理してもらう相手がいません。

この状態で依頼すると、遺産分割協議書の作成と登記の取り次ぎだけが残り、費用のわりに進んだ実感がないという結果になります。

逆の型もあります。

分け方で対立しているのに、まず登記や申告の相談窓口へ行ってしまう場合です。

他の相続人との交渉を代理できるのは弁護士だけなので、対立が残っている限り、登記も申告も入口で止まります。

弁護士・司法書士・税理士の使い分けで解説しています。

期限を伝えないまま着手を待つ

期限の説明を受けないまま数週間が過ぎ、放棄の3か月を切ってから慌てるのは避けたい展開です。

相談の場では、亡くなった日ではなく「自分が相続人だと知った日」を先に伝えてください。

ここが放棄と限定承認の起算日になります。

相続税の申告が絡むなら、10か月の期限から逆算して、財産の調査にどれだけ残っているかを確かめます。

遺言の内容に不満があって遺留分を請求するなら、1年の時効のほうが先に来ます。

着手金・報酬・実費を分けずに口頭で決める

相続の依頼でかかるお金は、性質の違う2つに分かれます。

区分中身決まり方
実費登録免許税、収入印紙、戸籍や住民票の取得費、郵送費手続きの内容で決まり、依頼先を変えても大きくは動かない
報酬着手金、事件が終わったときの報酬金、書類作成の手数料、日当依頼先ごとに定め方が違うため、見積もりを取るまで分からない

弁護士・税理士・司法書士の報酬について、公表された全国統一の相場はありません。

金額を口頭で聞いて安心するのではなく、着手金がいくらで、どこまでやったら報酬金が発生し、実費は別か込みかを書面で受け取ってください。

着手金と報酬金の考え方で解説しています。

自分がどの型に当てはまるかは、次の表で切り分けられます。

今の状態先に動かす相手意識する期限
相続人全員が分け方に合意していて、不動産がある司法書士(相続登記)取得を知った日から3年(2024年3月以前の相続は2027年3月31日)
遺産の総額が基礎控除を超えそう税理士(相続税の申告)10か月
分け方で意見が割れている、連絡が取れない相続人がいる弁護士(交渉・調停)相続税の申告があれば10か月
遺言の内容で自分の取り分が法定相続分より少ない弁護士(遺留分侵害額請求)知った時から1年、相続開始から10年
借金があるかどうか分からない弁護士・司法書士(調査と放棄の判断)知った時から3か月

相続の相談で弁護士に渡す4点は、残高証明・査定額・固定資産税の年額・戸籍

最初の相談は30分から1時間です。

その場で状況を口で説明しようとすると、財産の話だけで時間が尽きます。

持っていく資料を先にそろえておくと、相談の中身が「何から手をつけるか」の話になります。

金額の分かる3つの数字をそろえる

用意するのは次の3つです。

  • 預金の残高証明書(亡くなった日時点のもの。金融機関の窓口で相続人が請求できます)
  • 実家の査定額(不動産会社の査定書。売る前提でなくても取れます)
  • 固定資産税の年額(毎年春に届く納税通知書、または市区町村の課税明細)

この3つがそろうと、基礎控除を超えるかどうかの見当がつきます。

基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円です。

ここを超えなければ、相続税の申告そのものが不要になります。

ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額をゼロにする場合は、申告が必要です。

相続税がかかる人の線引きで解説しています。

戸籍と遺言の有無を先に確かめる

4点目は戸籍です。

亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本と、相続人全員の戸籍は、本籍地の市区町村で取ります。

相続人が誰なのかが確定しないと、交渉相手も、協議書に署名してもらう人も決まりません。

前妻の子や認知した子がいた場合、ここで初めて分かることがあります。

遺言書が見つかったときは、封を開けないでください。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所の検認が必要で、封をしたまま持ち込みます。

公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度(2020年7月10日開始)を使ったものは検認が要りません。

見つからない場合も、公証役場と法務局で保管の有無を調べられます。

あわせて、争いの経緯を時系列で1枚にまとめておきます。

誰が何を言ったか、いつ連絡が途絶えたか、生前にお金の動きがあったか。

相談の場でいちばん時間を食うのがこの聞き取りなので、書いて渡すだけで実質の相談時間が倍になります。

他の相続人には資料、寺院と遺品整理業者には書面を求める

相手が変われば、持っていくものも変わります。弁護士に渡す前に自分で片づけられる相手もいます。

他の相続人には金額の資料から出す

実家を売るか残すかで兄弟の意見が割れるのは、誰も「いくらで売れるか」を知らないまま話しているためです。

住み続けたい側は高く、売りたい側は安く見積もり、金額の話が感情の話に入れ替わります。

先に机の上へ出すのは、査定額と固定資産税の年額、それに空き家のままにした場合の管理費用です。

数字を共有したうえで、代償金を払って1人が取得するのか、売って分けるのかという選択肢の話に移します。

連絡が取れない相続人がいる場合、催促を重ねても状況は変わりません。内容証明郵便で一度きちんと通知を出し、それでも反応がないなら調停の準備に移る段階です。

寺院には離檀料の金額と根拠を書面で確認する

お墓の話は遺産分割とは別の線で進みます。

墓・仏壇・位牌といった祭祀(さいし)財産は相続財産と切り離され、1人が引き継ぎます。

相続放棄をした人でも引き継げます。

離檀料に、法律上の支払義務を定めた規定はありません。

相場として断定できる公的な統計もありません。

請求された場合は、金額と、何に対する費用なのかを書面で示してもらってください。

遺骨を別の場所へ移すには、現在の墓地がある市区町村が発行する改葬許可証が要ります。

申請には受け入れ先の受入証明書と現在の墓地管理者の埋葬証明書が必要なので、受け入れ先を決めないと申請できません。

許可証を取らずに遺骨を動かすのは墓地埋葬法違反です。

遺品整理業者には許可番号と内訳を出させる

電話では「見てみないと分かりません」と言われ、訪問した担当者は総額だけを口頭で伝えることがあります。

費目の内訳が出てこない見積もりは、作業後の追加請求とつながります。

確認するのは次の3点です。

  • 家庭から出た不用品を運ぶには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可、買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可が要ります。産業廃棄物の許可だけでは家庭ごみを運べません
  • 「無料回収」を名乗るトラックは、この許可を持っていないことがあります。会社名と許可番号を作業前に控えておけば、連絡が取れなくなったときに消費生活センターへ相談できます
  • 遺品整理士は民間資格です。持っていても廃棄物を運ぶ資格にはならないため、許可の有無とは別に見ます

業者を入れる前に、通帳・キャッシュカード・保険証券・年金手帳・不動産の権利証・遺言書・印鑑と印鑑登録証・貸金庫の鍵と契約書を抜き出しておいてください。

これらを処分すると、相続の手続きが途中で止まります。

なお自宅に来て買い取る「訪問購入」は、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は物品の引き渡しを拒めます。

弁護士・司法書士・税理士の線引きと、相続で使える法テラスの無料相談

依頼先を選ぶときに見るのは、事務所の規模よりも業務の範囲です。

他の相続人と交渉し、遺産分割調停や訴訟で代理人になれるのは弁護士だけです。

司法書士の中心は相続登記で、税理士は相続税の申告と評価を扱います。

対立が解けていない段階で登記や申告の専門家に頼んでも、そこから先へは進みません。

逆に、全員の合意ができたあとの手続きを弁護士に一括で頼むと、登記と申告は提携先へ回ることになります。

費用を理由に相談をためらっている場合、法テラスの無料法律相談という入口があります。

利用できるのは、収入と資産が資力基準以下で、勝訴の見込みがないとはいえず、民事法律扶助の趣旨に適することの3つを満たす場合です。

同一の問題について3回まで、1回30分です(法テラス/2026年9月時点)。

家族の人数月収の基準(東京都特別区・大阪市など一級地)月収の基準(その他の地域)資産
1人200,200円以下182,000円以下180万円以下
2人276,100円以下251,000円以下250万円以下
3人299,200円以下272,000円以下270万円以下
4人328,900円以下299,000円以下300万円以下

5人以上は1人増えるごとに、一級地では33,000円、その他の地域では30,000円を加算します(法テラス/2026年9月時点)。

家賃や住宅ローン、医療費、教育費の負担があれば、基準を超えていても利用できる場合があります。

基準を満たすなら、弁護士・司法書士の費用を法テラスが立て替え、原則として月々分割で返す制度(代理援助・書類作成援助)も使えます。

使えるかどうかは申込先で審査されるため、窓口で自分の収支を出して確認してください。

効きにくい対処と、相続を弁護士に渡す判断ライン

よく勧められるものの、実際には状況が動かない対処があります。

資料を出さない話し合いと、ひな形の流用は進まない

「一度みんなで集まって話そう」と呼びかけ続けるのは、数字が共有されていない段階では平行線のままです。

集まる前に査定額と残高を回しておかないと、同じ会話を繰り返すことになります。

メッセージアプリで催促を重ねるのも同じで、既読が付くだけで合意には近づきません。

遺産分割協議書をインターネットのひな形で作るのも、相続の形によって書き方が変わるため危うい方法です。

相続人が1人でも欠けていれば協議は無効になり、不動産の表示が登記と合っていなければ登記も通りません。

作り直しになると、全員の実印と印鑑証明書をもう一度そろえることになります。

無料相談を何件も回るのも、判断材料は増えるものの手続きは動きません。30分の相談で代理人になってもらえるわけではなく、受任の契約をしない限り相手方への連絡は始まりません。

この状態になったら専門家に渡す

渡す判断は、気持ちの限界ではなく条件で決めてください。

  • 連絡しても3回続けて返信がありません
  • 相続人の中に認知症の人や未成年がいて、そのままでは協議に参加できません
  • 相続人の1人が「実家に住み続ける」と言ったまま、代償金の話に入りません
  • 生前の預金の使い道をめぐって、使途の説明を求めても出てきません
  • 遺言があり、自分の取り分が法定相続分を下回っています
  • 相続税の申告期限まで3か月を切っているのに、分け方が決まっていません

遺留分の請求は、侵害を知った時から1年で時効になります。

相続開始から10年でも消えます。

この期限は交渉が長引いても延びないため、内容証明で請求の意思を先に示すのが実務の入口です。

遺留分侵害額請求の時効で解説しています。

また放棄の3か月に間に合わないと分かった時点であれば、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます。

依頼先を比べる材料が足りないと感じるなら、相続の取扱件数、期限への言及があるか、費用の内訳を書面で出すかという見方で絞れます。相続に強い専門家の見分け方で解説しています。

よくある質問

弁護士に頼んだのに進みません。途中で変えられますか

委任契約は解除できます。

ただし、すでに支払った着手金が戻るかは契約書の定めによります。

解除の前に、これまでの進捗と次の予定を書面で説明してもらってください。

それでも動かないなら、預けた資料と作成済みの書面を返してもらい、次の依頼先へ引き継ぎます。

所属する弁護士会には市民向けの苦情窓口があります。

相続人全員で1人の弁護士に頼めますか

取り分をめぐって立場が対立する相続人が、同じ弁護士に代理を頼むことはできません。

利益相反にあたります。

全員がすでに分け方に合意していて、書面にするだけという段階であれば、扱いは依頼先の判断になります。

対立の芽が残っているかどうかを、最初の相談で率直に伝えてください。

無料相談だけで終わらせることはできますか

相手と交渉する必要がない相続なら、無料相談で手順を確認してから、登記と申告を自分で進める形は成り立ちます。

法テラスの無料法律相談は同一の問題につき3回まで、1回30分です(法テラス/2026年9月時点)。

逆に、相手方への通知や調停の申立てが必要な段階では、受任の契約をしないと手続きは始まりません。

弁護士費用はいくら見ておけばよいですか

報酬の決め方は依頼先ごとに違い、公表された全国統一の相場はありません。

見積もりを取るときは、着手金の額・報酬金が発生する条件・実費が別か込みかの3点を分けて書いてもらってください。

実費のうち登録免許税や収入印紙、戸籍の取得費は手続きの内容で決まるため、どこに頼んでも大きくは変わりません。

期限に間に合いそうにありません。どうすればよいですか

相続放棄の3か月は、期間内であれば家庭裁判所へ伸長の申立てができます。

起算日は亡くなった日ではなく、自分のために相続の開始があったことを知った時です。

相続登記は取得を知った日から3年以内が義務で、2024年3月以前に相続した不動産は2027年3月31日が期限になります。

正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。

遺留分の1年は伸ばせないため、請求の意思を先に示してください。

まとめ

相続の依頼でつまずくのは、争点・期限・費用の取り決めがはっきりしないまま契約したときです。

全員が合意しているなら弁護士に代理する相手はおらず、対立が残っているなら登記や申告の窓口では前に進みません。

まず自分が相続人だと知った日を確かめ、残高証明・査定額・固定資産税の年額・戸籍をそろえてから相談の席に着くと、話が手順の相談に変わります。

費用が理由で相談を先送りしているなら、法テラスの資力基準を自分の収入と資産に当てはめてみてください。ぜひ本記事の切り分け表と、渡す判断の6条件を参考に、次の一手を決めてください。

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