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空き家は解体すべきか?更地にする前に確かめたいこと

空き家は解体すべきか?更地にする前に確かめたいこと

解体を先に決めると、翌年の固定資産税が上がります。

建物が建っている土地には住宅用地の特例がかかっていて、更地にすればその特例が外れるためです。

空き家を放置すれば自動で税額が上がると思われがちですが、実際には市区町村が「特定空家」または「管理不全空家」に指定し、勧告を出して初めて特例が外れます(空家等対策の推進に関する特別措置法・2023年12月改正施行)。

つまり、勧告前の空き家と更地では、税の扱いがまるで違います。

本記事では、解体前に確かめる名義と税の順番・更地にすると変わる固定資産税・相続空き家の3,000万円特別控除の要件・費用が動く変数を解説します。

解体の前に、名義が誰になっているかを確認する

建物を壊す契約を結べるのは、その建物の所有者です。

親が亡くなったあと名義が親のままなら、相続人が確定していない建物を1人の判断で解体することはできません。

まずは法務局で登記事項証明書を取り、甲区(所有権に関する事項)を見てください。

ここに親の名前が残っていれば、相続登記が済んでいないという意味になります。

相続登記は2024年4月1日から義務になりました。

不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の2)。

2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。

実家が空き家になって1年前後という段階なら、この期限はもう視界に入っています。

登記事項証明書は法務局で取得できます。

手数料は窓口請求で600円、窓口交付で480円、オンライン請求して郵送で受け取る場合も480円です(法務局 登記手数料/2026年9月時点)。

料金は改定されることがあるため、請求前に法務局の現行料金を確認してください。

建物の名義と土地の名義が違うことがある

古い実家では、土地は祖父名義、建物は父名義といった形で分かれている例があります。

この場合、解体の判断と土地の売却の判断で、同意を得る相手が別になります。

登記事項証明書は土地と建物で別々に取ってください。

両方の甲区を並べて初めて、誰の同意が要るのかが分かります。

空き家の解体と、更地にすることは同じではない

解体は建物を壊す工事のことで、更地にするというのは、建物を壊したうえで基礎や擁壁、庭木、埋設物まで撤去して土地を平らにした状態を指します。

見積もりを取ると、この差が金額に出ます。

建物の解体だけを頼んだつもりが、庭石とブロック塀と物置が残り、追加で費用がかかったという流れはよくある形です。

もうひとつ切り分けたいのが、解体と滅失登記の関係です。

工事が終わっただけでは、登記簿の上ではまだ建物が存在しています。

建物滅失登記を申請して初めて、登記上も無くなります。

ここを放置すると、固定資産税の課税台帳との整合が取れず、翌年以降の課税で混乱が起きます。

工事業者が発行する取壊し証明書は、この登記に使う書類です。

捨てないでください。

売却を前提にしている場合、更地にしてから売るのか、建物付きのまま売るのかで、そもそも解体するかどうかの答えが変わります。

この判断は売る・貸す・譲るの選び方で解説しています。

解体は選択肢のひとつであって、最初に決めることではありません。

更地にすると固定資産税がどう変わるか

住宅が建っている土地には、固定資産税の住宅用地特例がかかります。

小規模住宅用地(200平方メートルまでの部分)は課税標準額が6分の1に、それを超える部分は3分の1になる仕組みです。

建物を解体して更地にすると、この特例が翌年度から外れます。

土地の評価額そのものは変わらなくても、課税標準が跳ね上がるため、納税通知書の金額が大きく動きます。

一方、空き家を建てたまま放置した場合はどうなるか。

ここが誤解されやすいところです。

放置しただけで自動的に税額が6倍になるわけではありません。

市区町村が現地を確認し、倒壊のおそれや衛生上有害な状態にあると判断すれば「特定空家」に、そうなるおそれがあると判断すれば「管理不全空家」に指定します。

そのうえで勧告を受けた段階で、住宅用地特例が外れます。

指定と勧告という段階を踏むという点を押さえておいてください。

状態住宅用地特例いつ変わるか
建物あり・指定なし適用される—
管理不全空家・特定空家に指定され勧告を受けた外れる勧告の翌年度から
解体して更地外れる解体した翌年の1月1日を基準に翌年度から

固定資産税の賦課基準日は1月1日です。

年内に解体するか年明けに解体するかで、特例が外れる年度が1年ずれます。

急いで年末に工事を入れる理由が特に無いなら、この点も業者との日程調整で相談する材料になります。

売却するなら、解体の前に3,000万円特別控除の要件を見る

相続した空き家を売ったとき、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります(租税特別措置法35条3項)。

この特例には要件があり、そのひとつが1981年5月31日以前に建築された家屋であることです。

対象になるのは2027年12月31日までの譲渡で、相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降の譲渡では控除額が1人あたり2,000万円に下がります。

この特例を使う場合、更地にして売る方法も、耐震基準を満たすようにして家屋付きで売る方法も、どちらも対象になり得ます。

ただし細かい要件は個々の物件で変わるため、解体の契約を結ぶ前に税理士に相談する段階です。

解体してから「要件を外していた」と分かっても、建物は戻りません。

売却額そのものは不動産会社の査定で見当をつけますが、査定額は会社によって開きが出ます。

開きが出る理由は査定価格がどう決まるかで解説しています。

高い金額を提示されたときの注意点は高すぎる査定額のトラブル例にまとめてあります。

空き家の解体費用は、何で増減するか

解体費用の全国的な相場を示す公的統計は確認できません。

金額を書けないかわりに、見積もりが動く変数を挙げます。

ここを自分の実家に当てはめれば、業者から出てきた金額が高いのか妥当なのかを話し合う土台になります。

  • 建物の構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造で単価が変わる)
  • 延べ床面積
  • 前面道路の幅と、重機やダンプが敷地まで入れるかどうか
  • 隣家との距離(近いほど養生と手作業の割合が増える)
  • アスベストを含む建材の有無と、その調査・除去
  • 残置物の量(家財が残っていると廃棄物の処分費が別に乗る)
  • 庭木・ブロック塀・物置・浄化槽・井戸などの附属物
  • 地中の基礎や古い浄化槽といった埋設物

このうち読者が自分で減らせるのは、残置物の量です。

家財が残ったまま解体を頼むと、業者は産業廃棄物ではなく一般廃棄物として扱う必要がある品目を抱えることになり、処分費が上乗せされます。

先に片づけておけば、その分は見積もりから落ちます。

アスベストは2022年4月から、一定規模以上の解体工事で事前調査結果の報告が義務づけられています。

古い実家では調査で見つかることがあり、見つかれば除去費用が別に発生します。

見積書に「アスベスト調査費」「除去費」の行があるかどうかを確かめてください。

無い見積もりは、後から追加になる可能性があります。

見積もりは複数社から、同じ条件で取る

1社だけの見積もりでは、その金額が高いのか安いのかを判断する材料がありません。

同じ図面と同じ現地条件で複数社に出してもらい、内訳の行ごとに比べてください。

総額だけを並べても、残置物の処分が含まれているかどうかで数字は変わります。

解体に使える補助金があるかを、着工前に窓口で聞く

老朽化した空き家の解体に補助を出している市区町村があります。

ただし制度の有無も、補助率も、上限額も、募集期間も自治体ごとに違います。

全国共通の制度ではありません。

お住まいの市区町村と、実家がある市区町村の両方の窓口で確認してください。

窓口は建築指導課や住宅課、空き家対策の担当部署に置かれていることが多いです。

この手の補助金でいちばん多い失敗は、工事を発注してから申請しようとすることです。

多くの制度は事前申請が条件になっており、着工後の申請は受け付けられません。

業者と契約書を交わす前に、窓口へ行ってください。

自治体の支援メニュー全般は実家じまいに使える補助金で解説しています。

兄弟の同意は、どこまで要るのか

相続登記が済んでいない状態の建物は、相続人全員の共有です。

解体という行為は建物を無くしてしまうものなので、共有者全員の同意が要ります。

1人が勝手に発注すると、後から他の相続人に損害賠償を求められる余地が生まれます。

実家の当番になった人が、良かれと思って動いて揉めるのはこの局面です。

逆に、遺産分割協議を済ませて1人の名義に登記していれば、その人の判断で解体できます。

手をつける前に名義を1本にしておくほうが、あとの動きは速くなります。

ただし名義を1人に寄せるということは、固定資産税も管理責任もその人が負うという意味です。

兄弟の間で「押しつけた」という感情が残らないよう、費用の分担を書面にしておいてください。

話し合いのときに机の上に出す資料は、次の3つです。

  • 土地と建物の登記事項証明書(名義と、抵当権が残っていないかを見る)
  • 不動産会社の査定額(複数社分)
  • 固定資産税の年額と、更地にした場合の見込み

数字が机の上に無いと、住み続けたい側は高く、売りたい側は安く見積もり、金額の話が感情の話にすり替わります。売ってから後悔した理由については実家の売却で後悔した理由で解説しています。

仏壇と家財を、解体の前にどうするか

解体業者は建物を壊す業者であって、家財を引き取る許可を持っているとは限りません。

家庭から出た不用品を運んで処分するには、市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要ります。

買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可です。

産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。

「無料回収」を名乗るトラックは、この許可が無いことが多いです。

家財を出す前に探しておきたいものがあります。捨ててしまうと相続の手続きが止まるためです。

  • 通帳・キャッシュカード
  • 保険証券・年金手帳
  • 不動産の権利証と登記識別情報
  • 遺言書
  • 印鑑と印鑑登録証
  • 貸金庫の鍵と契約書
  • 有価証券・借用書

遺言書が出てきた場合、自筆証書遺言と秘密証書遺言は封を開けずに家庭裁判所へ持ち込んで検認を受けます(民法1004条)。

公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が不要です。

開けてよいものと開けてはいけないものが分かれます。

仏壇と位牌は、相続財産とは別に1人が引き継ぐ祭祀財産です(民法897条)。

指定が無ければ慣習で、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。

相続放棄をした人でも、この役目を引き受けることはできます。

仏壇を処分するか誰かの家へ移すかは、解体日程より先に決めておいてください。

当日になって置き場所が無いと、工事が止まります。

何から手をつけるかの順番は遺品整理を始める順番で解説しています。

解体しないという選択も、条件しだいで成り立つ

更地にするのが唯一の答えではありません。建物の状態と、その地域に需要があるかどうかで、残したほうがよい場面があります。

建物付きのまま売る

建物に住める状態が残っていて、周辺に中古住宅の取引がある地域なら、そのまま売るほうが手取りが増えることがあります。

解体費用を自分で負担せずに済み、固定資産税の特例も引き渡しまで維持できるためです。

買い手が解体するつもりでも、その費用を織り込んだ価格で買われるだけで、結果は同じか有利になる場合があります。

貸す・空き家バンクに登録する

すぐに売れる見込みが薄い地域では、貸すという選択が残ります。

自治体が運営する空き家バンクに登録して、移住希望者に橋渡しする仕組みもあります。

登録の条件や実際の使い勝手は自治体で差があるため、空き家バンクの登録条件と使い方で確認してください。

ただし雨漏りや傾きがある建物は、修繕費が先に出ていきます。

貸すという判断は、修繕にいくらかけられるかとセットです。

解体を先に決めたほうがよい場合

倒壊のおそれがあって近隣に危険が及ぶ状態なら、税の損得より先に安全の問題です。

台風や地震で瓦や外壁が飛べば、所有者として責任を問われます。

市区町村から管理不全空家の指定に向けた助言や指導が来ている場合も、放置すれば勧告に進み、結局は特例が外れます。

この段階なら、解体を前倒しする判断に合理性があります。

先延ばしにすると、何がどれだけ積み上がるか

決められないまま年に数回草を刈りに帰る状態が続くと、費用は静かに積み上がります。

固定資産税と都市計画税は毎年かかり、火災保険や電気・水道の基本料金も止めない限り出ていきます。

庭木の伐採や草刈りを業者に頼めば、その都度の実費です。

これらは記録に残らないまま消えていくので、実感しにくい支出になります。

制度の面では、期限が2つ迫っています。

相続登記の義務化に伴う経過措置の期限が2027年3月31日、相続空き家の3,000万円特別控除の適用期限が2027年12月31日です。

どちらも先に手を打たないと、選べる道が減ります。

項目期限起算日・根拠
相続放棄・限定承認3か月自己のために相続の開始があったことを知った時から(民法915条)
相続税の申告・納付10か月相続の開始を知った日の翌日から(相続税法27条)
相続登記3年不動産の取得を知った日から。2024年3月以前の相続は2027年3月31日まで
相続空き家の3,000万円特別控除2027年12月31日この日までの譲渡が対象(租税特別措置法35条3項)

相続税がかかるかどうかは、基礎控除で決まります。

3,000万円+600万円×法定相続人の数が基準で、相続人が3人なら4,800万円です。

この額を超えなければ申告そのものが不要になりますが、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って税額を0円にする場合は申告が要ります。

判断の分かれ目は相続税は誰にかかるかで解説しています。

よくある質問

解体してから何年も売れなかったら、税金はどうなりますか

更地のまま持ち続ける限り、住宅用地特例が外れた状態の固定資産税がかかり続けます。

売れる見込みが立たないうちに解体すると、この負担だけが先に発生します。

解体の時期は、買い手や活用の見通しとセットで決めてください。

空き家の解体を、相続人の1人だけで決めてもいいですか

名義が1人に登記されているなら、その人の判断でできます。

名義が親のままで相続登記が済んでいない場合、建物は相続人全員の共有なので、全員の同意が要ります。

同意を取らずに壊すと、あとから争いになる余地が残ります。

解体工事が終わったら、何か届出が要りますか

建物滅失登記を申請してください。

これをしないと、登記簿上は建物が存在したままになります。

工事業者が発行する取壊し証明書と、業者の印鑑証明書や資格証明書を添えて法務局へ申請します。

自分で申請することもできますし、土地家屋調査士に依頼する方法もあります。

家財が残ったままでも解体を頼めますか

引き受ける業者はありますが、廃棄物の処分費が上乗せされます。

また、家庭から出た不用品を運ぶには一般廃棄物収集運搬業の許可が要るため、業者がどう処理するのかを確認してください。

通帳や権利証、遺言書が紛れている可能性があるので、まとめて任せる前に自分の目で探すことをおすすめします。

解体費用の補助金は、どの自治体にもありますか

全国共通の制度ではありません。

制度の有無も金額も自治体ごとに違い、年度ごとに予算が尽きて締め切られることもあります。

実家がある市区町村の窓口で、今年度の受付状況を確認してください。

多くは着工前の申請が条件です。

建物が古くて危険だと市役所から連絡が来ました。すぐ解体すべきですか

倒壊や飛散のおそれがあるなら、安全の問題として優先度が上がります。

ただし、まず助言や指導の段階なのか、勧告まで進んでいるのかを窓口で確かめてください。

段階によって、固定資産税の扱いも取れる猶予も変わります。

解体すると、相続空き家の3,000万円特別控除は使えなくなりますか

更地にして売る場合も対象になり得ます。

ただし1981年5月31日以前に建築された家屋であることなど複数の要件があり、譲渡の時期や相続人の人数でも扱いが変わります。

契約前に税理士に相談する段階です。

まとめ

解体するかどうかを最初に考えると、判断の順番が逆になります。

先に確かめるのは登記事項証明書の甲区で、名義が親のままなら相続登記が先です。

そのうえで、売るのか貸すのか、売るなら建物付きか更地かを決め、解体はその結論として出てくるものです。

更地にした瞬間に固定資産税の住宅用地特例が外れるので、買い手や活用の見通しが立たないうちに壊すと、負担だけが残ります。

費用は構造と面積だけでは決まりません。

道路の幅、隣家との距離、アスベストの有無、残置物の量で大きく動きます。

自分で減らせるのは残置物だけです。

兄弟の同意も、仏壇の行き先も、業者に電話する前に片づけておくものになります。

ぜひ本記事の期限の表と、費用が動く8つの変数を手元に置いて、まずは法務局で登記事項証明書を1通取るところから始めてください。

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