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実家じまいとは?親の家を片付けて手放すまでの全体像

実家じまいとは?親の家を片付けて手放すまでの全体像

年に数回、草を刈るために帰る家がそのままになっています。

実家じまいで最初に動かせるのは、家財の片づけではなく名義の確認です。

法務局で登記事項証明書を1通取り、甲区に載っている所有者が親のままなら、売る話も貸す話もそこで止まります。

相続した不動産の登記は2024年4月1日から義務になり、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。

それより前に相続した家も対象で、こちらの期限は2027年3月31日です。

全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高になっています(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。

本記事では、名義の確認から始める順番・費用が何で決まるか・仏壇ときょうだいの同意の扱い・放置したときに外れる税の特例まで解説します。

実家じまいは、登記簿の名義を確かめるところから始まる

家財の量を見積もるより先に、登記事項証明書を取ってください。

法務局の窓口でもオンラインでも請求でき、手数料は請求方法によって変わるので、法務局の現行の料金表で確認します。

見るのは甲区(所有権に関する事項)です。

ここに、いま法律上この家を持っている人の名前が載ります。

名前が親のままであれば、相続登記が済んでいません。

この状態では買主に引き渡せませんし、解体を業者に頼むときも所有者の同意を問われます。

片づけだけは進められても、出口の手前で必ず止まります。

登記を親から自分たちへ移すには、相続人が誰なのかを戸籍で確定させ、誰がこの家を取得するかを決めた遺産分割協議書を作るのが基本の流れです。

戸籍謄本は本籍地の市区町村、登記事項証明書は法務局と、窓口が分かれています。

親が転籍を繰り返していると、出生までの戸籍をたどるのに数週間かかることもあります。

期限は2つの数え方があります。

2024年4月1日以降に相続した不動産は、取得を知った日から3年以内です。

それ以前に相続した不動産は2027年3月31日までで、名義が祖父の代で止まっている家もここに含まれます。

正当な理由なく申請しないと10万円以下の過料の対象になります。

何から手をつけるかの並べ方は実家じまいの手順で解説しています。

実家じまいと生前整理・遺品整理・空き家処分は指す範囲が違う

この4つは重なりますが、主体と終着点が違います。混ぜて話すと、きょうだいの間で「何の話をしているのか」がずれます。

言葉動くのは誰かどこまでを指すか
実家じまい子(きょうだい)家財の片づけから名義の整理、売却や解体までの一連
生前整理親本人持ち物と口座や契約の情報の整理。家の処分を含むこともある
遺品整理相続人亡くなったあとに残った家財の整理
空き家処分所有者建物と土地の出口(売却・賃貸・解体)だけ

実家じまいは、このうち最も範囲が広い言い方です。

家財も名義も不動産の出口も全部入るため、「何から」が分からなくなりやすい言葉でもあります。

家財だけを指して使っている人と、売却まで含めて使っている人が同じ会話にいると、話がかみ合いません。

親が元気なうちに本人が動くなら生前整理で、家財の判断はすべて親のものです。

亡くなったあとに残った物を扱うのが遺品整理で、こちらは相続人が判断します。

家財の仕分けの手順は遺品整理の進め方で解説しています。

もう一点、お墓の話と混ざりやすいので分けておきます。

墓石を撤去して使用権を返すのが墓じまい、遺骨を別の場所へ移すのが改葬(かいそう)です。

実家の建物と土地の手続きとは、必要な書類も窓口も別になります。

手が止まるのは値段ではなく、仏壇・きょうだいの同意・自分の記憶

売れないから残っているのではなく、決められないから残っている家が多くあります。決められない理由を3つに分けると、それぞれ先に片づく順番が違います。

仏壇と位牌は、相続財産とは別枠で1人が引き継ぐ

仏壇・位牌・お墓は祭祀(さいし)財産と呼ばれ、預金や不動産とは別の扱いです。

相続人で分けるものではなく、1人が引き継ぎます。

指定がなければ慣習によって決まり、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます(民法897条)。

相続を放棄した人でも、この役目を引き受けることはできます。

つまり仏壇をどうするかは、相続人全員の合意を待たなくても、引き継ぐ1人の判断で動かせる部分があります。誰が引き継ぐかを口頭でも決めておくと、家財の搬出の日取りが決められるようになります。

遺骨を動かすなら、受け入れ先が決まらないと許可が下りない

遺骨を別の場所へ移すには、いまお墓がある市区町村が出す改葬許可証が必要です。

申請には移す先の受入証明書と、現在の墓地管理者の埋葬(まいそう)証明書を添えます。

受け入れ先が決まっていないと書類がそろわないため、順番は「移す先を決める」が先です。

許可証なしに遺骨を移すのは墓地埋葬法違反になります。

遺骨の一部を手元に置く場合は分骨証明書で、これは改葬許可証とは別の紙です。永代供養を選ぶときは、個別に安置される年数と、合祀(ごうし)されたあとは遺骨を取り出せなくなることを、契約前に確認してください。

きょうだいに切り出すときに机に出す3つの数字

言い出せないのは、こちらが答えを持っていないうちに相談しようとするからです。

査定額を誰も知らないまま話すと、住み続けたい側は高く、売りたい側は安く見積もり、金額の話が気持ちの話にすり替わります。

先にそろえるのは次の3つです。

  • 不動産会社の査定額(会社によって開きが出るので複数)
  • 固定資産税の年額(納税通知書に載っています)
  • 空き家のまま維持した場合の年間費用(光熱費・火災保険・草刈りや通いの交通費)

自分の記憶の問題は、期限で押し切れるものではありません。写真に撮る、間取り図に書き込む、一部を持ち帰るといった残し方を先に決めておくと、処分の判断が進みやすくなります。

実家じまいの費用は、家財の量・解体の有無・敷地の状態で変わる

総額を先に知りたくなりますが、同じ延床面積でも見積額は倍近く動きます。動かしているのは次の変数です。

  • 家財の量と、搬出経路(2階からの下ろし、前面道路の幅、トラックを寄せられるか)
  • 処分の出し方(自治体の粗大ごみ収集を使うか、許可を持つ業者にまとめて渡すか)
  • 建物を解体して更地で渡すか、現況のまま引き渡すか
  • 境界の確定や測量が必要か、私道の持分があるか
  • 仏壇や神棚、写真や刃物など、扱いを分ける物がどれだけあるか
  • 名義の整理にかかる費用(戸籍の取り寄せ、司法書士への報酬、登録免許税)

見積もりを取るときは、この変数のどれを前提にした金額なのかを確認してください。

「一式」と書かれた見積書は、あとから階段作業や分別の追加として上がることがあります。

費目ごとの内訳と、何がどうなったら追加になるのかを書面にしてもらうのが先です。

費目の並びと開きの出やすい項目は実家じまいの費用の内訳で解説しています。

解体や片づけには、自治体が独自に支援を設けている場合があります。

内容も期限も予算枠も市区町村ごとに違い、着工前の申請が条件になっていることが多いため、契約を交わす前にお住まいの、あるいは実家のある市区町村の窓口で確認してください。

制度の探し方は実家じまいに使える補助金で解説しています。

業者に渡す前に見るのは許可の種類と、8日間のクーリング・オフ

家庭から出た不用品を運んで処分するには、市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要ります。

買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可です。

産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。

「無料回収」と書いたトラックは、この一般廃棄物の許可を持っていないことが多く、渡した先で不法投棄されれば出した側にも話が及びます。

会社名と許可の種類、許可番号を控えてから頼んでください。

遺品整理士は民間の認定資格です。

持っていることが悪いわけではありませんが、これがあれば廃棄物を運べるようになるものではありません。

許可の有無とは別に見ます。

業者が家に来てその場で買い取る「訪問購入」は、契約書面を受け取った日から8日間クーリング・オフができます。

この期間内は品物の引き渡しを拒めるので、迷っているものを置いていかない判断もできます。

書面を受け取らずに引き渡すのは避けてください。

そして、捨てる前に必ず探すものがあります。処分してしまうと相続の手続きがそこで止まります。

  • 通帳とキャッシュカード、貸金庫の鍵と契約書
  • 保険証券、年金手帳、有価証券
  • 不動産の権利証と登記識別情報
  • 遺言書、印鑑と印鑑登録証、借用書

遺言書が封のまま出てきた場合、自筆証書遺言と秘密証書遺言は開封せずに家庭裁判所へ持ち込み、検認を受けます。

公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が不要です。

ひとまとめにせず、どの形式かを見てから扱ってください。

実家じまいの期限は、相続放棄3か月・相続税10か月・登記3年の順で来る

親が亡くなったあとに始める場合、片づけのペースとは無関係に走っている期限があります。起算日が「亡くなった日」ではないものがあるので、そこを取り違えないでください。

手続き期限起算日
相続放棄・限定承認3か月自分のために相続が開始したことを知った時
準確定申告4か月相続の開始を知った日の翌日
相続税の申告・納付10か月相続の開始を知った日の翌日
相続登記3年不動産を取得したことを知った日(2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日まで)

借金の有無が分からず3か月で判断できないときは、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます。

なお、相続財産を処分したり使ったりすると単純承認したとみなされ、放棄できなくなります。

放棄を検討している段階では、家財を売って現金化することも避けます。

相続税は、基礎控除の3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えなければ申告そのものが不要です。

相続人が3人なら4,800万円になります。

ただし、被相続人が住んでいた宅地の評価額を330平方メートルまで80%減額する小規模宅地等の特例や、配偶者の税額軽減を使って税額を0円にする場合は、申告が必要です。

同居していない子がこの特例を使うには「家なき子」と呼ばれる要件を満たす必要があり、判定は個別事情で変わります。

自分の場合の税額は相続税がかかる人の条件で仕組みを確認したうえで、税理士に相談する段階です。

実家じまいで署名が必要なのは、相続人全員か、それとも1人か

手続きが止まる場所はだいたいここです。誰の同意が要るのかは、対象によって違います。

土地と建物は、遺産分割協議書に相続人全員の署名押印が要ります。

1人でも欠けると登記も売却もできません。

遠方のきょうだいや、連絡が途絶えている相続人がいる場合は、書類を回すだけで数か月かかります。

一方で仏壇やお墓は祭祀財産なので、引き継ぐ1人が判断します。

改葬の許可は市区町村が出し、現在の墓地管理者の証明が要ります。

親が生きているうちに進める場合は、家は親の財産です。

売る意思を示せるかどうかで進め方が変わり、判断が難しくなっている場合は子が代わりに契約することはできません。

成年後見の申立てを含めて、司法書士や弁護士に相談する段階になります。

解体や大量の搬出をするときは、隣家への挨拶も実務のひとつです。

工事の日程と、騒音や粉じんが出る期間を先に伝えておくと、作業中の中断を避けられます。

遠方に住んでいて顔を出せないときの伝え方は実家じまいの挨拶文で解説しています。

実家じまいの出口は、売る・貸す・残すで維持費の重さが変わる

3つのうちどれを選ぶかは、建物の築年と、毎年いくら払い続けられるかで決まります。

売る場合は、築年と譲渡の時期で使える控除が変わる

相続した空き家を売ったときは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。

1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。

相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。

ほかにも満たすべき要件があるため、売却の時期を決める前に要件の確認が必要です。

現況のまま売るか、解体して更地で売るかは、買主が誰になるかで変わります。解体してから売れ残ると、更地の固定資産税を払いながら待つことになります。

貸す場合は、先に出ていく修繕費を見ておく

借り手が付くかどうかの前に、水回りと屋根、雨漏りの痕を見ます。

長く空いていた家は、給排水の不具合が使い始めてから出ます。

修繕にかけた費用を家賃で何年で回収できるのかを計算してから決めてください。

自治体が運営する仕組みに登録して借り手を探す方法もあり、登録の条件や仲介の有無は空き家バンクの使い方で解説しています。

残す場合は、年間の支出を数字にしてから決める

すぐに決めないという選択も、費用を把握していれば成り立ちます。

固定資産税、火災保険、電気と水道の基本料、草刈りや通いの交通費を足して、年額を出してください。

そのうえで「いつまで残すか」を決めます。

期限を決めずに残すと、次の節の状態に近づきます。

放置した空き家に起きるのは、勧告と住宅用地特例の除外

空き家を置いておくと固定資産税が自動で上がる、という話は正確ではありません。

段階があります。

倒壊のおそれや衛生上有害な状態にあると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがある状態だと「管理不全空家」に指定されます。

そして勧告を受けた時点で、住宅用地の課税標準を6分の1にする軽減(小規模住宅用地の特例)が外れます。

2023年12月施行の改正で、管理不全の段階でも対象になりました。

指定の前に助言や指導があるため、通知が届いたまま何もしないでいると次の段階へ進みます。

郵便物が実家に届いて誰も見ていない状態だと、この通知に気づけません。

転送届を出すか、近所の人に連絡先を伝えておくといった手当てが要ります。

税以外にも、時間の経過で増える負担があります。

相続登記を怠った場合の10万円以下の過料は先に触れたとおりです。

相続した空き家の3,000万円特別控除は2027年12月31日までの譲渡が対象なので、売る前提で寝かせていると使えなくなります。

雨漏りや小動物の侵入が起きると、片づけの前に建物の処置が必要になり、作業できる業者も限られます。

建物を壊すにも、庭木を切るにも、自治体の支援制度には申請の期限と予算枠があります。

使えるものがあるかどうかは年度によって変わるので、動く年度の頭に確認してください。

空き家に対する自治体の支援の種類は空き家の補助金と申請条件で解説しています。

よくある質問

親が元気なうちから実家じまいを始められますか

できますが、家の名義と家財の所有者は親です。

売却や解体の契約は親が結ぶことになり、子が代わりに決めることはできません。

この段階でできるのは、通帳や保険証券がどこにあるかを親と一緒に確認することと、片づけの優先順位を親に決めてもらうことです。

親が判断しにくくなっている場合は、成年後見の申立てを含めて専門家に相談する段階になります。

きょうだいが同意しないときは売れないのですか

相続人全員の署名が必要なので、1人でも反対していれば売却の登記はできません。

話が進まないときは、相続した不動産を売って代金を分ける換価分割や、共有のまま持つ選択、家庭裁判所での遺産分割調停といった道があります。

どれを選ぶかは相続財産の中身と人数で変わるため、査定額と固定資産税の年額を用意したうえで弁護士に相談してください。

名義が亡くなった祖父のままでした。どうなりますか

祖父の相続から手続きが止まっている状態で、相続人は孫の代まで広がっています。

この場合も2027年3月31日が登記の期限です。

相続人が何人になるかを戸籍で確定させるところから始まるので、司法書士に依頼するのが現実的な進め方です。

人数が多いほど時間がかかるため、期限との距離を早めに測ってください。

家財は業者にまとめて渡してよいですか

渡す前に、通帳・権利証・遺言書・保険証券・印鑑の5点を探し終えてください。

処分すると相続の手続きが止まります。

業者を選ぶときは、一般廃棄物収集運搬業の許可と、買い取りをするなら古物商許可があるかを確認します。

「無料回収」を名乗る訪問業者は許可を持たない場合があるため、許可番号を答えられるかを聞いてください。

空き家のままにすると固定資産税は上がりますか

置いているだけで自動的に上がるものではありません。

市区町村から特定空家または管理不全空家に指定され、勧告を受けた時点で、住宅用地の軽減が外れます。

助言や指導の通知が実家に届く形になるので、郵便を受け取れる状態にしておくことが前提になります。

仏壇はどうすればいいですか

まず、誰が祭祀財産を引き継ぐのかを決めます。

引き継ぐ人が自宅に置けない場合、扱っている仏具店や菩提寺で引き取りを受けているところもあるため、事前に相談してください。

位牌や仏具の扱いは寺院や宗派の考え方で変わります。

処分の費用を業者に頼む場合は、家財の処分と同じく許可の有無を確認します。

まとめ

実家じまいで最初に取るのは登記事項証明書で、甲区の名義が親のままなら、家財を片づけても出口の手前で止まります。

名義の整理は相続人全員の署名が要る一方、仏壇とお墓は引き継ぐ1人が判断できます。

人の同意を待つものと、今日ひとりで動かせるものを分けると、順番が決まります。

期限は相続放棄が3か月、相続税の申告が10か月、相続登記が3年(2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日まで)です。

相続した空き家の3,000万円特別控除は2027年12月31日までの譲渡が対象で、売る前提で寝かせていると使えなくなります。

費用は延床面積では決まらず、家財の量・搬出経路・解体の有無・敷地の状態で動きます。

ぜひ本記事の期限の表と、名義・家財・仏壇という進める順番を参考に、まずは法務局で登記事項証明書を1通取り寄せてください。

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