空き家の補助金はいくら出る?自治体の支援と申請条件

「空き家補助金 いくら」と検索しても、全国共通の金額は出てきません。
空き家の補助制度は市区町村が条例と要綱で決めていて、対象になる工事も補助率も上限額も、隣の市と違います。
総務省の住宅・土地統計調査(2023年)では、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高でした。
制度の数は増えても、金額を調べる先はいつも自分の市区町村です。
そして、どの制度にもほぼ共通する壁があります。
工事を始めたあとでは申請できないこと、名義が親のままだと話が進まないことの2つです。
本記事では、補助の対象になる工事の分かれ方、申請の順番と名義の壁、補助金より動く金額が大きい3,000万円特別控除を解説します。
空き家補助金の額は、国ではなく市区町村が決めている
補助金の金額を先に知りたいところですが、全国共通の上限額というものが存在しません。
空き家に関する補助は、市区町村が自分の条例と交付要綱で対象・補助率・上限額を定めて運用しています。
国の交付金が財源に入っている制度もありますが、いくら出すかを決めているのは窓口のある市区町村です。
そのため、同じ木造2階建てを壊すのでも、A市では補助が出てB市では制度自体が無い、ということが起こります。
この記事で具体的な金額を書かないのは、書いた瞬間に嘘になるからです。読者が知るべきなのは相場ではなく、自分の市区町村の要綱に何と書いてあるかと、その額が何で上下するかになります。
補助は「壊す」「直す」「使う」の3方向に分かれる
名前は自治体ごとにばらばらですが、空き家向けの補助はおおむね次の方向に分かれます。自分の実家がどの枠に当てはまるかを決めてから窓口へ行くと、話が早く進みます。
| 補助の方向 | 対象になりやすい工事 | 額を左右する要素 |
|---|---|---|
| 除却(解体) | 老朽化した家屋の取り壊し | 建物の構造、延床面積、危険度の判定結果 |
| 改修 | 耐震補強、水回りや内装の修繕 | 対象工事費に対する補助率と上限額 |
| 活用・移住 | 空き家バンク登録物件の購入やリフォーム | 移住・子育て世帯といった申請者の属性要件 |
| 家財の片づけ | 残置物の搬出と処分 | 単独の制度ではなく、改修や活用の枠に含まれている場合があります |
除却の補助は、工事費そのものが大きいぶん金額も動きます。
ただし補助率が工事費の一部である以上、自己負担は必ず残ります。
まず解体費の見当をつけないと、補助が出たとしていくら足りないのかが計算できません。
構造別の目安は空き家の取り壊し費用と抑え方で解説しています。
活用系の補助は、空き家バンクへの登録が入口になることがある
移住者向けのリフォーム補助や購入補助は、「市の空き家バンクに登録された物件であること」を条件にしている自治体があります。
売主側にも、バンクに登録して成約したら奨励金を出す制度を置いている自治体があります。
自分の実家が使えるかどうかは、バンクの登録要件を見るのが早いです。
仕組みそのものは空き家バンクの登録条件と使い方で解説しています。
空き家の補助金で対象外になりやすい費用
交付決定の通知が来ても、見積書の全額に補助率を掛けてもらえるわけではありません。
対象になる工事費(補助対象経費)を要綱が定めていて、そこから外れた費目は自己負担です。
見積書の総額で計算して、あとで足が出るのはこの食い違いが原因になります。
家財の処分費と外構工事
解体の補助で対象になるのは、多くの場合は建物本体の除却工事です。
ブロック塀、カーポート、庭木、物置といった外構の撤去を別枠にしている要綱もあれば、含めている要綱もあります。
家の中に残った家財の処分費も同じで、解体工事費とは別の費目として見積書に出てきます。
ここは金額が読みにくい部分でもあります。
家財の量は写真では伝わらず、現地を見た業者でないと出せません。
しかも、通帳や権利証、保険証券が仏壇や押し入れの奥に残ったまま一括処分されると、相続の手続きが止まります。
片づけの順番は遺品整理を何から始めるかで解説しています。
着工後に出した申請
補助金の申請は、工事の契約や着工より前に出すのが原則です。
交付決定の前に壊し始めた工事は、あとから書類を揃えても対象外になります。
危険な塀を先に壊してから相談に行き、その部分だけ補助が受けられなくなるというのは避けたい失敗です。
解体の見積もりを取るところまでは自由ですが、契約書に判を押す前に一度窓口へ電話してください。
申請者の側の要件
建物の条件だけでなく、申請する人にも条件が付きます。
市町村税の滞納がないこと、暴力団員でないこと、市内に住んでいることなどを要件に挙げている自治体があります。
相続で遠方に住む子が申請する場合、「所有者本人」か「相続人全員の同意を得た代表者」かで提出書類が変わります。
ここは要綱の申請資格の欄に必ず書いてあるので、窓口へ行く前に読んでおくと二度手間が減ります。
逆に、削らないほうがいい費用もあります。
アスベストの事前調査、境界の確認、建物滅失登記は、省いても当座は困りませんが、売却の段階で必ず戻ってきます。
調査を飛ばした解体は工事が途中で止まりますし、境界が未確定の土地は買主が住宅ローンを組みにくくなります。
補助金で浮いた分をこれらに回すほうが、結果として早く手放せます。
空き家補助金の申請は、名義を確かめるところから始まる
要綱を読む前にやることがあります。
実家の名義が誰になっているかの確認です。
登記簿の甲区(所有権に関する事項)に親の名前のままなら、補助金の申請者を誰にするかという問題の前に、相続登記が残っています。
相続登記は2024年4月から義務になった
不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の2)。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日と決まっています。
実家が空き家になって1年前後という段階なら、この期限のほうが補助金の募集締切より先に来ることもあります。
登記を済ませておくと、補助金の申請で求められる所有者確認の書類が1枚で済みます。
売る・貸すのどちらに進むにしても、名義が自分に移っていない限り契約ができません。
今日から1人で動かせる手続きという意味でも、ここが最初です。
兄弟の共有名義なら、全員の同意書が要る
相続人が複数いて、実家を共有のまま持っている場合、解体も改修も共有者全員の合意が前提になります。
補助金の申請書に共有者の同意書の添付を求める自治体があり、押印をもらうのに時間がかかります。
兄弟が遠方にいるなら、募集期間が始まってから連絡していては間に合いません。
切り出しにくい話ですが、伝える材料は決まっています。
固定資産税の年額、解体した場合の概算費用、補助金の上限と自己負担の見込みの3点を紙にして送ると、感情の話になりにくくなります。
売るか貸すか残すかの整理そのものは空き家を売る・貸す・譲るの選び方で解説しています。
支払いは工事のあと、立て替えが要る
補助金は、工事が終わって実績報告を出し、検査を受けてから振り込まれる仕組みをとる自治体があります。
つまり、解体費や改修費はいったん全額を自分で払うことになります。
手元の資金を「補助金が出るから足りる」と計算していると、支払い時期がずれて困ります。
交付決定から工事完了、実績報告、支払いまでのスケジュールは要綱か手引きに書いてあるので、申請前に確認してください。
年度末が実績報告の期限になっていることも多く、秋以降の申請では工期が入りきらない場合もあります。
相続した空き家を売るなら、補助金より3,000万円特別控除が大きい
補助金の額に一喜一憂する前に、売却を選ぶなら税制のほうが動く金額が大きくなります。
相続した空き家を売ったときの譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(租税特別措置法35条3項/2026年9月時点)。
譲渡所得に対する税の話なので、要件を満たせば補助金とは桁の違う節税になります。
1981年5月31日以前に建った家であること
この特例には要件があり、家屋が1981年5月31日以前に建築されたものであること、2027年12月31日までの譲渡であることなどが定められています。
相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降の譲渡では控除額が1人あたり2,000万円に下がります。
兄弟3人で共有している実家を売るなら、この違いは無視できません。
家屋を解体して土地として売る場合と、耐震改修をしてから売る場合の両方が想定された制度です。
解体費に市の補助を使いつつ、売却で特例を使うという組み合わせも考えられます。
ただし、補助金を受けた工事費を譲渡所得の計算でどう扱うかは個別の判断になります。
売却の見込みが立った段階で、税務署の事前相談か税理士に確認する場面です。
譲渡所得そのものの計算の仕組みは実家を売ったときの譲渡所得の計算方法で解説しています。
動かさずに置いたときにかかるお金
補助金を待って何年も置いておく判断もありますが、その間の負担も数えておいてください。固定資産税は毎年かかり、草刈りや通風のための帰省にも交通費が出ていきます。
さらに、倒壊のおそれや衛生上有害な状態にあると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがある状態だと「管理不全空家」に指定されます(空家等対策の推進に関する特別措置法・2023年12月改正施行)。
勧告を受けると、住宅用地の特例(課税標準が6分の1)が外れます。
放置していれば自動的に税額が上がるのではなく、指定と勧告という段階を踏む仕組みです。
年に数回でも草を刈りに帰っているなら、すぐにこの話にはなりません。
とはいえ、いつから上がるのかという条件は知っておいたほうがよく、空き家の固定資産税が6倍になる条件で解説しています。
なお、売る以外の道もあります。貸す、譲る、地域に使ってもらうという選択肢と、その順番は使わない実家を動かす順番で解説しています。
よくある質問
空き家補助金はどこの自治体にもありますか
ありません。
制度を設けていない市区町村もありますし、設けていても年度ごとに予算枠があり、募集期間内に受付を締め切ることがあります。
市区町村の公式サイトで「空き家」「住宅」「建築指導」といった担当課のページを見るか、代表電話で「空き家の解体や改修の補助制度はありますか」と聞くのが確実です。
もう解体してしまいましたが、あとから申請できますか
交付決定の前に着工した工事は対象外とする要綱がほとんどです。契約前・着工前の申請が原則なので、これから工事を考えている段階であれば、業者と契約する前に窓口へ相談してください。
名義が亡くなった親のままでも申請できますか
所有者本人か、相続人であることを証明できる人が申請者になります。
相続人が複数なら同意書を求められることがあり、いずれにしても戸籍の収集は避けられません。
相続登記そのものに3年の期限(2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日まで)があるため、補助金の有無にかかわらず先に進めておく手続きです。
補助金が出れば解体費の自己負担はゼロになりますか
なりません。
補助は工事費の一部に対する定率と上限額の組み合わせで、対象経費から外れる費目もあります。
見積書の総額ではなく、要綱で定められた対象経費に補助率を掛けた額が上限になると考えてください。
補助金を使って解体した土地は、すぐ売ってもいいですか
補助を受けたあとの土地の利用や処分について、一定期間の条件を付けている自治体があります。
売却を前提に解体するなら、申請前に「補助を受けた後に売却して差し支えないか」を窓口で確認しておいてください。
条件の有無で、解体の順番そのものが変わります。
まとめ
空き家の補助金に全国共通の金額はなく、額を決めているのは自分の市区町村です。
要綱を読むより先に確かめるのは、実家の名義と、兄弟の同意が要るかどうかになります。
名義は今日から1人で動かせますが、同意は人を待つ手続きです。
そして、工事を始めたあとでは申請できないという点だけは、どの制度でもほぼ共通しています。
売却まで視野に入れるなら、補助金より相続空き家の3,000万円特別控除のほうが動く金額は大きくなります。ぜひ本記事の「壊す・直す・使う」の3方向の分け方と、名義から始める申請の順番を参考に、まずは市区町村の担当課へ制度の有無を確認するところから始めてください。


