相続時精算課税の届出はいつまで?必要書類と提出先

相続時精算課税選択届出書は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与を受けた人の住所地を所轄する税務署へ提出します。
親の住所地の税務署ではありません。
この期間を過ぎてから出しても、その年の贈与について相続時精算課税を選ぶことはできなくなります。
添付するのは受贈者(じゅぞうしゃ)の戸籍謄本などで、贈与を受けた日以後に作成されたものに限られます。
先に取っておいた戸籍は使えません。
本記事では、届出書の提出期限と数え方・戸籍の取り寄せ方と間に合わせ方・提出先の税務署の決まり方・期限後に何が起きるかまで解説します。
相続時精算課税の届出は贈与の翌年3月15日まで|提出までの流れ
手続きは、贈与を実行してから翌年の申告期間に書類を出すまでの2年がかりになります。
といっても作業量は多くありません。
全体はおおむね次の順に進みます。
| 時期 | やること | 場所・窓口 |
|---|---|---|
| 贈与の前 | 贈与する財産と日付を決め、贈与契約書を作る | 自宅 |
| 贈与の日 | 現金は振込で記録を残す。不動産は名義変更の準備をする | 金融機関・法務局 |
| 贈与の日以後 | 受贈者の戸籍謄本を取り寄せる | 本籍地の市区町村 |
| 翌年1月〜2月 | 贈与税の申告書と相続時精算課税選択届出書を作る | 国税庁サイト・税務署 |
| 翌年2月1日〜3月15日 | 申告書・届出書・戸籍を提出する | 受贈者の住所地の所轄税務署 |
最初に決めるのは贈与の実行日
この順番で最初に固めるのは、書類ではなく贈与の日付です。
届出書に添付する戸籍謄本は「贈与を受けた日以後に作成されたもの」という条件が付いています。
役所で先に取っておいた戸籍は、日付が贈与より前なら使えず、取り直しになります。
贈与の日が年をまたぐかどうかも、ここで決まります。
12月に話がまとまって、振込が1月に入ったのであれば、それは翌年の贈与です。
申告と届出はさらにその翌年になり、相続時精算課税が適用される年が1年ずれます。
年末に動くときは、振込の着金日と、不動産なら登記の受付日を確認してください。
贈与者と受贈者の条件は戸籍で示す
この制度を選べるのは、贈与の年の1月1日時点で一定の年齢に達している父母や祖父母からの贈与で、受け取る側も一定の年齢以上の子や孫であることが条件です。
年齢と続柄の両方を満たしているかを示す役目を、添付する戸籍が担っています。
自分の家族関係が条件に当てはまるかどうか、制度の骨組みは相続時精算課税の仕組みで解説しています。
相続時精算課税の必要書類は届出書と戸籍|どこで何日かかるか
提出する書類は、次の3点がそろえば足ります。
以前は贈与者の住民票なども求められていましたが、添付書類は簡素化されています。
様式と添付書類は年ごとに変わるので、提出する年分の手引で確認してください。
相続時精算課税選択届出書
国税庁のサイトからダウンロードするか、税務署の窓口で受け取ります。
書くのは受贈者と贈与者の氏名・生年月日・住所と続柄、それに最初に贈与を受けた年分です。
財産の金額を書き込む欄はありません。
金額の内訳は贈与税の申告書のほうに書きます。
この届出書は、贈与者ごとに1枚ずつ必要です。
父と母の両方から贈与を受けて、どちらにも相続時精算課税を使うのであれば、2枚出します。
父だけに使って母からの贈与は暦年課税のままにする、という選び方もできます。
受贈者の戸籍謄本または抄本
本籍地の市区町村で取ります。
本籍地が遠方なら郵送でも請求できますが、往復と役所の処理で1〜2週間みておくと安心です。
定額小為替を同封する方式が一般的で、手数料と支払い方法は市区町村によって違うため、請求先の案内を見てください。
近年は本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍を受け取れる扱いが始まっていますが、対象となる戸籍の種類や請求できる人に条件があります。
使えるかどうかは、行こうとしている窓口に電話で確かめるのが確実です。
取得できたら、発行日が贈与の日以後になっているかを必ず見てください。
ここが前の日付だと、せっかく取った1通が無駄になります。
贈与税の申告書
届出書だけを出しても手続きは完了しません。
相続時精算課税を選んだ年は、贈与税の申告書と一緒に提出します。
特別控除の枠に収まって納める税額が出ない場合でも、申告書そのものは必要です。
「税金がかからないから出さなくていい」と考えて申告書を省くと、届出も受理されません。
なお2024年1月1日以後の贈与からは、相続時精算課税にも毎年の基礎控除が設けられました。
制度を選んだ翌年以降、1年間の贈与がその基礎控除の範囲に収まっていれば申告が不要になる場合があります。
適用の条件は国税庁の案内で確認してください。
届出書そのものは、最初の年に1回出せば足ります。
提出先は受贈者の住所地の税務署|郵送とe-Taxの扱い
提出するのは、贈与を受けた人の住所地を所轄する税務署です。
贈与した親の住所地でも、贈与された不動産の所在地でもありません。
親が地方に住んでいて子が都市部に住んでいる場合、書類は子の側の税務署へ行きます。
所轄がどこになるかは、国税庁のサイトで住所から検索できます。
窓口・郵送・e-Taxの3通り
窓口へ持参する場合、税務署の開庁は平日の日中だけです。
確定申告の時期は所得税の相談で混み合うため、書類の受け渡しだけなら早い時間に行くほうが待ちません。
多くの税務署には時間外収受箱が置かれていて、閉庁後でも投函できます。
郵送のときは、通信日付印の日が提出日として扱われます。
3月15日の消印であれば、税務署に届くのが数日後でも期限内です。
ただし普通郵便では出した記録が残りません。
控えに受付印をもらいたい場合は、申告書の控えと返信用封筒を同封します。
e-Taxを使えば期間中は24時間送信できます。
戸籍などの添付書類も、イメージデータで送れる扱いになっています。
対応している手続きの範囲は変わることがあるため、送信前に国税庁のサイトで確かめてください。
「いつ出すか」は年内の段取りで決まる
法律上の期限は翌年3月15日で、その日が土日祝日にあたる場合は次の開庁日へずれます。
一方、実務で気をつけるのはもっと前の段階です。
贈与の日以後でなければ戸籍を取れないため、12月に贈与すると、戸籍の取り寄せと申告書の作成が年明けに集中します。
贈与を年の前半に実行しておけば、戸籍は夏までに手元にそろい、申告期間は書類を出すだけになります。
提出が遅れたときに何が起きるかは、相続時精算課税選択届出書の提出期限で解説しています。
期限後は選択できない|相続時精算課税の届出でつまずく3か所
手続きそのものは単純でも、止まる場所はだいたい決まっています。
1日でも遅れると、その年の贈与には使えない
相続時精算課税の選択には、期限に遅れた場合の救済が用意されていません。
3月16日に届出書を持ち込んでも、その年の贈与は暦年課税として扱われます。
相続放棄のように家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てる仕組みもありません。
翌年以降の贈与についてあらためて選ぶことはできますが、すでに済んだ贈与を後から精算課税に切り替えることはできないと考えてください。
贈与があったことを示す記録が残っていない
親の口座から子の口座へお金が動いていても、通帳と印鑑を親が持ったままで、子が自由に使える状態になっていなければ、贈与が成立していないと判断されることがあります。
贈与契約書に日付と双方の署名を残し、振込で記録を作り、通帳と印鑑は受け取った側が管理してください。
この記録は、将来の相続税の計算で贈与財産を持ち戻すときにも根拠になります。
贈与者が届出の前に亡くなった
贈与の翌年3月15日を待たずに贈与者が亡くなることもあります。
その場合、届出書は相続人が代わりに提出します。
期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内で、提出先も贈与者の死亡に係る相続税の納税地を所轄する税務署に変わります。
贈与税の申告と相続税の申告が同じ時期に重なるため、この状況になったら早めに税理士へ相談する段階です。
相続税がそもそもかかる規模かどうかは、基礎控除が3,000万円+600万円×法定相続人の数という計算で決まります。
判定の考え方は相続税がかかる人の基準で解説しています。
届出をする前に、暦年課税のままだといくら税金がかかるかを贈与税シミュレーターで比べられます。
自分で出すか税理士に頼むか|分かれ目は不動産と贈与者の数
現金を1人の親から1回受け取っただけであれば、書類は届出書と戸籍と申告書の3点で、自分で出している人が多い手続きです。
国税庁の作成コーナーで申告書を作り、戸籍を添えて郵送すれば終わります。
税務署では申告相談も受け付けているので、書き方で迷ったら期間前の空いている時期に持ち込むという手もあります。
判断が要るのは、財産が現金以外のときです。
土地や建物を贈与するなら、贈与税の申告に使う評価額を出す作業が入り、路線価や補正の扱いで金額が変わります。
登記の申請、登録免許税、不動産取得税といった別の手続きも並行します。
非上場の自社株や、複数の親から複数回にわたって贈与を受ける場合も同じで、評価と将来の相続税への影響をまとめて見ないと、選んだ結果が読めません。
費用をかける価値があるかどうかは、贈与する財産の規模と、将来の相続で相続税が発生しそうかどうかで判断してください。
税理士に依頼した場合の料金の決まり方は相続時精算課税の手続き費用で解説しています。
贈与した不動産をのちに売る予定があるなら、不動産を売ったときの確定申告で扱っている取得費の引き継ぎも関わってきます。
よくある質問
提出が3月15日を過ぎてしまいました。どうなりますか
その年の贈与について相続時精算課税を選ぶことはできません。
暦年課税として贈与税を計算することになります。
期限後申告になれば無申告加算税や延滞税の対象にもなるため、遅れに気づいた時点で税務署へ連絡してください。
翌年以降の贈与について、あらためて届出書を出すことは可能です。
届出書は毎年提出する必要がありますか
届出書は、その贈与者からの贈与について最初に選ぶ年に1回出せば足ります。
以後は同じ贈与者からの贈与に自動的に適用されます。
ただし贈与者が2人いる場合は、それぞれについて別に届出書が必要です。
提出先は贈与した親の住所地の税務署ですか
いいえ、贈与を受けた人の住所地を所轄する税務署です。
親と子で住んでいる地域が離れていても、提出するのは子の側の税務署になります。
贈与された不動産の所在地とも関係ありません。
添付する戸籍謄本は、前に取ったものを使い回せますか
使えません。
贈与を受けた日以後に作成されたものが条件です。
別の手続きで取った戸籍が手元にあっても、発行日が贈与より前なら取り直してください。
反対に、贈与の後に取ったものであれば、申告のときまでに日が経っていても差し支えありません。
一度届出をしたあとで、暦年課税に戻せますか
その贈与者からの贈与については戻せません。
撤回できない点がこの制度の最も大きな制約で、贈与者が亡くなるまで続きます。
選ぶ前に確認しておきたい点は相続時精算課税のデメリットで解説しています。
まとめ
届出の期限は贈与を受けた年の翌年3月15日、提出先は受贈者の住所地を所轄する税務署、添付するのは贈与の日以後に取った戸籍謄本です。
この3点を外さなければ手続き自体は難しくありません。
難しいのは日付の管理のほうで、贈与の実行日が全ての起点になります。
期限に遅れたときの救済は用意されておらず、いったん選べば暦年課税には戻せません。
現金以外の財産が含まれるなら、贈与を実行する前に税理士へ相談する段階です。
ぜひ本記事の提出までの流れの表と必要書類の3点を手元に置いて、贈与の日付を決めるところから進めてください。


