相続時精算課税選択届出書の提出期限|遅れたらどうなる

相続時精算課税選択届出書の提出期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日です。
贈与税の申告期間とまったく同じ日付で、届出書だけを先に税務署へ出しておくことはできません。
申告書とセットで、その期間内に提出します。
この期限には救済の規定がありません。
12月に親から現金を受け取り、年明けにその存在を思い出したものの手続きを後回しにして4月を迎えると、その年の贈与について相続時精算課税は選べなくなります。
届出書が1日遅れただけで、暦年課税(れきねんかぜい)で計算し直されるということです。
本記事では、提出期限の数え方と年齢の判定日・添付する戸籍謄本の取り寄せ先・期限に遅れた贈与がどう扱われるかを解説します。
相続時精算課税選択届出書の提出期限は、贈与を受けた翌年の3月15日
相続時精算課税は、贈与の時点でいったん税金を計算しておき、贈与した人が亡くなったときに相続財産と合算して精算する制度です。
この制度を使うと決めたら、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書へ相続時精算課税選択届出書を添えて提出します。
3月15日が土曜・日曜・祝日にあたる年は、翌開庁日まで延びます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 贈与を受ける年の1月1日 | 贈与者と受贈者の年齢が要件を満たすかを判定する日 |
| 贈与を受ける年の1月〜12月 | 贈与を実行し、振込記録や契約書を残す |
| 年内〜翌年1月 | 受贈者の戸籍謄本など添付書類を取り寄せる |
| 翌年2月1日〜3月15日 | 贈与税の申告書と届出書を税務署へ提出する |
| 翌年以降の贈与 | 同じ贈与者からの贈与には自動で適用される。届出書の再提出は不要 |
起算点は契約日ではなく、財産が動いた年
どの年の贈与かを決めるのは、贈与契約書に書いた日付ではありません。
現金なら口座に振り込まれた日、不動産なら引き渡しや所有権移転登記が行われた日で判定します。
12月末に振り込まれた現金と、年をまたいで1月に振り込まれた現金では、届出書を出す年が丸1年ずれます。
年末に贈与を実行したなら、翌年の申告期間はもう目の前です。
手続きより先に、1月1日時点の年齢を確かめる
順番を間違えると手続きが止まる工程がここです。
贈与した人は贈与の年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母、財産を受け取った人(受贈者)は同じ日に18歳以上の子または孫であることが条件になります。
判定日が1月1日に固定されている点を見落とすと、思わぬ空振りになります。
その年の3月に60歳の誕生日を迎えた親から5月に贈与を受けても、1月1日時点では59歳なので、その年の贈与に相続時精算課税は使えません。
年齢を満たしていないまま届出書を出しても選択は認められず、その贈与は暦年課税で課税されます。
贈与を実行する前に、親の生年月日と自分の生年月日を1月1日に当てはめて確認してください。
制度そのものの仕組みと、相続のときにどう精算されるかは相続時精算課税の基本的な仕組みで解説しています。
なお、ここで扱う制度内容は2026年9月時点のものです。
税制は毎年の改正で変わるため、申告の直前に国税庁の案内で最新の取り扱いを確かめてください。
届出書に添える書類は、受贈者の戸籍謄本と贈与税の申告書
届出書は1枚の用紙ですが、単体では受け付けられません。
贈与税の申告書に添付する形で出し、さらに親子関係や年齢を証明する書類が要ります。
書類の取り寄せに何日かかるかを読み違えると、3月15日に間に合いません。
受贈者の戸籍謄本は本籍地の市区町村で取る
必要になるのは、受け取った人の氏名と生年月日、そしてその人が贈与者の子や孫であることが分かる書類です。
実務では受贈者の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を使います。
取得先は本籍地の市区町村で、住所地とは限りません。
本籍が遠方のままなら郵送請求になり、定額小為替の準備や往復の日数で1〜2週間かかることもあります。
2024年3月からは戸籍証明書の広域交付が始まり、本人・配偶者・父母・祖父母・子・孫の戸籍であれば、本籍地以外の市区町村の窓口でも請求できるようになりました。
ただし窓口へ行った本人が請求する場合に限られ、郵送や代理人による請求はできません。
コンピュータ化されていない古い戸籍も対象外です。
手数料は市区町村で定められているため、窓口で確認してください。
贈与税の申告書は第一表と第二表を使う
相続時精算課税を使う贈与は、贈与税の申告書のうち相続時精算課税用の第二表に記入し、第一表と合わせて提出します。
用紙は国税庁のサイトからダウンロードでき、確定申告書等作成コーナーで画面に沿って入力して印刷することもできます。
税額が出ない場合でも、初めて選択する年は申告書と届出書の両方を出さなければなりません。
「納める税金がゼロだから申告は不要」と考えて出さないでいると、選択そのものが成立しません。
不動産をもらったときは評価の資料が増える
贈与された財産が現金だけなら金額がそのまま出ますが、不動産では評価額を自分で計算することになります。
土地なら路線価図や固定資産税評価額、建物なら固定資産税評価額を使い、市区町村の資産税課で固定資産評価証明書を取ります。
所有権が移っていることを確かめる登記事項証明書は法務局で取得できます。
評価の資料集めと計算にかかる時間を年内に見積もっておくと、2月からの作業が申告書の記入だけで済みます。
書類の一覧と提出先は相続時精算課税の届出に必要な書類と提出先でも解説しています。
提出先は受贈者の住所地を管轄する税務署|郵送とe-Taxも使える
提出するのは、財産をもらった人の住所地を所轄する税務署です。
贈与した親の住所地ではありません。
親と離れて暮らしている人ほど間違えやすいところで、親の家の近くの税務署へ送ってしまうと、正しい税務署へ回るまでに日数がかかります。
管轄は国税庁のサイトで郵便番号から調べられます。
窓口・郵送・e-Taxで提出日の数え方が変わる
窓口で出すなら、その日が提出日になります。
開庁は平日の日中だけで、閉庁後は時間外収受箱に投函する方法もあります。
郵送の場合、贈与税の申告書と届出書は郵便物として扱われ、通信日付印(消印)の日が提出日です。
期限当日の夜にポストへ入れると、翌日の消印になることがあります。
取集時刻を確認するか、郵便局の窓口で当日の消印を押してもらってください。
e-Taxを使えば送信日時の記録が残り、窓口の開庁時間にも縛られません。
戸籍謄本などの添付書類は、スキャンしたイメージデータで送信できます。
マイナンバーカードとカードリーダー、またはスマートフォンでの読み取りが要るため、初めて使う年は事前の準備時間を見込んでおきましょう。
動き出すのは年内、提出は2月上旬が目安
法律上の期限は3月15日ですが、実務で狙う時期はもっと手前です。
2月16日からは所得税の確定申告が始まり、税務署の窓口も電話も混み合います。
戸籍の取り寄せに2週間、不動産の評価に数日と見れば、年内に書類を集めて1月中に下書きを終え、2月上旬に提出する流れが無理のない進め方になります。
確定申告の相談会場では贈与税の相談に対応していない署もあるため、窓口で質問したいことがあるなら早めに行くほうが待ち時間も短くなります。
相続時精算課税の期限に遅れると、その年の贈与は暦年課税になる
提出が3月15日を過ぎた場合、その年の贈与について相続時精算課税は適用されません。
期限内申告であることが制度を使う条件になっており、遅れた人を救う規定が置かれていないためです。
届出書を郵送しても、税務署はその年の贈与を暦年課税として扱います。
| 状況 | その年の贈与の扱い |
|---|---|
| 期限内に申告書と届出書を提出した | 相続時精算課税が適用され、以後その贈与者からの贈与にも継続して適用される |
| 期限後に届出書を提出した | その年の贈与は暦年課税で計算される |
| 届出書を出さないまま申告だけした | 同じく暦年課税で計算される |
| 申告も届出も忘れていた | 暦年課税での期限後申告となり、無申告加算税と延滞税の対象になる |
後から出す更正の請求や修正申告では選べない
期限後に気づいて「申告をやり直したい」と考えても、更正の請求や修正申告で相続時精算課税を選ぶことはできません。
当初の期限内申告で選択していたかどうかだけが判断材料になります。
すでに納めた贈与税を取り戻す手続きでもないため、遅れた年の贈与は暦年課税のまま確定します。
翌年以降の贈与であれば、改めて選び直せる
選択できるのは年ごとです。
ある年の届出を落としても、翌年に同じ親から贈与を受けたときに、その年の申告期間内に届出書を出せばそこから相続時精算課税を使えます。
過去にさかのぼって適用することはできませんが、制度そのものを永久に失うわけではありません。
ただし、間に合わせることだけを目的に急いで選択するのは考えものです。
いったん相続時精算課税を選ぶと、その贈与者からの贈与について暦年課税へ戻すことができなくなります。
毎年少しずつ贈与して相続財産を減らしていく方針とは相性が悪く、先に相続税全体の見通しを立てておくべき場面があります。
戻せないことで後悔しやすい点は暦年課税に戻せない相続時精算課税の注意点で、相続税がそもそもかかる家庭かどうかの判断は相続税がかかる人の基準と基礎控除の計算で解説しています。
贈与者ごとに届出書が要る
届出書は、贈与した人ごとに1通ずつ出します。
父と母の両方から同じ年に贈与を受けたなら2通です。
父からの贈与だけ相続時精算課税にして、母からの贈与は暦年課税のままにする組み合わせもできます。
1通だけ出して両方に効くと思い込むと、片方の贈与が暦年課税で計算され、想定していなかった贈与税が出ることがあります。
期限に間に合わず暦年課税になった場合の税額は、贈与税シミュレーターで確かめられます。
相続時精算課税の届出を自分で出すか、税理士に頼むか
分かれ目になるのは、贈与された財産の中身です。
現金だけで、贈与者が1人、金額もはっきりしているなら、申告書の記入欄は多くありません。
国税庁の作成コーナーで入力すれば計算も自動で行われ、自分で提出できる範囲に収まります。
一方で、土地や建物、非上場株式が含まれる場合は評価の作業が入ります。
土地は形状や接道の状況で補正が入り、同じ面積でも評価額が変わります。
ここを自己流で計算して申告すると、後から評価額の誤りを指摘され、修正申告と加算税につながることがあります。
評価が絡む贈与は、最初から税理士に見てもらう段階です。
もうひとつ、相続全体の設計に関わる判断も専門家の領域になります。
相続時精算課税で贈与した財産は、贈与した人が亡くなったときに相続財産へ持ち戻して相続税を計算します。
将来の相続税がいくらになりそうか、小規模宅地等の特例を使う予定の土地を先に贈与してよいのかといった論点は、税額の試算とセットでなければ答えが出ません。
税理士へ依頼したときの費用の考え方は相続時精算課税を税理士に頼むときの費用で解説しています。
書き方そのものが分からないだけなら、税務署の電話相談センターや、予約制の面談でも質問できます。
ただし税務署は書き方や制度の説明には答えても、暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かという判断はしません。
有利不利を相談したい段階なら、相手は税理士です。
よくある質問
相続時精算課税選択届出書だけを先に提出できますか
できません。
届出書は贈与税の申告書に添付して提出する書類です。
贈与を受けるより前に出しておくこともできず、実際に財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日までの申告期間に、申告書と一緒に出します。
納める贈与税がゼロでも届出書は必要ですか
初めて相続時精算課税を選ぶ年は、税額が出なくても申告書と届出書の提出が要ります。
届出書を出して初めて制度の適用が始まるためです。
2年目以降は、その年の贈与が相続時精算課税の基礎控除の範囲に収まっていれば贈与税の申告が不要になる扱いがありますが、初年度の提出を省くことはできません。
父と母の両方から贈与を受けました。届出書は1通でよいですか
贈与した人ごとに提出するため、2通必要です。
片方だけ相続時精算課税を選び、もう片方は暦年課税のままにする選び方もできます。
どちらを選ぶかで将来の相続税の計算が変わるので、両親の財産全体を見てから決める場面です。
3月15日が日曜日のときはどうなりますか
期限は翌開庁日まで延びます。
土曜・日曜・祝日にあたる年は、その次の平日が提出期限です。
ただし郵送の場合は消印の日付が提出日になるため、期限日ぎりぎりの投函では日付がずれることがあります。
贈与を受けた年のうちに親が亡くなりました。届出はどうなりますか
贈与した人が亡くなったタイミングによって、届出書の提出先や期限の扱いが変わります。
相続税の申告手続きと一体で処理する場面もあり、通常の贈与税申告とは流れが異なります。
自己判断で進めず、所轄の税務署または税理士に状況を伝えて確認してください。
期限を過ぎたことに後から気づいたら、何をすればよいですか
その年の贈与は暦年課税で計算されるため、まず暦年課税として贈与税の申告が必要かどうかを確かめます。
基礎控除を超えていれば期限後申告となり、無申告加算税と延滞税の対象になります。
放置して税務署からの連絡を待つより、気づいた時点で申告したほうが加算税の割合は軽くなります。
まとめ
相続時精算課税選択届出書の期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日です。
この期限に遅れると、その年の贈与について制度を選ぶ道は閉じ、暦年課税で計算されます。
更正の請求や修正申告でやり直すこともできません。
動き出すべき時期は申告期間ではなく、贈与を実行する年のうちです。
1月1日時点の年齢要件を確かめ、受贈者の戸籍謄本を取り寄せ、不動産があれば評価の資料を揃えておけば、2月に入ってからの作業は申告書の記入だけで終わります。
選択すると暦年課税へ戻せない以上、期限に追われて駆け込みで決めるのは避けたいところです。ぜひ本記事の提出までのスケジュール表と年齢の判定日の考え方を参考に、贈与を実行する前の段階から準備を始めてください。


