予納金が払えないときは?相続財産清算人の費用の考え方

家庭裁判所で相続財産清算人の選任について説明を受けると、収入印紙800円と官報公告料5,582円という実費のほかに、「予納金」という言葉が出てきます(裁判所「相続財産清算人の選任」/2026年9月時点)。実費は金額が決まっているのに、予納金だけはその場で額を言ってもらえないことがあります。
予納金は、清算人が財産を管理していく費用に不足が出そうなときに、申立人が納めるお金です。
額は家庭裁判所が事案ごとに決めるもので、全国一律の相場はありません。
そのため、検索して見つけた金額を用意しても足りないこともあれば、そもそも求められないこともあります。
本記事では、申立てで先に出ていく実費の内訳・予納金の額に関わる事情・払えないときに確認する順番を解説します。
相続財産清算人の申立てで先に出ていく実費は、切手代を除いて6,382円
費用の話は、額が決まっているものと決まっていないものを分けるところから始まります。
裁判所が公表している申立費用は、収入印紙800円、連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円です。
このうち金額が確定しているのは印紙と公告料で、合わせて6,382円になります。
切手は裁判所ごとに必要な組み合わせが違うため、申立先に電話して確認してください。
| 費目 | 金額 | 納める時期 |
|---|---|---|
| 収入印紙 | 800円 | 申立てのとき |
| 連絡用の郵便切手 | 裁判所ごとに異なる | 申立てのとき |
| 官報公告料 | 5,582円 | 家庭裁判所の指示があってから |
| 予納金 | 家庭裁判所が事案ごとに決める | 家庭裁判所の指示があってから |
出典は裁判所「相続財産清算人の選任」です。表の上2つは申立ての窓口で納め、下2つは申立てをしたあとに家庭裁判所から指示が来てから納める流れになります。
申立てそのものより、書類集めで動く金額
実費6,382円という数字だけを見ると安く感じますが、申立てには相続人がいない、あるいは相続人の存在が明らかでないことを示す資料が要ります。
被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍、住民票の除票、相続人にあたりうる人の戸籍などを集めることになり、本籍地が転々としていれば取り寄せ先も増えます。
戸籍は本籍地の市区町村、不動産があれば登記事項証明書は法務局と、窓口が分かれます。
ここでかかるのは1通あたり数百円の手数料ですが、通数が増えれば郵送料と定額小為替の手数料も積み上がります。
司法書士や弁護士に申立てを任せる場合は、その報酬が別に発生します。
実費だけを見て予算を組むと、書類集めと報酬の2つが後から乗ってきます。
予納金の額を左右するのは、清算人がこれからやる仕事の量
裁判所の説明では、清算人が財産を管理するための費用に不足が出る可能性がある場合に、申立人が相当額を予納金として納めることがあるとされています。
裏を返せば、財産の中からその費用を出せる見込みが立つなら、予納金を求められないこともあるわけです。
額が事案ごとに違うのは、清算人がこれから何をどれだけやるかが家によってまったく違うからです。
すぐ使える預金があるか、不動産だけが残っているか
清算人は選任されたあと、財産を調べ、官報で公告を出し、債務を払い、残った財産を国庫に引き継ぐまでの実務を担います。
その費用を財産から出すには、財産が現金として使える状態になっている必要があります。
預金がある程度残っていれば、そこから公告料や実費を支払えます。
一方、残っているのが実家の土地建物だけという場合は、売れるまで手元の現金がありません。
売却の手間も、買い手がつくかどうかも土地によって変わります。
管理している間の固定資産税や、草木の伐採、最低限の修繕といった出費も出てきます。
この差が、予納金を求められるかどうか、求められるとしてどの程度かに関わってきます。
債権者や受遺者が何人いるか
清算人は債権者や受遺者(遺贈を受けた人)に対する公告と、相続人を捜すための公告を行い、申し出のあった債権を確認して弁済していきます。
関係者が1人なのか、貸金業者や医療機関、施設利用料など複数にわたるのかで、確認と連絡の手間が変わります。
清算が終わるまでの期間は法律で定められた公告の期間に左右されるため、申立てから完了までは短くありません。
管理が長引けば、そのあいだの実費もかさみます。
額を知る方法は、申立先に聞くしかない
予納金の額は、申立てをする家庭裁判所が事案ごとに判断します。
金額の目安を書いたページや体験談は見つかりますが、それを自分の場合に当てはめることはできません。
申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
財産の内容(預金の残高、不動産の有無と所在、負債の見込み)をメモにまとめてから、その裁判所に確認するのが唯一の道になります。
申立ての手順そのものは相続財産清算人の選任の申立てから完了までの手順で解説しています。
予納金が払えないとき、順番に確認したい4つのこと
窓口で言われた額に手が届かない場合、取れる手立ては限られています。
ただ、額を聞く前に申立てを諦める必要はありません。
確認の順番があります。
自分以外に申立てができる人がいないか
申立てができるのは、利害関係人または検察官です。
利害関係人には、被相続人の債権者、特定遺贈を受けた人、特別縁故者として財産の分与を求める立場の人などが含まれます。
予納金を納めるのは申立人ですから、誰が申立人になるかで負担者が変わります。
たとえば貸していたお金を回収したい債権者と、家の管理に困っている親族が同時にいる場合、どちらが申し立てるかは決まっていません。
相続人全員が相続放棄をした結果として相続人がいなくなったケースでも同じで、放棄した親族が複数いるなら、誰が申立人になるかを先に話し合うことになります。
ここを曖昧にしたまま1人が窓口へ行くと、その人が全額を立て替える形になります。
机の上に出すのは、予納金として言われた額と、財産の中身(預金の残高、不動産の査定額、固定資産税の年額)です。
金額の資料がないまま相談すると、誰が損をするかの話にずれていきます。
清算人を立てて動く額と、予納金を並べて比べる
申立ての目的は人によって違います。
債権の回収なのか、特別縁故者として財産の分与を受けたいのか、空き家になった家を処分できる状態にしたいのか。
目的が決まれば、清算人を立てた結果として自分のところに戻ってくる可能性のある額と、先に出す予納金を並べて比べられます。
財産のほとんどが売れる見込みの薄い不動産で、負債のほうが多いと分かっているなら、申立てをしても手元に戻るものはありません。
その判断のために、預金の残高証明と不動産の査定額を先に押さえておきます。
相続人がいないまま放置された財産が最後にどうなるかは相続人がいないと財産が国庫に入るまでの流れで解説しています。
相続放棄を考えている段階なら、期限が先に来る
まだ自分が相続人で、放棄するかどうかを決めていない段階なら、予納金より先に期限が来ます。
相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条)。
起算日は亡くなった日ではありません。
3か月で判断できないときは、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます。
放棄をしないまま3か月が過ぎると、負債も含めて引き継いだ扱いになり、清算人の話とは別の問題になります。
削ると手続きが止まる費用
費用を抑えたいときに手をつけたくなるのが、書類集めと専門家への相談です。
ここは削りどころではありません。
戸籍の取り寄せが不十分だと、相続人の存在・不存在を示す資料が揃わず、申立てそのものが受け付けられません。
追加で求められて出し直すことになれば、時間も郵送料も余分にかかります。
相談のほうも、申立てをするべきかどうかの見立てを誤ると、予納金を納めたあとで「戻るものが何もない」と分かる展開になりかねません。
全部を任せる必要はなく、判断の部分だけ相談して申立書は自分で書く分け方もできます。
依頼するときの注意点は相続を専門家に頼んで失敗する例で解説しています。
納めた予納金は戻るのか、申立人が立て替える仕組みを理解する
予納金は、申立人が納めたまま消えるお金ではありません。
清算人が管理する財産から費用を支弁できれば、納めた予納金が戻る場合があります。
順序としては、申立人が先に立て替え、財産に余裕があると分かった段階で精算されるという形です。
戻る保証はありません。
財産を換価しても管理費用と債務の弁済で尽きてしまえば、返ってくるものはなくなります。
この点が、申立てをするかどうかの判断でいちばん重い材料になります。
財産の中身がある程度見えている人ほど、この見通しを立てやすくなります。
負担を軽くする公的な制度は、窓口で聞くしかない
予納金を補助する制度が全国共通で用意されているわけではありません。
空き家の管理や解体に関する助成は自治体ごとに内容も期限も違うため、対象になるかはお住まいの市区町村の窓口で確認してください。
空き家の処分先を探す枠組みとしては空き家バンクの登録の条件と使い方で解説しています。
また、予納金の納め方や時期について何らかの配慮ができるかは、申立先の家庭裁判所の判断です。
額と同じく、一般的な答えはありません。
財産の内容を示す資料を持って、申立先に直接聞いてください。
予納金の考え方をもう少し詳しく知りたい場合は相続財産清算人の費用と予納金の見方で解説しています。
よくある質問
予納金はいくら用意すればいいですか
全国一律の額はありません。
家庭裁判所が事案ごとに決めるため、申立先の家庭裁判所に確認する以外に知る方法はありません。
財産の内容が分かる資料(預金の残高、不動産の所在と査定額、負債の見込み)をまとめて持っていくと、話が具体的になります。
予納金は戻ってきますか
清算人が管理する財産から費用を支弁できれば、戻る場合があります。
ただし財産が管理費用と債務の弁済で尽きれば戻りません。
戻るかどうかは財産の中身次第で、申立ての時点で確約されるものではないと考えてください。
実費の6,382円だけで申立てはできますか
収入印紙800円と官報公告料5,582円のほかに、連絡用の郵便切手が必要です。
切手の内訳は裁判所ごとに違います。
さらに戸籍や住民票の除票、不動産の登記事項証明書といった添付書類の取得費もかかります。
官報公告料と予納金は、家庭裁判所の指示があってから納める費目です。
相続放棄をした人でも申立てはできますか
申立てができるのは利害関係人または検察官です。
自分がそれにあたるかどうかは事情によって変わるため、申立先の家庭裁判所で確認してください。
なお、相続放棄をしても祭祀(さいし)を引き継ぐ立場になることはでき、お墓や仏壇の扱いは相続財産とは別に決まります。
申立てをしないまま放っておくとどうなりますか
清算人が選任されない間は、財産は誰にも処分されない状態のまま残ります。
債権者は回収の手続きを進められず、空き家があれば管理されないまま置かれます。
倒壊のおそれなどがあると市区町村が判断すれば「特定空家」や「管理不全空家」に指定され、勧告を受けた段階で固定資産税の住宅用地特例が外れます。
放置で自動的に税額が上がるのではなく、指定と勧告の段階を踏む仕組みです。
まとめ
相続財産清算人の申立てで金額が決まっているのは、収入印紙800円と官報公告料5,582円、それに裁判所ごとの切手代だけです。
予納金は家庭裁判所が事案ごとに決めるため、検索して出てきた数字を自分の予算にはできません。
払えないと感じたときは、自分以外に申立てができる利害関係人がいないか、清算人を立てて動く額が予納金を上回るか、この2点を先に確かめてください。
まだ相続人としての立場を決めていないなら、知った時から3か月という相続放棄の期限が先に来ます。ぜひ本記事の費用の内訳表と、予納金を左右する3つの事情を手元に置いて、申立先の家庭裁判所に確認する準備を進めてください。


