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株式・投資信託の相続はどう進める?証券会社での手続き

株式・投資信託の相続はどう進める?証券会社での手続き

証券会社が名義人の死亡を知った時点で、口座は凍結されます。

売却注文も出金も受け付けられなくなり、相場が動いても手は出せません。

預貯金なら1つの金融機関につき上限150万円まで相続人が単独で払い戻せる仮払いの制度(民法909条の2)がありますが、株式や投資信託に同じ仕組みはありません。

しかも株式は、解約して現金を振り込んでもらう形にはなりません。

相続人名義の口座へ移してから売る順番です。

本記事では、口座凍結後の進め方・証券会社に出す書類と取り寄せ先・3か月と10か月の期限から逆算する段取りを解説します。

株式の相続は証券口座の凍結から始まる|預貯金の仮払い制度は使えない

凍結は、相続人が連絡した日から始まります。

売買も出金も止まり、遺産分割と名義の手続きが済むまでその状態が続きます。

この期間に値下がりしても、相続人の誰かが判断して売ることはできません。

預貯金の相続といちばん違うのは、待っている間に金額そのものが変わっていく点です。

手元の資金が要るときも、株式からは出せない

預貯金には、遺産分割の前に一部を引き出せる制度があります。

1つの金融機関につき「口座ごとの預貯金額×3分の1×その相続人の法定相続分」まで、上限150万円を相続人が単独で払い戻せます(民法909条の2/法務省「相続法の改正」)。

生活費や葬儀費用、相続債務の弁済といった、分割を待てない支払いのために作られた制度で、他の相続人の同意は要りません。

ただし対象は預貯金だけです。

株式や投資信託には同じ制度がないため、当面の支払いを株の売却でまかなう段取りは組めません。

親のIDでログインして売ると、相続放棄ができなくなる

ネット証券の場合、死亡を伝えないうちはログインも注文もできる状態が残ります。

ここで相続財産を処分すると、単純承認をしたものとみなされて相続放棄ができなくなります。

相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です(民法915条)。

信用取引の残高や借入の有無が分からない段階で売却や出金に手を付けると、放棄という選択肢を自分で消すことになります。

他の相続人から無断の処分を問われる材料にもなるため、口座の中身は残高証明書で確認する形をとってください。

株式の相続は、相続人の口座へ移してから売る順番になる

預貯金は解約して現金で受け取れますが、株式と投資信託はそうなりません。

証券会社の手続きは、故人の口座にある銘柄を相続人名義の口座へ移す「移管」が基本で、証券会社が換金して代金を振り込む扱いは一般には用意されていません。

現金で分けるつもりでも、受け皿になる口座を先に作るところから動きます。

相続人が証券口座を持っていない場合は新規に開設することになり、故人と同じ証券会社に口座を開くよう案内されることもあります。

株のまま分けるか、売って現金で分けるか

銘柄と株数をそのまま各相続人に振り分ければ、売るタイミングは受け取った人が自分で選べます。

一方、上場株式は100株単位で売買されるものが多く、兄弟3人で均等に割ると端数が出ます。

売却代金を分ける形(換価分割)なら金額はきれいに揃いますが、代表者1人の口座へまとめて移してから売る手順になるため、遺産分割協議書に「換価して分ける」趣旨を書いておかないと、あとで代表者からの贈与とみられる余地が残ります。

税務上の扱いは税理士に確認する段階です。

単元未満株は市場で売れないことがある

分割の結果として1株から99株の単元未満株が残ると、通常の売却注文では処分できません。

発行会社への買取請求や、証券会社を通じた買取サービスを使う扱いになる場合があります。

手数料と受付の窓口は証券会社や発行会社で変わるので、分け方を決める前に、端数がどう処理されるかを確認しておくほうが早いです。

株式の相続で押さえる期限は3か月・4か月・10か月

やることの順番は、期限の近いものから逆算します。株式が絡むと、どの期限にも「評価額を出さないと判断できない」という事情が乗ってきます。

手続き期限起算日
相続放棄・限定承認3か月自己のために相続の開始があったことを知った時(民法915条)
準確定申告4か月相続の開始を知った日の翌日(所得税法124条・125条)
相続税の申告・納付10か月相続の開始を知った日の翌日(相続税法27条)

起算日は亡くなった日ではありません。

疎遠だった親の死亡を後から知らされた場合、3か月はその時点から数えます。

判断に足りる資料が集まらないときは、期間内に家庭裁判所へ伸長の申立てができます。

放棄を考えるなら、残高証明書を先に取る

株式の含み損そのものが借金になるわけではありませんが、信用取引や先物・FXの建玉が残っていると債務になり得ます。

プラスとマイナスのどちらが大きいかは、証券会社が出す死亡日時点の残高証明書で確認します。

この請求は相続人の1人からでもできる扱いが一般的で、口座を凍結したあとでも受け付けられます。

3か月のうち、資料集めに何週間使えるかを最初に見積もってください。

準確定申告の4か月で見るのは、故人の配当と譲渡益

故人に事業所得や一定の年金収入がある場合、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を相続人が申告します。

特定口座で年内に売却益が出ていたり、配当を総合課税で申告して還付を受けていた場合は、この申告の対象になります。

証券会社から届く年間取引報告書や配当金の計算書は、捨てずにまとめておいてください。

10か月に間に合わせるには、評価と納税資金を分けて考える

相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です(相続税法15条)。

相続人が3人なら4,800万円で、遺産の総額がこれを超えなければ申告そのものが不要になります。

誰にかかるのかという判定の考え方は相続税は誰にかかる?基礎控除3,600万円が分かれ目になるで解説しています。

超える場合は、株式の評価額を確定させる作業と、納税資金をどこから出すかの検討が並行します。

株を売って納税するなら、移管の完了を待ってから売却するため、10か月のうち後半に余裕を残す組み方になります。

生前に備える側の手段としては、相続対策の生命保険|非課税枠500万円の使い方と選び方で解説している非課税枠の使い方も選択肢に入ります。

証券会社に出す書類と、口座が分からないときの調べ方

証券会社の手続きは、所定の相続手続依頼書に相続人が署名押印し、戸籍と印鑑登録証明書を添えて提出する流れです。

様式と添付書類の指定は会社ごとに違うため、同じ書類でも1社ずつ用意することになります。

複数の証券会社に口座がある場合、通数が増える点を先に見込んでおいてください。

最初に請求するのは死亡日時点の残高証明書

残高証明書には、銘柄・数量・死亡日時点の評価額が載ります。

相続税の計算にも、兄弟で分け方を話すときの土台にもこの紙を使います。

話し合いの席で口座の中身が分からないまま「たいした額ではない」「もっとあるはずだ」とやり取りしても、結論は出ません。

机の上に出すのは、残高証明書と、不動産があるなら固定資産税の年額と査定額です。

取り寄せ先が違う書類をまとめて確認する

書類取り寄せ先
故人の出生から死亡までの戸籍謄本本籍地の市区町村(転籍していれば前の本籍地にも請求)
法定相続情報一覧図の写し法務局(戸籍の束の代わりに使える)
相続人全員の戸籍謄本・印鑑登録証明書それぞれの本籍地・住所地の市区町村
遺産分割協議書または遺言書相続人で作成、または故人の保管場所・法務局・公証役場
相続手続依頼書各証券会社(様式が指定される)

戸籍をさかのぼる作業は、転籍が多い人ほど時間がかかります。

法務局で法定相続情報一覧図の写しを取っておくと、金融機関ごとに戸籍の束を出し直す手間が減ります。

詳しい提出順と記入のしかたは株の相続手続きの流れ|証券口座の名義変更に必要な書類で解説しています。

どの証券会社にあるか分からないとき

証券保管振替機構(ほふり)に登録済加入者情報の開示請求をすると、亡くなった人の口座がある証券会社の名前が分かります。

相続人が請求でき、手数料と戸籍などの書類が必要です。

あわせて、郵便物・確定申告書の控え・配当金計算書やクレジットカードの積立の引き落とし履歴も手がかりになります。

親が元気なうちであれば、証券会社名と口座の有無を書き残してもらうだけで探す作業が消えます。

書いてもらう項目はエンディングノートとは?書くべき項目と役割を解説で解説しています。

相続する株式の評価は、亡くなった日の終値だけで決まらない

残高証明書に載る評価額と、相続税の計算に使う評価額は同じとは限りません。

上場株式は、亡くなった日の終値と、その月・前月・前々月それぞれの毎日の終値の月平均額を比べて、いちばん低い額で評価します(国税庁 財産評価基本通達169)。

株価が下がっている局面では、死亡日の終値をそのまま使うと評価が高くなることがあります。

投資信託は基準価額をもとに評価しますが、商品の種類によって計算の扱いが変わります。

非上場株式は決算書や純資産の内容から評価するため、相続人が自分で数字を出せる範囲を超えます。

いずれも、残高証明書を請求するときに評価額の記載も依頼しておくと、その後の作業が軽くなります。

費用が増減する要素

手続き自体にかかる実費は、書類の通数で決まります。金額が動くのは次の点です。

  • 相続人の人数(戸籍・印鑑登録証明書の通数が増えます)
  • 口座がある証券会社の数(1社ごとに書類を用意します)
  • 非上場株式があるか(評価を税理士に依頼する費用が乗ります)
  • 戸籍のさかのぼりを自分でやるか、司法書士に頼むか

売ったときの税金は、故人の取得費を引き継ぐ

相続した株式を売ると、売却代金から取得費を引いた譲渡益に課税されます。

このときの取得費は、相続人が受け取った時点の値段ではなく、故人が買ったときの値段を引き継ぎます。

古い株で買値の記録が残っていないと、税負担が重くなる扱いになります。

取得費の調べ方と、売却まで含めた税金の考え方は相続した株の取得価格|売却したときの税金もあわせて解説で解説しています。

相続人全員の署名が要る手続きと、1人で進められる手続き

遺産分割が終わるまで、株式は相続人全員で共有している状態です。

移管も売却も、原則として相続人全員の署名押印がそろわないと進みません。

一方で、資料を集める段階の手続きは1人でできます。

  • 1人でできること … 死亡日時点の残高証明書の請求、ほふりへの開示請求、自分の相続放棄の申述、自分についての期間伸長の申立て
  • 全員の同意が要ること … 遺産分割協議書の作成、相続人名義への移管、移管後の売却の前提となる分け方の確定

連絡が取りにくい兄弟がいても、資料を集める段階は止まりません。全員に声をかける前に残高証明書を用意しておくと、話し合いが数字から始められます。

遺言があるときは、検認が要るかどうかを先に見る

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、封を開けずに家庭裁判所へ持ち込み、検認を受けます(民法1004条)。

公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が不要です。

証券会社に遺言書を提出する場合、検認済みであることを示す書類まで求められます。

遺言の内容が一部の相続人に偏っている場合は、最低限の取り分をめぐる請求の話になります。

請求できる人と割合は遺留分とは?請求できる人と最低限もらえる割合を解説で解説しています。

請求の期限は、相続の開始と侵害を知った時から1年です(民法1048条)。

遺産分割協議書に書くのは、銘柄と数量と口座

「株式は長男が取得する」だけでは、証券会社の窓口で足りないことがあります。

銘柄名・数量・預けている証券会社と口座番号まで特定して書き、売却代金を分ける場合はその旨も書き入れてください。

相続人全員が実印で押印し、印鑑登録証明書を添えます。

上場株式・投資信託・NISA・非上場株式で手続きが分かれる

同じ証券口座の中身でも、商品によって進め方が変わります。自分の家のケースがどれに当たるかは、残高証明書の銘柄欄で判断できます。

投資信託と外国株式

投資信託も、相続人名義の口座へ移すのが基本です。

ただし相続人の口座を開く証券会社がその銘柄を取り扱っていないと、移管できない場合があります。

外国株式や外貨建ての商品も同じで、取り扱いの有無と、外貨のまま移せるかを事前に確認する流れになります。

取り扱いがない場合の処理方法は証券会社ごとに違うため、窓口で書面の説明を受けてください。

NISA口座

NISAの非課税は、相続人が引き継げません。

名義人が亡くなると非課税の適用は終わり、死亡日の時価で相続人の課税口座へ移されます。

その後の値上がり分には課税されるため、生前に「非課税だから相続でも有利」と考えていた前提が外れます。

何がどこで切れるのかはNISAを相続するデメリット|非課税が引き継げない理由で解説しています。

非上場株式

親が会社を経営していた、あるいは取引先の株を持っていた場合、その株式は市場で売れません。

定款で譲渡に会社の承認が必要とされていることが多く、評価も決算書の中身を見る作業になります。

相続税の申告額に直結する部分なので、評価の段階から税理士に渡す前提で日程を組んでください。

証券会社に口座がない「特別口座」の株式

株券が電子化されたときに証券会社へ預け替えをしていない株式は、信託銀行などが管理する特別口座に残っています。

手続きの相手は証券会社ではなく、その株の株主名簿管理人です。

故人宛てに信託銀行から配当金計算書や株主総会の通知が届いていたら、この口座がある目印になります。

売却するには、いったん相続人の証券口座へ移す手続きが必要です。

株式の相続を放置すると、配当も売却も止まったままになる

名義が故人のままの株式は、配当金の受け取りも議決権の行使もできません。

値動きが続いても売れず、証券会社からの通知は届かないままになります。

相続人のうち誰かが亡くなれば、その人の相続人も加わって同意を集める相手が増えます。

時間がたつほど、手続きの難易度は上がっていきます。

税金の面でも動きます。

相続税の申告期限は10か月で、間に合わないと延滞税や加算税の対象になります。

さらに、申告期限までに分け方が決まっていない財産には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使えません。

どちらも適用を受けるには申告が必要な制度です(相続税法19条の2、租税特別措置法69条の4)。

申告のときに「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えておけば、分割が済んだあとに適用を受け直す道が残りますが、この判断は税理士に確認する段階です。

不動産も一緒に相続している場合は、相続登記の期限も並行します。

取得を知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。

2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です(不動産登記法76条の2)。

株式の話し合いと登記の準備は、同じ戸籍と協議書を使う場面が多いため、書類集めをまとめて進めるほうが効率的です。

よくある質問

亡くなった親の証券口座から、葬儀費用を出せますか

できません。

遺産分割前に相続人が単独で引き出せる仮払いの制度は預貯金だけの仕組みで、上限は1つの金融機関につき150万円です(民法909条の2)。

株式や投資信託には同じ制度がないため、当面の支払いは預貯金や相続人自身の資金から出す形になります。

相続人が証券口座を持っていないと手続きできませんか

受け皿になる口座が必要です。

株式や投資信託は相続人名義の口座へ移す手続きになるため、口座がなければ開設します。

故人と同じ証券会社に開くよう案内されることもあります。

売却して現金で受け取る場合も、移管が先で売却は後です。

ネット証券のIDとパスワードが分かるので、自分で売ってもよいですか

売らないでください。

相続財産を処分すると単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなります。

信用取引の残高や借入の有無が分からない段階では、放棄の選択肢を残しておくほうが安全側の判断になります。

他の相続人から無断処分を問われる材料にもなります。

株のまま分けるのと、売って現金で分けるのはどちらが簡単ですか

金額をそろえやすいのは売却して分ける方法で、売るタイミングを各自に任せられるのは株のまま分ける方法です。売って分ける場合は代表者1人の口座へまとめて移す手順になるため、遺産分割協議書に換価して分ける趣旨を書き入れておいてください。

相続税の計算では、いつの株価を使いますか

上場株式は、亡くなった日の終値と、その月・前月・前々月それぞれの毎日の終値の月平均額を比べ、いちばん低い額で評価します(国税庁 財産評価基本通達169)。残高証明書に載っている評価額と一致しないことがあるため、申告に使う数字は評価方法まで含めて確認してください。

未受領の配当金はどうなりますか

受け取っていない配当金も相続財産に含まれます。支払いの窓口と請求できる期間は発行会社の定款や株主名簿管理人の取り扱いで決まるため、故人宛てに届いた配当金領収証や計算書を手元に置いて、記載されている信託銀行に確認してください。

相続放棄をすると、株式はどうなりますか

放棄した人は最初から相続人でなかった扱いになり、株式を受け取る権利も債務を負う義務もなくなります。

放棄の申述は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ行います(民法915条)。

なお、相続税の基礎控除を計算するときの法定相続人の数には、放棄した人も含めます。

まとめ

株式と投資信託の相続は、預貯金のように解約して分ける形にはなりません。

相続人名義の口座へ移し、そこから売るか株のまま持つかを決める順番で、途中は相続人全員の署名がそろわないと止まります。

手元の資金が要る場面でも、150万円の仮払いは預貯金だけの制度です。

動かせるのは資料集めの部分で、残高証明書の請求や口座の特定は相続人1人でできます。

3か月・4か月・10か月の期限は起算日が亡くなった日ではないため、まず自分の起算日をカレンダーに書き込んでください。

ぜひ本記事の期限の表と書類の取り寄せ先一覧を参考に、死亡日時点の残高証明書の請求から始めてください。

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