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株の相続手続きの流れ|証券口座の名義変更に必要な書類

株の相続手続きの流れ|証券口座の名義変更に必要な書類

証券会社に死亡を伝えると、その時点で口座の取引が止まります。値動きが気になっても、相続人の名義へ移すまでは1株も売れません。

動く順番は、株がどこに何株あるかの特定から始まり、死亡日基準の残高証明書、相続人の確定と遺産分割、証券会社への書類提出と続きます。

相続税の申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内で、株の評価額もこの計算に入ります。

1社ごとに書類のやり取りで数週間かかることを見込むと、四十九日を過ぎてから動き出しても余裕はありません。

本記事では、株の相続手続きの4工程・証券会社に出す書類と取り寄せ先・名義変更が止まる場面を解説します。

株の相続手続きは名義変更まで4工程|10か月の期限から逆算する

やることは大きく4つに分かれます。

順番は入れ替えられません。

残高が分からなければ遺産分割の話ができず、分割の内容が決まらなければ証券会社は名義変更を受け付けないからです。

工程やること見込んでおきたい時間
1遺言書の有無を確認し、どの証券会社に何株あるかを特定する1〜2週間
2各証券会社に相続の連絡を入れ、死亡日を基準にした残高証明書を請求する1社ごとに1〜2週間
3戸籍を集めて相続人を確定し、遺産分割の内容を決める数週間〜数か月
4証券会社所定の相続手続依頼書と添付書類を提出し、相続人の口座へ移管する提出後さらに数週間

右の列の時間は会社によって差があります。

相続の連絡を入れる最初の電話で、書類が届くまでの日数と、提出から移管完了までの日数を聞いておいてください。

複数の会社にまたがっているなら、この2つの日数を会社ごとにメモしておくと、どこが遅れているのか分かります。

逆算の基準になるのは次の3つの期限です。

  • 相続放棄・限定承認は、自分が相続人だと知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する(民法915条)
  • 準確定申告は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内。故人に事業所得や一定の年金収入があった場合に必要
  • 相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内(相続税法27条)

株の評価額は相続税の計算に含まれるため、申告が必要になりそうなら残高証明書の請求を先に回します。

基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円です。

この額を超えなければ申告そのものが不要になります。

自分の家が線の内側なのか外側なのかは、基礎控除3,600万円が分かれ目になる仕組みで解説しています。

まず、どこに何株あるかを特定する

郵便物と預金の入出金から探す

最初の手がかりは郵便物です。

証券会社は取引残高報告書を定期的に送り、株主名簿を管理する信託銀行からは株主総会の招集通知や配当金の案内が届きます。

通帳に「配当金」の入金があれば、その銘柄を持っていた証拠になります。

ネット証券は紙が届かないので、メールの受信履歴と預金の入出金が頼りです。

この作業は遺品整理より先に手をつけてください。

通帳・キャッシュカード・有価証券の書類・印鑑と印鑑登録証を処分してしまうと、手続きが止まります。

片付け業者を入れる日が決まっているなら、その前に書類だけを段ボール1箱にまとめておくのが安全です。

まだ元気な親が残っているなら、口座の一覧を今のうちに書いてもらうほうが早く済みます。

何を書いておくかはエンディングノートに残す項目で解説しています。

証券会社が分からないときの照会と、信託銀行が管理する特別口座

心当たりの会社が見つからない場合は、株式の振替を管理する証券保管振替機構(通称ほふり)に、口座がある証券会社を照会する手続きがあります。必要書類と手数料は請求先で確認してください。

もう一方の探し場所が「特別口座」です。

株券が電子化されたとき、証券会社に預けていなかった株はここへ移されました。

管理しているのは証券会社ではなく信託銀行で、売買ができない口座になっています。

名義変更の申請先も信託銀行です。

1単元に満たない端数の株(単元未満株)も同じところで扱われることが多いため、招集通知の差出人が信託銀行だったら、証券会社とは別に連絡が必要だと考えてください。

株の相続手続きに必要な書類と取り寄せ先

提出用紙の書式は会社ごとに違いますが、添付する書類の中身はおおむね共通です。取り寄せ先が役所と法務局と証券会社に分かれているので、動く順番を決めてから請求します。

書類取り寄せ先注意点
故人の出生から死亡までつながる戸籍(除籍謄本・改製原戸籍謄本を含む)本籍地の市区町村転籍していると複数の役所にまたがります
相続人全員の戸籍謄本各人の本籍地の市区町村兄弟が遠方なら郵送請求を各自にお願いします
相続人全員の印鑑証明書各人の住所地の市区町村発行後の有効期限を会社ごとに指定されます
遺産分割協議書または遺言書相続人で作成、または保管場所から銘柄と株数、移管先まで書き込みます
相続手続依頼書(各社所定)証券会社・信託銀行相続の連絡を入れると書類一式が郵送されます

戸籍は死亡の記載があるものまでさかのぼって集める

証券会社が確認したいのは「相続人はこの人たちで全員か」です。

そのため、故人の最後の戸籍だけでは足りず、出生までつながる一連の戸籍が要ります。

結婚や転籍で本籍を移していれば、その分だけ請求先の役所が増えます。

郵送請求は往復で1〜2週間を見ておいてください。

手数料は市区町村で確認してください。

複数の証券会社に口座がある場合、同じ戸籍の束を順番に回すことになります。提出した原本を返してもらえるか(原本還付の扱い)を各社に聞いておくと、取り直しの費用と時間を節約できます。

印鑑証明書と遺産分割協議書は集める時期を揃える

印鑑証明書には有効期限の指定があるため、早く集めすぎると取り直しになります。戸籍がそろい、分割の内容が固まった段階で、相続人全員に同じ週で取ってもらうのが無駄がありません。

遺産分割協議書には、銘柄名と株数、どの相続人のどの口座へ移すのかまで書き込みます。

ひな形の文章をそのまま写すと、相続関係に合わない条項が残ることがあります。

売却して現金で分けるつもりなら、その旨と代金の配分割合も書いておいてください。

証券会社所定の相続手続依頼書は電話1本から始まる

証券会社への最初の連絡は、相続専用の窓口へ電話するか、ウェブの相続手続ページから申し込む形が一般的です。

連絡すると口座は取引停止になり、書類一式が郵送されてきます。

相続人全員の署名押印が必要な用紙と、代表相続人だけで足りる用紙があり、遺言書や遺産分割協議書があるかどうかで変わります。

届いた書類の「どこに誰の押印が要るか」を最初に確認しておけば、記入漏れで往復する回数が減ります。

株の名義変更は相続人の口座が受け皿になる

株は預金と違い、現金として振り込んで終わりにはなりません。

移管先として相続人自身の証券口座が要ります。

持っていなければ新しく開設することになり、同じ証券会社の口座を求められる場合もあります。

口座開設には本人確認書類などの提出があり、ここでさらに日数がかかります。

名義変更の申請と口座開設を並行して進めてください。

窓口へ行くのは代表相続人1人で足りることが多い

店舗を持たない会社は郵送だけで完結します。

店舗がある会社でも、相続の手続きは書類の郵送でやり取りする流れが中心です。

相続人全員がそろって出向く必要はほとんどありませんが、全員の署名押印は書面で必要になります。

連絡役として代表相続人を1人決め、質問と書類の受け取りをそこに集めると、行き違いが起きにくくなります。

窓口の受付は平日の日中に限られることが多いため、電話をかける時間帯も先に押さえておきましょう。

売って現金で分けるなら、順番は変えられない

1株ずつ人数で割ると端数が出て、その後の管理も面倒になります。

実務でよく取られるのは、代表相続人の口座へいったん全部を移して売却し、代金を分ける換価分割(かんかぶんかつ)です。

株をそのまま欲しい相続人がいるなら、その人が受け取って他の相続人に金銭を渡す代償分割(だいしょうぶんかつ)という形もあります。

どちらにしても、名義変更が終わるまでは売却できません。

相場が下がっているからと急いでも、工程を飛ばす方法はないと考えてください。

売却したときの税金は取得費の扱いが関わるので、金額が大きいなら税理士に相談する段階です。

葬儀費用の立て替えで当面の現金が足りないだけなら、株の売却を待つより預金からの仮払いのほうが早い場合があります。

引き出せる範囲は預金の仮払い制度の上限で解説しています。

手続きが止まるところと、専門家に渡す境目

止まるのは、全員の同意が要る場所

書類の不備は出し直せば済みます。

長く止まるのは、相続人の誰かの署名がもらえない場面です。

連絡が取れない相続人がいる、判断能力が落ちている、未成年である、海外に住んでいる——いずれも証券会社の窓口では解決しません。

相続人に認知症の人がいる場合は成年後見人を立てる話になり、費用の負担で兄弟が揉めることもあります。

誰がいくら払うのかは後見の費用を兄弟で決める方法で解説しています。

遺言書が出てきた場合は、種類の確認が先です。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、封を開けずに家庭裁判所の検認を受けます(民法1004条)。

公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が要りません。

遺言で株が1人に集められていて自分の取り分がないなら、遺留分侵害額請求という手があります。

ただし相続の開始と侵害を知った時から1年で時効です。

送り方と時効の数え方は遺留分の請求手順で解説しています。

1社だけで相続人が少なければ、自分で足ります

費用をかけるかどうかの目安は3点です。

証券会社が1社で、相続人が2〜3人で、相続税の申告が不要なら、書類を集めて郵送するだけの作業になります。

逆に、口座が複数の会社に散っている、不動産も一緒に分ける、基礎控除を超えて申告が必要になる、といった条件が重なると、期限の管理まで自分で背負うことになります。

渡す先は目的で分かれます。

相続税の申告と株の評価は税理士、相続人の間で争いがあるなら弁護士、不動産の相続登記が絡むなら司法書士です。

証券会社の名義変更そのものをどこまで代行してもらえるかは業務範囲が分かれるので、依頼するときに「証券口座の手続きも含むか」を確認してください。

自分で戸籍を集めて、申告だけを税理士に頼む形にすれば費用は抑えられます。

よくある質問

故人の口座のまま株を売ることはできますか

できません。

死亡を伝えた時点で口座は取引停止になり、相続人名義へ移すまで売買の注文は通りません。

値動きを理由に手続きを飛ばす方法はないため、名義変更を急ぐほうが結果として早くなります。

相続人が証券口座を持っていない場合はどうなりますか

移管先として新しく開設することになります。

同じ証券会社の口座を求められる場合もあるので、相続の連絡を入れるときに「どこの口座へ移せるのか」を確認してください。

口座開設にも日数がかかるため、書類集めと並行して進めるのがよいでしょう。

亡くなったことを証券会社に伝えないままにしていたらどうなりますか

口座が自動的に消えることはありませんが、名義が故人のままでは売却も出金もできません。

相続税の申告が必要な家庭では、10か月の期限に間に合わなくなる恐れがあります。

配当金の受け取りや株主総会の通知もそのまま続くため、放置している間に配当金領収証の受け取り期限が過ぎることもあります。

株の評価額はどうやって調べればいいですか

まず各証券会社に、死亡日を基準にした残高証明書を請求してください。

銘柄と株数が確定します。

相続税の評価額の計算方法は銘柄の値動きの取り方で変わるため、申告が必要になりそうな規模なら税理士に渡す部分です。

相続人が自分で計算した金額で申告して、後から差額を指摘されるほうが負担は大きくなります。

信託銀行から通知が来ている株も、証券会社と同じ手続きですか

申請先が違います。

証券会社に預けていない株は信託銀行の特別口座で管理されているため、その信託銀行へ別に連絡してください。

必要書類の中身は似ていますが、用紙は各社所定のものになります。

証券会社の手続きだけで終わったと思い込むと、この分が名義変更されずに残ります。

まとめ

株の相続手続きは、所在の特定・残高証明書・相続人の確定と遺産分割・証券会社への提出という4工程で進みます。

順番を飛ばせないので、遅れが出るのは書類を集める段階ではなく、相続人全員の署名が必要な場面です。

相続税の申告が必要になりそうなら、相続の開始を知った日の翌日から10か月という期限から逆算して、残高証明書の請求を先に回してください。

手を動かす最初の一歩は郵便物の確認です。ぜひ本記事の4工程の表と必要書類の一覧を参考に、取引残高報告書と配当金の案内を探すところから始めてください。

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