相続税はいくらから?基礎控除3,600万円からの計算方法

銀行で残高証明を取り、実家の固定資産税の納税通知書を引っ張り出したところで手が止まります。この額で相続税がかかるのかどうか、判断する基準が見当たらないからです。
相続税がかかるかどうかの分かれ目は、基礎控除の額です。
3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算するので、相続人が1人なら3,600万円、3人なら4,800万円になります(相続税法15条)。
遺産の総額がこの額を超えなければ、申告そのものが不要です。
ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額を0円にする場合は、申告をしなければ特例が使えません。
本記事では、3,600万円という下限の意味・法定相続人の数え方・速算表を使った税額の出し方・10か月の申告期限まで解説します。
相続税がいくらからかかるかは、基礎控除3,600万円が下限
相続税は遺産の総額すべてにかかるのではなく、基礎控除を超えた部分にだけかかります。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
相続人が1人しかいない場合でも3,000万円+600万円で3,600万円が確保されるため、この額が「いくらから」の下限になります。
なお本記事で扱う税率と控除額は、国税庁 タックスアンサーNo.4155(国税庁/2026年9月時点)によります。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | 相続人の例 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 子1人(配偶者は既に他界) |
| 2人 | 4,200万円 | 配偶者と子1人 |
| 3人 | 4,800万円 | 配偶者と子2人 |
| 4人 | 5,400万円 | 配偶者と子3人 |
| 5人 | 6,000万円 | 配偶者と子4人 |
遺産の総額が表の額以下であれば、税務署への申告は要りません。手続きを何もせずに済むという意味ではなく、相続税についてだけは動かなくてよい、という意味です。
ここで注意したいのが、2015年より前の数字が今も検索結果に残っている点です。
改正前の基礎控除は5,000万円+1,000万円×人数で、相続人3人なら8,000万円ありました。
古い記事を見て「うちは関係ない」と判断すると、4,800万円との差額3,200万円分を見落とします。
誰に相続税がかかるのかという線引きそのものは、相続税は誰にかかるのかでも解説しています。
基礎控除を動かすのは法定相続人の数と、自宅の土地の評価
基礎控除は600万円刻みで動きます。相続人が1人増えるか減るかで、課税されるかどうかがひっくり返ることもあるため、まず人数を確定させてください。
配偶者は常に相続人、子がいなければ親、親もいなければ兄弟姉妹
法定相続人の顔ぶれは民法で決まっていて、話し合いで増やしたり減らしたりはできません。
- 配偶者は、他に誰がいても常に相続人になります
- 第1順位は子です。子が先に亡くなっていれば、その子(孫)が代わりに相続します
- 子がいなければ第2順位の直系尊属(父母や祖父母)が相続人です
- 直系尊属もいなければ、第3順位の兄弟姉妹に移ります
前妻との間の子や認知した子も第1順位に入ります。戸籍を出生まで遡って集めるのは、この人数を動かしようのない形で確定させるためです。
相続放棄をしても、基礎控除の人数からは外れない
兄弟の1人が相続放棄をしても、基礎控除の計算に使う人数は減りません(相続税法15条2項)。
放棄した人は財産を受け取らないだけで、人数のカウントには残ります。
3人兄弟のうち1人が放棄しても、基礎控除は4,800万円のままです。
放棄そのものは家庭裁判所への申述が要る手続きで、期限は自分が相続人だと知った時から3か月です。
申述の流れは相続放棄の手続きと必要書類で解説しています。
自宅の土地は330平方メートルまで8割減らせる
遺産の側にも、金額を大きく動かす仕組みがあります。
被相続人が住んでいた宅地は、330平方メートルまで評価額を80%減額できます(小規模宅地等の特例)。
5,000万円と評価された土地が1,000万円になるため、これだけで基礎控除以下に収まる家庭もあります。
ただし、同居していなかった親族が使うには「家なき子」と呼ばれる要件を満たす必要があります。
実家を出て持ち家に住んでいる子が相続する場合は、適用されないこともあると考えてください。
そして、この特例を使うには申告が欠かせません。
計算の結果が0円でも、申告書を出さなければ特例は認められないという点が、基礎控除との決定的な違いです。
相続税の計算は3ステップ|速算表は法定相続分に当てはめる
税額を出す手順は3つに分かれます。遺産の総額から基礎控除を引いて課税遺産総額を出し、それを法定相続分どおりに分けたものとして各人の税額を計算し、合計してから実際に取得した割合で振り分けます。
速算表を1人の取得額に直接当てない
誤りが起きやすいのが2段階目です。
速算表は、各相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定した金額に当てはめます。
実際には長男が全部相続する場合でも、いったんは法定相続分で割った額に税率をかけ、出てきた税額を合計してから取得割合で振り直します。
1人の取得額にいきなり税率をかけると、税額は実際より大きく出ます。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
税率は超過累進で、遺産全体に最高税率がかかるわけではありません。
基礎控除を差し引いた後の金額が1,000万円なら、かかるのは10%の部分だけです。
課税価格を出すところからの詳しい手順は、相続税の計算方法を3ステップでで解説しています。
税額が0円でも申告が要る場合と、10か月の起算日
申告が不要になるのは、遺産が基礎控除以下に収まったときだけです。特例を使って0円にした場合は、申告して初めてその特例が適用されます。
配偶者の税額軽減は、配偶者が取得した遺産のうち法定相続分か1億6,000万円のいずれか多い額までは相続税がかからないという仕組みです(相続税法19条の2)。
額が大きいため、配偶者が中心に相続する家庭では税額が0円になることがよくありますが、これも申告が前提です。
小規模宅地等の特例も同じで、使うなら申告書を出します。
期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。
四十九日と納骨で3か月ほど過ぎ、戸籍集めと残高照会でさらに時間を使うため、土地の評価や遺産分割に回せる期間はそれほど残りません。
期限を過ぎたときの加算税の扱いは相続税の申告期限と加算税で解説しています。
相続税とは別の期限も動いています。
相続登記は、不動産を取得したと知った日から3年以内が義務で、怠ると10万円以下の過料の対象です。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日になります。
実家の名義が祖父のままだったという家庭は、相続税の判定と並行して登記簿の甲区を確認してください。
相続税を誰が払うのか、どこから税理士に渡すか
納めるのは相続人それぞれで、負担する額は実際に取得した財産の割合に応じて決まります。
現金をほとんど相続しない人に高額な税額が割り振られると、納税資金が足りなくなります。
実家を継ぐ人と預金を受け取る人が分かれる場合は、分け方を決める段階で税額の見当を付けておくほうが揉めません。
兄弟で話す前に机の上に出す数字
金額の話が感情の話にすり替わるのは、誰も遺産の総額を知らないまま話し始めるからです。話し合いの前に、次の資料を揃えてください。
- 各金融機関の残高証明書(死亡日時点の残高)
- 実家の査定額(不動産会社の査定書)
- 固定資産税の納税通知書に付いている課税明細書
- 登記事項証明書(名義と抵当権の有無を確認する)
査定額は売るときの目安で、相続税の計算に使う評価額とは別の数字です。それでも、基礎控除を超えそうかどうかの当たりを付ける材料にはなります。
ここまでの計算を自分の数字でやるなら、相続税シミュレーターが使えます。法定相続分の按分と速算表の当てはめまで自動で計算します。
自分でできる範囲と、税理士に渡す範囲
戸籍の収集、残高証明の取得、生命保険や証券会社への照会は、時間さえあれば相続人自身でできます。
判断が割れるのは土地の評価です。
形がいびつな土地や、複数の道路に面した土地、貸している土地は評価方法が変わり、ここで金額が数百万円単位で動きます。
小規模宅地等の特例が使えるかどうかの判定も同じで、ここから先は税理士の仕事です。
報酬の目安や、相続税の申告を多く扱っているかどうかの見極め方は相続税に強い税理士の選び方で解説しています。
なお、相続した空き家を売ったときの譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度もありますが、これは相続税ではなく売却時の所得税の話です。
1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象になります。
よくある質問
遺産が3,600万円ちょうどなら相続税はかかりますか
相続人が1人なら基礎控除が3,600万円なので、課税される部分は0円になり、申告も不要です。
ただし遺産の総額には預金や不動産だけでなく、他の財産も含めて計算します。
総額が控除額のすぐ近くにある場合は、漏れがないかを確認してから判断してください。
相続放棄した人がいると、基礎控除は減りますか
減りません。
基礎控除の計算では、相続放棄をした人も法定相続人の数に含めます(相続税法15条2項)。
3人兄弟の1人が放棄しても、基礎控除は4,800万円のままです。
遺産が基礎控除以下なら、何もしなくていいですか
相続税の申告だけは不要になります。
預貯金の解約、不動産の名義変更、公共料金の契約変更は別に進める必要があります。
とくに相続登記は3年以内という期限があり、過料の対象になる手続きです。
配偶者が全部相続すれば相続税はかからないのですか
配偶者の税額軽減により、法定相続分か1億6,000万円のいずれか多い額までは配偶者に相続税がかかりません。
適用には申告が必要です。
また、その配偶者が亡くなったときの相続では相続人が1人減るため、基礎控除も600万円下がります。
一次相続だけを見て決めるかどうかは、税理士に相談する段階の論点になります。
相続税の申告は自分でできますか
遺産が預貯金だけで、評価に迷う土地がない場合は、税務署の相談窓口を使いながら自分で作成する人もいます。一方、自宅の土地に小規模宅地等の特例を当てるかどうかが絡む場合や、事業用の資産や非上場株式がある場合は、評価の段階で判断が必要になります。
まとめ
相続税がかかるかどうかは、遺産の総額と基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数を比べるところから始まります。
相続人1人なら3,600万円、3人なら4,800万円が分かれ目で、これを下回れば申告は要りません。
超えている場合は、課税遺産総額を法定相続分で割ってから速算表に当てはめ、合計した税額を実際の取得割合で振り分けます。
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、使えば税額が0円になることもある
一方、申告しなければ適用されません。
期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月です。
ぜひ本記事の基礎控除の早見表と速算表を参考に、残高証明と固定資産税の課税明細を手元に置いて、自分の家がどちら側にあるかを確かめてください。


