エンディングノートは無料でもらえる?配布先と入手方法

市区町村の窓口に「エンディングノート」の棚が置かれていることがあります。
地域包括支援センターや社会福祉協議会でも、終活の冊子を無料で配っている自治体があります。
ページ数は数十ページ、書き込み欄は預金・保険・連絡先・医療の希望と、市販品と大きく変わりません。
ただし配布の有無も内容も自治体ごとに違い、全国一律の制度ではありません。無料で手に入るものと、お金を払って買うものの差は、紙質やページ数ではなく「どこまで書き込む欄があるか」に出ます。
本記事では、無料で配っている窓口の探し方・無料と市販の中身の差・ノートで足りることと遺言書に回すことの線引きまで解説します。
無料で手に入るかは、住んでいる市区町村で決まります
エンディングノートは法律で作成が義務づけられた書類ではなく、様式も国が定めていません。
そのため「どの自治体でも無料でもらえる」とは言えず、逆に「配っている自治体は一つもない」わけでもありません。
配布しているところでは高齢福祉課や長寿支援課の窓口に置かれ、住民であれば1冊を無料で受け取れる形が一般的です。
探す順番は、まずお住まいの市区町村のホームページで「エンディングノート」「終活」「わたしの覚え書き」といった語を検索することです。
冊子名は自治体ごとに違い、「終活ノート」「わたしの終活ノート」「もしもノート」など呼び方が分かれています。
ページが見つからなければ、高齢福祉の担当課に電話で在庫を確かめるほうが早いです。
窓口以外の入手先もあります。
地域包括支援センター、社会福祉協議会、市民活動センター、図書館の福祉コーナーに置いている例があります。
金融機関や葬儀社が来店者向けに配っていることもありますが、こちらは相談の申し込みが前提になっている場合があるため、受け取る前に条件を聞いてください。
なお、自治体の冊子は在庫がなくなると次年度まで補充されないこともあります。窓口配布とあわせてPDFをホームページに掲載している自治体もあり、その場合は自宅で印刷して使えます。
エンディングノートと遺言書は、法的な効力がまったく違います
無料か有料かを考える前に、押さえておきたい線引きがあります。
エンディングノートに書いたことには、法的な効力がありません。
「預金は長女に」と書いても、それだけで遺産の分け方は決まりません。
財産の分け方を自分の意思で決めたいなら、民法の定める方式にしたがった遺言書が必要です。
自筆証書遺言は本文を全文自筆で書きます。
2019年1月13日からは、添付する財産目録だけはパソコン作成や通帳のコピーでよくなりましたが、各ページへの署名押印が要ります。
この遺言は家庭裁判所の検認を受ける決まりで、封を開けずに持ち込みます(民法1004条)。
一方、公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が不要です。
保管制度の手数料は1件3,900円です(法務省 遺言書保管所/2026年9月時点)。
この違いを踏まえると、役割分担がはっきりします。
ノートには家族が探すのに困る情報を書き、財産の分け方は遺言書で決めるという形です。
ノートに希望を書いておけば、遺言書を作るときの下書きにもなります。
エンディングノートそのものの役割と項目立てについては、エンディングノートとは?書くべき項目と役割で解説しています。
無料のエンディングノートと市販品で違うのはどこか
紙の質やデザインの差は、書き終えられるかどうかにほとんど関係しません。差が出るのは書き込み欄の設計です。
自治体配布の冊子が得意なこと
自治体の冊子は、地域の相談窓口の一覧や、介護保険の申請先、救急時に搬送先へ伝えたい情報の欄が入っていることがあります。
住んでいる地域の連絡先がそのまま載っているのは、市販品には作れない強みです。
医療や介護の希望を書く欄も、地域の実情に合わせて作られています。
市販のノートが得意なこと
市販品は、金融資産の一覧やデジタル関係のIDの整理、保険証券の管理といった財産まわりの欄が細かく分かれている傾向があります。
ページ数も多く、書き足す余白が確保されています。
財産の種類が多い人や、不動産を複数持っている人は、無料の冊子だと欄が足りなくなることがあります。
PDFを印刷して使う場合
自治体が公開しているPDFなら、必要なページだけを印刷して使えます。
書き損じたら同じページを刷り直せるので、鉛筆で下書きしてから清書したい人には向いています。
半面、綴じられていないためページが散らばりやすく、封筒やクリアファイルでまとめる手間が要ります。
どのノートが自分に合うかの見分け方は、エンディングノートはどう選ぶ?書きやすさで選ぶ視点で解説しています。
費用がかかるとしたら、ノート代ではなく書いた後の手続きです
ノート自体は無料か、市販品でも書店で買える価格帯です。金額として本当に構えておく必要があるのは、ノートに書いた希望を実行する段階の費用です。
たとえばお墓の希望をノートに書くとして、実際にかかる金額は形式で大きく変わります。
鎌倉新書の第17回お墓の消費者全国実態調査では、樹木葬が平均71.7万円、納骨堂が81.5万円、一般墓が152.0万円という結果でした(2026年1月時点・有効回答1,267件)。
「散骨でいい」「樹木葬にしたい」と書くだけでは、家族はいくら用意すればいいのか分かりません。
葬儀についても、亡くなった後に受け取れるお金があります。
国民健康保険や後期高齢者医療の加入者が亡くなると葬祭費が、健康保険の被保険者が亡くなると埋葬料が支給されます。
健康保険の埋葬料は一律5万円ですが、国民健康保険の葬祭費は市区町村の条例で額が決まるため、金額はお住まいの市区町村で確認してください。
ノートに希望だけを書いて費用の目算を書かないと、家族は判断できません。希望の欄の横に「この費用はこの口座から」と一行足しておくだけで、実行できる指示に変わります。
エンディングノートを書く順番は、家族が困る順に決めます
買ったまま1ページ目で止まる原因のほとんどは、最初のページが自分史や生い立ちの欄になっていることです。
過去を書き出すのは時間がかかり、しかも急がない情報です。
順番を入れ替えてください。
先に書くのは次の3つです。
- 取引のある金融機関と口座の一覧(残高は書かなくてよい)
- 加入している保険の会社名と証券番号
- 訃報を知らせてほしい人の名前と連絡先
この3つがあれば、家族は手続きの入口に立てます。
逆にここが空欄だと、通帳を探して家中を開ける作業から始まります。
遺品整理で処分してしまうと相続の手続きが止まるものには、通帳・キャッシュカード・保険証券・年金手帳・不動産の権利証と登記識別情報・遺言書・印鑑と印鑑登録証・貸金庫の鍵と契約書があります。
どこにしまっているかを書いておけば、この探し物がなくなります。
3つを書き終えたら、医療と介護の希望、お墓と葬儀の希望、デジタル関係のIDへ進んでください。
自分史や家族へのメッセージは最後で構いません。
途中で止まらない書き進め方は、エンディングノートはどう書く?途中で止まらない順番で解説しています。
項目ごとの中身はエンディングノートに何を書く?書くべき項目を一覧で確認で確認できます。
相続の期限は、ノートの有無に関係なく走り始めます
エンディングノートに期限はありません。
ただ、亡くなった後の手続きには法律で切られた期限があり、これは家族が事情を把握しているかどうかに関係なく進みます。
ノートを書く価値は、この期限に間に合わせやすくなることにあります。
| 手続き | 期限 | 起算日 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 7日以内 | 死亡の事実を知った日 |
| 年金の受給停止 | 厚生年金10日以内・国民年金14日以内 | 死亡日 |
| 世帯主変更届 | 14日以内 | 死亡日(15歳以上が2人以上残る場合) |
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 自分のために相続の開始があったことを知った時 |
| 準確定申告 | 4か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続登記 | 3年以内 | 不動産を取得したことを知った日 |
とくに注意したいのが相続放棄の3か月です。
起算日は亡くなった日ではなく、自分が相続人だと知った時です。
借入金がありそうな場合、この3か月のうちに財産と負債を把握しなければ判断できません。
期間内であれば家庭裁判所に伸長を申し立てられますが、負債の有無すら分からない状態で申し立てるのは大変です。
ノートに借入の有無と借入先を書いておくと、この判断が早くなります。
相続税は基礎控除以下なら申告そのものが不要です。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円になります。
自分の場合にかかるのかどうかは、相続税は誰にかかる?基礎控除が分かれ目になるで解説しています。
エンディングノートに書いても、家族の同意が別に必要なもの
ノートは自分ひとりで書ける書類です。しかし、書いた内容を実行する段階では、自分以外の人の同意や手続きが要るものがあります。
お墓と仏壇、位牌は祭祀(さいし)財産と呼ばれ、相続財産とは別に1人が引き継ぎます(民法897条)。
指定がなければ慣習にしたがい、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
ノートに「墓は長男に」と書いておくのは、この指定として意味があります。
ただ、引き継ぐ側が承知していないと引き受けを断られる場面が出てきます。
書くだけでなく、本人に伝えてください。
お墓を移す場合はもっと手続きが増えます。
遺骨を別の場所へ移すには、現在の墓地がある市区町村が発行する改葬許可証が必要です。
申請には受け入れ先の受入証明書と、現在の墓地管理者の埋葬証明書が要るため、受け入れ先が決まらないと申請できません。
許可証なしに遺骨を移すのは墓地埋葬法違反です。
寺院の墓地から出る場合、離檀料を請求される例があります。
法律上の支払義務を定めた規定はありませんが、実際に請求されることはあるため、金額と根拠を書面で確認してください。
相場として断定できる公的統計はありません。
実家の扱いも、自分だけでは決められません。売るのか誰かが住むのかは相続人の間で決めることになるため、ノートには「こうしてほしい」という希望と、その理由を書くにとどめます。
身元保証や死後の手続きを頼む相手がいない場合
配偶者も子もおらず、頼れる親族が近くにいない場合、ノートに希望を書いても実行する人がいません。入院時の身元保証、施設入居の連帯保証、亡くなった後の手続きを引き受ける事業者に依頼する選択があります。
この種のサービスは、契約時にまとまった預託金を預ける仕組みが多いです。
事業者が破綻したときに預けたお金が戻らない事例が過去にあったため、預託金がどこでどう管理されているかを契約前に確かめてください。
事業者選びで見るべき点は、身元保証会社はどう選ぶ?預託金の管理方法で見極めるで解説しています。
親族はいるけれど遠方という場合は、ノートの保管場所を伝えておくだけでも状況が変わります。書いた事実を誰も知らないノートは、家の片づけが終わってから見つかることになります。
配布を待たずに今日から書き始めるなら、エンディングノート(Web版)が登録なしで使えます。書き終えたら印刷できます。
書かないまま先延ばしにすると、家族の負担はこう増えます
ノートを書かなかったことに罰則はありません。増えるのは家族の手間と、場合によっては金額です。
取引先の分からない口座は、相続人が金融機関へ一軒ずつ照会をかけて探すことになります。
証券会社や地方銀行を複数使っていれば、その分だけ照会が増えます。
保険も同じで、証券番号が分からなければ請求までに時間がかかります。
実家の扱いを決めないまま放置した場合の影響は、金額として出てきます。
総務省の住宅・土地統計調査では、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高でした(2023年時点)。
倒壊のおそれや衛生上有害な状態にあると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがあると「管理不全空家」に指定されます。
勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れます。
放置すれば自動で税額が上がるのではなく、指定と勧告の段階を踏む仕組みです。
売却を考える場合、相続した空き家を売ったときの譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。
1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、2027年12月31日までの譲渡が対象です。
相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります。
期限のある特例なので、実家をどうするかを決める時期そのものが金額に関わってきます。
住む人がいない家を手放す方法としては、自治体の空き家バンクに登録する道もあります。
使い方と登録の条件は空き家バンクとは?登録の条件と使い方で解説しています。
よくある質問
エンディングノートは市役所に行けばもらえますか
配布している自治体では、高齢福祉の担当課の窓口で受け取れます。
ただし全国一律の制度ではないため、配布していない自治体もあります。
ホームページで冊子名を検索するか、担当課に電話で在庫を確かめてください。
無料のエンディングノートでも法的な効力はありますか
無料でも有料でも、エンディングノートに法的な効力はありません。
財産の分け方を決めたい場合は遺言書が必要です。
ノートは家族へ情報を伝えるための書類だと考えてください。
PDFを印刷したものでも問題ありませんか
問題ありません。
エンディングノートに定められた様式はないため、印刷したものでも、市販のノートに自分で項目を書いたものでも構いません。
散らばらないようにファイルにまとめておくと、家族が見つけやすくなります。
書いたエンディングノートはどこに保管すればいいですか
金庫の奥にしまうと見つかりません。
家族が普段開ける場所に置き、置き場所を1人以上に伝えておいてください。
IDやパスワードを書いたページだけを別に分けておく方法もあります。
全部埋めないと意味がないのでしょうか
空欄が残っていても役に立ちます。
金融機関の一覧、保険の証券番号、連絡先の3つが埋まっていれば、家族は手続きの入口に立てます。
残りは後から足していく形で構いません。
親に書いてもらいたいのですが、どう切り出せばいいですか
「書いて」と渡すより、自分の分を先に書き始めて見せるほうが話しやすくなります。
自治体の冊子を2冊もらってきて、片方を自分で埋めるという入り方もあります。
医療や介護の希望から聞くと、財産の話より切り出しやすいです。
エンディングノートと遺言書はどちらを先に作りますか
ノートを先に書くほうが進みます。財産の全体像が分からないまま遺言書は作れないため、まずノートで持っているものを並べ、分け方を決める段階で遺言書に移ってください。
まとめ
エンディングノートは配布している自治体の窓口で無料で受け取れますが、全国一律の制度ではないため、まずお住まいの市区町村のホームページと高齢福祉の担当課を確かめるところから始まります。無料の冊子と市販品の差はページ数ではなく書き込み欄の設計にあり、財産の種類が多い人は市販品のほうが欄が足りるという判断になります。
どちらを使う場合も、法的な効力がないという点は同じです。
財産の分け方を決めたいなら遺言書に移り、ノートには家族が探すのに困る情報を書いてください。
金融機関の一覧、保険の証券番号、連絡先の3つが埋まっていれば、それだけで家族は手続きの入口に立てます。
ぜひ本記事の「先に書く3つ」と期限の一覧表を参考に、まず1ページ目を飛ばして口座の欄から書き始めてください。


