SHARE:

おひとりさまの終活本の選び方|読む前に決めておくこと

おひとりさまの終活本の選び方|読む前に決めておくこと

終活本を買って1か月、付箋が貼ってあるのは目次だけという状態で止まります。ページをめくるたびに宿題が増えて、どこから手をつけるかが決まらないからです。

おひとりさまの場合、本に並ぶ項目のうち先に決めないと動かないのは3つです。入院や施設入居のときに名前を書く人と、亡くなったあとの手続きを頼む相手、それに財産と契約の所在を書き残す先になります。

2020年7月10日に始まった法務局の自筆証書遺言書保管制度のように、読むだけでは終わらず窓口へ行く項目も混じっています。本記事では、終活本が1ページ目で止まる詰まり方・先に紙へ書き出す3項目・発行年と書式の付き方で本を見分ける方法を解説します。

おひとりさまの終活本が1ページ目で止まる3つの詰まり方

同じ本を読んでも、止まる場所は人によって違います。自分がどこで止まっているかが分かると、次に買う本ではなく次にやることが決まります。

項目の数に対して、順番が書かれていない

終活本の多くは、財産・医療・介護・住まい・お墓・デジタルデータと、領域ごとに章を分けた作りになっています。

網羅されているぶん、読者の側では「どれが先か」が判断できません。

実際には期限のある項目とそうでない項目が混ざっていて、急ぐものはごく一部です。

全章を順番に埋めようとすると、埋まらない章で手が止まります。

家族がいる前提の記入欄が埋まらない

記入欄が「配偶者」「子どもの連絡先」「家族へのメッセージ」から始まっている本は、おひとりさまが最初の見開きで詰まります。

空欄のまま進むと、自分には関係のない本を買ってしまったように感じるかもしれません。

ただ、埋まらないのは欄の設計が合っていないだけです。

おひとりさまに要るのは、家族の欄ではなく、家族以外の誰に何を頼むかを書く欄になります。

読んでも終わらず、契約が必要な項目に当たる

入院時の身元保証、施設入居の連帯保証、亡くなったあとの葬儀や部屋の片づけといった項目は、本を読んでノートに書くだけでは動きません。

どれも生きているうちに誰かと契約を結んでおく話で、本が扱えるのは仕組みの説明までです。

ここに当たって止まっている人は、本を買い替えても同じ場所で止まります。

止まっている場所次にやること
章が多くて順番が決まらない紙1枚に3項目だけ書き出す
家族の記入欄が埋まらない家族以外を前提にした書式の本に替える
身元保証や死後の手続きの章で止まった契約先を探す段階へ移る

身寄りがない場合に備える中身そのものは、おひとりさまの終活で備えることで解説しています。

読む前に紙1枚へ書き出す3項目|名前を書く人・頼む相手・所在

本を選ぶ作業より先に、この3つを紙に書いてください。

空欄が残っても構いません。

空欄がどこかが分かれば、その章が厚い本を選べます。

入院と施設入居で名前を書く人

入院の手続きや施設の入居契約では、本人以外の署名を求められることがあります。

頼める相手がいるなら名前と連絡先を、いないなら「いない」と書きます。

ここが空欄のままだと、いざ入院が決まってから探すことになり、選ぶ余裕がなくなります。

身元保証を業者や法人に頼む場合の費用の考え方は、おひとりさま終活の費用の目安で解説しています。

亡くなったあとの手続きを頼む相手

死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村へ出します(戸籍法86条)。

年金の受給停止は厚生年金で10日以内、国民年金で14日以内です。

こうした期限のある届出を、自分では出せません。

誰が出すのかを決めておかないと、手続きが止まったまま時間が過ぎます。

親族に頼むのか、専門家と死後事務の委任契約を結ぶのか、方向だけ書いておけば十分です。

財産と契約の所在

金額の一覧より先に、どこに何があるかを書くほうが役に立ちます。処分されると手続きが止まるものは、次のとおりです。

  • 通帳とキャッシュカード
  • 保険証券と年金手帳
  • 不動産の権利証や登記識別情報
  • 遺言書
  • 印鑑と印鑑登録証
  • 貸金庫の鍵と契約書
  • 有価証券と借用書

この3項目を書く場所としてエンディングノートを使うなら、項目立ての考え方をエンディングノートに書くべき項目で解説しています。

おひとりさまの終活本は、発行年と書式の付き方で見分ける

ランキングの順位では、自分の詰まり方に合うかどうかが分かりません。書店でも通販でも確認できる情報から、3点だけ見ます。

奥付の発行年と、反映されている改正

相続と遺言の制度は、ここ数年で続けて変わりました。奥付の発行年が下の日付より古い本には、その改正が載っていません。

時期変わったこと
2019年1月13日自筆証書遺言に添付する財産目録がパソコン作成や通帳コピーで可(各ページに署名押印が必要。本文は全文自筆のまま)
2020年7月10日法務局の自筆証書遺言書保管制度が開始。手数料は1件3,900円で、検認が不要になる
2024年4月1日相続登記が義務化。取得を知った日から3年以内、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料。それ以前に相続した不動産も対象で期限は2027年3月31日

古い本が役に立たないわけではありません。ただ、遺言や不動産の章を頼りにするつもりなら、改正後の版を選んでください。

著者が誰で、どの章が厚いか

司法書士や行政書士が書いた本は書類と契約の章が厚く、税理士なら財産の評価と申告、葬儀やお墓の実務者なら供養と費用の章が詳しくなります。

どれが優れているという話ではなく、自分が止まっている章と重なっているかで選びます。

身元保証の章で止まった人が税金に強い本を買っても、その章は数ページで終わります。

記入欄が家族以外を前提にしているか

おひとりさま向けを名乗る本でも、書式は家族向けの流用ということがあります。

目次と記入例のページを開いて、頼む相手を「家族」以外で書ける欄があるかを見てください。

委任契約の相手方、緊急連絡先として選んだ知人、管理を任せる専門家といった欄が用意されている本は、そのまま3項目の受け皿になります。

終活本には書いてあっても、契約書がないと動かないこと

本で仕組みを理解した時点では、まだ何も決まっていません。おひとりさまの終活で書面が必要になるのは、主に次の3つです。

身元保証と死後事務は生前の契約で決まる

入院や入居のときに立ち会う役目と、亡くなったあとの届出・葬儀・部屋の片づけを頼む役目は、それぞれ別の契約です。

どちらも本人が判断できるうちに結ぶもので、ノートに希望を書いただけでは相手に義務が生じません。

契約の範囲、預けるお金の管理方法、解約するときの返金の扱いは事業者ごとに違うため、書面で確認してください。

遺言は方式で扱いが変わる

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要です(民法1004条)。

封がされていれば開けずに持ち込みます。

公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が不要です。

終活本の付録に書式や文例が載っていても、自筆証書の本文は全文自筆という要件が残ります。

文例を印刷して署名する形では、方式を満たさないおそれがあります。

お墓と仏壇は相続財産と別に引き継がれる

墓・仏壇・位牌といった祭祀(さいし)財産は、相続財産とは別に1人が引き継ぎます(民法897条)。

指定がなければ慣習によることになり、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。

引き継ぐ人が見当たらないなら、今あるお墓をどうするかまで書いておく必要があります。

なお遺骨を別の場所へ移すには、現在の墓地がある市区町村の改葬許可証が要り、受け入れ先が決まらないと申請できません。

本を読み比べても進まないとき、おひとりさまが専門家へ渡す境目

読む量を増やしても進まない段階があります。よく勧められるものの、そこからは動かない対処を先に挙げます。

買い足しと全項目の記入では進まない

  • 2冊目、3冊目を買う(止まっている章が同じなら、同じ場所で止まります)
  • チェックリストを上から全部埋めようとする(空欄が残るたびに手が止まります)
  • 無料の相談会で、その日のうちに契約まで決めてしまう(契約内容を持ち帰って読む時間がなくなります)
  • 口コミの評価だけで身元保証や死後事務の相手を選ぶ(費用の内訳と返金の条件は口コミに載りません)

相談先の種類ごとの違いは、終活は誰に相談するかで解説しています。

渡す相手は、残っている空欄で決まる

紙1枚の3項目のうち、埋まらない欄が判断の材料になります。

遺言の書き方と不動産の名義で止まっているなら司法書士や公証役場、財産の評価や申告の見通しなら税理士、親族との間で言い分が対立しているなら弁護士という分かれ方です。

身元保証や死後事務の契約先を探す段階では、市区町村の高齢者福祉の窓口で扱いを聞けます。

制度の運用は自治体ごとに違うので、お住まいの市区町村に確認してください。

亡くなったあとの手続きを頼む場合

死後の事務をまとめて任せたいなら、対応範囲と費用を書面で比べる段階に入ります。

どこまでを引き受けるかは事業者で差があり、預り金の管理方法も一律ではありません。

比べ方は相続手続き代行の費用と対応範囲で解説しています。

よくある質問

おひとりさまの終活本は何冊買えばよいですか

まず1冊で足ります。

2冊目を買うかどうかは、1冊目で止まった章が決めます。

身元保証や死後事務の章が数ページしかなかったなら、その領域を専門にした本を足す意味があります。

同じ構成の本を並べても、埋まらない欄は埋まりません。

終活本とエンディングノートは、どちらを先に用意しますか

順番はどちらでも構いません。

書く欄が決まっているものが先にあると手が動きやすい人もいます。

始める時期の目安はエンディングノートをいつから書くかで解説しています。

終活本に付いている遺言の文例をそのまま使えますか

自筆証書遺言の本文は全文自筆という要件があるため、文例を印刷して署名する形では方式を満たさないおそれがあります。

添付する財産目録は2019年1月13日以降、パソコン作成や通帳のコピーでよくなりましたが、各ページに署名押印が必要です。

確実に形を整えたい場合は、公正証書遺言か法務局の保管制度を検討する段階になります。

身寄りがない場合、死亡届は誰が出すことになりますか

死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内の提出が必要です(戸籍法86条)。

誰が届出人になれるかは戸籍法で定められていて、親族以外にも範囲があります。

自分の場合に誰が出せるかは事情によって変わるため、死後事務の委任契約を結ぶときに、届出まで含まれているかを書面で確認してください。

何歳から終活本を読み始めればよいですか

年齢よりも、入院や引っ越しの予定、契約している住まいの更新時期のほうが目安になります。

判断できるうちでなければ結べない契約があるためです。

始める順番そのものに迷いがあるなら、終活を何から始めるかで解説しています。

まとめ

終活本は、選ぶ前に自分の空欄を知っておくと1冊で足ります。

入院時に名前を書く人、亡くなったあとの手続きを頼む相手、財産と契約の所在という3項目を紙に書き出し、埋まらなかった欄が厚い本を選ぶ順番です。

本を選ぶときは、奥付の発行年が2020年7月10日の保管制度や2024年4月1日の相続登記義務化より後かどうかと、記入欄が家族以外を前提にしているかを見てください。

そして、身元保証と死後事務は本では代われません。ぜひ本記事の3項目の書き出しと、発行年・著者・記入欄の3点の見分け方を参考に、次の1冊と次に会う相手を決めてください。

あなたへのおすすめ