おひとりさま終活の費用|身元保証と死後事務の目安

入院や施設の申込書に「身元保証人」の欄があり、そこで手が止まります。
おひとりさまの終活でまとまったお金が動くのは、この身元保証と、亡くなった後の手続きを誰かに頼む死後事務委任の2つです。
どちらも月々の会費や報酬より、実費の前払いとして預ける預託金のほうが額としては大きくなります。
納骨先まで含めるなら、樹木葬の平均購入価格は71.7万円、納骨堂は81.5万円です(鎌倉新書 第17回お墓の消費者全国実態調査/2026年1月時点)。
本記事では、生前の契約料と死後の実費の切り分け・預託金の決まり方・契約書で確認する返金規定・支払いに使えるお金の出どころを解説します。
おひとりさま終活の費用は、生前の契約料と死後の実費に分かれます
費用の全体像がつかみにくいのは、性質の違う2種類のお金が「終活費用」という一語にまとめられているからです。
ひとつは、生きているうちに契約を結ぶために払う費用です。
もうひとつは、亡くなった後に実際に出ていく火葬や納骨、住まいの片づけの代金になります。
前者は契約する相手を選べば額が決まりますが、後者は住まいの状況と納骨先の選び方でまったく変わります。
| 費目 | 何のためのお金か | 払うタイミング |
|---|---|---|
| 身元保証 | 入院・施設入居のときの保証人や緊急連絡先の引き受け | 契約時と契約期間中 |
| 死後事務委任 | 死亡届の提出、火葬・納骨、契約の解約手続きの委任 | 契約時に報酬、実費は預託金から |
| 遺言書の作成 | 財産を誰に渡すかの指定 | 作成時 |
| 死後の実費 | 火葬、納骨、遺品整理、賃貸の原状回復 | 亡くなった後 |
生前に結ぶ契約の費用
身元保証と死後事務委任は別々の契約で、片方だけを頼むこともできます。
身元保証は生きている間の役目で、入院や入居の手続きに付き添ったり、病院からの連絡を受けたりする部分です。
死後事務委任は亡くなった後に始まる役目なので、担当する期間が重なりません。
料金の立て方は事業者ごとに違い、入会金と月会費で組む形もあれば、契約ごとに一括で報酬を決める形もあります。
総額を比べる前に、その金額が身元保証だけの分なのか、死後事務まで含んでいるのかを契約書で確かめてください。
財産の行き先を決めるには、この2つとは別に遺言書が要ります。
死後事務委任は手続きを代わりにやってもらう契約で、財産を誰に渡すかまでは指定できません。
自筆で書いたものを法務局に預ける自筆証書遺言書保管制度なら、保管申請の手数料は1件3,900円です(法務省 遺言書保管所/2026年9月時点)。
この制度を使うと家庭裁判所の検認が不要になります。
公正証書にする場合の手数料は、財産の額に応じて変わる仕組みです。
亡くなった後に出ていく実費
実費のうち額が読みにくいのが納骨先です。
一般墓の平均購入価格は152.0万円、納骨堂は81.5万円、樹木葬は71.7万円となっています(鎌倉新書 第17回お墓の消費者全国実態調査/2026年1月時点)。
おひとりさまの場合は永代供養のついた区画を選ぶことが多くなりますが、「永代」は永久という意味ではありません。
三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)する運用が一般的です。
個別安置が何年なのか、合祀後は遺骨を取り出せなくなるのかを、申し込む前に規約で確認しておきましょう。
おひとりさまの終活費用は、預託金の額と契約の本数で動きます
同じサービスを頼んでも人によって総額が違うのは、報酬の差より預託金の差によるものです。
預託金は、死後に出ていく実費を先に預けておくお金で、受任者はここから火葬料や解約の精算金を支払います。
実費の見積もりが大きければ預ける額も増えます。
預託金は死後の実費の見積もりで決まる
預託金を組み立てるときに積み上げるのは、火葬と葬儀、納骨、住まいの片づけ、各種契約の解約精算です。
このうち葬儀は、通夜と告別式をするのか、火葬だけにするのかで桁が変わります。
なお、死亡または死産の時から24時間を経過した後でなければ火葬できません(墓地、埋葬等に関する法律3条)。
安置の場所と日数がそのまま費用に乗るため、どこに安置するかまで決めておくと見積もりが固まります。
住まいが賃貸か持ち家かで実費が変わる
賃貸住宅なら、家財を運び出したうえで原状回復をして明け渡すところまでが死後事務の範囲に入ります。
家財の量、部屋の階数、エレベーターの有無、トラックを寄せられる距離が、そのまま作業費に反映される部分です。
持ち家であれば明け渡しの期限に追われませんが、代わりに売るか手放すかの判断が残り、相続登記や譲渡の手続きが発生します。
実家や自宅の処分にいくらかかるかは実家じまいの費用の内訳で解説しています。
契約を何本結ぶかで総額が変わる
身元保証・死後事務委任・遺言書・判断能力が落ちた後の財産管理まで、すべてを1つの事業者にまとめて頼むと、その分だけ契約料が積み上がります。
逆に、頼れる甥姪がいて連絡先を引き受けてもらえるなら、身元保証の契約は不要になることもあります。
自分に本当に要る契約がどれなのかは、身寄りがない人が備えることで解説しています。
頼む相手も、民間の事業者だけではありません。
地域によっては自治体や社会福祉協議会が相談を受けている場合があるので、まずはお住まいの市区町村の高齢福祉の窓口で聞いてみてください。
見積書に載らない実費と、削ると手続きが止まる項目
提示された金額が高いのか安いのかを判断するには、その金額に何が入っていないかを見るほうが早道です。契約時の報酬だけを比べても、後から実費が乗れば順位は入れ替わります。
報酬に実費が含まれているかどうか
見積書でいちばん食い違いが出るのは、報酬と実費の境目です。
火葬料や納骨の費用、遺品整理の作業費、賃貸の原状回復費は、報酬とは別に預託金から出る扱いになっているのが通常です。
実費が不足したときに誰が追加で負担するのか、余ったお金はどこへ行くのかまで書面に書かれているかを確かめてください。
行政への届出や解約に伴う交通費、書類の取り寄せ手数料も、積み重なると無視できない額になります。
中途解約したときに返るお金
契約から実際に使うまでの期間が、10年以上あくことも普通にあります。
その間に気が変わることも、事業者が事業をやめることもあります。
解約したときに入会金が返らないのか、預託金は全額返るのか、返金までにどれだけかかるのかは、契約書の解約条項を読まないと分かりません。
事業者が先に立ちゆかなくなった場合に備えて、預託金が事業者自身の運転資金と分けて管理されているか(分別管理や信託の仕組みがあるか)も確認する項目になります。
削らないほうがいいのは、遺言書と預託金の管理
費用を抑えたいときに真っ先に削られがちなのが遺言書です。
ところが、おひとりさまで相続人が見当たらない場合、遺言書が無いと財産の行き先は家庭裁判所を通した手続きで決まることになり、死後事務の受任者がその財産を勝手に使うこともできません。
世話になった人や団体に残したいものがあるなら、遺言書を作っておかないとその希望は実現しません。
エンディングノートに書いても法的な効力はない点は、エンディングノートと遺言書の違いで解説しています。
遺品整理を安さだけで選ぶのも避けたい部分です。
家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が、買い取るには都道府県公安委員会の古物商許可が要ります。
産業廃棄物の許可では家庭ごみを運べません。
「無料回収」を名乗るトラックはこの許可を持っていないことが多く、不法投棄された場合に依頼した側が責任を問われることもあります。
契約前に許可の種類と番号を控えておけば、後で連絡が取れなくなったときに消費生活センターへ相談できます。
支払いは生前に|おひとりさまの死後事務にかかるお金の出どころ
金融機関が名義人の死亡を把握すると、その口座の入出金は止まります。
通帳とカードを預けておいても、受任者が引き出して支払いに充てることはできません。
おひとりさまの死後事務で預託金という仕組みが使われるのは、この凍結を前提にしているからです。
出どころは大きく2つあります。
1つは生前に預けておく預託金、もう1つは遺言書で遺言執行者を決め、財産の中から精算してもらう方法です。
後者は執行に入るまで時間がかかるため、火葬のようにすぐ支払いが発生するものは預託金で、納骨や遺品整理のように少し後になるものは遺言の執行で、と分ける組み方もあります。
どちらにしても、誰がどの財布から払うのかを契約書と遺言書の両方に書いておかないと、現場で立て替えが必要になります。
受け取れる公的な給付
健康保険の被保険者が亡くなったときは、埋葬を行った人に埋葬料が支給されます。
金額は一律5万円です(健康保険法100条)。
国民健康保険や後期高齢者医療の加入者だった場合は葬祭費が支給されますが、額は市区町村の条例で決まるため一律ではありません。
いずれも申請しないと支給されないので、誰が申請するのかを死後事務委任の中に含めておいてください。
受任者が動く期限
死後の手続きには法律で切られた期限があります。おひとりさまの場合、これを担うのは死後事務の受任者です。
| 手続き | 期限 | 起算日 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 7日以内 | 死亡の事実を知った日 |
| 年金の受給停止 | 厚生年金10日以内/国民年金14日以内 | 死亡日 |
| 準確定申告 | 4か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続登記 | 3年以内 | 不動産を取得したことを知った日 |
兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合、その人たちには相続放棄という選択肢もあります。
放棄は自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する手続きで、亡くなった日が起算日ではありません。
相続人になりそうな親族がいるなら、連絡先と、自分の財産の一覧を分かる場所に置いておくところまでが準備になります。
何から手をつけるか迷ったときの順番は終活を始める順番で解説しています。
よくある質問
身元保証と死後事務委任は1つの契約にまとめられますか
同じ事業者にまとめて頼むことはできますが、契約としては別々に結ぶのが一般的です。
役目が始まる時期も終わる時期も違うためで、料金も本来は分けて示されるものになります。
1つの総額しか提示されない場合は、生前の保証部分と死後の事務部分の内訳を出してもらってください。
預託金はいくら預ければよいですか
一律の目安はありません。
火葬と葬儀をどの形にするか、納骨先をどこにするか、賃貸の原状回復が要るかどうかで積算が変わるためです。
納骨先については、樹木葬の平均購入価格が71.7万円、納骨堂が81.5万円という調査結果があります(鎌倉新書 第17回お墓の消費者全国実態調査/2026年1月時点)。
希望する形の見積もりを先に取り、その合計を預託金の根拠として契約書に書いてもらうのが確実です。
契約した事業者が先に無くなったらどうなりますか
預託金が事業者の資産と混ざって管理されていると、返ってこないおそれがあります。
契約前に、預託金をどこにどう置いているか、信託や分別管理の仕組みがあるかを書面で確認してください。
あわせて、事業者が事業を続けられなくなったときに契約がどうなるのかという条項も読んでおく必要があります。
遺言書があれば死後事務委任は要りませんか
別のものなので、両方要ります。
遺言書で指定できるのは財産の行き先と遺言執行者で、火葬や納骨、住まいの解約といった事務そのものを頼む役割はありません。
逆に死後事務委任では財産を誰に渡すかを決められません。
相続人がいない場合ほど、この2本立てが必要になります。
費用を抑えたいときは、どこから見直せばよいですか
見直しやすいのは実費側です。
葬儀の形式と納骨先の選び方で、預託金の額は大きく変わります。
一方で、遺言書の作成と預託金の分別管理は削ると後で手続きが止まる部分なので、ここを省いて総額を下げても意味がありません。
契約の本数そのものを減らせるかどうかは、頼れる親族がいるかで決まります。
まとめ
おひとりさま終活の費用は、生前に払う契約料そのものより、死後の実費をいくらと見積もって預けるかで決まります。
見積書を受け取ったら、報酬と実費の境目、実費が足りなくなったときの扱い、解約したときに返るお金の3点を先に確認してください。
納骨先と葬儀の形を自分で決めておくと、預託金の根拠がはっきりして、金額が妥当かどうかを自分で判断できるようになります。
まずはエンディングノートに財産と連絡先を書き出すところからでも構いません。
書く項目はエンディングノートの役割と書く項目で解説しています。
ぜひ本記事の費目の一覧と受任者が動く期限の表を参考に、手元の見積書と契約書を突き合わせてみてください。


