身元保証サービスの費用|預託金の相場と確認すべき点

身元保証サービスの見積書には、入会金と年会費のほかに「預託金」という一行が載ります。
これは支払うお金ではなく、葬儀や納骨、住まいの片づけに使うために先に預けておくお金です。
国民生活センターが2019年5月30日に公表した注意喚起では、契約を急がせて預託金100万円を求められたという相談が紹介されています。
身元保証会社の費用には、お墓や葬儀のような全国規模の相場調査がありません。
金額の妥当性は総額ではなく、内訳と返金条件から判断することになります。
本記事では、入会金・年会費・預託金・実費という4つの費目の違い、預託金の額が葬儀と納骨先で動くしくみ、解約したときの返金条件の確かめ方を解説します。
身元保証サービスの費用は、入会金・年会費・預託金・実費の4つに分かれる
総額をいくらかと聞いても、会社ごとに何をどの費目へ入れるかが違うため、並べて比べられません。多くのサービスは、契約時に払う入会金、契約が続くあいだ毎年払う年会費、亡くなった後の実費に充てるために預ける預託金、それに駆けつけや立会いのように起きた分だけ払う実費という区切りになっています。
| 費目 | 何に使うお金か | 契約が終わるときの扱い |
|---|---|---|
| 入会金 | 契約時の面談と書類の作成 | 返金の対象になるかは契約書の記載による |
| 年会費 | 平時の見守り、緊急時の連絡窓口、契約内容の見直し | 支払い済みの年の分の扱いは契約書の記載による |
| 預託金 | 葬儀・納骨・住まいの明け渡し・役所への届けなどの実費 | 使わなかった残額の返し先を契約で定める |
| 実費 | 病院への駆けつけ、入院や入居の立会い、交通費 | その都度の精算 |
この4つのうち、契約の時点で総額が読めないのは年会費と実費です。入会金と預託金は金額が最初に決まりますが、年会費は契約が続いた年数だけ積み上がっていきます。
年会費は契約が続いた年数だけ積み上がる
65歳で契約して85歳まで続けば、年会費は20年分になります。
生前に払う金額は、入会金に年会費×想定年数を足した額です。
預託金はこれとは別枠で、亡くなった後の実費として預けるお金です。
総額を一本で示された見積書は、生前に払う分と預託金に分けて書き直すと、会社ごとの違いが比べられます。
費目の区切り方だけでなく、預けたお金をどう管理しているかまで含めた見分け方は、身元保証会社の選び方で解説しています。
預託金の額を動かすのは、葬儀の形と納骨先と住まいの片づけ
預託金は、死後事務として引き受ける作業の実費を積み上げた見積額です。
そのため、葬儀をどの形にするか、遺骨の行き先が決まっているか、住まいをどう片づけるかで額が動きます。
会社の料金表の差より、この3つの条件のほうが金額を左右します。
納骨先を生前に契約しておくと、預託金に載る費目が減る
納骨先が未定のままだと、預託金には遺骨の引き取りと一時保管、その後の購入費まで見込むことになります。
お墓の平均購入価格は、樹木葬が71.7万円、納骨堂が81.5万円、一般墓が152.0万円です(鎌倉新書 第17回お墓の消費者全国実態調査/2026年1月時点)。
生前に自分で契約しておけば、預託金に含めるのは納骨の立会いと手続きの実費だけになる場合があります。
永代供養を選ぶときは、個別に安置される年数と、その後の扱いを確認してください。
三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)する施設があります。
合祀された後は遺骨を取り出せません。
「永代」という言葉が永久を意味するわけではないという前提で、規約の年数を見ることになります。
賃貸か持ち家かで、明け渡しの作業量が変わる
賃貸なら、解約の手続きと残置物の処分、原状回復までが死後事務に入ります。
物の量と階数、エレベーターの有無、搬出経路の広さで作業量が変わり、預託金の見積もりもそこで動きます。
持ち家の売却や名義変更は相続人の手続きになるため、委任の範囲に含めるかどうかを契約書で確認してください。
片づけと売却にかかる費用の内訳は、実家じまいの費用で解説しています。
役所への届けには期限があり、誰が動くかを決めておく
亡くなった直後の手続きは、期限が法律で決まっています。引き受ける相手を決めていないと、誰がいつ動くかが宙に浮きます。
- 死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内(戸籍法86条)
- 年金の受給停止は、厚生年金が10日以内、国民年金が14日以内
- 世帯主変更届は、15歳以上の人が2人以上残る世帯で14日以内
火葬は、死亡から24時間を経過した後でなければできません(墓地、埋葬等に関する法律3条)。葬儀社への連絡、火葬の手配、遺骨の引き取りまでを誰が担うのかを、預託金の使い道として書面に落としておいてください。
身元保証の契約で確かめるのは、預託金の返金条件と管理方法
国民生活センターは2019年5月30日、身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルについて注意喚起を公表しています。挙がっているのは、いずれも預託金の返金をめぐる争いです。
- 十分なサービスが提供されず解約したものの、返金額の説明がないまま精算された
- 解約時には一切返金しないと言われた
- 返金すると言われたまま、返金されない
契約を急がせる例として、一刻も早く預託金100万円を、と求められた相談も紹介されています。金額そのものより、そのお金が何に使われ、使わなかったらどう戻るのかが書面にあるかどうかが分かれ目になります。
返金の取り決めは、解約と死亡の2つの場面で読む
途中で解約したときの返金と、亡くなった後に使い残した分の精算は、別の取り決めです。
契約書には、預託金の用途、解約時の返金の計算方法、亡くなった後の残額を誰に返すのかという3点が書かれているかを確かめてください。
国民生活センターは、預託金の用途と解約時の返金条件をあらかじめ確認し、契約の内容を周囲の人にも理解してもらうよう促しています。
残額の行き先は、遺言と合わせて決めておく方法もあります。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所の検認が必要ですが、公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が要りません。
保管申請の手数料は1件3,900円です(法務省 遺言書保管所/2026年9月時点)。
追加請求になりやすいのは、駆けつけと立会いの回数
見積書の総額に入っていない費目は、たいてい回数と時間で決まる部分です。次の4点は書面での回答をもらってください。
- 年会費に含まれる駆けつけの回数と、超えた分の単価
- 入院や入居の立会いが回数制か時間制か
- 預託金が不足したときに、誰へいくら請求するのか
- 年会費を改定する条項があるか
口頭の説明だけで進めると、後から確かめる手段が残りません。担当者が代わったときに同じ説明が返ってくるかどうかも、書面があるかで変わります。
削らないほうがよいのは、預託金を分けて管理するしくみ
預託金を法人の運転資金と分けて管理しているか、信託や第三者の管理を使っているかは、費用が上がる要因です。
ここを省いた契約は、会社が立ち行かなくなったときに預けたお金がどこにあるのか分かりません。
倒産で預託金が戻らなかった例は、身元保証サービスのトラブルで解説しています。
契約の内容を第三者に共有しておく手間も、省くと確かめる人がいなくなります。
親族、担当のケアマネジャー、依頼している専門職のうち、誰に契約書の写しを渡しておくかを決めておいてください。
遺品整理を委託先の業者が担う場合は、家庭から出た物を運ぶ一般廃棄物収集運搬業の許可と、買い取る場合の古物商許可があるかも確認できます。
身元保証の費用は誰が払うのか|生前の自己負担と埋葬料・葬祭費
身元保証と死後事務の費用は、本人が生前に用意するのが基本の形です。
死後事務は亡くなった後に動く仕事ですが、そのときに本人は支払いができません。
預託金という前払いの形になっているのは、この順番のためです。
身元保証と死後事務を合わせた総額の考え方は、おひとりさま終活の費用で解説しています。
子が払う場合は、契約の範囲を先に絞る
病院や施設が求めるのは、緊急時に連絡が取れる人、支払いの保証、退院や退所のときの引き取り先です。
子が近くにいて対応できる部分は、契約から外せます。
遠方に住んでいて駆けつけられない部分だけを委託する形にすれば、年会費も預託金も抑えられる場合があります。
身元保証人がいないと入院や入居のどこで話が止まるのかは、身元保証人がいないとどうなるかで解説しています。
埋葬料と葬祭費は、後から申請して受け取る
健康保険の被保険者が亡くなったときは、埋葬料が一律5万円支給されます(健康保険法100条/2026年9月時点)。
国民健康保険と後期高齢者医療の加入者には葬祭費が支給されますが、額は市区町村の条例で決まるため一律ではありません。
お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
どちらも申請して受け取るお金で、葬儀の前に手元に入るものではありません。
預託金には葬儀費用を満額で見込み、給付は後から入る分として考えることになります。
相続の手続きは、死後事務委任とは別枠
お墓・仏壇・位牌といった祭祀(さいし)財産は、相続財産とは別に1人が引き継ぎます(民法897条)。
誰が引き継ぐかの指定が無ければ慣習によることになり、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
不動産の名義変更は相続人の手続きで、相続登記は取得を知った日から3年以内が義務です(2024年4月1日施行)。
それより前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
費用の内訳は相続登記の費用で解説しています。
よくある質問
身元保証会社の費用はいくらが相場ですか
お墓や葬儀のような全国規模の相場調査は、2026年9月時点で確認できません。
金額の妥当性は、入会金・年会費・預託金・実費に分けた内訳と、預託金の使い道の一覧で判断することになります。
同じ条件で2社以上から見積もりを取り、費目の区切り方を揃えて並べてください。
預託金は解約したら全額返ってきますか
契約書の定め方によります。
国民生活センターには、解約時には一切返金しないと言われた、返金額の説明がないまま精算されたという相談が寄せられています。
返金の計算方法と、いつまでに返すのかを契約前に書面で確認してください。
すでに争いになっている場合は、最寄りの消費生活センターへ相談できます。
預託金を払わない契約もありますか
預託金の扱いは会社ごとに違います。
確認するのは、亡くなった直後に必要な葬儀費用や施設の精算を、誰がどのお金から立て替えるのかという点です。
預託金を預けない形なら、その立て替えの根拠と精算の相手が契約書に書かれているかを見てください。
費用を抑えるために預託金を少なくできますか
預託金に載せる費目を減らす方法はいくつかあります。
- 納骨先を生前に自分で契約しておく
- 葬儀の形を決めて、葬儀社に生前相談しておく
- 住まいの中の物を減らし、搬出の手間を小さくしておく
ただし、駆けつけや立会いのような生きているあいだのサービスを削ると、入院したときに動く人がいなくなります。減らす先は、死後の実費から考えてください。
子どもがいれば身元保証サービスは要りませんか
病院や施設が求めるのは、緊急時の連絡先、支払いの保証、退院や退所のときの引き取り先です。
子が近くにいて対応できるなら、契約そのものが不要になることもあります。
遠方に住んでいる、仕事で日中は動けないという事情があるなら、駆けつけの部分だけを委託する形も選べます。
何を頼みたいのかは、エンディングノートに書き出してから会社に相談すると、見積もりの条件が揃います。
まとめ
身元保証会社の費用は、生前に払う入会金と年会費、死後の実費に充てる預託金、その都度の実費に分かれます。
全国の相場調査が無いため、総額の大小だけでは判断できません。
年会費に想定年数を掛けた額と、預託金の使い道の一覧を並べたところで、会社ごとの違いが比べられます。
預託金でもめるのは、返金の場面です。
用途と解約時の計算方法、亡くなった後の残額の返し先を書面で確かめ、契約の内容は家族や周囲の人にも伝えておいてください。
ぜひ本記事の4費目の分け方と、契約前に確認する4つの項目を参考に、手元の見積書を費目ごとに書き直してみてください。


