身元保証会社はどう選ぶ?預託金の管理方法で見極める
パンフレットには、入会金や月会費と並んで「預託金」という欄があります。将来の葬儀や納骨、家財の処分にあてる前払い金ですが、どこに預けられるのか、解約したときにいくら戻るのかまで書かれていないことがあります。
国民生活センターが2019年5月30日に公表した注意喚起では、返金額の説明がないまま精算された、解約時には一切返金しないと言われた、といった相談が挙げられています。「一刻も早く預託金100万円を」と契約を急がせる例もありました。
本記事では、預託金の預け先と返金条件の確かめ方・契約書のどこを読むか・消費生活センターに相談する目安を解説します。
身元保証会社のトラブルは、預託金の返金と契約の急かしに集まる
国民生活センターが公表した相談例は、預託金という一点に集まっています。
- 十分なサービスが提供されず解約したのに、返金額の説明がないまま精算された
- 解約時には一切返金しないと言われた
- 返金すると言われたまま、返金されない
金額の大小ではなく、「いつ・何に使い、残ったらどう返すか」が契約書に書かれていない点が共通しています。
預託金は将来の実費にあてる前払い金で、実際に使うのは何年も先です。
そのあいだの管理方法に取り決めがなければ、会社の他の資金と区別がつかなくなります。
返金額の内訳が説明されないまま精算される
解約の精算でこじれるのは、金額そのものより計算の根拠です。
契約書に「当社が定める方法により精算する」とだけ書かれていると、事務手数料や提供済みサービスの対価をいくらと見るかは会社の判断になります。
手元に検証する材料がないため、示された金額が妥当かどうかを確かめられません。
解約しても返金しないと言われる
入会金や年会費を返金対象外と定める契約はあります。
注意したいのは、預託金まで同じ条項にまとめて「返金しない」と書かれている場合です。
契約した時点から、返らないお金として扱われていることになります。
費目ごとに条項が分かれているかどうかを見てください。
契約を急がせて預託金だけ先に集める
急かされている場面では、条項を読む時間が取れません。
支払時期は契約書に書いてあるはずの事項なので、署名前の入金を求められたら、根拠となる条項を示してもらってください。
その条項が見つからないなら、入金は保留にできます。
自分のケースがどれに近いかは、手元の契約書だけで切り分けられます。
| 契約書の状態 | 起きやすいこと | 先にすること |
|---|---|---|
| 返金の条項が見つからない | 解約時に「返金はない」と言われる | 返金条件の記載を書面で求める |
| 「当社の定める方法で精算」とだけある | 内訳のない精算額を示される | 計算方法と単価の明記を求める |
| 預け先の記載がない | 会社の他の資金と区別がつかない | 口座名義と分別管理の有無を確認する |
| 署名前に入金を求められている | 条件を確かめる前に払ってしまう | 支払時期の条項を確認し、入金を保留する |
預託金の管理方法は、預け先・用途・返金の3点を書面で確かめる
国民生活センターは、預託金の用途と解約時の返金条件をあらかじめ確認するよう促しています。契約前に押さえるのは次の3点です。
- 預け先と管理方法
- 用途と単価
- 解約事由ごとの返金額と支払期限
誰の名義で、どこに預けるのか
口座の名義と、会社の運転資金と分けているかどうかを聞いてください。
信託の仕組みを使っている、弁護士が管理に関与している、という説明があるなら、その契約書の写しも見せてもらえます。
書面に記載がなく、口頭で「分けています」と言われただけでは、後から確かめようがありません。
何に、いくらで使うのか
葬儀や納骨、家財の処分、役所への届出といった項目のうち、どれを預託金から払うのかを費目ごとに確認します。
実費精算なら領収書を見せてもらえるのか、定額なら余った分が戻るのかも聞いておきます。
ここが決まっていないと、「もう使いました」と言われたときに検証できません。
費用の内訳の読み方は、身元保証サービスの費用と預託金で確認すべき点で解説しています。
解約事由ごとの返金額と支払期限
本人から解約する場合と、会社側から契約を終わらせる場合、本人が亡くなって契約が終わる場合とで、精算の扱いが分かれることがあります。
それぞれの返金額の計算式と、返金までの日数がどこに書かれているかを確かめてください。
口頭の回答は残らないので、質問を紙に書いて渡し、同じ紙に回答を書いてもらう形が確かです。
担当者名と日付も控えておきます。
国民生活センターは、契約内容を周囲の人にも理解してもらうよう案内しています。
契約先の名称、担当者の連絡先、預託金の額と預け先を1枚にまとめ、家族や親しい人に渡しておくと、後から食い違いません。
書き留める場所としてはエンディングノートに書くべき項目で解説している様式が使えます。
会社に出すのは条項番号、家族に出すのは契約書の写し
同じ疑問でも、持っていく相手によって出す紙が変わります。
会社の担当者には、条項を指して質問する
「返金はどうなりますか」と広く聞けば、口頭の説明で終わります。
返金に関する条項を指して、自分の場合はどの計算式にあたるのか、支払期限は何日なのかを1つずつ確認してください。
回答の内容が条項に書かれていないなら、覚書として書面に残せるかを聞きます。
応じられないという返答も、それ自体が判断材料になります。
家族と親族には、契約書の写しと連絡先を渡す
本人が契約していることを家族が知らないままだと、入院や施設入居の場面で会社と家族の言うことが食い違います。
子の側から親に切り出すときは、契約をやめさせる話ではなく、返金条件を一緒に読む作業として持ち込むほうが話が続きます。
読むのは返金条項と支払時期の2か所だけで足ります。
病院や施設には、身元保証人に求める役割を先に聞く
入院時に身元保証人へ何を求めるかは、病院や施設ごとに違います。
- 入院費の連帯保証
- 緊急連絡先としての対応
- 退院先の調整
- 亡くなったときの遺体と遺品の引き取り
このうちどこまでを会社が引き受ける契約になっているかを突き合わせると、契約が足りているかどうかが分かります。保証人がいない場合の扱いは身元保証人がいないときの入院・入居の備えで解説しています。
身元保証の返金に金額の定めはなく、根拠は契約書の条項だけ
預託金の返金額や返金までの日数を定めた法律の規定は確認できません。
消費者庁は「いわゆる高齢者等終身サポート事業」として利用上の注意点をまとめ、契約内容の確認を促しています。
つまり、返す・返さないの根拠になるのは契約書の条項で、書かれていない部分は交渉になります。
死後の財産の渡し先は、委任契約では動かない
身元保証や死後事務の契約で頼めるのは手続きの実行までです。
財産を特定の人や団体に渡すには遺言が必要になります。
自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が要るため、封を開けずに持ち込みます。
法務局の自筆証書遺言書保管制度(2020年7月10日開始、保管申請の手数料は1件3,900円)を使ったものと公正証書遺言は、検認が不要です。
お墓と仏壇は祭祀(さいし)財産として別に引き継ぐ
墓・仏壇・位牌は相続財産とは別に1人が引き継ぎます(民法897条)。
指定がなければ慣習によって決まり、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
会社に納骨や年忌の手配を頼んでも、承継者が誰かという問題は別に残ります。
永代供養を選ぶ場合、「永代」は永久ではありません。
多くの施設は三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)します。
個別安置の年数と、合祀後は遺骨を取り出せなくなることを規約で確かめてください。
本人が亡くなった後に残った預託金
返金分を誰が受け取るかは、契約条項と相続の両方に関わります。
相続財産に含まれるなら、受け取るのは相続人です。
相続放棄をした人は、その立場からも外れます。
放棄の申述は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ行います(民法915条)。
起算日は亡くなった日ではありません。
返金分の扱いが相続人のあいだで争いになりそうなら、弁護士に確認する段階です。
口コミでは身元保証会社を選べない|消費生活センターに渡す境目
比較サイトの順位や体験談には、預託金の預け先と返金条件が書かれていません。見分けに使えるのは契約書と、会社が書面で答えた内容だけです。
やっても進まない確かめ方
- ランキングや口コミの点数で候補を絞る
- 電話で「倒産しませんか」と聞く
- 設立年数や事務所の広さで判断する
- 解約を口頭で伝えて、入金を待ち続ける
倒産の可能性を会社自身に聞いても、返ってくるのは見通しの話です。
預託金が分別して管理されているかどうかのほうが、実際の返金に直結します。
解約も、口頭では申し出た日付が残りません。
書面など記録の残る方法で伝えて、控えを保管してください。
倒産で預託金が戻らなくなった例は身元保証サービスのトラブルと倒産時の預託金で解説しています。
消費生活センターと弁護士の使い分け
次のどれかに当てはまったら、最寄りの消費生活センターに相談してください。国民生活センターも、トラブルになったらセンターへ相談するよう案内しています。
- 返金額の内訳を書面で求めても回答が来ない
- 精算書に計算の根拠が書かれていない
- 約束された返金の期限を過ぎても入金がない
会社と連絡が取れなくなった場合や、返金の金額そのものを争う場合は、弁護士に渡す段階になります。
相談の前に、契約書・パンフレット・振込の控え・担当者とのやり取りの記録を時系列でそろえておくと、説明が短く済みます。
身寄りがない状態での備え全体の組み方はおひとりさまの終活で備えることで解説しています。
よくある質問
預託金は契約前に全額払うものですか
支払時期は契約書で定められる事項です。
国民生活センターの公表例には「一刻も早く預託金100万円を」と急がせるものがあり、急かされた状態では条項を読めません。
署名前の入金を求められたら、その根拠の条項を示してもらってください。
解約したら預託金は全額戻りますか
戻る額は契約条項で決まります。
入会金や年会費を返金対象外とする契約もあり、預託金が同じ条項に含まれていることもあります。
解約の理由ごとの返金額と計算式、支払期限がどこに書かれているかを、契約前に確かめてください。
身元保証会社が倒産したら預託金はどうなりますか
一律には決まりません。
会社の運転資金と同じ口座に入っていたのか、信託などで分けられていたのかで、戻る見込みが変わります。
連絡が取れなくなった時点で消費生活センターに相談し、金額が大きいなら弁護士に相談する流れになります。
家族がいれば身元保証会社は要りませんか
家族の年齢や住んでいる場所によって変わります。
入院費の連帯保証や退院先の調整をその家族が引き受けられるなら、契約しない選択もあります。
判断の材料になるのは、病院や施設がどこまでを保証人に求めるかという確認です。
死後事務委任と身元保証は同じ契約ですか
別の契約です。
身元保証は生きているあいだの保証と連絡対応、死後事務委任は亡くなった後の届出や家財の処分などを頼むものです。
1つの会社が両方をまとめて扱う場合も、どちらの費用に預託金を充てるのかは契約書で分かれています。
契約書のどこを見れば返金条件が分かりますか
「解約」「中途解約」「契約の終了」と題された条項と、預託金の管理を定めた条項の2か所です。この2か所に計算式と支払期限が書かれていないなら、書面での説明を求める場面になります。
まとめ
身元保証会社を見分ける材料は、預託金の預け先・用途・解約時の返金条件の3点に絞られます。
国民生活センターに寄せられた相談も、この3点が契約書に書かれていなかったことから起きています。
口コミや設立年数ではなく、条項と書面の回答で判断してください。
返金額の内訳を書面で求めても回答がない、期限を過ぎても入金がないという段階になったら、最寄りの消費生活センターが相談先になります。ぜひ本記事の3点の確認リストと契約書の切り分け表を参考に、まずは手元の契約書の返金条項から読み直してください。
