終活の準備リスト|先に手をつけるべき順番でまとめて解説

終活の準備で最初に手をつけるのは、財産のありかを1枚に書き出すことです。エンディングノートを買ってきて1ページ目から順に埋めようとすると、自分史や家系図のページで手が止まります。
家族が最初に困るのは思い出の記録ではなく、どの銀行に口座があるのか、保険に入っていたのかが分からないことです。
相続税の申告と納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。
財産を探すところから始めると、この期間はあっという間に減ります。
本記事では、先に決める3つの項目・戸籍と登記事項証明書の取り寄せ先・遺言書を法務局に預ける手続き・家族に期限が来る前にやっておくことを解説します。
終活の準備は、財産・希望・引き継ぎ先の3つから始める
やることを全部書き出したリストは、見た瞬間に閉じたくなります。
実際に順番を守らないと先へ進めないのは、次の3段階だけです。
お墓もデジタルの整理も、この3つが済んでから足せば間に合います。
| 段階 | やること | ここまでできたら次へ |
|---|---|---|
| 1 | 財産と契約の棚卸し | 金融機関名・保険会社名・不動産の所在地が1枚に載っている |
| 2 | 判断できなくなったときの希望を書く | 医療と介護の希望、連絡してほしい人の名前と電話番号が書いてある |
| 3 | 誰に何を渡すかを決める | 遺言書を作るかどうかを決めた |
| 以降 | お墓、実家の使い道、家財の片づけ、ネット上の契約 | 1〜3が終わってから順に足す |
かかる期間は、口座と保険の数、それに実家の名義が誰になっているかで変わります。
通帳が数冊で不動産が無ければ、1段階目は一晩で終わります。
逆に、親の代より前から名義が動いていない土地があると、戸籍を集める段階で数週間かかります。
先に書き出すのは、口座と保険と不動産
書くのは残高ではありません。
残高は動くので、後から調べられる情報です。
家族が自力では調べられないのは、次のような「どこにあるか」の情報になります。
- 金融機関名と支店名、口座の種類(残高は不要)
- 保険会社名と証券番号、保険の種類
- 不動産の所在地と、名義が誰になっているか
- 証券口座、iDeCoやNISAを置いている会社
- 借入とローン、保証人になっているものがあればその内容
とくに落ちやすいのが、通帳もカードも発行されないネット銀行とネット証券です。
紙が残らないため、遺品を探しても出てきません。
借入を書くのをためらう人がいますが、ここを伏せたまま亡くなると、家族は借金の有無を知らないまま相続を承認してしまいます。
相続放棄ができるのは、自分が相続人だと知った時から3か月以内です。
希望を書くところまでは、エンディングノートで足ります
2段階目で書くのは、入院したときに誰へ連絡してほしいか、延命治療をどうしたいか、かかりつけの病院はどこか、といった内容です。
ここは形式が決まっていないので、市販のノートでも大学ノートでも構いません。
エンディングノートの役割と書くべき項目で解説しています。
ただし、ノートに「この家は長男に」と書いても、民法の方式を満たしていなければ遺言としての効力はありません。
希望を伝える紙と、財産を動かす紙は別物です。
エンディングノートと遺言書の違いで解説しています。
誰に何を渡すかは、一覧ができてから決める
遺言書が要るかどうかは、財産の中身と相続人の顔ぶれで決まります。
現金と預金だけなら金額で割れますが、実家が財産の大半を占めると、そのままでは分けられません。
相続人の中に配偶者の連れ子や、疎遠な兄弟姉妹がいる場合も、話し合いだけで終わらせるのは難しくなります。
1段階目の一覧ができていれば、この判断は数分で済みます。
終活準備でそろえる書類は、市区町村・法務局・金融機関の3か所で取る
準備の段階で集める書類は多くありません。窓口が別々なので、どこへ何を取りに行くかだけ先に把握しておくと、平日の休みを何度も使わずに済みます。
相続人が誰になるかは、本籍地の市区町村で取る戸籍で確認する
相続人の範囲は、配偶者が常に相続人で、第1順位が子、子がいなければ第2順位の直系尊属、それもいなければ第3順位の兄弟姉妹という順で決まります。
家族が把握している人数と、戸籍上の相続人の数が食い違うことがあります。
前の結婚で生まれた子がいる場合、その子も第1順位の相続人です。
戸籍謄本を請求する先は、住所地ではなく本籍地の市区町村です。
本籍地が遠ければ郵送で請求できますが、定額小為替を用意したり返信用封筒を入れたりする手間があり、往復で日数がかかります。
手数料と必要書類は市区町村で確認してください。
不動産の名義は、法務局の登記事項証明書の甲区で分かる
実家の名義が誰になっているかは、記憶や固定資産税の納税通知書ではなく、登記事項証明書で確かめます。
法務局で取得でき、所有者が書いてあるのは甲区(所有権に関する事項)です。
ここに祖父母の名前が残っていれば、その代の相続手続きが終わっていません。
手数料は請求の方法で変わるため、法務局の現行料金を確認してください。
乙区には抵当権が載ります。
住宅ローンを完済しているのに抵当権の抹消登記をしていない家は、売却の段階で手続きが必要になります。
準備の段階で気づいておけば、本人が元気なうちに片づけられます。
遺言書を自分で書くなら、法務局の保管制度を使うと検認が要らない
自筆証書遺言は、本文を全文自筆で書く必要があります。
2019年1月13日からは、添付する財産目録だけはパソコンで作ったものや通帳のコピーでよくなりました。
ただし各ページに署名押印をします。
自宅で保管した自筆証書遺言は、亡くなった後に家庭裁判所の検認を受けなければなりません。
封を開けずに持ち込む決まりで、相続人全員に呼び出しがかかります。
2020年7月10日に始まった自筆証書遺言書保管制度を使って法務局に原本を預けておけば、この検認が不要になります。
保管申請の手数料は1件3,900円です。
申請の手順や予約の要否は法務局で確認してください。
なお、公正証書遺言はもともと検認が不要です。不動産が複数あったり、相続人の間で揉めそうだったりする場合は、公証役場で作る方法もあります。
本人しか動かせない手続きと、亡くなった後に家族へ来る期限
終活の準備に法律上の締め切りはありません。
ただ、本人の判断能力が下がると手続きそのものができなくなるものと、亡くなった後に家族の側へ日数の決まった手続きが並ぶものがあります。
この2つを分けて考えると、どこから急げばいいかが決まります。
本人が動けるうちにしかできないこと
遺言書の作成、金融機関での口座の整理や住所変更、保険の受取人の変更は、本人の意思確認ができる間の手続きです。
認知症の診断が出た後でも、症状の程度によっては有効に遺言を残せる場合がありますが、後から有効性を争われる余地が生まれます。
判断が難しくなってからでは、選べる方法が減ります。
使っていない口座を解約して数を減らしておくのも、本人にしかできない作業です。口座が1つ減れば、相続のときに戸籍一式を金融機関へ出す手間が1回減ります。
亡くなった後、家族に来る期限
家族が慌てるのは、葬儀の直後から役所と税務署の期限が始まるからです。準備リストの意味は、この期間に「財産を探す」という作業を持ち込まないところにあります。
| 手続き | 期限 | 起算日 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 7日以内 | 死亡の事実を知った日 |
| 年金の受給停止 | 厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内 | 死亡日 |
| 世帯主変更届(15歳以上が2人以上残る場合) | 14日以内 | 死亡日 |
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 自己のために相続の開始があったことを知った時 |
| 準確定申告 | 4か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続登記 | 3年以内 | 不動産を取得したことを知った日 |
相続放棄の3か月は、亡くなった日からではありません。
疎遠だった親族の死を後から知らされた場合は、その時点から数えます。
期間内であれば、家庭裁判所へ伸長を申し立てられます。
相続税の申告が必要かどうかは、基礎控除を超えるかどうかで決まります。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円です。
超えなければ申告そのものが要りません。
ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額を0円にする場合は、申告が必要になります。
相続税がかかる人とかからない人の分かれ目で解説しています。
始める時期そのものに正解はありませんが、年齢によって手をつけやすい項目は変わります。50代・60代・70代それぞれのやることで解説しています。
終活の準備が止まるのは、書類の不足ではなく名義と言い出しにくさ
子の側が最初につまずくのは、親に切り出す場面です。
「終活しよう」と言えば死ぬ話になりますが、入り口を変えると会話が続きます。
入院したときの連絡先を教えてほしい、保険に入っているか分からないと困る、といった具体的な困りごとから聞くやり方です。
財産の額は聞かなくて構いません。
必要なのは「どこにあるか」だけです。
実家の名義が、親より前の代で止まっていることがある
登記事項証明書の甲区に祖父母の名前が残っていると、その代の相続人全員の同意を集めないと名義を動かせません。従兄弟やその子まで相続人が広がっていることもあり、人数が増えるほど連絡と押印に時間がかかります。
2024年4月1日から、相続登記は不動産の取得を知った日から3年以内に申請する義務になりました。
正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
この義務は施行日より前に相続した不動産にも及び、その場合の期限は2027年3月31日です。
総務省の住宅・土地統計調査(2023年)では全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高になっています。
使う予定のない実家をどうするかは、名義を整理した後でないと決められません。
空き家バンクの登録条件と使い方で解説しています。
お墓を移すなら、受け入れ先が決まらないと申請できない
遺骨を別の場所へ移すには、現在の墓地がある市区町村が発行する改葬許可証が要ります。
申請には受け入れ先の受入証明書と、今の墓地管理者が出す埋葬証明書を添えます。
受け入れ先が決まらないと書類がそろわないため、先に移転先を選ぶ順番になります。
許可証なしに遺骨を動かすのは墓地埋葬法に触れます。
受け入れ先の費用は形式で差があります。
鎌倉新書の第17回お墓の消費者全国実態調査(2026年1月時点)では、樹木葬が平均71.7万円、納骨堂が81.5万円、一般墓が152.0万円です。
永代供養と書かれていても、永久に個別で安置されるわけではありません。
三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)する施設が一般的です。
合祀された後は遺骨を取り出せなくなるので、個別安置の年数と合祀後の扱いを契約前に確かめてください。
お寺の檀家をやめる際に離檀料を請求されることがあります。
法律上の支払義務を定めた規定はなく、相場を示す公的な統計もありません。
金額と根拠を書面で示してもらったうえで話すのが前提になります。
生前の片づけでも、回収業者の許可は確認する
家財を減らす作業を業者に頼むとき、家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が要ります。
買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可です。
産業廃棄物収集運搬業の許可では家庭ごみを運べません。
「無料回収」を名乗って回る車は、この許可を持っていないことがあります。
不法投棄されれば、依頼した側にも説明を求められます。
遺品整理士は民間の認定資格で、これを持っているから廃棄物を運べるわけではありません。
許可の有無とは別に見てください。
また、業者が自宅を訪問して買い取る「訪問購入」は、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は物品の引き渡しを拒めます。
その場で貴金属を持ち帰らせない判断ができます。
片づけの前に、捨ててはいけないものを抜き出しておきます。
通帳、キャッシュカード、保険証券、年金手帳、不動産の権利証と登記識別情報、遺言書、印鑑と印鑑登録証、貸金庫の鍵と契約書、有価証券、借用書です。
これらを処分すると相続の手続きが止まります。
専門家に渡すのは、相続税の試算と、不動産が絡む遺言
終活の準備で、お金を払わないとできない作業は限られています。
財産の一覧を作る、戸籍を取り寄せる、登記事項証明書を請求する、エンディングノートに希望を書く、この4つは自分で完結します。
自筆証書遺言を書いて法務局に預けるところまで含めても、かかるのは保管申請の3,900円と、戸籍や証明書の実費だけです。
外に出したほうがいいのは、判断を誤ると後戻りできない場面です。目安は次のとおりです。
- 相続税がかかりそうかを確かめたい、小規模宅地等の特例が使えるか知りたい場合は税理士
- 不動産が財産の中心で、分け方まで指定する遺言を残す場合は公証役場や司法書士
- 名義が前の代で止まっている不動産の登記は司法書士
- 相続人の間ですでに対立があり、話し合いが成立しない見込みなら弁護士
費用は作業量で決まります。
遺言なら財産の数と相続人の人数、登記なら不動産の筆数と集める戸籍の量、税理士なら財産の種類と申告書の枚数が増減の理由です。
見積もりを取るときは、総額ではなく何にいくらかかるかの内訳を出してもらってください。
内訳が出ない見積書は、後から追加が乗っても比べようがありません。
頼れる家族がいない場合は、判断が変わります。
入院や施設入居のときの身元保証、亡くなった後の葬儀や部屋の片づけを誰に頼むかを、契約の形で決めておく必要が出てきます。
おひとりさまの身元保証と死後事務にかかる費用の目安で解説しています。
よくある質問
終活の準備は何歳から始めればいいですか
年齢で区切る決まりはありません。
手をつけやすいきっかけになるのは、定年で収入と保険の内容が変わったとき、親を見送って相続を経験したとき、入院や手術をしたときです。
財産の一覧を作る作業だけなら年齢に関係なくできますし、内容が変わったら書き直せば済みます。
エンディングノートと遺言書は、どちらを先に書きますか
エンディングノートが先です。
財産のありかと希望が書き出せていないと、遺言書に何を書けばいいかが決まりません。
ただし、分け方の指定を法的に残したいなら、ノートとは別に遺言書が必要です。
ノートに書いた分け方の希望には、遺言としての効力はありません。
親が終活の話を嫌がります。どう聞けばいいですか
財産の額から聞くと警戒されます。
入院したときに連絡してほしい人、かかりつけの病院、加入している保険の有無といった、今すぐ困ることから尋ねると話が続きます。
親が自分で書かない場合は、聞いた内容を子がメモにして、後で見せて確認してもらう方法もあります。
準備リストの項目は、全部やらないといけませんか
財産の一覧、判断できなくなったときの希望、誰に何を渡すかの3つが終われば、残りは必要になったときに足せます。
お墓やデジタルの契約は、後から追記しても手遅れになりません。
全部を一度に終わらせようとするほど、途中で止まります。
財産が少なければ、相続税の手続きは考えなくていいですか
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
これを超えなければ申告そのものが不要です。
ただし、実家の評価額が想像より高いことがあり、預金と合わせると超える場合があります。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で税額が0円になるケースでも、特例を使うには申告が必要です。
まとめ
終活の準備でやることは多く見えますが、順番が決まっているのは財産の棚卸し、判断できなくなったときの希望、誰に何を渡すかの3段階だけです。最初の1枚さえあれば、遺言書を作るかどうかも、実家を残すかどうかも、そこから判断できます。
集める書類は、戸籍が本籍地の市区町村、登記事項証明書が法務局と窓口が分かれます。亡くなった後は死亡届の7日から相続税の10か月まで日数の決まった手続きが続くため、その期間に財産探しを持ち込まないことが、準備の目的になります。
ぜひ本記事の3段階の表と期限の一覧を参考に、まずは口座と保険と不動産を1枚に書き出すところから始めてください。


