終活はいつから始める?50代・60代・70代のやることを解説

終活で最初に手をつけるのは、エンディングノートではありません。
銀行口座と保険と年金の「今ある契約」を1枚の紙に書き出すことです。
ここが埋まっていないと、遺言もお墓の相談も、判断する材料がないまま話すことになります。
50代なら親の家と自分の実家じまいが重なり、60代後半からは自分の契約の棚卸しが中心になります。
年齢で内容は変わりますが、起点はどの年代も同じです。
「何歳から」より「どの順番か」で迷いが解けます。
本記事では、最初に書き出す3つの項目・年代別にやることの違い・必要書類の取り寄せ先・家族に切り出すタイミングまで解説します。
終活はいつから始めても、最初の3ステップは同じ
終活は全部やる必要がありません。
先に3つだけ決めれば、残りは思い出したときに足していけます。
逆に順番を飛ばすと、遺言を書こうとして財産が分からず止まり、お墓を探そうとして予算が決まらず止まります。
| 段階 | やること | 目安の期間 |
|---|---|---|
| 1 | 契約と財産の一覧づくり(口座・保険・年金・不動産・サブスク) | 1〜2か月 |
| 2 | 希望を書き留める(医療・介護・お墓・葬儀の形) | 随時 |
| 3 | 家族に一覧の置き場所を伝える | 1日 |
| 4 | 必要なら遺言書、実家の名義確認、墓じまいの検討 | 数か月〜 |
期間の目安が1〜2か月になるのは、通帳や保険証券を探す時間ではなく、忘れている契約を思い出すまでの時間です。
使っていない口座、勤め先で入った団体保険、引き落としだけ続いているサブスクは、一度書き出してから数日後に「そうだ、あれもあった」と出てきます。
一気に完成させようとしないほうが早く終わります。
一覧づくりを先にする理由
遺言書を書くにも、相続税がかかるかを見るにも、財産の総額が要ります。
相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円です。
自宅の評価と預金を足してこの額に届かなければ、そもそも申告そのものが不要になります。
届きそうなら、早いうちに税理士へ相談する話になります。
判断の入口が総額なので、ここを空欄にしたまま先へ進めません。
制度の全体像から知りたい場合は、終活とは何から始めるかで解説しています。
エンディングノートは2番目でいい
市販のエンディングノートが1ページ目で止まるのは、たいてい冒頭が「自分について」や「これまでの人生」から始まっているためです。
書きたいことが浮かばない欄で手が止まり、そのまま引き出しに入ります。
先に口座と保険の欄だけを埋めてしまえば、残りは空欄でも役に立つ紙になります。
項目の役割はエンディングノートに書くべき項目で解説しています。
50代・60代・70代で、終活のやることはどう変わるか
年齢そのものが期限になるわけではありません。変わるのは、そのとき手元にある課題です。
50代|自分の終活より親の実家が先に来る
50代で検索している人の多くは、自分の身辺整理ではなく親の家と墓の当番になっています。ここでやることは自分の一覧づくりではなく、親の財産の所在を親本人に聞いておくことです。
実家について先に確かめるのは、登記の名義です。
登記事項証明書の甲区(所有権に関する事項)を見れば、名義が親のままか、祖父母の代で止まっているかが分かります。
祖父母名義のままだと、相続人が枝分かれして同意を取る相手が一気に増えます。
全国の空き家は約900万戸、空き家率13.8%で過去最高という調査結果が出ています(総務省 住宅・土地統計調査/2023年時点)。
名義が古いまま放置された家がこの中に含まれます。
相続登記は2024年4月1日から義務になりました。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象です。
2024年4月より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
すでに親が相続したまま登記していない家があるなら、これは終活の話ではなく今の期限の話になります。
60代|契約の棚卸しと医療の希望
退職して収入の形が変わる時期です。
給与振込に使っていた口座、勤め先の団体保険、社員向けのサービスが切れるので、契約の入れ替えが起きます。
この入れ替えのタイミングで一覧を作ると、抜けが出にくくなります。
医療と介護の希望も、この年代で書いておくと家族が迷いません。
延命治療をどうするか、自宅で過ごしたいか施設でよいか、判断できなくなったとき誰に任せるか。
書いたものに法的な拘束力はありませんが、家族が医師から意思確認を求められる場面で、判断の材料になります。
70代|デジタルの引き継ぎと身元の手配
スマホのパスコードが分からないと、家族は写真も連絡先も取り出せません。
ネット銀行やネット証券は通帳が届かないため、契約の存在自体が家族に伝わらないことがあります。
サブスクは解約されないまま引き落とされ続けます。
IDとパスワードを一覧に書くかどうかは別として、少なくとも「どこに何の契約があるか」は残しておく必要があります。
スマホとサブスクの引き継ぎ方で解説しています。
ひとり暮らしで身元保証や死後の手続きを頼む相手がいない場合は、身元保証サービスを検討することになります。
ただし預託金を前払いする仕組みが多く、事業者が倒産すると戻らない例があります。
身元保証サービスのトラブルと前払い金の預け先の確かめ方で解説しています。
終活で必要な書類は、窓口が4か所に分かれる
一覧を作る段階では、通帳と証券を集めるだけで足ります。
書類の取り寄せが必要になるのは、実家の名義を確かめるときと、相続が実際に起きたときです。
窓口が別なので、どこへ行くかを間違えると1日無駄になります。
不動産の書類|法務局
登記事項証明書は法務局で取得します。
どこの法務局でも全国の物件を請求できるので、実家が遠方でも近くの法務局で足ります。
手数料はオンライン請求で郵送480円、窓口交付480円、窓口請求600円です(法務局 登記手数料/2026年9月時点)。
手数料は改定されることがあるため、請求前に法務局の現行料金を確認してください。
地番が分からないと請求できません。固定資産税の納税通知書に地番が載っているので、親の家の書類を一度見せてもらっておくと手間が減ります。
戸籍関係|本籍地の市区町村
相続人を確定させるには、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍が要ります。
転籍していると複数の市区町村にまたがるため、本籍地を追いかけて順番に請求します。
すでに戸籍から全員が抜けている場合は、戸籍謄本ではなく除籍謄本になります。
郵送請求もできますが、往復で1〜2週間見ておいてください。
遺言書|法務局に預けるか、公証役場で作るか
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、亡くなったあとに家庭裁判所の検認が必要です。
封を開けずに持ち込みます。
これを避けたい場合の選択肢が2つあります。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を使うか、公正証書遺言にするかです。
前者は2020年7月10日に始まった制度で、保管申請の手数料は1件3,900円です(法務省 遺言書保管所/2026年9月時点)。
どちらも検認が不要になります。
2019年1月13日からは、自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作ってもよくなりました。
通帳のコピーを添付する形も認められます。
ただし各ページに署名押印が要り、本文は全文自筆のままです。
お墓を移すとき|現在の墓地がある市区町村
遺骨を別の場所へ移すには改葬許可証が要ります。
発行するのは現在の墓地がある市区町村です。
申請には受け入れ先の受入証明書と、今の墓地管理者の埋葬証明書を添えるため、移す先が決まらないと申請できません。
許可証なしに遺骨を動かすのは墓地埋葬法違反です。
遺骨の一部を手元に置くだけなら改葬ではなく、分骨証明書(墓地管理者または火葬場が発行)という別の書類になります。
終活を家族に切り出すのは、書き終えたあとでいい
相談が先だと、話が「死ぬ話」になって止まります。
一覧が1枚できていれば、渡すものがある状態で切り出せます。
「これを作ったから、どこに置いてあるか知っておいて」という伝え方なら、内容に踏み込まなくても最低限は済みます。
子の側から親に切り出す場合も同じです。
「終活しよう」と持ち出すより、実家の登記や固定資産税の通知を一緒に見る用事を作るほうが話が進みます。
名義や地番を確かめる作業には目的があるので、感情の話になりにくくなります。
時期の目安として、法律の期限と実務上の目安を分けて考えてください。
法律で切られているのは相続が起きたあとの話です。
相続放棄と限定承認は自分が相続人だと知った時から3か月、準確定申告は相続の開始を知った日の翌日から4か月、相続税の申告と納付は同じ起算日から10か月です。
相続放棄の起算日は「亡くなった日」ではありません。
| 手続き | 期限 | 起算日 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 7日以内 | 死亡の事実を知った日 |
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 自分が相続人だと知った時 |
| 準確定申告 | 4か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続登記 | 3年以内 | 不動産を取得したことを知った日 |
一方、終活そのものに法律の期限はありません。
実務上の目安になるのは「判断できるうちに」という一点です。
認知症の診断が出ると、遺言も不動産の売却も本人の意思確認ができず、成年後見の手続きを経ることになります。
手続きが一段階増えるので、そこが実質的な区切りです。
終活で止まるのは、名義と同意の2か所
一覧づくりで挫折する人は多くありません。止まるのは、その先で他人の判断が絡む段階です。
1つは名義です。
実家が祖父母名義のまま来ていると、相続人が伯父叔母やその子まで広がります。
遺産分割は相続人全員の同意が必要なので、会ったことのない親族に連絡を取る作業から始まります。
ここは司法書士に戸籍の収集と相続人の特定を頼む場面です。
自分で追いかけると、郵送請求を繰り返して数か月かかります。
もう1つはお墓です。
墓・仏壇・位牌などの祭祀(さいし)財産は相続財産とは別扱いで、1人が引き継ぎます。
指定がなければ慣習で、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
相続を放棄した人でも祭祀承継者にはなれます。
墓じまいを考える場合は寺院との話し合いが入り、離檀料を求められることがあります。
法律上の支払義務を定めた規定はなく、相場として断定できる公的な統計もありません。
金額と根拠を書面で示してもらってから判断してください。
お墓を新しくする場合の費用は、鎌倉新書の第17回お墓の消費者全国実態調査では樹木葬が平均71.7万円、納骨堂が81.5万円、一般墓が152.0万円という結果です(2026年1月時点・有効回答1,267件)。
永代供養を選ぶときは「永代」を永久と読まないでください。
多くの施設で三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)されます。
合祀後は遺骨を取り出せなくなるので、個別安置の年数を規約で確かめておきます。
終活を自分でやる範囲と、専門家に渡す範囲
一覧づくり、希望の書き留め、エンディングノート、デジタル契約の整理は、費用をかけずに自分で終わります。ここを業者に頼む必要はありません。
専門家に渡す線引きは、書類の作成に正確さが要るかどうかです。
遺言書を自分で書く場合、方式の不備で無効になると書き直せません。
財産が自宅と預金だけで相続人も1人なら自筆でも進められますが、事業用の資産がある、相続人の間で争いが予想される、相続人に未成年や海外居住者がいるといった事情があるなら、公正証書遺言を選んで公証人に関わってもらう形になります。
相続税がかかりそうかどうかは、基礎控除の額と財産の総額を比べれば自分でおおまかに見られます。
ただし小規模宅地等の特例(被相続人が住んでいた宅地を330平方メートルまで80%減額できる制度)や配偶者の税額軽減を使って税額を0円にする場合は、申告そのものが必要です。
適用の可否は同居の有無や持ち家の状況で変わるので、ここからは税理士に相談する段階になります。
相続税は誰にかかるかで解説しています。
実家を残すか売るかで迷っている場合、選択肢の1つに空き家バンクへの登録があります。
売却も賃貸も決めきれない段階で情報を出せる仕組みです。
空き家バンクの登録条件で解説しています。
やることの並べ方をもう一段細かく見たい場合は、終活の準備リストを手をつける順番でまとめた記事で解説しています。
よくある質問
終活は何歳から始めるのが普通ですか
年齢の決まりはありません。
判断の目安になるのは、本人が契約や財産について自分で意思表示できる状態かどうかです。
認知症の診断が出ると遺言も不動産の売却も成年後見の手続きを経ることになり、段取りが一段増えます。
体力と判断力があるうちに一覧づくりだけ済ませておけば、あとから書き足せます。
エンディングノートと遺言書はどちらを先に書きますか
エンディングノートが先です。
財産の総額と契約の全体が分からないと、遺言で何をどう分けるか決められません。
ただしエンディングノートに法的な効力はないので、財産の分け方に希望があるなら遺言書が別に要ります。
遺言書を作るかどうかは、一覧が埋まってから考えれば足ります。
子どもから親に終活の話を切り出すにはどうすればいいですか
終活という言葉を使わずに、実家の登記や固定資産税の納税通知書を一緒に見る用事を作る方法があります。
名義が親のままか、地番はどこかを確かめる作業には具体的な目的があるため、話が感情面に寄りにくくなります。
相続登記は2024年4月1日から義務になり、2024年4月より前に相続した不動産も2027年3月31日が期限です。
期限がある話として持ち出せます。
終活で財産の一覧に書くのは何ですか
プラスの財産だけでなく、借入やローン、保証人になっている契約も書いてください。書き漏らしやすいものは以下の通りです。
- 使っていない預金口座とネット銀行の口座
- 勤め先で入った団体保険や共済
- ネット証券の口座と保有銘柄
- 貸金庫の契約と鍵の置き場所
- 引き落としだけ続いているサブスク
終活サービスに前払いする契約は使っても大丈夫ですか
預託金を前払いする仕組みでは、事業者が倒産したときに戻らない例があります。
契約前に、預かったお金をどこに預けているか(信託か、事業者の口座か)を書面で確認してください。
解約したときの返金条件も、契約書に書かれているかを見ておきます。
まとめ
終活を始める年齢に決まりはなく、50代なら親の実家の名義確認、60代なら退職にあわせた契約の棚卸し、70代ならデジタルと身元の手配が中心になります。
どの年代でも起点は同じで、口座と保険と年金を1枚に書き出すところから始まります。
総額が分からないと、相続税の見当もお墓の予算も遺言の中身も決められません。
期限が切られているのは相続が起きたあとの手続きです。
相続放棄は自分が相続人だと知った時から3か月、相続税の申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月、相続登記は取得を知った日から3年です。
終活そのものに期限はありませんが、本人が判断できるうちにしか動かせない手続きがあります。
ぜひ本記事の3ステップの表と年代別のやることを参考に、まずは通帳と保険証券を1か所に集めてください。


