終活とは?何から始めるかを順番どおりにやさしく解説

終活そのものには、法律で決められた期限がありません。
期限が切られているのは亡くなった後の手続きのほうで、相続放棄は3か月以内、相続税の申告は10か月以内と定められています(民法915条・相続税法27条)。
この差が、終活を「いつでもできる」作業にし、同時に「いつまでも始まらない」作業にしています。
やることを書き出すほど項目は増えていきます。先に決めるのはお金と契約の置き場所、医療と介護の希望、それに家とお墓の行き先の3つで、残りは後から足せます。
本記事では、終活と遺言書の役割の違い・最初に決める3つ・家族に残る期限からの逆算・実家とお墓に日数がかかる理由を解説します。
終活は死の準備ではなく、判断できなくなった後の段取り
終活という言葉に法律上の定義はありません。
実際に使われている意味は、自分の財産と契約、医療や介護の希望、家とお墓の行き先を、家族が使える形にしておく作業です。
遺言書を書くことだけを指すわけではなく、通帳の置き場所を紙に書くのも終活に入ります。
誤解されやすいのは、終活の成果が亡くなった後にだけ現れるという点でしょう。
銀行は本人の意思確認ができない口座からの出金に応じません。
不動産の売却も、所有者本人が売る意思を示せなければ進みません。
家族が代わりに動くには家庭裁判所に成年後見人を選んでもらう手続きが必要で、申立ての準備と審理でまとまった時間がかかります。
つまり終活が役に立つ場面は、亡くなる前から始まります。
ここから決まる優先順位はひとつです。
本人しか知らない情報を紙に移す作業を、いちばん先に置いてください。
保険が何本あるのか、年金はどの制度に入っていたのか、預金はどの支店にあるのか。
これらは調べれば分かるものの、調べる側が名寄せや照会を一つずつ請求することになり、そのぶん手続き全体が後ろにずれます。
手をつける時期そのものに正解はなく、体力と判断力が残っている期間の長さで内容が変わります。
50代なら家の名義や親の情報の把握から、70代なら自分の契約の棚卸しからという差が出ます。
年代ごとの違いは終活をいつから始めるかと年代別のやることで解説しています。
終活とエンディングノート、遺言書は役割が違う
この3つは同じ棚に並べられがちですが、力の及ぶ範囲が別です。終活は作業全体の呼び名で、エンディングノートはその中の記録用の道具、遺言書は財産の分け方を法的に決める書類になります。
| 項目 | エンディングノート | 遺言書 |
|---|---|---|
| 法的な効力 | ない | ある(方式を満たした場合) |
| 書き方の決まり | 自由。市販品でも手帳でもよい | 民法で方式が決まっている |
| 主に書く内容 | 口座・保険・連絡先・医療の希望・葬儀や墓の希望 | 誰にどの財産を渡すか |
| 書き換え | いつでも自由 | 方式に従って作り直す |
エンディングノートに「自宅は長男に」と書いても、それだけでは分け方は決まりません。
反対に、遺言書には預金の暗証番号やサブスクの契約先を書く欄がありません。
どちらか一方では足りないので、記録はノート、財産の分け方は遺言書と割り振るのが現実的です。
ノートに何を書く欄があるのかはエンディングノートの項目と役割で解説しています。
遺言書のほうで気をつける点は検認です。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、封を開けずに家庭裁判所へ持ち込んで検認を受けます(民法1004条)。
一方、公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が要りません。
保管制度は2020年7月10日に始まり、手数料は1件3,900円です(法務省 遺言書保管所/2026年9月時点)。
また2019年1月13日以降、自筆証書遺言に添える財産目録はパソコン作成や通帳のコピーでもよくなりました。
各ページへの署名押印は必要で、本文は全文自筆のままです。
終活で最初に決めるのは、お金の場所・医療の希望・家とお墓の3つ
項目を網羅したチェックリストは、たいてい途中で止まります。先に押さえるべきものは3つだけで、この3つが埋まっていれば、残りは家族が動きながら足していけます。
お金と契約の置き場所を1枚にまとめる
金額を書く必要はありません。
どこに何があるかだけで足ります。
次のものは、処分されたり見つからなかったりすると相続の手続きそのものが止まります。
- 通帳とキャッシュカード
- 保険証券
- 年金手帳
- 不動産の権利証と登記識別情報
- 遺言書
- 印鑑と印鑑登録証
- 貸金庫の鍵と契約書
- 有価証券と借用書
加えて、毎月引き落ちている契約の一覧を作っておくと、解約漏れが減ります。
紙は1枚でよく、書き終えたら置き場所を家族の誰か1人に伝えてください。
市販のノートを買う前に無料で配っているものを取り寄せる方法もあり、配布先はエンディングノートの無料配布先と入手方法で解説しています。
入院したときに誰が何を決めるかを決めておく
希望を細かく書くより、伝える人を決めるほうが先です。
かかりつけ医、常用している薬、入院時に連絡する家族の順番、延命治療についての考えを書き添えます。
本人の希望が書面にあれば、家族が「勝手に決めた」と責めを負う場面が減ります。
治療方針の判断そのものは医療機関と相談する話になるため、書くのは希望と連絡先までにとどめてください。
家とお墓の行き先だけ先に方向を出す
ここで細部まで決める必要はありません。
実家は売るのか誰かが住むのか、お墓は誰が引き継ぐのか、それとも移すのか。
この2つの方向が決まらないと、後の手続きが全部止まります。
理由は単純で、実家は名義を動かさないと売れず、お墓は受け入れ先が決まらないと改葬の許可が下りないためです。
終活の順番は、残された家族の期限から逆算して決まる
何から手をつけるか迷ったときは、死後に家族へ課される期限を見ると順番が決まります。期限のある手続きの前には、必ず情報を集める時間が挟まるからです。
| 手続き | 期限 | 起算日 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 7日以内 | 死亡の事実を知った日 |
| 年金の受給停止 | 厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内 | 死亡日 |
| 世帯主変更届 | 14日以内 | 死亡日 |
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 自分が相続人だと知った時 |
| 準確定申告 | 4か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続登記 | 3年以内 | 不動産を取得したことを知った日 |
| 遺留分侵害額請求 | 1年(相続開始から10年) | 相続開始と侵害を知った時 |
この中でいちばん詰まるのが3か月の相続放棄です。
起算日は亡くなった日ではなく、自分が相続人だと知った時からになります。
借金があるかどうかを3か月で調べ切るには、借用書やカードの明細がどこにあるか分かっている必要があります。
間に合わないときは期間内に家庭裁判所へ伸長を申し立てられますが、申し立てそのものに資料が要ります。
10か月の相続税は、申告が必要かどうかの判定から始まります。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人が3人なら4,800万円です(相続税法15条)。
ここを超えなければ申告自体が不要になります。
ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額を0円にする場合は、申告しないと適用されません。
判定の考え方は相続税がかかる人と基礎控除の考え方で解説しています。
逆算すると、終活で先にやるべき作業は財産の一覧と相続人の確認の2つに絞られます。手をつける順番をもう少し細かく並べたものは終活の準備リストと着手する順番で解説しています。
終活の費用は、金額が公表されているものと、量で変わるものに分かれる
総額を先に知りたくなりますが、終活の費用は性質の違う2種類が混ざっています。片方は公表された定額なので調べれば分かり、もう片方は物の量と場所で変わるため見積もりを取るまで出ません。
金額が公表されている手数料と給付
法務局の自筆証書遺言書保管制度の手数料は1件3,900円です(法務省 遺言書保管所/2026年9月時点)。
健康保険の被保険者が亡くなったときの埋葬料は一律5万円と決まっています(健康保険法100条/2026年9月時点)。
一方、国民健康保険や後期高齢者医療の加入者に支給される葬祭費は市区町村の条例で額が違うため、住んでいる市区町村の窓口で確認してください。
量と場所で変わる費用
お墓を新しく用意する場合の購入価格は、種類によって水準が分かれます。
| 種類 | 平均購入価格 |
|---|---|
| 樹木葬 | 71.7万円 |
| 納骨堂 | 81.5万円 |
| 一般墓 | 152.0万円 |
これは鎌倉新書の第17回お墓の消費者全国実態調査による数字です(2026年1月時点・有効回答1,267件)。平均なので、区画の広さや立地で上下します。
これに対して、家財の片づけと墓石の撤去は金額を先に言えません。
前者は物の量、階数、エレベーターの有無、搬出経路の幅で作業人数が変わります。
後者は墓所の面積と、重機が入れる区画かどうかで変わり、手作業になる区画では工数が増えます。
どちらも現地を見ない見積もりは当てになりません。
総額だけを口頭で伝えられた場合は、費目ごとの内訳を書面で出してもらってください。
本人1人で決められることと、相続人全員の署名が要ること
終活で本人だけで完結する作業と、家族の合意がないと動かない作業を分けておくと、手が止まる場所が分かります。
本人1人でできるのは遺言書の作成、エンディングノートの記入、生前の契約整理です。
誰の同意も要りません。
反対に、遺産の分け方を決める遺産分割協議は相続人全員が参加し、全員が署名押印しなければ成立しません。
1人でも欠けていると、金融機関も法務局も受け付けません。
そのため終活の段階でやっておく価値があるのは、相続人が誰になるのかを戸籍で確認しておくことです。
配偶者は常に相続人となり、第1順位は子、子がいなければ直系尊属、それもいなければ兄弟姉妹が相続人になります(民法887条〜890条)。
お墓と仏壇は相続財産とは別の扱いで、祭祀(さいし)財産として1人が引き継ぎます(民法897条)。
指定がなければ慣習によって決まり、それでも決まらない場合は家庭裁判所が定めます。
相続を放棄した人でも祭祀を引き継ぐことはできるため、財産と墓を同じ人が受け取るとは限りません。
誰に引き継いでもらうかは、本人が生前に指定できる数少ない項目です。
遺骨を移す場合は、本人でも家族でも単独では動かせません。
現在の墓地がある市区町村が出す改葬許可証が必要で、申請には受け入れ先の受入証明書と、今の墓地管理者が出す埋葬証明書が要ります(墓地、埋葬等に関する法律5条)。
許可証なしに遺骨を移すのは違法です。
寺院から離檀料を求められることもありますが、支払義務を定めた法律の規定はありません。
金額と根拠を書面で示してもらってから判断してください。
実家とお墓は、終活の中でいちばん日数がかかる
3つの優先項目のうち、家とお墓だけは思い立った月に終わりません。書類の取り寄せ先が複数にまたがり、相手の返答を待つ工程が入るからです。
実家は名義の確認から始まる
全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で過去最高になりました(総務省 住宅・土地統計調査/2023年)。
売るにも貸すにも、まず名義が誰のままかを法務局で確認してください。
祖父母の名義で止まっていると、その世代からの相続人を洗い出す作業が先に発生します。
相続登記は2024年4月1日から義務になり、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由なく怠った場合に10万円以下の過料が科されます。2024年3月31日までに相続した不動産も対象で、その期限は2027年3月31日です(不動産登記法76条の2)。
売却を選ぶ場合、相続した空き家を売ったときの譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。
1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があり、対象は2027年12月31日までの譲渡です。
相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以降の譲渡では1人あたり2,000万円に下がります(租税特別措置法35条3項)。
買い手が見つかりにくい地域では、自治体が運営する仕組みを併用する選択もあり、登録の条件は空き家バンクの登録条件と使い方で解説しています。
お墓は受け入れ先が決まらないと動かせない
厚生労働省の衛生行政報告例によると、令和4年度の改葬件数は151,076件でした。
移す先として選ばれる永代供養では、年数の確認を飛ばさないでください。
「永代」は永久という意味ではなく、多くの施設は三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)します。
合祀された後は遺骨を取り出せなくなるため、個別安置の年数と合祀後の扱いを契約前に書面で確かめる必要があります。
遺骨の一部だけを手元に置く場合は、改葬許可証ではなく分骨証明書を墓地管理者または火葬場から受け取ります。書類の名前も窓口も別なので、どちらをするのかを先に決めてから申請に動いてください。
親に切り出すときは、死の話ではなく契約の話から入る
子の側で止まる理由は、やることが分からないからではありません。
話を持ち出すきっかけが作れない点にあります。
ここで効果があるのは、順番を入れ替えることです。
財産やお墓から入ると身構えられるため、入院したときに誰へ連絡するか、保険はどこの会社に入っているか、家の名義は誰になっているかという、事務の確認から始めます。
この3つは、いずれも本人が元気なうちに答えを聞いておかないと後で照会に日数がかかる項目です。
しかも「聞かれる側が困らない質問」でもあります。
金額を聞かなくていいので、答える側の抵抗が小さくなります。
書くのは本人にしてもらってください。
子が代わりに一覧を作ると、本人が知らない契約が抜け落ちますし、内容の変更も本人の手を経なくなります。
子の役目は、紙を用意して置き場所を共有するところまでです。
家族だけで話が動かない場合は、外部の窓口を使う手もあります。
市区町村の相談会、金融機関、司法書士や税理士などで扱う範囲が違い、無料で聞ける範囲も異なります。
窓口ごとの違いは終活の相談先と窓口ごとの違いで解説しています。
先延ばしにすると、本人の名義が動かせなくなる
終活を後回しにしたときに起きることは、脅しではなく手続きの停止として現れます。
いちばん重いのは、本人の判断能力が下がった後に名義が動かなくなる事態です。
預金の解約も自宅の売却も、本人の意思確認ができない状態では進みません。
家庭裁判所で成年後見人を選ぶ手続きに入ると、その後は財産の処分に裁判所の関与が必要になり、家族の判断だけで自由に動かせる範囲は狭くなります。
空き家についても、放置すれば自動で固定資産税が上がるわけではありません。
倒壊のおそれや衛生上の問題があると市区町村が判断すると「特定空家」に、そうなるおそれがある状態だと「管理不全空家」に指定され、勧告を受けた段階で住宅用地の特例(税額を6分の1にする扱い)が外れます(空家等対策の推進に関する特別措置法)。
指定と勧告という段階を踏むため、その前に手を打てば特例は外れません。
片づけを急いで業者に任せるときも、確認を省かないでください。
家庭から出た不用品を運んで処分するには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要で、買い取るなら都道府県公安委員会の古物商許可が必要です。
産業廃棄物の許可では家庭ごみを運べません。
「無料回収」を名乗って回っているトラックはこの許可を持っていないことが多く、渡した物が不法投棄されれば依頼した側に事情を聞かれることになります。
遺品整理士は民間の認定資格で、持っていても廃棄物を運ぶ資格にはならないため、許可の有無とは別に見てください。
自宅へ来て買い取る「訪問購入」では、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は物品の引き渡しを拒めます(特定商取引法58条の14・58条の15)。その場で品物を渡さないことが、後から取り戻す余地を残します。
よくある質問
終活は何歳から始めればいいですか
年齢の決まりはありません。
判断の目安になるのは、自分の契約内容を自分で説明できるかどうかです。
説明できる時期のうちに書き出すほど、後から家族が照会する手間が減ります。
60代から本人の棚卸しを、50代の子は親の情報の確認から始めるという分け方が現実的でしょう。
財産の金額までエンディングノートに書く必要がありますか
金額を書く必要はありません。
残高は変動しますし、ノートを見た人に金額が知られる点も気になります。
書くのは金融機関名と支店、保険会社名、証券会社名といった「どこにあるか」までで足ります。
遺言書は自分で手書きしたものでも有効ですか
方式を満たしていれば有効です。
ただし自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要で、封を開けずに持ち込みます。
検認を省きたい場合は、公正証書遺言にするか、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使う方法があります。
保管制度なら検認は不要になります。
親が終活の話を嫌がります
財産や葬儀の話を先に出すと身構えられます。
入院時の連絡先、加入している保険会社、家の名義という事務の確認から入ると答えやすくなります。
金額を聞かない質問から始めるのが入口になります。
永代供養にすれば子に負担は残りませんか
管理の手間は減りますが、永久に個別で供養される契約ではありません。
多くの施設では三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は合祀されます。
合祀後は遺骨を取り出せなくなるため、年数と合祀後の扱いを契約前に確認してください。
相続税がかかるかどうかは、終活の段階で分かりますか
おおまかな見通しは立てられます。
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、これを超えるかどうかが分かれ目になります(相続税法15条)。
不動産の評価額や特例の適用で結論が変わるため、超えそうな場合は税理士に相談する段階です。
終活で先に捨ててよいものはありますか
衣類や家具は先に減らせます。
一方、通帳、保険証券、年金手帳、不動産の権利証、印鑑登録証、貸金庫の鍵と契約書は残してください。
処分すると相続の手続きが止まり、再発行や照会に日数がかかります。
まとめ
終活は全部を終わらせる作業ではありません。
お金と契約の置き場所、入院したときに誰へ連絡して誰が決めるか、実家とお墓の行き先という3つが埋まれば、残りは家族が動きながら足せます。
順番に迷ったら、相続放棄の3か月と相続税の10か月という死後の期限から逆算すると、財産の一覧と相続人の確認が先に来ることが分かります。
金額を先に知りたい気持ちは残りますが、公表された手数料や給付と、量や立地で変わる費用は分けて考えてください。後者は現地を見た見積もりと費目の内訳が出てからの話になります。
ぜひ本記事の期限表と「最初に決める3つ」を手元に置いて、今週は紙1枚に契約の置き場所を書き出すところから始めてください。


