無料のエンディングノート比較|自治体配布との違い

窓口でもらった無料のエンディングノートが、1ページ目の家族構成のところで止まったままになることがあります。
書式が合わないからではありません。
項目を上から順に埋めようとすると、手元に無い情報にすぐぶつかるからです。
無料のノートは配布元によって項目の並びと分量が変わりますが、どれに書いても財産の分け方に法的な効力はありません。
分け方まで決めるなら、法務局が原本を預かる保管制度を使った遺言書などが必要になります。
先に埋めるのは、家族が探して困る場所の情報です。
本記事では、配布元ごとの中身の違い・最初に埋める3項目・遺言書と分ける線引きまで解説します。
無料のエンディングノートで手が止まるのは、書式ではなく書く順番が原因です
ノートを取り替えても、途中で止まる位置はあまり変わりません。
項目の作りが違うだけで、聞かれている内容はどの配布元のものもよく似ています。
止まる理由は3つに切り分けられます。
自分がどれに当たるかで、次にやることが変わります。
上から順に全部埋めようとしている
エンディングノートには、生い立ちから医療の希望、財産、葬儀やお墓の希望までが並びます。
全部を1回で埋めるつもりで開くと、答えが決まっていない項目に3〜4ページで当たります。
書けるところだけ飛ばして進めれば止まりませんが、飛ばすことを自分に許していない人が多いのです。
項目は一度に埋めるものではなく、決まった順に足していくものだと考えてください。
ノートに何を書く欄があるのかはエンディングノートの書くべき項目と役割で解説しています。
手元に書類が揃っていないまま書き始めている
口座の銀行名や保険の証券番号、年金の記録、不動産の名義は、通帳や証券を出してこないと書けません。
記憶で書くと後から直すことになります。
書く前に、通帳・保険証券・年金の書類・登記の書類を一か所に集めるだけで、ノートの半分は埋まります。
逆に言えば、書類が散らばっている状態でノートを開いても進みません。
誰に見せるか決めていない
家族に見せる前提なら、連絡してほしい人や契約の一覧が中心になります。
自分の整理のために書くなら、思い出や希望の欄から入っても構いません。
見せる相手が決まっていないと、どこまで踏み込んで書くかが毎ページで迷いになります。
まず「誰が最初にこれを開くか」を決めてから書き始めてください。
無料のエンディングノートは配布元で中身が変わる|自治体配布と民間配布の違い
無料で手に入る経路は大きく3タイプです。どれも費用はかかりませんが、受け取り方と項目の重心が違います。
| 配布元 | 受け取り方 | 項目の重心 | 向く人 |
|---|---|---|---|
| 市区町村が配るもの | 窓口で受け取る。配布の有無・対象・置き場所は自治体ごとに違う | 行政の手続きや医療・介護の連絡先など、生活に近い欄 | まず1冊で全体像をつかみたい人 |
| 葬儀社・石材店・金融機関などが配るもの | 資料請求や相談の申し込みで受け取る | その会社が扱う分野の欄が詳しい | 葬儀やお墓、口座の整理を具体的に決めたい人 |
| ウェブから配布されるもの | ファイルを自分で印刷する | ページ単位で選べるものがある | 書き直しながら進めたい人 |
自治体が配るものと民間が配るものの一番の違いは、受け取るときに自分の情報を渡すかどうかです。
窓口で受け取る場合は、住所や氏名を伝えるだけで済むことがあります。
資料請求で受け取る場合は連絡先を登録するため、その後に案内が届くことがあります。
案内が来ること自体は不都合ではなく、葬儀やお墓を具体的に検討している段階なら、相談先の候補が増える形になります。
今は書くだけにとどめたいなら、窓口で受け取るか印刷して使うほうが気楽です。
ただし、自治体の配布は全国どこでも同じではありません。
配っていない市区町村もあり、対象を高齢者に限っている場合もあります。
在住していない市区町村の窓口では受け取れないこともあります。
手に入るかどうかは、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
比べるのは項目数ではなく、書き直しやすさと保管の説明
ノートを選ぶときに項目数を数える必要はありません。
見るべきなのは、書き直せる作りかどうかと、保管や引き継ぎについての説明があるかどうかです。
口座や連絡先は数年で変わります。
差し替えられる用紙や印刷して使う形式なら、変わった部分だけ書き直せます。
冊子タイプは1冊にまとまる代わりに、修正が増えると読みにくくなります。
もうひとつ、書いた後の置き場所に触れているノートを選んでください。保管場所と、家族の誰に場所を伝えるかまで書く欄があるものは、書き終えたときに「これで家族が見つけられる」と確認できます。
まず埋める3項目|連絡先・お金の置き場所・お墓と葬儀の希望
全部埋めなくても、この3つが書いてあれば家族は動けます。残りは後から足せます。
連絡してほしい人と、契約している会社
親族と友人の連絡先、かかりつけの医療機関、それに契約中のサービスの一覧です。
携帯電話や公共料金、新聞やサブスクリプションのような毎月引き落とされている契約は、通帳の引き落とし履歴を見れば洗い出せます。
ここが空白だと、家族は解約先を探すところから始めることになります。
健康保険の種別も書いておいてください。
国民健康保険や後期高齢者医療の加入者には葬祭費、健康保険の被保険者には埋葬料の支給があり、申請の窓口が変わります。
国民健康保険の葬祭費は市区町村ごとに額が違うので、金額は窓口で確認してください。
お金と書類の置き場所
金額を書く必要はありません。
書くのは「どこにあるか」です。
家族が探して見つからないと手続きが止まる書類には、次のものがあります。
- 通帳とキャッシュカード
- 保険証券
- 年金手帳
- 不動産の権利証と登記識別情報
- 遺言書
- 印鑑と印鑑登録証
- 貸金庫の鍵と契約書
- 有価証券や借用書
暗証番号やスマートフォンのパスワードは書かないでください。
ノートを紛失したときの被害が、書いていない場合とは比べものになりません。
金融機関名と支店名、保険会社名までで、家族は手続きに入れます。
この一覧づくりを含む準備の順番は終活の準備リストを先に手をつけるべき順番で解説しています。
お墓と葬儀について、決まっていることと決まっていないこと
すでにお墓があるなら、所在地・管理者の連絡先・使用者の名義を書いてください。
名義が故人のままだと、家族はまず名義の引き継ぎから調べることになります。
墓・仏壇・位牌といった祭祀(さいし)財産は相続財産とは別に1人が引き継ぐ決まりで、指定が無ければ慣習によることになり、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます(民法897条)。
誰に引き継いでほしいかをノートに書いておくと、その話し合いの出発点になります。
これから決めるなら、形によって費用がかなり違います。
樹木葬は平均71.7万円、一般墓は平均152.0万円で、倍以上の差があります(鎌倉新書 第17回お墓の消費者全国実態調査/2026年1月時点)。
永代供養を希望と書く場合は、「永代」が永久ではないことを押さえてください。
多くの施設では三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)されます。
合祀された後は遺骨を取り出せなくなるため、個別安置の年数を施設の規約で確認したうえで書いてください。
今あるお墓から遺骨を移す改葬(かいそう)を考えている場合は、現在の墓地がある市区町村の改葬許可証が必要で、受け入れ先が決まらないと申請できません。
ノートには希望する移転先の候補まで書いておくと、家族が受入証明書を取りに行く先が分かります。
エンディングノートに法的効力はない|遺言書と分ける線引き
ノートに「家は長男に、預金は長女に」と書いても、相続人はその通りに分ける義務を負いません。
分け方を決める効力があるのは遺言書です。
ここを取り違えたまま書き上げると、家族は故人の希望と法律上の権利の間で板挟みになります。
ノートと遺言書の役割分担はエンディングノートの法的効力と遺言書との違いで解説しています。
分け方まで決めるなら遺言書の方式を選ぶ
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要です。
封を開けずに持ち込んでください。
公正証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使ったものは検認が要りません。
保管制度の申請手数料は1件3,900円です(法務省 遺言書保管所/2026年9月時点)。
2019年1月13日からは、自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作ったり通帳のコピーで済ませたりできるようになりました。
ただし各ページに署名押印が必要で、本文は全文自筆のままです。
エンディングノートで作った書類一覧は、そのまま財産目録の下書きになります。
期限を書き込んでおくと家族が動ける
相続の手続きには法律で切られた期限があり、起算日が「亡くなった日」ではないものもあります。ノートの余白にこの表を書き写しておくだけで、家族が調べる時間を短くできます。
| 手続き | 期限と起算日 |
|---|---|
| 死亡届 | 死亡を知った日から7日以内 |
| 相続放棄・限定承認 | 自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述 |
| 準確定申告 | 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内(事業所得などがある場合) |
| 相続税の申告・納付 | 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内 |
| 相続登記 | 不動産を取得したことを知った日から3年以内 |
| 遺留分侵害額請求 | 相続の開始と侵害を知った時から1年(相続開始から10年で時効) |
相続登記は2024年4月1日から義務になりました。
正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科されます。
それ以前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。
実家の名義が祖父母の代のままになっていないかは、法務局で登記事項証明書を取れば甲区(所有権に関する事項)で分かります。
ノートを書く段階でここを確認しておけば、家族が期限に追われずに済みます。
やっても進まない書き方と、家族への渡し方
よく勧められる方法のうち、実際には手が止まるものがあります。先に外しておいたほうが早いです。
- 分厚いノートを最初から順に埋める。答えの決まっていない欄で止まります
- 複数のノートを併用する。どれが最新か分からなくなり、家族はどちらを信じるか迷います
- 財産の分け方を書いて安心する。法的な効力がないため、揉めごとの火種になることがあります
- 暗証番号やパスワードを書き込む。紛失時と、同居していない家族が見る場面の両方で危ないです
- 書き上げてから何年も見直さない。口座や連絡先が変わると使えない情報になります
更新は全部を書き直す必要がありません。
ページごとに記入日を入れておき、変わったところだけ差し替えてください。
年に1回、誕生日や年末に開くと決めておくと続きます。
親に書いてもらいたいときは、ノートを渡すだけにしない
子の側がノートを買ってきて渡しても、たいてい引き出しに入ったままになります。
話が死の話に見えるうえ、渡された側は何から書くのか分からないからです。
持ち出し方を変えてください。
かかりつけの医療機関と、契約している携帯電話や保険の連絡先を聞くところから入ると、入院や災害のときに必要な情報という文脈になります。
自分の分を先に書いて見せるのも、切り出しやすい形です。
兄弟に共有するときは、「親の希望はこうだった」という聞いた話として渡してください。
子の一人が決めた話として持ち込むと、決め方そのものへの反発になります。
お墓を誰が引き継ぐか、実家を売るかどうかは、親が生きている間に本人の口から出ているほうが後の話し合いが軽くなります。
頼れる家族がいない場合は、書くだけでは動きません
ノートは指示書ではないため、書いてあっても実行する人がいなければそのままです。
入院時の身元保証や、亡くなった後の役所への届け出・住まいの片づけを誰かに頼むには、契約が必要になります。
預託金を預ける形のサービスもあり、返還の条件を契約前に確認する話になります。
この費用の考え方はおひとりさま終活の費用と身元保証・死後事務の目安で解説しています。
自治体の配布物と比べたい場合は、エンディングノート(Web版)で項目の並びを先に見られます。
専門家に渡す線引き|ノートで足りる範囲とその先
ノートを書いていて手が止まったとき、それが「決めていないから止まった」のか「専門家の領域だから止まった」のかで対処が違います。後者は考え続けても進みません。
| この状態になったら | 渡す先 |
|---|---|
| 財産の分け方を自分の意思で決めたい | 公証役場(公正証書遺言)、弁護士・司法書士 |
| 不動産の名義が親や祖父母のままになっている | 司法書士(相続登記) |
| 財産の合計が基礎控除を超えそう | 税理士 |
| 相続人の間ですでに対立している | 弁護士 |
| 頼める親族がいない | 身元保証・死後事務委任を扱う事業者、社会福祉協議会などの窓口 |
相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
相続人が1人なら3,600万円、3人なら4,800万円になります。
ここを超えなければ申告そのものが不要ですが、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額を0円にする場合は申告が必要です。
自宅の土地は330平方メートルまで評価額を80%減額できる特例があり、同居していない親族が使うには追加の要件があります。
判定は個別の事情で変わるため、超えそうかどうかの見当をつけたら税理士に相談する段階です。
控除の考え方は相続税は誰にかかるかと基礎控除の分かれ目で解説しています。
いきなり有料の相談に行く必要はありません。
多くの市区町村が住民向けの相談窓口を設けていて、司法書士会や税理士会が定期的に無料相談を行っている地域もあります。
開催の有無と予約方法は、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
ノートに書き出した書類一覧と、名義や連絡先のメモを持っていくと、その場で聞ける内容が具体的になります。
よくある質問
自治体が配っている無料のエンディングノートは誰でももらえますか
配布しているかどうかも、対象や受け取り場所も市区町村ごとに違います。
高齢者向けの事業として配っている場合は年齢の条件が付くこともあり、在住していない市区町村では受け取れないこともあります。
お住まいの市区町村の窓口で、配布の有無と受け取り方法を確認してください。
無料のノートと市販のノートで、書ける内容は違いますか
書ける内容の中心は変わりません。
連絡先、契約、財産の置き場所、医療や葬儀の希望という骨格はどれも共通しています。
違いは分量と作りです。
市販のものは記入例や解説が厚く、無料のものは項目だけが並んでいることがあります。
書き慣れていない段階では、解説が厚いほうが手が動く場合もあります。
エンディングノートを書けば遺言書は要らなくなりますか
いいえ。
ノートに書いた財産の分け方に法的な効力はなく、相続人を縛りません。
分け方まで決めたいなら遺言書が必要です。
自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が要りますが、法務局の保管制度を使えば検認は不要になります。
ノートは希望と情報の置き場所、遺言書は分け方を決める書面として使い分けてください。
親にエンディングノートを渡すとき、どう切り出せばいいですか
ノートそのものを渡すより、必要な情報を1つ聞くところから始めるほうが進みます。
かかりつけの医療機関や、契約している携帯電話・保険の連絡先は、入院のときにすぐ必要になる情報です。
その延長でノートの欄を一緒に埋めていく形にすると、話が重くなりません。
書いた内容を子が勝手に決め直さないことも、最初に伝えてください。
書き終えたノートはどこに保管すればいいですか
金庫の奥や貸金庫に入れると、家族が見つけられません。
自宅で普段開ける場所に置き、置き場所を家族の誰か1人には伝えておいてください。
遺言書を別に作っている場合は、その保管場所もノートに書いておくと、家族が探し回らずに済みます。
銀行の暗証番号やスマートフォンのパスワードも書いておくべきですか
書かないでください。
ノートは金庫ではなく、家族が見つけられる場所に置く書類です。
金融機関名・支店名・保険会社名までで、家族は必要な手続きに入れます。
デジタルの契約については、契約しているサービス名と登録に使ったメールアドレスまで書いておけば、解約の窓口をたどれます。
まとめ
無料のエンディングノートは、市区町村の窓口で受け取るか、資料請求か、ウェブから印刷して手に入ります。
中身の骨格はどれも似ているため、選ぶときに項目数を数える意味はありません。
見るのは、書き直せる作りかどうかと、保管や引き継ぎの説明があるかどうかです。
そして書き始めるのは1ページ目からではなく、連絡先とお金の置き場所、それにお墓と葬儀の希望の3項目からになります。
財産の分け方まで決めたい場合や、実家の名義が親のままになっている場合は、ノートの中で片づく話ではありません。
遺言書や相続登記の手続きへ移る合図です。
ぜひ本記事の3項目の順番と期限の表を参考に、まず手元の書類を一か所に集めるところから始めてください。


