墓じまいとは?お墓を閉じて改葬するまでの全体像を解説

墓じまいで最初に決めるのは、墓石をどう壊すかではありません。
遺骨をどこへ移すかです。
現在の墓地がある市区町村へ改葬(かいそう)の許可を申請するとき、移し先が出す受入証明書を添えるよう定められているため、受け入れ先が決まらないと書類が1枚もそろいません(墓地、埋葬等に関する法律5条・施行規則2条)。
厚生労働省の衛生行政報告例では、令和4年度の改葬件数は151,076件でした。
決して珍しい手続きではありませんが、止まる場所はだいたい同じです。
費用の見積もりではなく、寺や親族への切り出し方で足が止まります。
本記事では、改葬許可証が出るまでの順番・撤去費が何で決まるか・叔父や叔母に話すときに手元へ置く資料まで解説します。
墓じまいは、受け入れ先が決まらないと役所へ申請できない
墓じまいという言葉からは、重機で墓石を撤去する場面が思い浮かびます。
ただ、その工事は手続きのいちばん最後です。
中に遺骨が納められている状態で墓石を動かすことはできませんし、遺骨を外へ出すには市区町村の改葬許可証が要ります。
許可証なしに遺骨を移すのは墓地埋葬法に反する行為で、受け入れ先の霊園も許可証の写しがなければ納骨を断ります。
改葬許可証が出るまでに要る3枚の書類
申請の窓口は、移す先ではなく現在の墓地がある市区町村です。窓口に出すものは次の3つになります。
- 改葬許可申請書(現在の墓地がある市区町村の様式)
- 埋葬証明書(現在の墓地の管理者、つまり寺院や霊園が発行)
- 受入証明書(移し先の墓地・納骨堂が発行)
3枚のうち2枚は自分で書けません。
寺院と受け入れ先、どちらかが揃わない間は申請そのものができないわけです。
そのため実際の順番は、受け入れ先を決める、寺院に事情を伝えて埋葬証明書をもらう、市区町村へ申請する、許可証を持って工事と納骨をする、という流れになります。
申請書の様式や必要な部数、遺骨1体ごとに申請するかどうかは市区町村で違うので、早い段階で窓口に様式を確認しておくと二度手間が減ります。
石材店との契約を先に結ばない
見積もりを取るのは早くてかまいませんが、工事日を確定させるのは許可証が出てからです。
寺院との話がまとまらずに工事が延びると、日程の変更料を請求される契約もあります。
書類・寺院・工事・納骨の並べ方は墓じまいの流れと改葬許可申請の手順で解説しています。
墓じまい・改葬・永代供養は、指しているものが違う
この3語は同じ場面で出てくるので混ざりやすいのですが、それぞれ別のことを指します。混ざったまま寺院や石材店に相談すると、話が通じているつもりで前提がずれます。
墓じまいは、墓石を撤去して区画を返すこと
墓石と外柵を解体して撤去し、更地に戻して墓地の使用権を管理者へ返すところまでが墓じまいです。区画をどの状態にして返すかは墓地の使用規則で決まっていて、更地まででよい墓地と、砂利の敷き直しや土の入れ替えまで求める墓地があります。
改葬は、遺骨を別の場所へ移すこと
遺骨の移動そのものが改葬です。
墓石を撤去しても遺骨を自宅に置くだけなら改葬にあたらず、必要な書類も変わります。
遺骨の一部だけを手元に残すなら、墓地管理者または火葬場が発行する分骨証明書を使います(墓地、埋葬等に関する法律施行規則5条)。
改葬許可証とは別の書類ですから、両方が要る場合もあります。
自宅に置く分と納骨堂へ移す分に分けるつもりなら、その内訳を先に決めてから窓口へ行ってください。
永代供養は、供養のしかたの呼び名
永代供養は場所の種類ではなく、遺族に代わって墓地の管理者が供養と管理を続ける仕組みを指します。
樹木葬にも納骨堂にも永代供養がつく施設があり、つかない施設もあります。
そして「永代」は永久ではありません。
三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)する運用が多く、合祀されると遺骨を取り出せなくなります。
個別安置の年数と合祀後の扱いは、施設ごとの規約で確認してください。
種類ごとの違いは永代供養の種類と向いている人で解説しています。
墓じまいの同意は、法律上は祭祀承継者1人で足りる
墓や仏壇、位牌といった祭祀(さいし)財産は、預金や不動産とは別の扱いです。
相続人で分けるものではなく、1人が引き継ぎます(民法897条)。
この役目を引き受けた人が、墓地の使用者として墓じまいを決める立場になります。
指定がなければその家の慣習で、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
相続放棄をした人でも祭祀承継者にはなれますし、逆に祭祀を引き継いだからといって遺産を多くもらえるわけでもありません。
つまり、法律の建前では兄弟や叔父叔母の同意書は要りません。それでも実務では親族の納得を先に取るほうがよいのは、止まる場所が3つあるからです。
- 墓地の使用名義が亡くなった親や祖父母のままだと、名義変更の手続きで他の親族の同意書を求める墓地がある
- 叔父や叔母にとっては、自分の親が納められている墓である
- あとから知った親族が寺院へ直接抗議し、埋葬証明書の発行が止まる
先に確かめるのは、誰の遺骨が何体入っているかと、使用者の名義が誰になっているかです。
埋葬されている人は寺院や霊園の記録で分かり、墓誌(ぼし)に刻まれた名前と数が合わないこともあります。
名義は墓地の使用許可証か管理料の請求書で確認できます。
この2つが分かれば、話を通すべき相手の範囲がはっきりします。
叔父や叔母に切り出すときは、資料を手元に置いて話す
「墓じまいをしたい」から入ると、手放す話として受け取られます。
先に渡すのは、自分がどう困っているかではなく、現状の事実です。
管理料がいくらかかっているか、誰が払っているか、あと何年払えるか、次に継ぐ人がいるかどうか。
数字の話にすると、反対する人も同じ土台の上で考えられます。
その場に置く4点
- 墓地の使用規則と使用許可証(返還の条件と名義が書かれています)
- 年間管理料の請求書または領収書
- 埋葬されている人の一覧(寺院や霊園の記録と墓誌を突き合わせたもの)
- 受け入れ先の候補資料と、そこに書かれた費用
受け入れ先の候補を1つだけ持っていくと、決定事項の報告に見えます。2〜3か所を並べて「どれがいいと思うか」の形にすると、相手が選ぶ側に回ります。
寺院へは、離檀の通告ではなく相談として
檀家(だんか)をやめる話を最初に持ち出すと、そこから先の会話が条件交渉になります。
まず、継ぐ人がいない状況を伝えて、その寺で選べる道を聞いてください。
境内に合祀墓や永代供養墓があり、墓石だけ撤去して遺骨は寺に残す形で収まることもあります。
墓を閉じたあとの付き合いをどうするかも、この段階で聞く話です。
「先祖に申し訳ない」という気持ちは、手続きの知識で消えるものではありません。
そのうえで、維持するという結論もこの場で選べます。
管理を委託して数年先まで持たせる、自分の代では続けて次の代で判断する、そうした選び方もあります。
どのタイミングで何が起きるかは墓じまいを始めるタイミングと先延ばしで困ることで解説しています。
墓じまいの費用は、撤去と受け入れ先と寺院への支払いに分かれる
総額を1つの数字で言えないのは、性質の違う3つが足し算になっているからです。撤去工事は現場の条件で決まり、受け入れ先は選んだ種類で決まり、寺院への支払いは相場を示す公的な統計がありません。
撤去工事は、面積と搬出経路で上下する
墓石の撤去費の全国的な相場は、公表された調査からは確認できていません。ただ、見積もりが上下する理由は決まっています。
- 区画の面積と、墓石・外柵・カロート(納骨室)の量
- 重機が区画まで入れるか、手作業で解体するか
- 搬出経路の状況(階段、傾斜、通路の幅、駐車位置からの距離)
- 返還時に求められる原状回復の仕様(更地まで、土の入れ替えまで、砂利敷きまで)
山の斜面にある区画や、通路が狭い古い墓地では、同じ大きさの墓でも手作業の人件費が積み上がります。
見積もりを取るときは、現地を見てもらったうえで、撤去・運搬・処分・整地のどこまでが含まれるかを1枚の書面にしてもらってください。
内訳ごとの考え方は墓じまいの費用の内訳で解説しています。
受け入れ先の費用は、種類で3倍近く開く
| 種類 | 平均購入価格 |
|---|---|
| 一般墓 | 152.0万円 |
| 納骨堂 | 81.5万円 |
| 樹木葬 | 71.7万円 |
鎌倉新書の第17回お墓の消費者全国実態調査では、上の金額が平均購入価格でした(同調査/2026年1月時点)。
ポータルサイト「いいお墓」を通じて購入した1,267人の回答なので、全国のすべての墓の平均ではありません。
それでも、種類の選択で総額が最も大きく動くことは読み取れます。
合祀墓の費用や、個別安置から合祀までの年数による差は永代供養の費用と合祀・個別安置の違いで解説しています。
離檀料は、金額と根拠を書面で確認する
離檀(りだん)料の支払いを義務づける法律の規定はありません。
相場を示す公的な統計もないため、「◯十万円が普通」という説明は根拠のない話として扱ってください。
実際には離檀の際に金額を提示される例があります。
提示されたら、何に対する費用なのか(読経へのお布施か、使用権の返還に関するものか)と金額を書面で示してもらい、そのうえで判断します。
金額の妥当性で折り合わないときは、墓地の使用規則に返還時の定めがあるかを見比べるのが出発点になります。
自治体によっては墓地の返還や改葬に関する助成を設けている場合があるため、墓じまいで使える補助金の条件を確認したうえで、お住まいの市区町村の窓口で現在の取り扱いを聞いてください。
移し先は4タイプ、いま選ばれているのは樹木葬
同じ調査では、購入されたお墓の種類は樹木葬が47.4%、合祀墓・合葬墓が16.4%、納骨堂が15.5%、一般墓が15.2%でした。
選ぶときに重視した点は、お墓の種類が50.0%、金額が43.9%、継承者が不要なことが38.8%、お墓参りのアクセスが38.4%と続きます。
継ぐ人がいないことを前提に選んでいる人が4割近くいるわけです。
樹木葬
樹木や芝を墓標にする区画で、多くは永代供養がつきます。
費用が3タイプの中では低めで、継承者を求められないことが選ばれる理由になっています。
確認するのは、個別の区画に何年置かれるのか、その後は同じ敷地の合祀墓へ移るのか、参拝のときに個別の場所が分かる形かどうかです。
納骨堂
屋内に遺骨を安置する施設で、駅に近い立地のものもあります。
天候に左右されず、高齢になってからの参拝が楽になる点が実際の差になります。
建物の維持管理費が別に要る施設もあるので、購入時の金額と毎年の支払いを分けて聞いてください。
合祀墓・合葬墓
最初から他の遺骨と一緒に納めるため、費用は抑えられます。
ただし納めたあとに遺骨を取り出すことはできません。
親族の誰かが後で「やはり手元に置きたい」と言い出す可能性があるなら、この形は戻れない選択になります。
先に全員へ説明しておく必要がある点では、いちばん合意の確認が要るタイプです。
新しい墓を建てる・別の墓にまとめる
自宅の近くに墓を移す、あるいは親族が持つ別の墓へ遺骨をまとめる方法もあります。
継ぐ人の問題が残る一方で、従来の形を変えたくない親族の納得は得やすいでしょう。
既存の墓へまとめる場合は、その墓の使用者と管理者の承諾が必要になります。
墓じまいの書類は、3か所の窓口から取り寄せる
手続きが煩雑に見える理由は、書類の発行元が分かれていることです。どこへ何を頼むかを先に並べておくと、往復が減ります。
| 書類 | もらう先 | いつ必要か |
|---|---|---|
| 改葬許可申請書 | 現在の墓地がある市区町村 | 受入証明書と埋葬証明書がそろったとき |
| 埋葬証明書 | 現在の墓地の管理者(寺院・霊園・自治体) | 寺院へ事情を伝えたあと |
| 受入証明書 | 移し先の墓地・納骨堂 | 受け入れ先の契約時 |
| 分骨証明書 | 墓地管理者または火葬場 | 遺骨の一部を手元に残すとき |
| 墓地使用者の名義変更届 | 現在の墓地の管理者 | 名義が故人のままのとき |
名義変更を後回しにすると、埋葬証明書の発行や返還手続きの相手方として認めてもらえないことがあります。
管理料の請求書が誰の名前で届いているかを見て、故人のままなら墓地の管理者へ変更の方法を聞いてください。
墓地によっては、申請できる続柄の範囲や、他の親族の同意書の提出を規則で定めています。
改葬許可証が出たら、工事の日程と納骨の日程を組みます。
遺骨を取り出すと土や湿気を含んでいることがあり、受け入れ先から乾燥や洗骨を求められる場合もあります。
古い墓では骨壺を使わず土に還す埋葬をしていた例もあるため、遺骨の状態は取り出すまで分かりません。
工事の当日に立ち会えるよう、平日に休みを取れる日を候補にしておくと進めやすくなります。
先延ばしで増えるのは、管理料と同意を取る相手の数
放置して何かの罰則がかかる制度はありません。増えていくのは費用と手間です。
まず管理料が毎年出ていきます。
次に、支払いが滞ると墓地の使用規則に従って使用権が取り消される場合があります。
連絡が取れないまま長期間放置された墓は、法令で定められた手続きを経て墓地の管理者が無縁墓として改葬できる扱いになっていて、その場合は遺骨の行き先を遺族が選べません。
手間の面でいちばん大きいのは、代替わりです。
祭祀を継いだ人が亡くなると、次に誰が引き継ぐかを決め直すところから始まります。
話を通す相手は増え、連絡先の分からない親族が出てきます。
名義変更に他の親族の同意書が要る墓地なら、その人数がそのまま作業量になります。
墓じまいそのものに法律上の期限はない一方で、親が亡くなったあとの手続きには期限が並びます。
相続放棄は自分が相続人だと知った時から3か月、相続税の申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月、相続登記は不動産を取得したことを知った日から3年です。
墓の話を後に回した結果、実家の登記も止まったまま年が過ぎる例があります。
相続税がかかる家かどうかは基礎控除で決まり、相続税の基礎控除と課税の分かれ目で解説しています。
墓の相談を親族にするなら、この期限のある手続きと同じ時期にまとめて話すほうが、集まる回数が減ります。
よくある質問
墓じまいは長男の自分ひとりで決めていいのですか
祭祀財産を引き継いだ人が墓地の使用者なら、法律上はその人が決められます(民法897条)。
ただし墓地の使用規則で名義変更や返還の際に他の親族の同意書を求めている場合があり、寺院へ抗議が入ると埋葬証明書の発行が止まることもあります。
決める権利と、手続きが止まらないことは別の話です。
離檀料を請求されたら払わなければいけませんか
支払いを義務づける法律の規定はありません。
実際に金額を提示される例はあるため、何に対する費用で、いくらなのかを書面で示してもらってください。
墓地の使用規則に返還時の負担の定めがあるかどうかも確認します。
折り合わないまま話が止まる場合は、弁護士に相談する段階になります。
遺骨を自宅に置いておいてもいいのですか
自宅で遺骨を保管すること自体を禁じる規定はありません。
一部だけを手元に残すなら分骨証明書を使います。
ただし庭に埋めることはできません。
遺骨を埋蔵できるのは墓地として許可された区域だけです。
また、手元に置いた遺骨も最終的にどこへ納めるかを決める人が要るため、次の代への引き継ぎを含めて考えてください。
墓じまいはどれくらいの期間がかかりますか
日数を一律に言える手続きではありません。
受け入れ先の選定、寺院との話し合い、市区町村での申請、石材店の工事日程という4つが順番につながっていて、それぞれ相手の都合で動きます。
親族に連絡を取る段階でつまずくと、そこで数か月止まります。
工事だけを見れば数日で終わることもあります。
墓じまいの費用は相続財産から出せますか
祭祀財産は相続財産とは別の扱いなので、墓じまいの費用を誰が負担するかは自動的には決まりません。
遺産分割の話し合いの中で、祭祀を引き継ぐ人の負担分として取り決める例があります。
個別の分け方が認められるかは相続関係によって変わるため、金額が大きくなるなら税理士や弁護士に相談する段階です。
永代供養にすれば、ずっと供養してもらえるのですか
「永代」は永久を意味しません。
三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と合祀する施設が多くあります。
合祀されると遺骨は取り出せなくなります。
契約前に、個別安置の年数と、その後の扱い、法要をいつまで行うのかを規約で確認してください。
墓じまいに補助金は使えますか
自治体が墓地の返還や改葬に関する助成を設けている場合がありますが、内容も期限も市区町村ごとに違います。
公営墓地の返還に限る制度もあります。
お住まいの市区町村と、墓地がある市区町村の両方の窓口で確認してください。
まとめ
墓じまいは、遺骨の受け入れ先が決まって初めて役所へ申請できる手続きです。
順番を逆にすると、書類がそろわないまま寺院と石材店の話だけが先に進みます。
法律上は祭祀を継いだ1人で決められますが、埋葬されている人と使用者の名義を確かめ、話を通す相手の範囲を先に見きわめたほうが途中で止まりません。
費用は、撤去工事の条件と、受け入れ先に選んだ種類と、寺院への支払いの3つに分かれます。
動く幅がいちばん大きいのは受け入れ先の種類で、寺院への支払いには相場を示す統計がないため、金額と根拠を書面で確かめる話になります。
維持を続けるという結論も、この場で選べる選択のひとつです。
ぜひ本記事の書類と窓口の一覧、それに撤去費が上下する4つの条件を参考に、まずは墓地の使用規則と管理料の請求書を手元に集めてください。


