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墓じまいを始めるタイミング|先延ばしで困ることを確認

墓じまいを始めるタイミング|先延ばしで困ることを確認

墓じまいで最初に動かすのは、墓石の撤去ではなく遺骨の受け入れ先です。

遺骨を別の場所へ移すには現在の墓地がある市区町村の改葬許可証が要り、その申請書には移す先が発行する受入証明書を添えます(墓地、埋葬等に関する法律5条)。

受け入れ先が決まらないうちは申請そのものができないため、石材店に見積もりを頼んでも工事日は入りません。

しかも年間管理料の請求は、迷っている間も止まりません。

厚生労働省の衛生行政報告例では、令和4年度の改葬は151,076件でした。

本記事では、受け入れ先を決める順番・改葬許可申請でそろえる書類と窓口・親族と寺に切り出す時期・先延ばしで起きることを解説します。

墓じまいは受け入れ先が決まらないと申請できない

工程の数は多くありませんが、順番を入れ替えると必ず止まります。遺骨の移し先、現在の墓地の管理者、市区町村の窓口、石材店の4者が関わり、前の工程の書類が次の工程の添付書類になるためです。

順番やることここで出てくるもの
1誰がお墓を継いでいるかを確認し、親族に相談を始める祭祀(さいし)承継者の確認
2遺骨の受け入れ先を決めて契約する受入証明書
3現在の墓地管理者に事情を伝え、証明書を頼む埋葬証明書
4現在の墓地がある市区町村へ改葬許可を申請する改葬許可証
5石材店に墓石の撤去を依頼し、工事日を決める撤去の見積書
6遺骨を取り出して新しい受け入れ先へ納める許可証を受け入れ先へ提出
7区画を更地にして使用権を返す管理料の精算

それぞれの工程にかかる日数は、自治体の処理期間や受け入れ先の空き状況、石材店の工事の混み具合で変わります。

カレンダーに入れる順序だけを先に固めておいてください。

改葬許可申請から納骨までの細かい進め方は墓じまいの流れと手順で解説しています。

最初に確かめるのは、誰がお墓を継いでいるか

お墓や仏壇、位牌といった祭祀財産は、預金や不動産のような相続財産とは別に、1人が引き継ぎます(民法897条)。

指定がなければ慣習によって決まり、それでもまとまらないときは家庭裁判所が定めます。

相続を放棄した人でも祭祀承継者になれるので、「財産をもらっていないから関係ない」という線引きは通りません。

名義を確かめる方法は簡単です。

墓地の管理者に問い合わせて、使用者として登録されているのが誰かを聞いてください。

親が亡くなったあと名義変更をしていなければ、登録は亡くなった親のままになっています。

その状態では改葬許可の申請書に書く「使用者」の欄が埋まらず、先に名義の変更を求められることがあります。

受け入れ先の種類で、費用も継ぐ人の要否も変わる

移し先は、永代供養墓・樹木葬・納骨堂・合祀(ごうし)墓のどれかになるのが一般的です。

鎌倉新書の第17回お墓の消費者全国実態調査では、購入されたお墓の47.4%が樹木葬、16.4%が合祀墓・合葬墓、15.5%が納骨堂、15.2%が一般墓でした(2026年1月時点)。

同じ調査の平均購入価格は、樹木葬が71.7万円、納骨堂が81.5万円、一般墓が152.0万円です(鎌倉新書 第17回お墓の消費者全国実態調査/2026年1月時点)。

この回答者は「いいお墓」を経由して購入した人に限られるため、全国平均ではなく一つの目安として見てください。

子どもが他県にいて継ぐ人がいない場合、選ぶ基準は金額よりも継承者が不要かどうかになります。

同じ調査で重視した点を聞くと、お墓の種類が50.0%、金額が43.9%、継承者が不要なことが38.8%、お墓参りのアクセスが38.4%でした。

永代供養と名前が付いていても、個別に安置される年数には期限があり、三十三回忌や十七回忌で他の遺骨と一緒に合祀される施設が多くあります。

合祀されたあとは遺骨を取り出せません。

種類ごとの違いは永代供養の種類と向いている人、納骨堂の契約期間の切れ方は納骨堂の安置期間と期限後の扱いで解説しています。

改葬許可申請でそろえる書類と、取り寄せ先

そろえるのは3点が基本です。どれも別の窓口で出るもので、1か所では完結しません。

改葬許可申請書は現在の墓地がある市区町村

用紙は市区町村の窓口かウェブサイトで手に入ります。

書く欄は、亡くなった人の氏名と本籍・死亡年月日、現在埋葬されている場所、移す先の名称と所在地、申請者と墓地使用者の関係です。

遺骨1体につき1枚が原則で、1つの区画に祖父母と父の3体が入っていれば3枚必要になる自治体もあります。

何体が納められているかを先に管理者に確認しておくと、書き直しになりません。

手数料が無料の自治体もあれば1体ごとにかかる自治体もあり、処理日数も異なります。

窓口で確認してください。

受入証明書は、移す先の管理者

新しい納骨先の管理者が発行します。

永代供養墓や樹木葬の契約を結ぶと、契約書と一緒に出してもらえるのが通例です。

逆にいえば、契約しないと出ません。

ここが改葬許可申請の入口をふさぐ工程で、見学や資料請求の段階では申請へ進めません。

施設によっては使用許可証の写しで足りるので、申請先の自治体がどちらの書類を求めるかを先に聞いておいてください。

埋葬証明書は、いま遺骨が納められている墓地の管理者

寺院墓地なら住職、公営霊園なら管理事務所、民営霊園なら管理会社が発行します。

申請書の一部が証明欄になっていて、そこに署名押印をもらう形式の自治体も多くあります。

つまり、寺に何も言わずに改葬許可を取ることはできません。

離檀の話を切り出す前に書類だけ進めようとしても、この1枚で必ず顔を合わせることになります。

このほか、墓地使用者本人ではない人が申請するときは、使用者の承諾書や、使用者が亡くなっていれば続柄を示す戸籍謄本・除籍謄本を求められる場合があります。

戸籍は本籍地の市区町村でしか取れません。

本籍が遠方なら郵送請求になり、往復で日数がかかります。

墓じまいを進める時期は、法律の期限ではなく親族の予定で決まる

墓じまいそのものに法定の期限はありません。

いつ始めても遅くなく、逆にいえば誰も催促してくれません。

期限が切られているのは相続の手続きのほうで、相続放棄は自分が相続人だと知った時から3か月、相続税の申告と納付は相続の開始を知った日の翌日から10か月です。

祭祀財産は遺産分割の対象外なので、この2つの期限に墓じまいを間に合わせる必要はありません。

親が亡くなった直後に同時進行させるより、相続の手続きを片付けてから取りかかるほうが動きやすくなります。

相続税がかかる範囲は基礎控除と相続税の対象で解説しています。

実務上の目安になるのは、親族が集まる機会です。

法要の前後は親族が顔をそろえるので相談を出しやすく、その場の合意を持ち帰って受け入れ先を探す流れが作りやすくなります。

一方で、お盆やお彼岸、年末年始は寺院と石材店の両方が立て込みます。

工事日を押さえたい時期なら、その前後は外して打診したほうが日程が決まりやすいでしょう。

寒冷地では冬季に工事ができない区画もあるため、着工可能な時期を石材店に確認しておいてください。

先延ばしにすると、管理料と名義の問題が積み上がる

放置して増えるのは金額だけではありません。

年間管理料は、お参りに行かない年も請求されます。

未納が続くと、墓地の規約に沿って使用権が取り消され、遺骨が無縁墳墓として改葬される手続きに入ることがあります。

官報への掲載などの手順を踏んだうえでの処分ですが、そうなれば遺骨をどこへ納めるかを選ぶ余地はなくなります。

もう一段やっかいなのが名義です。

継ぐ人を決めないまま自分の代も過ぎると、次の世代は使用者が誰なのか分からない状態から調べ直すことになります。

祭祀承継者の話し合いがつかなければ家庭裁判所が定める場面もあり、親族の関係はいまより遠くなっています。

決断できる人がいるうちに手を付けるかどうかが、実際の分かれ目になります。

話が止まるのは、叔父叔母への切り出しと寺への伝え方

法律の建て付けでは、祭祀承継者1人の判断で改葬を決められます。

それでも実際に止まるのは、叔父叔母に反対されたときです。

親族の同意は改葬許可の要件ではありませんが、あとから「聞いていない」と言われれば、納骨を済ませたあとに関係がこじれます。

順番としては、決定の報告ではなく相談として先に出すほうが穏やかに進みます。

切り出すときに手元へ置いておく資料は次の4点です。口頭だけで「維持できない」と言うと、気持ちの問題として受け取られます。

  • 年間管理料の請求書と、直近数年で払った合計額
  • 自宅から墓地までの距離と交通費、この1年で行った回数
  • 候補にしている受け入れ先の資料(安置される年数と、その後の扱いが書かれた部分)
  • 石材店から取った撤去の見積書

反対の理由が「先祖に申し訳ない」であれば、その気持ちを説き伏せる必要はありません。

遺骨の一部を手元や他の場所に残す分骨という方法もあり、この場合は改葬許可証ではなく分骨証明書を墓地管理者か火葬場から受け取ります。

お参りを続けたい親族がいるなら、合祀までの年数が長い施設を選ぶ、あるいは個別の区画がある樹木葬にするといった折り合いのつけ方もあります。

離檀料は書面で金額と根拠を確認する

寺院墓地では、埋葬証明書をもらう場面で離檀の話が避けられません。

伝える順序は、まず現状の説明から入ります。

継ぐ人がいないこと、遠方で管理ができないことを先に話し、そのうえで改葬を検討していると続けてください。

いきなり「やめます」から入ると、感情の話になって書類が止まります。

離檀料には、法律上の支払義務を定めた規定はありません。

ただ実際に請求される例はあるため、提示されたら金額と根拠を書面で示してもらってください。

口頭のやり取りだけで高額を求められて折り合わないときは、その寺の宗派の宗務所や、弁護士への相談に進む段階になります。

撤去工事の費用と離檀の扱いをまとめて把握したい場合は、墓じまいの費用の内訳で解説しています。

墓じまいを自分で進める範囲と、石材店に任せる範囲

書類の部分は、承継者本人でも進められます。

改葬許可の申請は郵送に対応している自治体もあり、受入証明書と埋葬証明書がそろっていれば、平日に窓口へ行けない人でも手続きできる場合があります。

ここを代行業者に丸ごと渡すと、寺や親族との連絡も人任せになり、かえって話が長引きます。

一方、墓石の撤去は石材店の仕事です。見積額を左右するのは次の条件で、現地を見ないと決まりません。

  • 区画の面積と、外柵やカロート(遺骨を納める石室)の量
  • 重機が墓所まで入れるか、手作業で運び出すことになるか
  • 墓地の入口から区画までの搬出経路と、階段や傾斜の有無
  • 墓石を処分するか、一部を持ち帰るか

霊園によっては指定石材店が決まっていて、他社に頼めません。

相見積もりを取りたいなら、まず管理者に指定の有無を聞いてください。

指定がなければ2〜3社に現地を見てもらい、更地にして返すまでの範囲が見積書に含まれているかを確認します。

「撤去一式」と書かれただけの見積書では、廃材の処分費や整地が別請求になることがあります。

専門家に渡したほうがよいのは、親族間で承継者が決まらない場合と、離檀料の交渉が行き詰まった場合です。

前者は家庭裁判所の手続き、後者は法律上の争いになるため、書類の代行ではなく弁護士への相談になります。

なお自治体によっては墓じまいや改葬に補助を出す例があり、条件と期限は市区町村ごとに違います。

制度の探し方は墓じまいの補助金と申請条件で解説しています。

よくある質問

墓じまいはお盆やお彼岸の時期を避けたほうがいいですか

親族に相談を持ちかけるには、顔がそろう時期なので向いています。

避けたほうがよいのは工事の日程で、寺院も石材店も法要と参拝の対応で立て込みます。

着工日を優先したいなら、繁忙期を外して打診したほうが希望日が通りやすくなります。

宗教上「この時期は改葬できない」という決まりがあるわけではありません。

遺骨を自宅に置きたい場合も改葬許可証が必要ですか

遺骨の一部を手元に残すなら、必要なのは分骨証明書です。

墓地管理者または火葬場が発行し、改葬許可証とは別の書類になります。

墓を撤去して遺骨の全部を自宅へ移す場合の扱いは、市区町村によって求める書類が異なります。

現在の墓地がある市区町村の窓口で、自宅安置を前提に何が必要かを確認してください。

親族の同意がないまま墓じまいを進められますか

改葬許可の申請に親族全員の同意書を求める規定はなく、手続きは祭祀承継者が単独で進められます。

ただし墓地使用者以外が申請するときは使用者の承諾書が要る自治体があり、そこで承継者が誰かという話に戻ります。

手続き上できることと、あとで関係を保てることは別問題です。

反対している親族がいるなら、納骨先を決める前に一度話す場を持ってください。

離檀料を請求されたら払わなければなりませんか

法律に支払義務を定めた規定はありません。

長年の付き合いに対する礼として渡す人もいますが、金額の相場を示す公的な統計はありません。

請求された場合は、金額と根拠を書面で出してもらったうえで判断してください。

証明書の発行を金額の交渉材料にされるような状況なら、宗派の宗務所や弁護士への相談に進む段階になります。

永代供養にすれば、あとの管理は永久に任せられますか

「永代」は永久という意味ではありません。

多くの施設は三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その期間が終わると他の遺骨と一緒に合祀します。

合祀後は遺骨を取り出せなくなるため、契約前に個別安置の年数と、期間が終わったあとの扱いを規約で確かめてください。

年間の管理費が別途かかる施設もあります。

まとめ

墓じまいに法定の期限はなく、始めるきっかけは自分で作るしかありません。

動き出す順番は決まっていて、受け入れ先を契約して受入証明書をもらうまで改葬許可の申請には進めず、埋葬証明書をもらう段階で寺とは必ず向き合います。

この2枚の書類の出どころを先に押さえておけば、どこで誰と話さなければならないかが見えます。

親族への相談は、管理料の実額と受け入れ先の資料、撤去の見積書を手元に置いてから持ち出してください。

先延ばしにしても管理料は毎年出ていき、承継者が決まらないまま代が変わると、次の世代は名義を調べ直すところから始めることになります。

ぜひ本記事の7工程の順序と3点の書類の取り寄せ先を参考に、今年のうちに話す相手と時期を決めてください。

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