墓じまいの流れは?改葬許可申請から納骨までの手順

改葬許可証の申請には、新しい納骨先が発行する受入証明書を添えます。
移す先が決まらないうちは、市区町村の窓口へ行っても手続きが始まりません。
先に石材店へ撤去の見積もりを取ったり、住職に離檀を切り出したりして順序が入れ替わり、そこで止まる人がいます。
改葬そのものは珍しい手続きではなく、厚生労働省の衛生行政報告例では令和4年度に151,076件が届け出られています。
本記事では、着手から納骨までの6ステップ・改葬許可申請に要る3通の書類と取り寄せ先・親族と寺院へ切り出す順番を解説します。
墓じまいの流れは6ステップ|起点は新しい納骨先を決めること
墓じまいと改葬は別のものです。
墓石を撤去して区画を管理者へ返すのが墓じまいで、遺骨を別の場所へ移すのが改葬になります。
ふだんは一括りに語られますが、役所へ出す申請は改葬のほうにかかります。
両者の関係は墓じまいと改葬の全体像で解説しています。
実際に動く順番は次のとおりです。
| 順番 | やること | 相手・窓口 |
|---|---|---|
| 1 | 親族に意向を伝え、進めることの合意を得る | 兄弟姉妹・叔父叔母など |
| 2 | 新しい納骨先を決め、受入証明書を受け取る | 霊園・寺院・納骨堂の管理者 |
| 3 | 今の墓地の管理者に伝え、埋葬証明書を受け取る | 寺院・民営霊園・公営霊園の管理事務所 |
| 4 | 改葬許可申請書を提出し、改葬許可証を受け取る | 今の墓地がある市区町村 |
| 5 | 閉眼供養と遺骨の取り出し、墓石の撤去と区画の返還 | 僧侶・石材店 |
| 6 | 改葬許可証を提出して納骨する | 新しい納骨先の管理者 |
全体にどれだけかかるかは、親族の合意にどれだけ時間が要るか、受け入れ先に空きがあるか、寺院と石材店の日程が取れるかで変わります。役所の審査より、この3つのほうが日数を左右します。
納骨先が決まらないうちは、役所は申請を受け付けない
改葬許可申請書には遺骨の移転先を書く欄があり、受け入れ先が発行する受入証明書を添えるのが原則です(墓地、埋葬等に関する法律5条・施行規則2条)。順番を逆にして石材店から動くと、見積もりを取ったあとで納骨先の条件が合わず、遺骨の数や区画の条件から選び直しになることがあります。
納骨先の価格帯は種類でかなり違います。
鎌倉新書の第17回お墓の消費者全国実態調査では、平均購入価格は一般墓が152.0万円、納骨堂が81.5万円、樹木葬が71.7万円でした(2026年1月時点)。
購入割合では樹木葬が47.4%を占め、合祀墓・合葬墓が16.4%、納骨堂が15.5%と続きます。
この調査はポータルサイト「いいお墓」経由で購入した1,267人への調査なので、全国平均ではなく、そのサイトを使って買った人の数字として読んでください。
納骨堂を候補にするなら、納骨堂のタイプ別費用と管理料で解説しています。
親族への相談は、納骨先の候補を手元に置いてから
墓と仏壇と位牌は祭祀財産として、相続財産とは別に1人が引き継ぎます(民法897条)。
指定がなければ慣習により、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
相続放棄をした人でも祭祀承継者にはなれます。
つまり法律上は、承継した1人の判断で改葬を進められる建て付けです。
それでも先に親族へ話すのは、あとから「聞いていない」と言われたときに戻せないからです。
遺骨を取り出して合祀墓へ納めれば、取り出しはできません。
話す順番は、まず同じ代の兄弟姉妹、そのうえで叔父叔母などお参りに来ている親族という形が動かしやすいです。
改葬許可申請に要る3通の書類と、取り寄せ先
窓口に持っていくものは、基本的に3通です。どれも自分で作る書類ではなく、相手にお願いして発行してもらうものなので、手配の順番を間違えると取り直しになります。
受入証明書は新しい納骨先の管理者から
新しく遺骨を納める霊園・寺院・納骨堂の管理者が発行します。
契約や使用許可の手続きを済ませた時点で出してもらえるのが一般的で、様式は施設側が持っています。
遠方の施設なら郵送で送ってもらえるか、申し込みのときに確認しておくと二度手間になりません。
永代使用許可証の写しで代えられる市区町村もあり、何を添付するかは申請先の窓口の指示に従います。
埋葬証明書は今の墓地の管理者から
今遺骨が納められている墓地の管理者、つまり寺院の住職や霊園の管理事務所が「この墓に誰が埋葬されているか」を証明する書類です。
多くの市区町村では、改葬許可申請書の用紙の中に管理者の証明欄があり、そこへ署名と押印をもらう形になっています。
用紙を先に役所でもらってから墓地へ持ち込むほうが早いこともあるため、様式を窓口で確認してください。
この書類は、寺院との話がついていないと出してもらえません。離檀の話を切り出す場面と重なるところです。
改葬許可申請書は今の墓地がある市区町村から
申請先は、移す先ではなく今の墓地がある市区町村です。
実家の墓が遠方にあるなら、書類を送る先も帰省する先もそちらになります。
用紙は窓口のほか、ホームページから様式をダウンロードできる自治体もあります。
記入するのは、亡くなった人の氏名と本籍・死亡年月日・埋葬の年月日、現在の墓地の名称と所在地、移転先、そして改葬の理由です。
理由は「後継者がいないため」「遠方で管理が困難なため」といった事実を書けば足ります。
遺骨1体ごとに1通という扱いの自治体もあるので、埋葬されている人数を先に確かめてください。
手数料と発行までの日数も市区町村で違います。
なお、遺骨の一部を手元に置く分骨は改葬ではなく、墓地管理者か火葬場が出す分骨証明書を使います(墓地、埋葬等に関する法律施行規則5条)。改葬許可証とは別の書類です。
改葬許可証を受け取る窓口と、墓じまいを進める時期の決め方
書類がそろったら、今の墓地がある市区町村の担当課へ提出します。
許可が出れば改葬許可証が交付され、これを新しい納骨先へ渡して納骨します。
遺骨の取り出しのときにも提示を求められるので、工事日までに手元に置いておきます。
申請できるのは墓地使用者と祭祀承継者
申請するのは原則として墓地の使用者、つまり名義人です。
名義人が亡くなっていて自分が引き継ぐ立場なら、先に墓地管理者のところで使用者の名義変更を済ませるよう求められることがあります。
名義人と申請者が別人の場合、使用者の承諾書を添える扱いをしている自治体もあります。
平日しか開いていない窓口が多く、遠方の墓地だと往復が負担になります。
郵送での受付や、代理人による申請を認めている市区町村もあるため、帰省の日程を組む前に電話で確認してください。
代理人に頼むなら委任状が要ります。
改葬に法律上の期限はないが、待っている間も管理料は続く
相続の手続きには期限があります。
相続放棄は自分が相続人だと知った時から3か月、相続税の申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月、相続登記は取得を知った日から3年以内です。
一方、改葬と墓じまいに法律上の期限はありません。
四十九日や一周忌に合わせる人もいれば、何年も先送りする人もいます。
ただ、決めないでいる間も年間管理料は発生し続けます。
支払いが途絶えた状態が続くと、規約に沿って使用権が取り消され、無縁墓として改葬される扱いになる墓地もあります。
自分の代で判断するか、子の代に持ち越すかという話でもあるので、先送りで何が増えるかは墓じまいを始めるタイミングで解説しています。
墓じまいが止まるのは、親族への切り出しと離檀を伝える場面
書類の手配でつまずく人はあまりいません。止まるのは、人に話す2つの場面です。
叔父叔母に話すときに手元へ置く資料
反対が出るのは、たいてい「先祖に申し訳ない」という気持ちからで、これは説得で消えるものではありません。
そのため、気持ちの是非ではなく事実を並べる形にします。
用意しておくものは次の4点です。
- 今の墓の所在地と、自宅からの距離・交通手段
- 年間管理料の額と、これまで誰が払ってきたか
- 自分と子の年齢、子の居住地
- 候補にしている納骨先のパンフレットと費用
「誰も行けなくなったときにどうするか」を先に置くと、手放す話ではなく引き継ぎ方の話になります。お参りを続けたい親族がいるなら、合祀ではなく個別に安置される納骨先を選ぶ、分骨して手元に残すといった折衷もあります。
離檀料は金額と根拠を書面で確認する
檀家をやめることに、法律上の支払義務を定めた規定はありません。
それでも離檀のときに金額を求められる例はあり、そこで話がこじれます。
口頭のやり取りだけにせず、何に対する費用としていくらなのかを書面で示してもらってください。
墓の閉眼供養のお布施と、離檀にあたっての謝礼は別のものです。
切り出し方としては、いきなり「墓じまいをしたい」と伝えるより、継ぐ人がいない事情を先に話して相談の形にするほうが進みます。
長年の付き合いに対する礼を述べる場でもあります。
埋葬証明書の発行を断られた場合は、今の墓地がある市区町村の担当課へ相談してください。
取り扱いは自治体で異なります。
墓を開けてから分かること
遺骨の数が墓誌の記載と合わないことがあります。
骨壺が土に還っていたり、水が溜まっていたりする場合もあり、申請する体数や洗骨・乾燥の作業が変わります。
石材店に現地を見てもらう段階で、カロート(納骨室)の中を確認できるか聞いておくと、あとからの追加を減らせます。
受け入れ先の規定も、契約前に読み込む必要があります。
永代供養は永久という意味ではなく、多くの施設では三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀されます。
合祀されると遺骨は取り出せません。
個別安置の年数と合祀後の扱いは永代供養の種類ごとの違いで解説しています。
自分で動く範囲と、石材店・行政書士に渡す範囲
手続きのうち、書類の取り寄せと役所への申請は自分でできます。
改葬許可申請書は記入欄が決まっており、難しいのは書式ではなく、遠方の窓口へ平日に行く段取りのほうです。
納骨先を探して比較するのも、親族と寺院に話すのも、代わりにやってもらえる部分ではありません。
外部に頼むのは墓石の撤去工事です。
ここは石材店の仕事で、寺院や霊園が指定石材店を定めていることもあります。
費用は区画の面積、外柵とカロートの量、重機が入れるかどうか、遺骨と資材の搬出経路で決まります。
同じ広さでも、車が横づけできる区画と、階段を担いで下ろす区画では作業量が違います。
複数の見積もりを取るなら、撤去の範囲・処分費・整地をどこまで含むかを同じ条件でそろえて比べてください。
内訳の見方は墓じまいの費用の内訳で解説しています。
書類の代行を行政書士などに頼む選択もあります。
判断の目安になるのは、墓地が遠方で平日に動けるかどうか、遺骨の数が多くて申請が何通にもなるかどうかの2点です。
逆に、遺骨が1〜2体で帰省の予定があるなら、自分で窓口へ行くほうが早く済みます。
公営霊園の返還や墓石の撤去に助成を出している自治体もありますが、制度の有無も条件も市区町村で違います。
工事を契約する前に申請が要る制度もあるため、着手前にお住まいの、あるいは墓地のある市区町村の窓口で確認してください。
制度の探し方は墓じまいの補助金と申請条件で解説しています。
よくある質問
改葬許可証がないまま、遺骨を持ち帰ってもいいですか
墓地から取り出して別の墓地や納骨堂へ納めるなら、改葬許可証が要ります。
許可証なしに遺骨を移すのは墓地、埋葬等に関する法律に反する行為です。
遺骨を自宅に置く手元供養は改葬にあたらないとされますが、取り出しの際に墓地管理者が許可証の提示を求める場合もあり、扱いは市区町村で異なります。
取り出す前に窓口へ確認してください。
遺骨の一部だけを手元に置くなら、分骨証明書を発行してもらいます。
親族全員の同意がないと墓じまいはできませんか
法律上、改葬を申請できるのは墓地の使用者で、墓を引き継いだ祭祀承継者が1人で手続きを進めることは可能です。
同意書の提出を求める市区町村もありますが、一般には全員の署名が要件とされているわけではありません。
ただし合祀墓へ納めると遺骨は取り出せず、あとから反対されても元に戻せません。
お参りに来ている親族には先に伝えておくほうが、結果として早く進みます。
離檀料を提示されたら、その額を払わなければなりませんか
離檀料の支払いを義務づける法律の規定はありません。
相場として示せる公的な統計もないため、他と比べて高いかどうかを判断する材料は乏しいのが実情です。
何に対する費用なのかと金額を書面で示してもらい、閉眼供養のお布施と分けて確認してください。
話がつかず埋葬証明書が出ない場合は、墓地がある市区町村の担当課に相談する方法があります。
墓じまいのあと、遺骨の移し先はどれが選ばれていますか
鎌倉新書の第17回お墓の消費者全国実態調査では、購入割合は樹木葬が47.4%、合祀墓・合葬墓が16.4%、納骨堂が15.5%、一般墓が15.2%でした(2026年1月時点)。
選ぶときに重視した点は、お墓の種類が50.0%、金額が43.9%、継承者が不要なことが38.8%、お参りのアクセスが38.4%です。
継ぐ人がいない事情で選ばれている様子がうかがえますが、この数字は同サイト経由で購入した1,267人の回答である点を踏まえて読んでください。
申請から納骨まで、どのくらいの期間をみればいいですか
役所の許可そのものより、その前後で日数が動きます。
親族の合意、受け入れ先の空き状況と契約、寺院の閉眼供養の日程、石材店の工事日程の4つが並ぶまでが本体です。
遠方の墓地で平日の窓口へ行く回数が限られる場合は、郵送や代理申請が使えるかどうかでも変わります。
帰省の予定が決まっているなら、その日に何を済ませるかを逆算して手配してください。
まとめ
墓じまいで順序を間違えやすいのは冒頭です。
改葬許可申請には受け入れ先の受入証明書が要るため、納骨先を決めないうちは役所も石材店も先へ進めません。
書類は受入証明書・埋葬証明書・改葬許可申請書の3通で、申請先は移す先ではなく今の墓地がある市区町村になります。
実際に止まるのは、親族に切り出す場面と、寺院に離檀を伝える場面です。
法律上は祭祀承継者1人で申請できますが、合祀すれば遺骨は戻せません。
先に伝えておくほうが後悔は残りにくくなります。
離檀料は金額と根拠を書面で確認してください。
ぜひ本記事の6ステップの表と、親族に話すときの4点の資料を手元に置いて、まずは納骨先の候補を1つ選ぶところから進めてください。

