直葬と一日葬の違いは?費用を抑える選び方をやさしく解説

入院中の親のことで葬儀社に電話をすると、たいてい最初に「通夜はされますか」と聞かれます。
ここで答えが出ないのは、直葬と一日葬の違いを日数の差だと思って比べているからです。
実際に分かれているのは、葬儀・告別式という式を行うかどうかで、直葬は式を省いて安置と火葬だけを行います。
そして火葬は、死亡から24時間を経過した後でなければできません(墓地、埋葬等に関する法律3条)。
どちらを選んでも安置の1日は必ず入り、そこに費用が発生します。
本記事では、直葬と一日葬で省ける費用の中身・葬祭費と埋葬料の請求先・亡くなる前に決めておける範囲を解説します。
直葬と一日葬の違いは、葬儀・告別式を行うかどうか
一日葬は、通夜を省いて葬儀・告別式と火葬を1日にまとめる形です。
参列者を招いて式を行う点は二日間の葬儀と変わらず、減るのは通夜の分の会場使用と、通夜のあとの飲食や宿泊です。
直葬は式そのものを行わず、安置を経て火葬場へ向かいます。
火葬炉の前で短く読経をしてもらう形を取る家もありますが、式場を使った葬儀・告別式は入りません。
| 形式 | 通夜 | 葬儀・告別式 | 式場の使用 |
|---|---|---|---|
| 直葬(火葬式) | 行わない | 行わない | 原則なし(火葬場の炉前のみ) |
| 一日葬 | 行わない | 1日で行う | 半日〜1日 |
| 家族葬・一般葬 | 行う | 翌日に行う | 2日 |
どちらを選んでも消えない費用があります。
棺(ひつぎ)、病院や施設から安置先までの寝台車、安置中のドライアイスや霊安室の使用、火葬料、骨壺です。
ここは形式に関係なく積まれる部分で、直葬にしても半分以下にはなりません。
呼び方は葬儀社ごとに違う
直葬は「火葬式」「炉前葬」などの名前で案内されることがあり、一日葬も「ワンデーセレモニー」のような商品名で並んでいる場合があります。
名前で比べても中身は分かりません。
見るのは、式場を何日使うか、通夜の飲食が入っているか、安置が何日分含まれているかの3点です。
プラン名が違っても、この3つが同じなら同じ形式です。
通夜・葬儀・告別式は、それぞれ別の場面を指す言葉
見積書と葬儀社の説明を読むには、この3語を分けておくほうが早いです。
通夜は火葬の前夜に集まる場面、葬儀は宗教者が故人を送る儀礼、告別式は縁のあった人が最後の別れをする場面を指します。
もともと葬儀と告別式は目的の違う別の式で、現在は続けて行われることが多いため、まとめて「葬儀・告別式」と呼ばれています。
この違いが読者の判断に関わるのは、費用が「式を何回・何日行うか」に連動する点です。
式場使用料も祭壇も、通夜と葬儀・告別式の両方を行えば2日分になります。
一日葬が安くなる理由は、儀礼の格を落としたからではなく、会場を借りる日数と、参列者に出す飲食の回数が1回分減るからです。
告別式だけを残して通夜をやめる形が一日葬
宗教者を呼ぶかどうかは、形式とは別の選択です。
一日葬でも宗教者を招かない形はありますし、直葬でも火葬炉の前で読経を頼むことはできます。
ただ、菩提寺(ぼだいじ)がある家では、通夜と葬儀を省いた形を寺院が受け入れるかどうかが先に来ます。
納骨の段階になって話が止まる例があるため、寺院との付き合いがあるなら、形式を決める前に住職へ相談してください。
火葬は死後24時間後から|日程が葬儀の形を左右する
死亡から24時間を経過しないと火葬も埋葬もできません(墓地、埋葬等に関する法律3条。
指定感染症などの例外があります)。
つまり亡くなった当日に火葬を済ませることはできず、直葬でも最低1日は安置します。
安置先は自宅か、葬儀社の霊安室です。
この安置日数を、遺族の側では決められません。
火葬場の予約が空いていなければその日まで待つことになり、都市部では数日待つことがあります。
年末年始や、友引を休場としている火葬場の翌日は特に混みます。
安置は日数に応じてドライアイスや霊安室の料金が加算されていく仕組みなので、待つ日数がそのまま費用に乗ります。
直葬でも「その日のうちに終わる」わけではない
直葬を選ぶ理由が「短く済ませたい」なら、実際に短縮されるのは式の時間だけです。
死亡から火葬までの日数は、一日葬でも直葬でもほとんど変わりません。
日程の組み方そのものは形式が違っても共通で、通夜と葬儀を行う場合の一連の流れは家族葬の流れ|1日目から精進落としまでの手順で解説しています。
何をどこまで省くのかを考えるとき、省く前の形を見ておくと判断しやすくなります。
葬儀費用が変わるのは、式の日数と人数と安置日数
総額を左右する変数は決まっています。ここを押さえておけば、複数の見積もりを同じ条件で並べられます。
- 式場を使う日数(通夜を行うかどうかで1日変わります)
- 参列者の人数(飲食、返礼品、会葬礼状が人数比例で動きます)
- 安置の日数(火葬場の空き状況で決まります)
- 火葬料(公営か民営か、その自治体の住民かどうかで変わります)
- 寝台車・霊柩車の走行距離(病院や施設から遠い斎場を選ぶと増えます)
宗教者へのお布施は、葬儀社のプラン外で別に用意するのが一般的です。
プラン料金だけを見て総額を組むと、ここが抜け落ちます。
形式ごとの相場の開きは葬儀費用の平均はいくら?形式別の相場を比べて確認で解説しています。
見積もりで抜けやすいのは、人数で動く項目
プラン料金に含まれるのは、たいてい人数に関係なく必要なもの(棺・祭壇・寝台車・骨壺)です。
飲食と返礼品は「1名あたり◯円×◯名」で後から積まれるため、参列者が想定より増えると総額が動きます。
見積書を取るときは、想定人数を自分から伝えて、その人数で計算した金額を出してもらってください。
比較のときに見る項目は葬儀社はどう比較する?見積もりで見るべき項目で解説しています。
葬祭費と埋葬料|葬儀の後に請求できる給付
費用を抑える話は、支出を削るだけではありません。
故人が加入していた医療保険から、葬儀に関する給付を受けられます。
国民健康保険と後期高齢者医療の加入者が亡くなった場合は葬祭費、健康保険の被保険者が亡くなった場合は埋葬料です。
健康保険の埋葬料は一律5万円です(健康保険法100条・2026年9月時点)。
国民健康保険の葬祭費は、市区町村の条例で額が定められているため、住んでいた自治体によって違います。
金額と申請先はお住まいの市区町村の窓口で確認してください。
どちらの制度から給付されるかは、故人が加入していた医療保険で決まるので、健康保険証の種類を先に確認しておくと迷いません。
申請は自動ではなく、遺族からの請求が必要です。
葬儀の領収書や、葬儀を行った人の氏名が分かる書類を求められる場合があるため、領収書の宛名は喪主にしておき、そのまま保管してください。
必要書類と期限は自治体や保険者ごとに異なります。
生前に費用を用立てておく方法もある
亡くなった後に故人の口座から出そうとすると、金融機関が死亡を把握した時点で入出金が止まります。
加えて、相続放棄を検討している場合は、故人の財産を使う行為が後の判断に影響することがあります。
手元の現金で払える範囲を超えるなら、生前に本人の意思で準備する形が確実です。
少額の掛け金で葬儀費用に充てる保険もあり、仕組みと注意点は葬儀保険とは?加入前に確かめたい仕組みと注意点で解説しています。
直葬・一日葬・家族葬、どれを選ぶかは呼ぶ人数で決まる
形式から選ぶと迷います。先に「誰に来てもらうか」を書き出して、その人数と関係から形式を逆算するほうが早く決まります。
直葬が向いている場合
呼ぶ相手が同居家族と子どもだけ、故人が高齢で友人の参列が見込めない、あるいは本人が式を望んでいない場合です。
菩提寺がなく、納骨先も公営墓地や納骨堂を考えているなら、寺院との調整も生じません。
ただし後になって「せめて手を合わせたかった」という親族が出ることがあるため、四十九日や納骨のときに集まる場を設ける前提で決めると収まりやすくなります。
一日葬が向いている場合
親族が20〜30人規模で、遠方から来る人がいる場合です。
通夜と葬儀の両方に付き合わせると宿泊が必要になりますが、1日なら日帰りで済む人が増えます。
式を行うので、参列した人にとっては別れの場が残ります。
喪主が高齢だったり、介護を続けてきて体力が落ちている場合も、2日間の対応を1日に縮められます。
通夜を含む家族葬が向いている場合
故人に現役の付き合いがあり、訪ねてくる人の時間を読めない場合です。
通夜があると、日中に動けない人が仕事の後に来られます。
呼ぶ範囲をどこで線引きするか、誰にどう伝えるかは家族葬とは?一般葬との違いと呼ぶ範囲の決め方で解説しています。
人数が読めないまま直葬に決めると、後から個別の弔問が続いて対応が長引くことがあります。
葬儀を決めるのは誰か、払うのは誰か
形式を決める権限は、法律で誰かに与えられているわけではありません。
実際には喪主を務める人が判断します。
一方で、お墓・仏壇・位牌といった祭祀(さいし)財産は相続財産とは別枠で、1人が引き継ぎます(民法897条)。
指定がなければ慣習によって決まり、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。
相続を放棄した人でも、祭祀を引き継ぐことはできます。
揉めやすいのは費用の負担です。
喪主が立て替えた葬儀費用を、後の遺産分割でどう扱うかは相続人の話し合い次第で、金額が大きいほど不満が残ります。
本人が生きているうちに、誰が喪主を務め、費用をどこから出すのかを家族の間で言葉にしておくと、この論点が消えます。
本人の希望は口約束にせず書き残す
「派手なことはしなくていい」という一言だけでは、直葬なのか一日葬なのかは分かりません。
呼ぶ人の範囲、菩提寺の有無、遺骨をどこへ納めるかまで書いておくと、遺族が判断を迫られずに済みます。
書く項目と、そこに法的な効力があるかどうかの区別はエンディングノートとは?書くべき項目と役割で解説しています。
死亡届は7日以内|葬儀の後に続く手続きの期限
葬儀は手続きの入口です。
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村へ提出します(戸籍法86条)。
これを出して火葬許可証を受け取らないと火葬ができないため、実務では葬儀社が代行することが多い部分です。
その先に控えている期限を、起算日とあわせて確認してください。
| 手続き | 期限 | 起算日 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 死亡届 | 7日以内 | 死亡を知った日 | 市区町村 |
| 厚生年金の受給停止 | 10日以内 | 死亡日 | 年金事務所 |
| 国民年金の受給停止 | 14日以内 | 死亡日 | 市区町村・年金事務所 |
| 世帯主変更届 | 14日以内 | 死亡日 | 市区町村 |
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 自分が相続人だと知った時 | 家庭裁判所 |
| 準確定申告 | 4か月以内 | 相続開始を知った日の翌日 | 税務署 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 相続開始を知った日の翌日 | 税務署 |
| 相続登記 | 3年以内 | 不動産を取得したと知った日 | 法務局 |
世帯主変更届が必要になるのは、残る世帯員に15歳以上の人が2人以上いる場合です(住民基本台帳法25条)。
相続放棄の3か月は「亡くなった日」からではなく「自分のために相続の開始があったことを知った時」から数えます(民法915条)。
判断が間に合わないときは、期間内に家庭裁判所へ伸長を申し立てられます。
相続税は、基礎控除が3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
ここを超えなければ申告そのものが要りません。
ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額をゼロにする場合は、申告が必要になります。
実家があるなら、相続登記は2024年4月1日から義務化されていて、それ以前に相続した不動産も対象です(期限は2027年3月31日)。
何も決めないまま急変すると、選ぶ時間がなくなる
病院で亡くなると、遺体は数時間のうちに移動を求められます。
この場面で病院から葬儀社を紹介されますが、その場で契約する義務はありません。
紹介された会社に搬送だけを頼み、葬儀の依頼は別の会社にする形も取れます。
断りにくい雰囲気があっても、「搬送のみお願いします」と伝えて構いません。
決めていない場合に費用が膨らむのは、深夜に見積もりを比べられないからです。
祭壇の大きさも返礼品の数も、判断材料のないまま勧められた内容で決まっていきます。
逆に、元気なうちに2〜3社へ生前相談をしておけば、同じ条件で見積もりを持っておけます。
相談で確かめる項目は葬儀屋はどう選ぶ?生前相談で確かめたい項目で解説しています。
遺骨の行き先が決まっていないと、費用は葬儀で終わらない
直葬で費用を抑えても、納骨先が未定なら支出はそこから続きます。
お墓の平均購入価格は、樹木葬が71.7万円、納骨堂が81.5万円、一般墓が152.0万円です(鎌倉新書 第17回お墓の消費者全国実態調査/2026年1月時点)。
葬儀の形式より、こちらのほうが金額が大きくなることもあります。
永代供養を選ぶ場合、「永代」は永久という意味ではありません。
多くの施設では三十三回忌や十七回忌までを個別に安置し、その後は他の遺骨と一緒に合祀(ごうし)されます。
合祀された後は遺骨を取り出せなくなるため、個別安置の年数と合祀後の扱いを契約前に確認してください。
種類ごとの違いは永代供養とは?種類ごとの違いと向いている人で解説しています。
よくある質問
直葬と火葬式は同じ意味ですか
ほぼ同じ意味で使われています。
葬儀社によって「直葬」「火葬式」「炉前葬」と呼び名が分かれるだけで、通夜と葬儀・告別式を行わず火葬をする形を指します。
名前ではなく、安置が何日分含まれているか、火葬料が含まれているかで比べてください。
直葬にすると菩提寺に納骨できないことがありますか
寺院の考え方によって異なり、通夜と葬儀を行わなかったことを理由に納骨や戒名の相談が難しくなる例があります。
寺院ごとの判断なので一律には言えません。
菩提寺がある場合は、形式を決める前に住職へ相談し、納骨まで含めてどうするかを話しておいてください。
一日葬にすれば費用は半分になりますか
半分にはなりません。
減るのは通夜の分の式場使用料と、通夜のあとの飲食です。
棺、寝台車、安置、火葬料、祭壇、返礼品は残ります。
どの項目がいくら減るのかは、通夜を行う場合の見積もりと、一日葬の見積もりを同じ人数で並べると分かります。
病院で紹介された葬儀社は断ってもいいのですか
断って構いません。
搬送だけを依頼して、葬儀の契約は別の会社と結ぶこともできます。
ただし搬送費が別途かかるため、依頼する範囲を電話の時点ではっきり伝えてください。
葬儀社と生前に契約したあとで解約できますか
解約の条件と手数料は契約ごとに違います。
積立や事前契約を勧められた場合は、解約時に戻る金額と手数料を書面で確認してから署名してください。
口頭の説明だけで決めないことが大事です。
葬祭費と埋葬料は両方受け取れますか
故人が加入していた医療保険の制度に応じて、どちらか一方です。
国民健康保険と後期高齢者医療の加入者なら葬祭費、健康保険の被保険者なら埋葬料になります。
判断に迷う場合は、健康保険証を持って市区町村の窓口か年金事務所で確認してください。
葬儀費用を故人の預金から出しても大丈夫ですか
金融機関が死亡を把握すると口座からの出金が止まるため、そもそも自由には使えません。
加えて、相続放棄を考えている場合は、故人の財産に手を付ける行為が後の判断に関わることがあります。
借金の有無が分からない段階なら、預金を動かす前に弁護士へ相談してください。
まとめ
直葬と一日葬の違いは日数ではなく、葬儀・告別式という式を行うかどうかです。
式をやめれば式場と通夜の飲食は消えますが、安置と火葬にかかる部分は形式を変えても残ります。
火葬は死亡から24時間を経過しないとできず、火葬場が混んでいれば安置日数が伸びて費用も動きます。
決めておく順番は、呼ぶ人を書き出し、菩提寺があるかを確認し、そこから形式を選び、遺骨の行き先まで見通すという流れです。
ここまで生前に決めておけば、急変した夜に見積もりを比べる必要がなくなります。
ぜひ本記事の形式の比較表と費用の変数を手元に置いて、生前相談で2社以上の見積もりを取っておいてください。


