家族葬とは?一般葬との違いと呼ぶ範囲の決め方を解説

家族葬の平均費用は96.39万円、一般葬は122.01万円です(鎌倉新書 第7回お葬式に関する全国調査/2026年3月時点)。差は26万円ほどで、参列者を数十人から十数人に絞っても総額はそこまで下がりません。
式場の使用料や火葬料、寝台車の費用は人数が減っても変わらず、参列者数に比例して動くのは飲食と返礼品にあたる部分です。
そのうえ香典も入らなくなります。
費用の安さだけを理由に家族葬を選ぶと、思っていたほど負担が軽くならないという結果になります。
本記事では、家族葬と一般葬・一日葬の違い、呼ぶ範囲をどこで線引きするか、生前相談で葬儀社に確かめておく項目を解説します。
家族葬とは、呼ぶ範囲を家族と親しい人に絞った葬儀
家族葬という言葉に、法律や行政の定義はありません。
葬儀社ごとに指す範囲が少し違い、「家族と親族のみ」と説明する会社もあれば、「三十名までのご葬儀」と人数で区切る会社もあります。
共通しているのは、訃報を知らせる相手を絞る点だけです。
式そのものの骨組みは一般葬と同じです。
通夜を行い、翌日に葬儀・告別式をして、火葬場へ向かいます。
祭壇を用意し、宗教者に読経を頼み、市区町村で火葬許可を受けてから火葬する流れも変わりません。
鎌倉新書の第7回お葬式に関する全国調査(2026年3月時点)では、直近2年以内に喪主を経験した2,000人のうち47.0%が家族葬で、形式としては最も多く選ばれていました。
特別な葬儀ではなく、いまの標準に近い選択です。
「家族だけ」と決まっているわけではない
名前に引っ張られて、家族以外を呼べない形式だと思い込む人がいます。
実際には、故人が毎週会っていた友人や、長く付き合いのあった近所の方を入れても家族葬です。
逆に、親族が全国に散っていて十数人集まれば、人数だけなら小さめの一般葬と変わりません。
線を引く基準は人数ではなく、「誰に知らせて、誰には後で伝えるか」という判断です。
一般葬から減るのは、会葬者への対応の部分
一般葬で手間と費用がかかるのは、当日どれだけの人が来るか読めない部分です。
受付を立て、返礼品を多めに用意し、通夜振る舞いの食事も人数を見積もって発注します。
家族葬ではこの読みが不要になり、その分の準備が軽くなります。
一方で、式の日数や進行そのものは短くなりません。
亡くなってから火葬までに何をするかは家族葬の流れ|1日目から精進落としまでの手順で解説しています。
家族葬・一日葬・直葬の違いは、日数と呼ぶ人数で決まる
葬儀の形式を並べると多く見えますが、違いは2つしかありません。
何日かけるかと、誰まで呼ぶかです。
この2つの組み合わせが、そのまま平均費用の差になっています。
| 形式 | 日数 | 呼ぶ範囲 | 平均費用 |
|---|---|---|---|
| 一般葬 | 2日(通夜+葬儀・告別式) | 親族・職場・近所・友人 | 122.01万円 |
| 家族葬 | 2日(通夜+葬儀・告別式) | 家族と親しい人 | 96.39万円 |
| 一日葬 | 1日(通夜を省く) | 家族中心 | 74.43万円 |
| 直葬・火葬式 | 式を行わない | 家族のみ | 49.56万円 |
金額はいずれも鎌倉新書の第7回お葬式に関する全国調査(2026年3月時点)の平均値です。
表を縦に見ると、家族葬と一日葬の差は通夜の有無だけで20万円ほど、一日葬と直葬の差は式を行うかどうかで25万円ほどになります。
呼ぶ人数を削るより、日数と式そのものを削るほうが金額は大きく動きます。
ただし削った分は別の形で戻ってきます。
通夜を省けば、遠方の親族が式に間に合わない可能性が出ます。
式を行わなければ、後日訪ねてくる人への対応が続きます。
費用を最優先にするならどこまで省けるのかは、直葬と一日葬の違い|費用を抑える選び方で解説しています。
家族葬の費用は平均96.39万円。金額を動かすのは人数と日数
96.39万円という平均は、あくまで全国の真ん中あたりの数字です(鎌倉新書 第7回お葬式に関する全国調査/2026年3月時点)。同じ家族葬でも、次の条件で総額は上下します。
- 参列者の人数(飲食と返礼品は一人あたりで増える)
- 通夜を行うかどうか(式場の使用料が1日分か2日分か)
- 式場が民営か公営か、自宅か
- 宗教者を呼ぶかどうか、その謝礼の額
- 火葬料(市区町村や民営斎場によって差がある)
- 病院や施設から安置場所までの搬送距離と、安置日数
このうち事前に読みにくいのが安置日数です。
火葬場が混み合っていると、亡くなってから火葬まで数日待つことになり、待っている間の安置料や保冷の費用が日数分かかります。
都市部では特に起こりやすい事情で、生前相談の段階で「地域の火葬場はどれくらい待つのか」を聞いておくと見積もりの精度が上がります。
もうひとつ抜けやすいのが、香典を見込めなくなる点です。
一般葬なら参列者からの香典が費用の一部を埋めますが、呼ぶ人を絞ればその収入も減ります。
手元から出る現金の額で比べると、一般葬との差は平均値の26万円ほどより小さくなることがあります。
人数ごとの目安と内訳の見方は家族葬の費用はいくら?人数別の目安と内訳で解説しています。
家族葬で呼ぶ範囲は、名前を書き出してから線を引く
「家族葬にする」と決めただけでは、当日になって連絡漏れが出ます。人数から決めるのではなく、名前を書き出して、その名簿に線を引く順番で考えてください。
名簿は三つの枠に分けて作る
用意する枠は、通夜から呼ぶ人、葬儀・告別式だけ呼ぶ人、亡くなったことを後日伝える人の3つです。
書き出す材料は、年賀状の束と携帯電話の連絡先、それに親の兄弟姉妹の家族構成が分かるメモになります。
親が元気なうちであれば本人に聞けますし、入院中でも話せる状態なら、誰に知らせてほしいかを一度確認しておくと後で迷いません。
エンディングノートとは?書くべき項目と役割で解説しているとおり、連絡してほしい人の一覧は本人にしか書けない項目です。
迷いやすいのは、親の兄弟と職場関係
線引きで手が止まるのは、親の兄弟姉妹とその子ども、それに故人が勤めていた会社や取引先です。
血縁の側は、二親等までは呼ぶ、いとこは後日連絡する、といった形で基準を先に決めると判断が早くなります。
会社関係は、退職していれば後日の連絡で足りることが多く、在職中なら勤務先には亡くなった事実と「葬儀は家族のみで行う」という方針を同時に伝えます。
伝え方を誤ると、良心から参列しようとする人が出ます。
断る手間をかけないためには、最初の連絡で参列を辞退する旨を書き添えるのが確実です。
具体的な文面の組み立ては家族葬を選ぶときの注意点|親族に納得してもらう伝え方で解説しています。
葬儀社は生前に決められる。家族葬の見積書で確かめる項目
葬儀社を選ぶ時間がいちばん無いのは、亡くなった直後です。
病院からは数時間で退室を求められ、その場で搬送先と葬儀社を決めることになります。
逆に言えば、生前に決めておける項目はほとんど全部です。
見積もりも、葬儀社に依頼すれば事前に出してもらえます。
見積書は「含まれていないもの」から読む
家族葬のプラン料金は、含まれる範囲が会社ごとに違います。総額だけを比べても意味がないため、次の費目がプランの内か外かを1つずつ確認してください。
- 火葬料(公営でも有料の自治体があり、プラン外の扱いが多い)
- 式場の使用料と、安置施設の利用料
- 搬送距離の上限と、超えた場合の追加額
- 安置が延びたときの1日あたりの追加額
- 飲食と返礼品(人数が確定してからの後追い請求になる)
- 宗教者への謝礼(葬儀社を通す場合の額と、自分の菩提寺に払う場合)
確認した内容は、担当者の名前と日付つきで書面に残してもらいます。
口頭の説明だけでは、亡くなった後に別の担当者が来たときに引き継がれません。
何を聞き、何を書面でもらうべきかは葬儀屋はどう選ぶ?生前相談で確かめたい項目で解説しています。
互助会や葬儀保険に入っている場合
親が冠婚葬祭の互助会に長く積み立てている家もあります。
積立金が使えるのは加盟する葬儀社の式のみで、他社を選ぶと解約手続きになり、解約手数料が引かれる契約が一般的です。
積立額が葬儀費用の全額を賄うわけでもありません。
契約書を探し出して、使える範囲と解約条件を先に読んでおいてください。
病院で紹介された葬儀社は、その場で断ってよい
病院や施設では、亡くなった後に提携先の葬儀社を紹介されることがあります。
紹介を受ける義務はなく、断って自分で決めた葬儀社を呼んで構いません。
病院側が求めているのは霊安室の明け渡しであって、どの業者に頼むかまで指定する立場にはありません。
その場で断るには、搬送を頼む先だけ決まっていれば足ります。
決めた葬儀社の電話番号を携帯電話に登録しておき、「すでに依頼先があります」と伝えて連絡します。
深夜でも葬儀社は電話を受けます。
反対に、決めていないまま紹介を受けると、悲しみの中で見積書を読み、その日のうちに祭壇の等級まで選ぶことになります。
金額の妥当性を判断する材料がない状態での契約は、後から「なぜこの額になったのか分からない」という不満が残りやすい進み方です。
搬送だけを紹介先に頼み、式は別の会社に依頼する形も取れますが、搬送費が二重にかかることがあるため、頼む前に確認してください。
火葬は死後24時間を過ぎてから。亡くなった後に動きだす期限
日程を早める方向には限界があります。
墓地、埋葬等に関する法律3条により、死亡から24時間を経過した後でなければ火葬できません(指定感染症などの例外があります)。
火葬には市区町村が交付する火葬許可証が必要で、これは死亡届と一緒に申請します。
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内が期限です(戸籍法86条)。
実際の日程は、火葬場の空き状況で決まります。
通夜と葬儀・告別式の日取りを先に決めても、火葬枠が取れなければ後ろにずれます。
亡くなってから納骨までの日数の目安は家族葬は何日かかる?亡くなってから納骨までの日程で解説しています。
葬儀が終わった後は、期限のある手続きが続きます。生前に全部を済ませることはできませんが、どれがいつまでなのかを知っておくと、四十九日の後に慌てずに済みます。
| 手続き | 期限 | 起算日 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 7日以内 | 死亡の事実を知った日 |
| 年金の受給停止 | 厚生年金10日以内/国民年金14日以内 | 死亡日 |
| 世帯主変更届(15歳以上が2人以上残る場合) | 14日以内 | 死亡日 |
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 自分が相続人だと知った時 |
| 準確定申告(事業所得などがある場合) | 4か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 相続登記 | 3年以内 | 不動産を取得したことを知った日 |
注意したいのは相続放棄の起算日です。
「亡くなった日から3か月」ではなく「自分が相続人だと知った時から3か月」で、期間内であれば家庭裁判所に伸長を申し立てられます。
相続登記は2024年4月1日から義務になり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
葬儀費用は誰が払うのか。口座凍結と葬祭費・埋葬料
費用の話でつまずくのは、金額よりも支払いのタイミングです。
葬儀社への支払いは式の後すぐに求められることが多く、一方で故人の預金は金融機関が死亡を把握した時点で凍結されます。
故人の口座から出せばいい、という前提で考えていると、その前提が崩れます。
公的な給付もありますが、こちらも後払いです。
健康保険の被保険者が亡くなったときの埋葬料は一律5万円で、国民健康保険と後期高齢者医療の加入者が亡くなったときは葬祭費が支給されます。
葬祭費の額は市区町村の条例で決まるため、金額はお住まいの市区町村の窓口で確認してください。
いずれも申請してから振り込まれるまで時間がかかり、葬儀社への支払いには間に合いません。
そのため、生前に決めておくのは「誰の財布から立て替えるか」です。
喪主が立て替えて後で相続財産から精算する形が多いものの、兄弟間で話がついていないと、立て替えた側が黙って負担して終わる展開になります。
親が元気なうちに葬儀費用として現金を分けておく、あるいは受取人を指定した保険で備えるといった方法もあります。
なお、相続放棄を検討する可能性がある場合、故人の預金を葬儀費用に充てる行為が単純承認とみなされるかは判断が分かれる論点です。借金の有無が分からないうちは、故人の口座には触れず、税理士や弁護士に相談する段階と考えてください。
家族葬にすると決めたら、親族には亡くなる前に伝える
家族葬でいちばん後に残るのは、費用ではなく人間関係のほうです。
訃報を後で知った親族から「なぜ呼ばなかったのか」と言われ、喪主が一人で返事をする場面になります。
伝える相手と順番を決めておけば、この摩擦はかなり減ります。
先に話しておくのは、親の兄弟姉妹です。
故人の意向で家族葬にすること、参列をお願いしないこと、後日改めて報告することを、一度でも口に出しておくと当日の連絡が短く済みます。
本人が「小さく済ませてほしい」と言っているなら、その言葉を本人の口から聞いた人が多いほど話は通りやすくなります。
エンディングノートに書いてもらうのもこのためです。
先延ばしにすると、決まっていないことが増えたまま当日を迎えます。
誰を呼ぶかが決まっていなければ、通夜の当日に飲食の数を追加することになり、その分は後追いで請求されます。
火葬後の遺骨をどこに納めるかも、家族葬の相談と切り離せません。
継ぐ人がいない墓を抱えている場合は、永代供養とは?種類ごとの違いと向いている人で解説している選択肢も、同じ時期に検討しておくと後の手間が減ります。
よくある質問
家族葬は何人までが目安ですか
人数の上限を定めた決まりはありません。
葬儀社のプランが「三十名まで」といった形で区切っていることはありますが、それは式場の収容と飲食の数に基づく設定です。
目安から決めるのではなく、呼ぶ人の名前を書き出して、その人数が入る式場を選ぶ順番で考えてください。
家族葬でも勤務先への連絡は必要ですか
故人が在職中であれば連絡します。
給与や社会保険の手続きがあるためです。
喪主や遺族が働いている場合も、忌引き休暇の申請で職場に伝えることになります。
どちらの場合も、亡くなった事実と「葬儀は家族のみで行う」という方針を同時に伝えると、参列や香典の申し出を先に止められます。
家族葬に決めた後で、参列したいと言われたら断れますか
断ることはできますが、当日に判断すると混乱します。
想定される人がいるなら、その人が来た場合に席と食事をどうするかを、生前相談の段階で葬儀社に聞いておいてください。
飲食や返礼品は人数が確定してからの請求になるため、数人の追加であれば対応できるのが一般的です。
家族葬でも菩提寺に読経を頼めますか
頼めます。
ただし、先祖の墓が菩提寺の墓地にある場合は、形式を問わず早い段階で連絡してください。
連絡なしに他の宗教者へ依頼すると、納骨の際に話がこじれることがあります。
謝礼の額と、僧侶が何人来るかは寺院によって異なるため、直接確認するのが早い方法です。
葬儀費用は生前に用意しておけますか
できます。
本人の口座に置いたままでは亡くなった後に凍結されるため、現金で分けておく、費用を負担する予定の家族の口座に移しておく、受取人を指定した保険で備えるといった方法が取られます。
生前贈与にあたる額を動かす場合は、税務上の扱いを確認したうえで進めてください。
家族葬を選ぶと葬祭費や埋葬料は受け取れなくなりますか
葬儀の形式では変わりません。
支給の要件は、亡くなった人が加入していた医療保険の種類と、申請する人が葬儀を行ったことです。
健康保険の埋葬料は一律5万円、国民健康保険と後期高齢者医療の葬祭費は市区町村ごとに額が違います。
申請期限が設けられているため、加入先に確認してください。
直葬にすれば家族葬よりもっと負担は軽くなりますか
平均費用では、直葬・火葬式が49.56万円、家族葬が96.39万円です(鎌倉新書 第7回お葬式に関する全国調査/2026年3月時点)。
金額の差は大きいものの、式を行わないため、亡くなったことを後で知った人が個別に訪ねてくる対応が続きます。
親族の理解を得られるかどうかで、選ぶ前の話し合いの手間が変わります。
まとめ
家族葬は呼ぶ範囲を絞った葬儀で、式の進み方そのものは一般葬と同じです。
費用の平均は96.39万円で一般葬より26万円ほど低いものの、香典が減る分を考えると手元から出る額の差は縮みます。
金額を大きく動かすのは参列者の人数より、通夜を行うかどうかと式場・火葬場の条件のほうです。
生前に決められるのは、呼ぶ人の名簿、依頼する葬儀社、費用を誰がどう立て替えるかの3点です。ここが決まっていれば、病院で紹介された葬儀社をその場で断り、自分で選んだ相手に電話をかけられます。
ぜひ本記事の形式別の平均費用の表と、見積書で確かめる費目のリストを手元に置いて、親が元気なうちに葬儀社へ生前相談を申し込んでください。


