葬祭費・埋葬料の申請|受け取れる金額と手続きを解説

健康保険の被保険者が亡くなったときの埋葬料は、一律5万円です。
一方、国民健康保険や後期高齢者医療の加入者に支給される葬祭費は、市区町村の条例で決まるため額が違います。
同じ「葬儀の補助金」という言葉で検索しても、親がどの保険に入っていたかで、受け取れる額も申請する窓口も変わってきます。
葬儀費用の平均が96.73万円(鎌倉新書 第7回お葬式に関する全国調査/2026年3月時点)であることを考えると、数万円でも取りこぼしたくないところでしょう。
本記事では、葬祭費と埋葬料の金額の違い・申請先と必要書類・申請しないと消える2年の時効・生前にできる備え方を解説します。
葬儀代の補助金は「葬祭費」と「埋葬料」の2つ
公的に受け取れるお金は、亡くなった人が加入していた医療保険の種類で名前が変わります。
どちらも自動では振り込まれません。
遺族が自分で申請して初めて支給される仕組みです。
| 制度名 | 対象になる人 | 金額 | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 葬祭費 | 国民健康保険・後期高齢者医療の加入者 | 市区町村の条例で異なる | お住まいの市区町村の窓口 |
| 埋葬料 | 健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)の被保険者 | 一律5万円 | 協会けんぽの都道府県支部または健康保険組合 |
親が退職後に自営業を続けていたり、年金だけで暮らしていたりした場合は、国民健康保険か後期高齢者医療のどちらかに入っています。
75歳以上なら原則として後期高齢者医療です。
会社勤めを続けていたなら健康保険で、この場合は勤務先を通じて手続きすることが多くなります。
金額の根拠は制度ごとに違います。
健康保険法100条で埋葬料は5万円と定められていますが、国民健康保険の葬祭費は各市区町村の条例で決まるため、隣の市と額が違うことも起こります。
お住まいの市区町村のサイトで「葬祭費」と検索するか、国民健康保険の窓口に電話で確認してください。
金額をこの記事で断定することはできません。
健康保険の被扶養者が亡くなった場合
親が子の健康保険の扶養に入っていた場合、支給されるのは埋葬料ではなく「家族埋葬料」です。
こちらも5万円で、被保険者本人(この場合は子)が請求します。
扶養に入れていたかどうかは、親の保険証の記載で分かります。
葬儀代の補助金が受け取れる人と、申請の期限
受け取れるのは、実際に葬儀を行って費用を負担した人です。喪主であることが条件になっている自治体もありますが、埋葬料の場合は「埋葬を行った人」が対象で、必ずしも親族に限りません。
見落としやすいのが期限です。
葬祭費も埋葬料も、請求できる期間は2年で時効になります。
起算日は制度で違い、葬祭費は葬儀を行った日の翌日から、埋葬料は死亡した日の翌日からです。
四十九日や相続の手続きに追われているうちに1年が過ぎることもありますが、2年を超えると請求権そのものが消えます。
死亡届を出せば国民健康保険の資格喪失は市区町村側で処理されますが、葬祭費の支給は別の申請です。
窓口で「葬祭費の申請もしていきますか」と案内されることもあれば、案内されないこともあります。
死亡届の提出は死亡の事実を知った日から7日以内(戸籍法86条)と決まっているので、この届出のときに一緒に済ませてしまうのが手間のかかりません。
申請に持っていくもの
自治体や健康保険組合によって多少違いますが、共通して求められるのは次のものです。
- 葬儀費用の領収書、または会葬礼状(喪主の名前が確認できるもの)
- 申請する人の本人確認書類と印鑑
- 振込先口座の分かるもの(申請する人名義)
- 亡くなった人の保険証
- 死亡を確認できる書類(死亡届のコピーや埋火葬許可証の写しなど)
領収書は葬儀社から受け取ったものをそのまま使えます。
ただし宛名が喪主と違う名義になっていると、支給対象の判断で止まることがあります。
葬儀社に依頼する段階で、領収書の宛名を誰にするか決めておいてください。
葬祭費・埋葬料では足りない分をどう見るか
ここで金額の現実を確認しておきます。
葬儀費用の平均は総額で96.73万円です(鎌倉新書 第7回お葬式に関する全国調査/2026年3月時点)。
形式別に分けると次のようになります。
| 形式 | 平均費用 |
|---|---|
| 一般葬 | 122.01万円 |
| 家族葬 | 96.39万円 |
| 一日葬 | 74.43万円 |
| 直葬・火葬式 | 49.56万円 |
この調査では家族葬が47.0%で最も多く選ばれています。
埋葬料の5万円は、直葬・火葬式の平均49.56万円に対しても1割ほどにしかなりません。
補助金で葬儀代がまかなえると考えると、残りの金額に困ることになります。
差が出るのは形式そのものより、参列者の人数です。
人数が増えれば飲食の用意と返礼品が増え、会場も広い部屋を借りることになります。
一般葬と直葬で70万円以上の開きがあるのは、この人数に連動する費目が積み上がるためです。
形式ごとの中身については葬儀費用の平均と形式別の相場で解説しています。
なお、この調査から確認できるのは形式別の総額までです。
飲食費や返礼品、お布施がそれぞれいくらかという内訳は、この記事では金額を出せません。
見積書の項目ごとの見方は葬儀代の内訳を項目別にまとめた記事で解説しています。
見積もりで抜けやすい費目
葬儀社が最初に出す「プラン料金」には、必ず含まれるものと含まれないものがあります。含まれないことが多いのは、実費で変動する費目です。
- 火葬場の使用料(自治体の施設か民営かで大きく変わる)
- 参列者の人数で変動する飲食費と返礼品
- 寺院へのお布施、戒名料
- 安置期間が延びたときのドライアイス代と施設使用料
安置期間は自分では決められません。
火葬は死亡または死産の時から24時間を経過しないとできず(墓地、埋葬等に関する法律3条)、さらに火葬場が混んでいれば数日待つことになります。
冬場や年末年始は待ち時間が延びやすく、そのぶん保管の費用が日数分で加算されます。
見積書に「1日あたり」と単価で書かれている費目は、日数が動く前提で見ておいてください。
削ると後で困る部分
費用を抑えるなら、まず人数に連動する費目から見ます。
参列者を絞れば飲食と返礼品が減り、会場も小さくて済みます。
家族葬と一般葬の違いと呼ぶ範囲の決め方で解説しているとおり、誰を呼ぶかを先に決めるほうが、プランを値切るより効きます。
一方、削らないほうがいい部分もあります。
菩提寺(ぼだいじ)がある家で、費用を理由に僧侶を呼ばずに済ませると、後の納骨で断られることがあります。
お墓がそのお寺の墓地にある場合、葬儀の形式について事前に相談しておかないと、遺骨を納められない事態になりかねません。
安くする判断をする前に、お墓がどこにあるかを確認してください。
訃報の連絡先を絞りすぎるのも、後から響きます。呼ばなかった親戚が後日個別に弔問に訪れると、そのたびに応対することになり、結果として手間も費用も増えます。
葬儀代を誰が払うかと、相続との関係
葬儀費用を誰が負担するかについて、法律に明確な定めはありません。
喪主が立て替えて払い、後で相続財産から精算するという形が実務では多くとられます。
ただし、これは相続人全員が納得している場合の話です。
もめるのは、精算の段階です。
喪主が一人で決めた金額を後から「相続財産から出してほしい」と伝えると、他の相続人から「そんな規模の葬儀は頼んでいない」と言われることがあります。
見積書の段階で兄弟に共有しておけば、この種の食い違いは起きません。
誰が払うかの考え方は葬儀代は誰が払うのかを扱った記事で解説しています。
相続放棄を考えている場合は、支払い方に注意が必要です。
相続財産である故人の預金から葬儀費用を引き出して払うと、相続財産を処分したとみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。
相続放棄の申述は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条)。
放棄を検討する可能性があるなら、故人の口座には手をつけず、自分の資金で立て替えておきます。
相続税での扱い
葬儀費用は、相続税を計算するときに相続財産から差し引けます。
通夜と葬儀にかかった費用、火葬料、お寺へのお布施などが対象で、香典返しや初七日以降の法要の費用は含まれません。
相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、これを下回れば申告そのものが不要です。
申告と納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内と決まっています(相続税法27条)。
控除に使うには領収書が要ります。
お布施のように領収書が出ないものは、支払った日付と金額、相手先をメモに残しておいてください。
個別にいくら差し引けるかの判断は税理士に相談する段階です。
生前に葬儀代の準備をしておく方法
葬祭費も埋葬料も、亡くなった後に申請して、さらに振り込みまで1か月前後かかることがあります。
葬儀社への支払いには間に合いません。
手元の資金で先に払う前提で考えておく必要があります。
問題になるのが、故人名義の預金です。
金融機関が死亡を知ると口座は凍結され、遺産分割が終わるまで自由に引き出せなくなります。
仮払い制度を使えば一定額までは引き出せますが、手続きに戸籍謄本などが要り、その日のうちには済みません。
親の預金を葬儀代にあてる想定でいると、この段階で止まります。
備え方としては、葬儀費用に使える保険や互助会の積立があります。
それぞれ解約の条件や、指定した葬儀社以外で使えるかどうかが違うため、契約前に確認する点があります。
葬儀代に備える保険と互助会の違いで解説しています。
生前相談で決めておけること
葬儀社の生前相談を使えば、形式と規模、呼ぶ範囲をあらかじめ決めて見積書をもらえます。
亡くなった直後は病院から数時間以内の搬送を求められることが多く、その場で紹介された葬儀社に流れで依頼してしまいがちです。
病院で紹介された葬儀社は、その場で断って構いません。
搬送だけを依頼して、葬儀は別の会社に頼むこともできます。
決めた内容は、親本人にエンディングノートへ書いてもらうか、家族で共有しておきます。エンディングノートに書くべき項目で解説しているとおり、加入している健康保険の種類や保険証の保管場所を書いておけば、葬祭費と埋葬料のどちらを申請するかで迷わずに済みます。
よくある質問
葬祭費と埋葬料は両方もらえますか
どちらか一方です。
亡くなった人が加入していた医療保険が国民健康保険・後期高齢者医療なら葬祭費、健康保険なら埋葬料になります。
加入していた制度は保険証で確認できます。
申請を忘れていました。今からでも間に合いますか
2年以内なら請求できます。
葬祭費は葬儀を行った日の翌日から、埋葬料は死亡した日の翌日から2年で時効です。
領収書や会葬礼状が残っていれば、まず窓口に電話で問い合わせてください。
直葬や火葬式でも葬祭費はもらえますか
自治体によって扱いが分かれます。
通夜や告別式を行わない直葬について、支給の対象とするところと、対象外とするところがあります。
火葬のみを予定しているなら、事前にお住まいの市区町村の国民健康保険の窓口で確認してください。
生活保護を受けていた親の葬儀費用はどうなりますか
生活保護の葬祭扶助という制度があり、この場合は葬祭費や埋葬料とは別の扱いになります。
支給の可否や範囲は福祉事務所の判断になるため、葬儀を手配する前に担当のケースワーカーへ相談してください。
手配した後では対象外になることがあります。
葬儀費用の補助金に、墓じまいの費用も含まれますか
含まれません。
葬祭費と埋葬料は葬儀に対する給付で、お墓の撤去や改葬は別の話です。
墓の撤去について自治体の制度がある場合もあり、墓じまいに補助金は使えるかを扱った記事で解説しています。
まとめ
葬祭費と埋葬料は、どちらも遺族が自分で申請しなければ支給されないお金です。
健康保険の埋葬料は一律5万円、国民健康保険と後期高齢者医療の葬祭費は市区町村の条例で決まるため、まず親がどの保険に加入しているかを確認するところから始まります。
請求できるのは2年間で、これを過ぎれば権利は消えます。
ただし、葬儀費用の平均96.73万円に対して、補助金でまかなえるのは一部にすぎません。
支払いは葬儀社への支払いのほうが先に来ますし、親名義の口座は凍結されて使えなくなります。
生前のうちに形式と規模を決め、誰が立て替えるかまで家族で話しておくことが、金額の面でも手続きの面でも効きます。
ぜひ本記事の申請先の一覧と形式別の平均費用を参考に、親の保険証の種類を確かめるところから始めてください。


